11月26日付けの光明日報WSは、最近30日間に中国国内で新型コロナ・ウィルスに感染発症した事例が98人であり、その前の30日間の7.5倍であること、感染の特徴としては「物から人へ」と「人から人へ」が併存するという特徴があることを報じました。「物から人へ」とは、北京、大連、青島(10月18日のコラムで紹介)のあとも、天津、上海などで同じようなケースが起こっており、ウィルスに汚染された外国からの貨物を取り扱う労働者が感染する場合を指しています。
 国務院の聯防聯控機構は10月に低温流通システムの食品に関する「消毒技術ガイドライン」を発出して、ウィルスの媒体になる輸入品及びその外装部分に対するPCR検査の徹底を指示しました。その結果、全国各地におけるPCR検査のカバー率が上昇し、サンプル調査における陽性率は1万分の0.48で、陽性反応が出るのは主に食品の外装であることを突き止めるに至っています。また、冬期に近づくとともに、低温流通システム関連だけではなく通常のコンテナもウィルスの生存に適した環境となることが明らかになっているようです。そして、北京、大連、青島、天津、上海等におけるケースは例外なく十分な感染予防対策を講じていなかったために感染したことも明らかにされました (ただし、「人から人へ」のケースも内蒙古自治区の満州里で起こっています)。
 国務院聯防聯控機構は11月25日、冷凍食品及び秋冬期食品の安全に関する記者会見を行いました。この記者会見の模様を各メディアが紹介しましたが、このコラムでもたびたび紹介してきた中国疾病コントロール・センターの伝染病学の首席専門家である呉尊友は、次のような発言を行いました。新型コロナ・ウィルス抑え込みのカギは無症状感染者を含めた感染者の徹底的洗い出し、すなわち「速やかな発見によって初期段階で流行を最小範囲に抑え込むこと」であると指摘した呉尊友の発言は、初動を誤った日本(医療体制崩壊を最優先にし、無症状感染者(忍者・「一匹狼」)を野放しにしたことが今日の第4波大流行を不可避にした)に対する痛烈な客観的批判です。
また、大陸全土で感染者ゼロを基本的に実現した中国にとっての最大課題は、入国感染者による「人から人へ」の感染を阻止すること、汚染されている輸入貨物(特にその外装物)を扱う人員の感染(「物から人へ」)を阻止することであり、それにもかかわらず感染者が出てしまった場合における「合わせ技」(「応検尽検」+「応隔尽隔」+「応治尽治」)による完璧な対応体制の全国的確立です。この「合わせ技」も、大陸全土で感染者ゼロを基本的に実現した中国だからこそできることです。呉尊友の発言を読むと、新型コロナ・ウィルスの前に立ちすくみ、手の打ちようがない日本、欧米諸国と比較する時、中国における新型コロナ・ウィルス対策はもはや異次元の世界に踏み込んでいるというしかありません。
なお、中国で「人から人へ」の感染だけでなく、「物から人へ」の感染が重視されるようになっていることは、日本を含めた世界各国としても他人事ではないはずです。例えば、日本でも、輸入貨物を扱う労働者が感染する・感染している可能性、そしてそれらの労働者が感染経路となって感染が拡大している可能性は十分に考えられます。今の日本には「とてもそこまでは手が回らない」という実情であることは理解できますが。
 また、「物から人へ」の感染に関しては、中国が「新型コロナ・ウィルスの発生源は中国・武漢である」という推定を打ち消すために利用している (例:「中国・武漢における感染源は輸入貨物だった、したがって、中国は発生源ではなく、外から持ち込まれたものだ」とする主張) という批判が行われています。私自身はそういう主張を確認できていません。しかし、重要なことは、そういう主張の有無にかかわらず、北京、大連、青島、天津、上海、カシュガルなどでは輸入貨物を扱う労働者が現実に新型コロナ・ウィルスに感染している事実があり、「物から人へ」の感染そのものを否定することはできないということです。

○冬期に入るとともに、世界のコロナをめぐる情勢は楽観できず、世界が大きな試練に直面しているが、中国も同じように試練に直面している。中国の常態的な防疫コントロール体制の下における散発的な感染事例の発生は正常な現象であり、これまでの11ヶ月間においては成功を収めてきた。特に、国慶節当時は6億人から7億人の人口の大移動があったが、新型コロナ・ウィルスがぶり返すということはなかった。現在は冬期に入り、今後春節に際しての人口の大移動があるが、その大移動の中に感染者がいない限り、重大な事態は発生しないだろう。過去11ヶ月間の経験を総括する時、今後も新型コロナ・ウィルスの再流行出現を防止できるし、2020年初の武漢におけるような深刻な流行の出現を防止できると確信している。それを成し遂げるためのカギはなんと言っても科学的な防疫コントロールを総合的に行うことであり、概括すれば、科学的防疫コントロール、精確な施策、集中的取り組み、重点突出であり、速やかな発見によって初期段階で流行を最小範囲に抑え込むことである。
○大規模なPCR検査実施は必要であるとともに費用対効果の要求を満たすものである。技術が成熟するに従い、PCR検査は今や中国における新型コロナ・ウィルス防疫コントロールにおける標準的手段となっている。PCR検査は反応度が比較的に高く、感染規模を速やかに確定できるので、現地行政も安心できるし人々も安心でき、いわば「精神安定剤」であり、したがって大規模PCR検査は大いに必要だ。
 大規模なPCR検査を行うことは科学的である。大規模検査においては一般に1対5の混合検査を採用する。つまり、5人分のサンプルを一度に検査し、陰性ならばそれでパス、陽性反応が出る場合には改めて一人一人の分の検査をする。感染率は非常に低く、1万分の1以下なので、1対5の混合検査方式によって速やかに感染者を発見でき、同時に広範囲かつ大規模な検査ができるので、費用対効果が大きい。
 大規模なPCR検査は目下のところ速やかに感染者を発見するもっとも有効な方法である。陽性反応が出た場合には、病状が軽度から重度に移ることを防止できるから本人にとってのリスクを減らすし、新型コロナ・ウィルスの感染は通常身近な人であるので、早期発見によって感染を減らすことにも繋がる。
○中国においては、まずは感染者の発見であり、発見した後は一連の「合わせ技」を講じる。すなわち、「応検尽検」(検査すべき対象はすべて検査する)に従って感染者を洗い出す。「応隔尽隔」(隔離すべきものはすべて隔離する)に従って感染する可能性のある人をあらかじめ隔離する。そして「応治尽治」(治療するべきものはすべて治療する)に従って治療するべき人はすべて費用免除で治療する。このほか、適時に関係情報を社会に公布し、人々が積極的に対応できるようにする。中国には「人心斉、泰山移」という格言がある。つまり、挙国一致で力を発揮し、歩調を合わせることによってのみ、勝利を得ることができる。この分野では、強力かつ有力な領導と歩調の一致、この二つの力が重要な役割を演じる。