中国国務院聯防聯控機構は、本年初以来の新コロナ・ウィルス防疫コントロールにおける実践の成果を固めて制度的成果とするため、①早期発見、②PCR検査能力向上、③感染拡大阻止、④集中治療、⑤情報公開、以上5つのカギとなる取り組みを含む「突発集団伝染病処置指南」と題するマニュアルを作成しました。このマニュアルに基づいて、本年秋冬に当面することになるコロナ、インフルエンザ等の呼吸器系疾患を念頭に、全国各地における効果的な防疫コントロールを指導することとしているそうです。換気をよくすること、手洗いをまめにすること、ソーシャル・ディスタンス励行、換気が良好でないとか人が密集するとかの場所でのマスク着用などは、中国では人々が自覚的に取るべき措置と位置づけられています。中国政府は、全面的な経済活動を円滑に遂行するための不可欠な前提条件として、新コロナ・ウィルスの徹底撲滅を自らの政策課題と位置づけているのです。
 以上の中国の取り組みは、日本の取り組みのいい加減さを客観的にあぶり出しています。日本では、新コロナ・ウィルス撲滅の取り組みは最初から諦め(もっぱらワクチン開発待ち)、経済活動と両立する範囲での感染拡大抑制が最大の政策課題と、なし崩し的に位置づけられるに至っています。しかも、ワクチン開発も米英頼みの他力本願ですから、日本政府(地方公共団体を含む)のコロナ撲滅への主体的取り組みはゼロです。日々の感染者数の増減に一喜一憂するだけで、「第二波」「第三波」を恐れながら、しかし基本的には「コロナと共存していくしかない」という諦めの心情が官民を問わず支配しています。
 私は前々からコラムで指摘しているように、中国の取り組みが正解であり、日本の取り組みは答にすらなっていないと思います。「突発集団伝染病処置指南」(中国の検索サイト「百度」で調べた限りでは、全文はまだ公表されていない模様)の5つのカギとなる取り組みに関する9月29日付けの新華網記事を以下に紹介するゆえんです。

 中国国務院聯防聯控機構は、本年初以来の新コロナ・ウィルス防疫コントロールにおける実践の成果を固めて制度的成果とするため、5つのカギとなる取り組みを含む「突発集団伝染病処置指南」と題するマニュアルを作成した。数人の権威ある専門家が解説を行った。
<如何に速やかに発見するか。発見2時間以内に要報告、発見後直ちに応急対応を起動する>
 措置一:発見後直ちに応急対応を起動し、リスク等級別地域を科学的に画定し、迅速に疫学的に感染源を特定し、コミュニティに対して精確な管理コントロールを行う。
 専門家解説:最近数ヶ月内に国内で発生したいくつかの集団感染が明らかにしたのは、突如襲い来る感染例は、最初の段階では対処できないということだ。あるものはコミュニティで、あるものは公共浴場で、あるものは農産物卸売市場で、という具合に発生する。そのため、感染源の特定及び防疫コントロールにとっては深刻な挑戦となる。
 ウィルスとの戦いは可及的速やかに感染を発見することができるかどうかがカギとなる。国家健康衛生委員会の責任者は次のことを明確に指摘している。すなわち、感染2時間以内に要報告、PCR検査重点対象グループについては3-6時間以内、通常検査対象グループについては12時間以内に、それぞれ結果を報告すべし。
 中国疾病コントロールセンター伝染病首席専門家の呉尊友:直接報告システムを改善し、厳格な時限意識を確立するためには、段階審査による報告・警告という時間的ロスは許されない。薬局、税関、学校、養老機構、交通・駅、農産物市場、冷凍食品企業等、感染発生リスクがある場所に即して、部門、地域をまたがる共同監視・観測を実施し、情報の即時共有を強化する必要がある。
 北京大学第一医院伝染病科主任の王貴強:医療機関は予備検査診察と発熱外来とを厳格に分けて設け、感染第一診察報告責任制を実行すべし。監督観察及び警告についてさらに拡大強化し、情報ソースのマルチ化・多元化を確立し、リアルタイムの分析、集中的な検査判断を行う等の能力を高めるべきだ。
<如何にPCR検査能力を高めるか。混合検査により、5-7日で所在地全員の検査をカバーする>
 措置二:PCR検査を中心として予防措置を拡大し、検査観測及びサンプリングの能力を高め、5-7日で所在地全員の検査をカバーすることに全力を挙げる。
 専門家解説:国務院聯防聯控機構が6月に発表した「新コロナ・ウィルスPCR検査実施をスピード・アップすることに関する意見」は、大規模なグループに対する検査観測を行う時は、5~10のサンプルの混合検査による一次スクリーニング方法を採用することによって検査観測の効率を高め、コストを引き下げてもよいと指摘している。
 6月11日に北京新発地で集団感染が発生した。北京市は果断に混合検査を採用し、短時間でPCR検査能力を高め、重点区域、重点グループに対して応検尽検をやり遂げ、その他のグループに対しては願検尽検をやり遂げることによって、短期間に1000万人クラスの都市におけるPCR検査全員カバーを実現した。その後、大連における戦「疫」過程でも北京等における混合検査方法を1:5、1:10の混合検査技術に高め、検査観察の質量を保証すると同時に検査観察能力を迅速に向上させた。
 王貴強:感染来襲に見舞われ、第一波が起こった時は、1:10のPCR混合検査技術を使用して迅速に全員の検査を完了する。そのほか、優れたPCR検査資源を統括し、第三者検査観察能力の建設を強化し、科学技術力と市場力とを結合する必要がある。
<如何に伝染ルートを切断するか。濃厚接触者、第二次感染者及び無症状感染者の全員に対して応隔尽隔を行う>
 措置三:断固として集中隔離し、十分な数の隔離場所を準備し、感染者、濃厚接触者、第二次接触者の全員を集中隔離する。
 専門家解説:国家健康衛生委員会が1月28日に発表した「新コロナ・ウィルス防疫コントロール方案」第三版において早くも、無症状感染者を防疫コントロールの管理に含め、無症状感染者は14日間の集中隔離、無症状感染者との濃厚接触者は14日間の集中隔離医学観察にすることを強調した。
 王貴強:現在、大規模PCR検査は無症状感染者を発見する主要かつ有効な手段であり、感染者が出現した時は迅速にPCR検査実施の範囲を確定し、精確な防疫コントロールの実現を期すべきだ。
 5月8日、吉林省衛生健康委員会は舒蘭市公安局の洗濯労働の女性1名の感染確認を報告した。わずか数日で感染は数十人に広がり、省をまたぐ感染拡大リスクが高まったが、感染ルートは不明だった。
 吉林省感染病防疫コントロール工作指導組・藩明副組長:舒蘭市は迅速に「包囲圏」を画定封鎖し、濃厚接触者、第二次接触者及び小区、単位、カギとなる場所、医院等の関係者6グループを重点とし、厳格に隔離するなどの措置を講じた。
 呉尊友:伝染病の防疫コントロールにおいては精確さが求められ、カギとなるのは「大」と「小」の弁証法をうまくやることである。すなわち、密接管理を重点として大きな「包囲圏」を区画すると同時に、コミュニティの管理コントロールに関しては、小さく細かく単位を区切り、ストリート、コミュニティ毎に、さらには小区、ビルディングまで区切り、精確に管理コントロール区域を画定する必要がある。
<如何に集中治療を行うか。医院を空け、患者の集中治療と物資人力の調達準備を行う>
 措置四:患者が10人を超えた時は、500床以上のベッドを有する医院を断固として空けて集中治療を行い、同時に重症病区の設置を統一的に行う。
 専門家解説(王貴強):10人以上の患者が地域で現れた時は、コミュニティに感染が拡大している可能性がある。したがって、転ばぬ先の杖として、迅速に定点医院を画定し、新患者の集中治療に当てるべきだ。また、重症病区の設置を統一的に行い、重症監察看護ベッド数はベッド総数の10%を下回らないことを原則とする。同時に、ハイ・レベルの医院グループ、予備医療グループ、接続管理病区を組織し、物資、薬品の備蓄は医療機構の30日分の運転需要を満たすべきだ。
 9月13日、雲南省瑞麗市は、ミャンマーから入国した2人の感染を確認した。瑞麗は直ちに「暫定ロック」を押した。瑞麗市副市長:我々は細かい準備案を作り、特に集中治療の面では、400床を準備できる定点医院を指定し、空きベッド80床を作り、医療看護人員が何時でも出動できるように準備工作を行い、病区の設置を統一的に行った。同時に、物資、薬品の準備も怠りなく行った。
<如何に情報公開を行うか。十分な情報公開は、社会情緒を安定させ、予想を科学的に導く>
 措置五:新聞記者会見等の形で情報公開を行い、特に当地感染ケースに関しては、状況に応じて個々人の防衛措置を調整するよう人々を導く。防衛措置としては、マスク着用、ソーシャル・ディスタンス、手洗い、密集減少などが感染リスクの低減に効果がある。
 専門家解説(復旦大学付属華山医院伝染科の張文宏主任):理性的なデータ及び専門知識によって人々に解説する必要がある。精確な知識情報は人々が期待するものであり、この戦疫に勝利する重要な保証である。