チェコ上院議長は8月30日に90人の代表団を率いて台湾を訪問しました。また、米軍のEP-3E電子偵察機が台湾本島を飛び立ったことを示す記録が報告されました。前者は「一つの中国」原則に真っ向から挑戦する意図的な行動、後者はまだ最終確認には至っていないという違いはあります。しかし、中国敵視政策を公然化しているトランプ政権と台湾独立志向を強める蔡英文当局という背景なしにはあり得ない出来事です。前者には中国政府(外交部)が強硬な警告を発し、後者には環球時報(社説)が対米戦争を辞さない軍事対応を主張しました。蔡英文とトランプ・ポンペイオが「火遊び」をいい加減にやめないと、収拾がつかない事態を招く危険を生んでいます。
 チェコ上院議長(Milos Vystrcil)の訪台については9月2日付けの朝日新聞も報道していますが、同議長は、訪台目的は台湾とのビジネスを推進するためだと言いつつ、訪問に先だってロイター通信に対して、「誰かの召使いになることを受け入れることはできない。一度従ったら、毎回従うことになってしまう」と述べて、中国の要求に頭を下げるつもりはないことを明らかにしました。彼は台湾議会で演説し、蔡英文と会見する予定にもなっているといいます(以上は8月30日のイランPars Today WS)。また、2019年4月に設立された中国の国際的研究ネットワーク「南海戦略態勢感知」計画(SOUTH CHINA SEA STRATEGIC SITUATION PROBING INITIATIVE-SCSPI-)WSは、米軍のEP-3E電子偵察機の飛行軌跡を記録し、台湾本島から飛び立った疑いがあると述べて、多くの方面の注目を集めました(8月31日付け環球時報WS)。
 チェコ上院議長の行動に対して、ドイツ訪問中の王毅外交部長は8月31日、「台湾問題で一つの中国原則に挑戦するのは14億中国人民を敵とすることであり、国際的背信行為だ。チェコ参院議長の公然の挑発及びその背後の反中勢力に対し、中国政府及び人民は絶対に成り行きに任せず、見過ごすことはなく、その近視眼かつ投機的な行動に対して重大な代価を必ず支払わせる」と述べました(同日付中国外交部WS)。同日、中国外交部の欧州担当の秦剛次官もチェコ大使を召喚して同じ趣旨を述べるとともに、上院議長の悪意ある近視眼の行動で両国関係がさらに損なわれることを回避する行動を取ることを促しました。9月1日の中国外交部定例記者会見では、華春塋報道官(局長)が、「必要な反応を必ず行う」と述べました。
 8月31日の環球時報社説「チェコ上院議長訪台:機械主義的強がり」は、チェコ上院議長訪台の背景事情(米台の対中姿勢)を説き明かすとともに、これが孤立した行動として終わらない可能性を指摘して、中国の戦略レジリエンスと外交ウィズダムが試されていると、次のように述べました。

 上院議長はチェコ最高位の現役(チェコ憲法上No.2)であるとともに、中国と国交がある欧州諸国最初の訪台議長である。彼は、訪台は民主台湾に対する支持表明であり、彼の行動に対する反対表明は内政干渉だと主張した。しかし、一つの中国原則を尊重し、台湾と公的関係を発展させないことは国交樹立時の約束であり、だからこそ欧州の他の国々の現役議長が訪台することはないのだ。彼はルール破壊者であり、ならず者の行動だ。
 彼の訪台はチェコという国家の複雑な国柄を表している。チェコ大統領及び外相は上院議長訪台に反対を表明し、チェコと中国の関係を破壊するものだと見なしている。しかし、チェコ議会は同国のさまざまな政治的意見がもっとも交錯している場所であり、しかも現政権と上院は異なる政党の支配の下にあり、上院議長の行動はチェコの現実の情勢を表している。
 チェコ上院議長の訪台には、明らかに強がった見せびらかしの意味がある。チェコの一部勢力がイデオロギー的な外交行動を取るのは、チェコがかつてソ連の衛星国だった歴史とも関係があると考えられる。すなわち、こういう勢力は「反共」ということで過激な行動を取ることによって自らが西側の一員だと宣伝したいのだ。
 チェコ上院議長訪台計画は昨年からのものであり、正に、「火のないところに煙は立たない」である。アメリカは最近2年間に対中政策を大幅に転換し、とりわけ本年に入ってからは中国に対する全面的攻撃を行い、欧州の同盟友好国に対して対中「新冷戦」を煽り、そのことがチェコ上院議長の訪台画策と強行にエネルギーを与えた。これは要するに、アメリカの顔色を窺い、その意図を忖度する政治屋の動きである。数年前だったら、訪台して「一つの中国」原則に挑戦するようなものはあり得なかった。
 しかし、今回の事実は極めて不愉快な新しい現実を示している。すなわち、アメリカが中国と関係が深く、協力も密な国に対して手を回すことは簡単でないが、中国との経済協力がそれほど密でない国に関しては、その中の一部の勢力は虎視眈々と、ワシントンとグルになる機会を窺っているということだ。我々としては、チェコ上院議長が台湾問題でルールを破る最後のオポチュニストではない可能性があることについて思想的準備をしておく必要がある。アメリカは中国をやっつけようとして「一つの中国」原則にも手をつけ始めており、「湖に一つまた一つと石を投げ入れればさざ波が生じる」のは必定であり、我々としては僥倖に頼ることはできない。
 如何に反応するか。これは北京の戦略レジリエンスと外交ウィズダムに対する試練である。アメリカによる挑発の衝撃が各方面から押し寄せるとき、我々はまず、何が我々にとってもっとも重要か、我々が絶対に守らなければならない実質的利益は何か、我々が忍耐して応対する必要があるのはどのような場合か、をハッキリさせる必要がある。
 チェコ上院議長の行動は、人の目をむくような行動に出ることによって自分を売り込もうという目的に出ている。我々が強力に反撃することは彼の目的達成を手助けしてしまう一面は確かにある。とは言え、何もしないで済ませると、客観的には類似の行動を容認することになってしまう可能性もある。したがって、本件については精確に対応する必要がある。まずはカッとならないことだ。中米関係という大波を経験している我々からすれば、台湾でゴソゴソ動くチェコ上院議長がなんだというのだ。我が実力及び手元の道具箱からいくつかを取り出して然るべき対応を行えばよろしい。
 一つの中国は、畢竟するに、遠く離れた欧州中小国の上院議長が決められることではあり得ないし、ワシントンが決められることでもない。それを最終的に決定するのは中国の実力と14億中国人民の意思であり、それを監督実行するのは中国の反分裂国家法であり、強大な人民解放軍である。チェコ上院議長という端役が台湾に行っても、何にも残すことはできっこない。
 米軍のEP-3E電子偵察機の行動に対する9月1日の環球時報社説「蔡英文当局に根本的警告を与える必要あり」は一転して、対米戦争を辞さない軍事行動(台湾上空を解放軍の巡航空域と宣告し、米軍機の行動を監視し、台湾が解放軍機に発砲したら、戦争挑発として武力統一を実現する)を「提案」する激しい内容です。ただし社説は、「台米間の米軍機の発着の取り決め」がすでにあることに関する「確実な証拠がある」とすれば、という大前提をつけています。しかし、それでもなお、ここまで踏み込んだ主張に私ははじめてぶつかった、というのもまた事実です。かつての日本軍国主義が一歩また一歩と中国大陸に入り込み、ついに日中戦争という底なし沼に陥ってしまったことを改めて想起するべきです。米台が今中国を相手にやっていることも同じです。両者に共通するのは「中国を侮っている」ということです。この社説を軽々に扱ってはならないと判断するゆえんです。
 米軍のEP-3E電子偵察機の飛行軌跡が怪しく、台湾本島から飛び立った疑いがあり、関心を引き起こしている。「南海戦略態勢感知」計画プラットホームはこの偵察機の飛行軌跡を記録しており、上記疑念に対して根拠を提供している。
 もしも台湾とアメリカが米軍機の台湾離発着に関する取り決めを行っているのだとすれば極めて重大な事件であり、国家統一を擁護するという大陸のレッド・ラインをすでに踏んだということになる。大陸が確実な証拠を握った場合、関係する飛行場と同飛行場に着陸する米軍機を破壊することにつながり、台湾海峡戦争が開始されることになる。
 我々は、蔡英文当局とワシントンに対し、火遊びをするなと警告する。国家主権と領土保全を守る大陸の意志は極めて固く、我々は戦争をするつもりはないが、国家分裂を公然と作り出す行動に対しては必ず断固とした反撃を与える。
 米台は不断に結託を強めており、アメリカの在台事務所は最近米軍の給油機が台湾の戦闘機に空中で給油を行っている写真を公開し、あからさまに挑発した。有り体に言うが、蔡英文当局とアメリカの結託を示すこうしたパフォーマンスに大陸世論はいささかうんざりしており、両岸が平和的に統一する可能性をもはや信じない人がますます増え、「武力統一論」が幅広く議論されるようになっている。
 蔡英文当局は口先では平和を希望すると言うが、彼らのやり方は台湾海峡を不断に戦争の瀬戸際へと押しやっている。彼らは、細切れ的に大陸の意思を徐々に崩していって、最終的に台湾の徹底した脱中国化を大陸に受け入れることを迫り、国際舞台で合法的なメンバーになることを考えている。
 民進党当局はここ数年あまりに順調で、増長しすぎており、大陸が本気で手を出すとは信じなくなっている。我々は、台湾海峡問題で「劇薬」を処方し、蔡英文当局に強烈な警告を与えることを真剣に考える必要があると考える。
 「劇薬」に関しては、台湾島上空を解放軍の巡航空域にすることを宣告し、解放軍の偵察機、戦闘機が台湾島上空で任務を執行することを提案する。軍機は主権を公知させるとともに、台湾の各飛行場で米軍機が離発着していないかどうか、台湾の各港湾で米軍艦船が停留していないかどうかをチェックする。仮に台湾軍隊が解放軍機に発砲でもする度胸があるならば、それは戦争挑発を意味し、解放軍は直ちに台湾の軍事力を殲滅し、武力統一を実現する。
 アメリカは今や台湾を対中戦略における圧力行使のコマにしており、蔡英文当局もアメリカの対中戦略に寄りかかることによって、台湾海峡情勢に長期的なマイナスの影響を生み出している。我々は、アメリカのこのコマを打ち倒し、台湾当局に対して根本的な懲戒を与えなければならない。民進党は「九二共識」を拒絶し、アメリカにしがみついていれば安全に「台湾独立」を実現できると考えており、深刻な教訓がない限り、悔い改めることはあり得ない。
 解放軍機が台湾上空で巡航するとき、それに伴うリスクは中国大陸だけではなく、それ以上に台湾軍及び民進党当局であり、アメリカにとってもそうである。それは意志の勝負であり、実力の検証でもある。大陸としては、格好の時期を探してこの決定を宣告し、解放軍機による台湾島上空への最初の飛来を行うべきである。格好の時期としては、米軍機が台湾に着陸する証拠をつかんだときでもいいし、アメリカのハイレベル当局者が訪台するときなどでもいい。そういう時に大陸軍機が主権を明らかにすることは極めて筋が通ったことであるし、より多くの国際世論の理解も得られるだろう。狭い道でぶつかるときは勇者の勝ちだ。民進党当局は一押しするだけで崩れるたわらである。民進党の増長・のさばりを叩きのめすことで、民進党当局の行動に対して規制を加えることができる。和平統一は軍事懲罰を根本的な制約とすることによって推進しなければならず、麗しいビジョンで引きつけることはできない。極めて不幸なことだが、台湾海峡の現実は再度この道理を証明している。