中南米及びアフリカでも新コロナ・ウィルスが蔓延して歯止めがかからない状況ですが、ウルグアイ(南米)とルワンダ(アフリカ)は国内における蔓延を抑え込んでおり、優等生と賞賛されています。8月12日現在の感染者数と死亡者数は、ウルグアイ(人口345万人、1人当たりGNI17380ドル)がそれぞれ1393人と37人、ルワンダ(人口1230万人、1人当たりGNI780ドル)が2171人と7人です。ウルグアイに関しては7月21日のフォリン・ポリシーWSが成功している背景を説明するリポートを掲載しています。また、ルワンダについては、8月13日の新華網が報道しました。この2カ国の取り組みは、日本の暗澹たる状況の原因・理由を考える上で大いに参考となると思うので紹介します。ちなみに、日本人1人当たり国民総所得(GNI)は41310ドルです。
<ウルグアイ>
 フォリン・ポリシーWSは7月21日、M.コスタベル(ウルグアイ在住フリーランス・ライター)署名文章「ラテン・アメリカでまれなパンデミック勝者・ウルグアイ」を掲載しました。この文章で紹介されている感染者数は1054人、死亡者数は33人です。グーグルが載せている8月12日現在の数字がそれぞれ1393人と37人ですので、基本的状況には変化がないと思われますので、この文章の参考となる箇所を整理して紹介します。
○ウルグアイの成功は以下の要因によっている。
-幅広いPCR検査の実施(浅井注:厚労省医療技官主導の日本の取り組みにおける致命的欠陥)。3月13日に最初の感染者が発見されてから、ウルグアイのPCR検査数(対人口比)は世界トップクラスであり、症状がないものでも検査を受けることができる。また、人口が350万人弱であることが幸いして、接触者追跡を速やかに行うことが可能であり、的を絞ったランダムなPCR検査を効果的に行うことができる。特に、建設労働者、配達人、運送人などの感染を広げやすい特定グループを狙い撃ちして検査を行い、また、健康な幼児から老人を含めた感染弱者に対して積極的な予防的措置が講じられている。
-長年にわたって築き上げてきた制度的強み(浅井注:新自由主義医療改革と無縁)。ウルグアイはラテン・アメリカで貧困者がもっとも少なく、かつ、水・電気・インターネットなどの基本的サービスが国民全部に完全に行き渡り、国家的に統合された医療システムも確立している。長年にわたって科学及び教育に重点的投資が行われてきたことを基盤として、コロナの脅威が顕在化する前から検査キットの生産を開始することができた(検査キットはアルゼンチン、チリ、パラグアイに輸出されるほど余力があり、隣接するブラジルの人々の検査も行っている)。
-事前の周到な準備(浅井注:現存医療体制を守ることしかなかった安倍政権の最大の問題)。2月末までには医療体制がコロナに対応するシステムを整えていた。つまり、公私のヘルス・センターの機能強化が行われ、3月初にはICUにおけるベッド数増加及び人工呼吸器をはじめとする機材増強が決定された。
-国民の自覚的・自発的協力(浅井注:「お上」のいうことには素直に従うけれども、少しでも監視が弱まるとエゴ丸出しになる日本人)。ソーシャル・ディスタンスなどの措置は国民の自発的協力で完璧に行われている。個人の権利の尊重はウルグアイにおける基本であり、ほかの国々におけるような強制的ロック・ダウンはまったく行われていない。10年前から開始された子供たちへのタブレット提供計画(Ceibal Plan)と年配者へのタブレット提供計画(Ibirapitá Plan)により、これらの年代の人々は、自発的隔離をしながらも情報を充分に受けることができる。
○経済:国家のGDPの9%を占める観光業(10万人を雇用)は打撃を受けているが、もう一つの輸出向け重要産業である農業はほとんど影響を受けていない。
<ルワンダ>
 8月13日の新華網は「ルワンダのコロナ対策 「いいね」したテドロスの含蓄」と題する記事を掲載しました。この記事はまとまっていますので、大要翻訳して紹介します。

 世界の感染者数は先ほど2000万人を突破した。この厳粛な事実は、コロナはまだ猛威を振るっており、防疫コントロール強化が待たれることを警告している。この背景のもと、東アフリカのルワンダがコロナを効果的に抑え込んでおり、WHOのテドロス事務局長がルワンダのやり方に盛んに「いいね」を発している。
 ルワンダ衛生部は11日夜、全国のコロナ発症者が2171人、治癒者1478人、死亡7人と報告した。ルワンダの発病率及び死亡率はともに、世界平均水準を大きく下回っている。テドロスがルワンダの取り組みの成功を評価しているということは、次の点を積極的に世界に発信しようとしていることを意味している。すなわち、防疫を重視し、厳密な組織的取り組みを行い、それを着実に実行すれば、コロナとの闘いにおいて、風下に追い込まれないようにすることができる、ということだ。
 政府の強力かつ効果的な指導力(浅井注:安倍政権と比較せよ)こそ、ルワンダの防疫コントロール成功の重要な保障である。3月14日に発症者第1号が報告されるやいなや、ルワンダのカガメ大統領はすぐさま国民に向かって演説し、防疫の意識を高めることを呼びかけた。一週間後には厳格な「封鎖」措置を宣言し、国境を閉鎖し、人々に家に留まることを求め、地域をまたいだ旅行を禁止するなど、アフリカでもっとも早く「封鎖」を宣言した国の一つとなった。政府はさらに大統領が指導する国家特別工作チームを作り、各領域のエキスパート400人以上で組織する全国指揮センターとなった。
 科学尊重と厳格な防疫コントロール(浅井注:日本にもっとも欠けている要素)は、ルワンダが効果的にコロナ伝播を抑え込むカギである。ルワンダは、WHOが推奨する防疫コントロールと治療措置を厳格に実施し、全国コロナ防疫コントロール・システムを構築し、検査、追跡及び隔離を実行し、ソーシャル・ディスタンスを実行し、手洗いとマスク着用などの措置を取り、特定地点を対象とする大規模な検査を展開し、国際航空便で到着する旅客に対して強制的に検査する等を実行した。国家からコミュニティに至るまで、ルワンダは明確な指導方針を定めるとともに、メディアを通じて強力に宣伝普及した。政府はまた宗教指導者とも協力し、宗教活動の中でもコロナ防疫コントロール措置を紹介した。
 必要時にあっては政府は財政投入を拡大し、コロナの防疫コントロールが成功することを保障した(浅井注:これまた安倍政権にもっとも欠けているもの)。ルワンダ政府はコロナ流行初期に7300万ドルの専用予算を編成し、コロナ検査実験室設置、検査及び病人治療、濃厚接触者を追跡し、隔離することに充てた。ルワンダのPCR検査能力は、当初は一日当たり300~400人だったが、今では4000~5000人になっている。国際便入国旅客を除き、国内で行う強制的検査と治療はすべて無料である。
 新技術手段の運用は、ルワンダの防疫コントロールに対して有力な支えを提供し、コロナが経済民生に対して及ぼす影響を最小限にとどめた(浅井注:日本は相変わらずコピー機頼りの大福帳!)。首都国際飛行場では、一台のロボットが到着ロビーをくまなく動き回り、旅客の体温をチェックしている。全国「封鎖」期間中、ドローンを利用して防疫規則を放送し、また、スピーカーを搭載した車やバイクがルワンダ市街を巡回して防疫上の注意事項を放送して回っている。この間もe-コマースは運営を続け、ネットによるビデオ会議を行うことで接触の機会を減らし、経済活力を維持してきている。ルワンダはアリババと共同でeWTP(電子世界貿易プラットホーム)を建設しており、コーヒーなどのルワンダ特産品は支障なく中国に輸出されている。
 どんなに有能なものも手助けは必要だ。中国を含む国際社会はルワンダに強力かつ有効な防疫コントロールのための支援を行っている。中国浙江大学付属病院の11人の専門家は、ビデオ対話形式でルワンダの政府関係者、医療関係者と経験を交流している。中国政府、民間機構及び企業もルワンダに大量のマスク、体温測定器、防護服等の急用防疫物資を送っている。