緊急事態宣言が解除されたとはいえ、東京を中心にだらだらと感染者の発生(その多くが感染経路不明)が続き、北九州市では「第2波」ともされる感染者の急増が突発するなど、「医療崩壊阻止を至上課題とし、PCR検査対象をミニマムに絞り込む」、つまりは「人命は二の次」という、世界でも日本だけのコロナ対策を取ってきたツケが突きつけられています。米欧(急増中の中南米諸国)のようなスキンシップの習慣がないことプラスいくつかの偶然的要因の働きで、米欧諸国のような感染の大爆発が起こっていないのは「不幸中の幸い」ですが、「結果オーライ」で有頂天になり、「日本モデル」(安倍晋三)とか「日本人の民度の高さを示すもの」(麻生太郎)とかいってはしゃぎ、自惚れるのは、自らのバカさ加減、低能ぶりを露呈する以外の何ものでもありません。
 毎日二桁台の感染者が報告される東京では、新宿歌舞伎町を中心とする「夜の繁華街」関係者が多いと、テレビは「馬鹿の一つ覚え」を繰り返しています。重要なことは、ここまでハッキリした特徴があるのであれば、諸外国では当然のごとく「歌舞伎町に出入りする人たちを徹底的、網羅的にPCR検査する」という対応策がとられます。ところが、このごくごく当たり前の対策を取るという声が政府からも東京都からも出てこないのです。そのことには誰も言及しない、そこに日本の問題があるのです(マス・メディアを含む、「お上」の言うがままに動く国民性)。
 例えば、感染者が急増しているシンガポール・湾岸諸国では、そのほとんどが外国人労働者です。彼らが集団で住むアパート群が感染源なのです。したがって、シンガポール・湾岸諸国では外国人労働者を対象とした虱潰しのPCR検査を行っています。また、インド、南アフリカ、ブラジル等ではスラム街が感染者大量発生の源ですが、これら諸国はシャカリキでスラム街住民のPCR検査を行っています。ロシアも感染者急増ですが、ロシアではすでに1000万人にPCR検査を実施しているという報道が最近ありました。アメリカも同様です(バカなトランプは「検査をしっかりやっている」と自慢していますが)。
 都市封鎖第1号となった中国の武漢市では、無症状感染者を洗い出し、コロナ再発を未然防止することを目的として、5月14日から6月1日までの間、6歳以下を除く武漢市民全員を対象(検査実数は989万9828人)としたPCR検査を行いました。その結果は、無症状感染者300人(検出率0.303人/万人)、要追跡濃厚接触者1174人(全員隔離・経過観察)という、関係者も驚く素晴らしい結果だったとされます。武漢市の場合、この検査に要する費用(9億元)は武漢市政府及び区政府が負担しました(住民負担ゼロ)。一日当たり検査能力は最高で100万人を突破、検査に当たっては、全国から資源を調達するほか、複数人をまとめて検査(陽性反応が出た場合は全員を対象とする個別再検査を実施)するなどの新手段採用が行われました。
また、寧波(検査:41.1万人)、杭州(同40.1万人)、温州(同31.2万人)などの大都市を抱える浙江省では、「検査すべきものは全員検査する、検査を望むものは全員検査する」に基づき、4月8日から6月1日にかけて、重点地区、重点対象者の217万人に対するPCR検査を実施しました。その結果、医療関係者76.7万名の全員が陰性、通院患者及び入院患者(1日当たり6.1万人検査)は全員陰性、入院患者付添人全員に対する検査結果では無症状感染者1人だったそうです。浙江省では258の医療衛生機関がPCR検査能力を有し、一日当たりの検査能力は26万人だそうです。このほか、浙江省は湖北、黒竜江、内蒙古、広東、吉林などリスクが比較的高い都市からの訪問者(最近PCR検査を受けていないものに限定)全員にPCR検査を実施しています。これまでで無症状感染者12人、再度陽性者1人であり、全員を隔離し、経過観察にして感染抑え込みに成功していると報告されています。
 6月2日の人民日報クライアント端末・湖北チャンネルの記事は、武漢での集中PCR検査の意義を次のように紹介しています。PCR検査に消極的な日本の取り組みの問題点を理解する上で有意義だと思いますので、大要を紹介します。

 武漢の全民検査は、コロナ防疫コントロールが常態化する背景のもとで重要な意義がある。武漢は4月8日に都市封鎖が解除されたとはいえ、「無症状感染者」の存在(という可能性)のため、人々の不安は完全にはなくなっていない。そういう不安や無症状感染者と「たまたまぶつかってしまう」心配から、武漢の人たちは、地下鉄に乗っても、バスに乗っても、マーケットに行っても、レストランに行っても、心理的な圧迫感があり、消費活動は活発にならない。またほかの省では、無症状感染者が潜伏しているのではないかという心配から、武漢からの来訪者に対して警戒心があり、それは武漢出身者にとって、求職、商売、観光旅行などで「隠れた障害」となって働く。全人代においても、湖北代表はこの問題について全国に解決のための協力を求めた。
 全人代開催期間中、習近平は湖北代表団との会合において、「湖北が直面する緊要課題はコロナ防疫コントロールと経済社会発展工作とを全力で統括することだ」と述べた。どうしたら統括できるか。コロナ防疫コントロールを成功させ、人々の自信と信頼を回復することによってのみ、湖北の経済社会発展を「正常軌道」に戻すことができる。自信と信頼はどこから来るか。アピールするだけではなく、科学に頼るべきであり、事実に基づいて話を進めることだ。武漢が全民PCR検査を実行したのは科学的に実証し、自らが「安全」であることを証明し、武漢の人々及び全国の人々に安心してもらうことだった。
 武漢の全民検査はすべての無症状感染者を「あぶり出し」、必要なものについては隔離して治療を受けさせた。また、武漢の無症状感染者の数、割合、伝染性の高低について正確なビッグデータも提供した。大規模検査の結果は専門家の予想をも上回るものだった。中国感染症予防コントロールセンター副主任の馮子健は、「PCR検査の「分母」が増えたのに無症状感染者の「分子」は縮小した。ということは、コロナ感染の可能性はますます小さくなったということだ」と述べている。
 科学的な検査の結果、武漢の人々の自信と信頼が急速に回復している。6月1日の児童節に際しては、多くの人たちが子供を連れて繰り出し、買い物し、レストランで食事をした。後顧の憂いが少なくなったのだ。湖北省及び武漢市にとっては、全民検査によってコロナに対する不安を消し去り、コロナに対する決定的勝利に確固とした基礎を築き、消費を刺激し、経済を回復するための条件を作り出すことができた。全国レベルでいえば、全民検査は全国的なコロナ防疫コントロール及び経済発展に自信と信頼を注入するものである。
 武漢の全民検査は中国のスピリット、パワー、そして効率を再び示すものともなった。コミュニティの基層組織を動員し、990万人をブロック毎、アパート毎、時間別というように順序だって検査したということは強大な動員能力を示すものだ。同時に、検査方法においても、一人毎の検査を主とし、複数検査を従とした。複数検査では5人を限度として併せて検査する方法もとられた。