日本の新コロナ・ウィルス対策批判(韓国メディア)

2020.04.25.

4月24日付けの韓国・中央日報日本語WSは、「検査を増やすことは脇に置いたまま他のことに熱心」な安倍政権の新コロナ・ウィルス対策がいまや手のつけられない惨状を招くに至った原因であることを鋭く指摘した、極めて刺激的なタイトル「バカか、問題は検査だ」をつけた東京特派員・ユン・ソルヨンの記事を掲載しています。私がこのコラムで指摘してきたことと軌を一にするものです。
 この記事で紹介している、「検査をしないため感染者が増え、そのせいで重症患者が増えて死亡者が増えるのが医療崩壊」と指摘した群星沖縄臨床研修センターの徳田安春氏は、ネットで検索したところ、「救急とプライマリケア診療が日本の中で最も充実している「教育に熱い」沖縄において、初期研修プログラムをさらに充実させるためにできた、民間教育病院アライアンスのプロジェクト」である群星沖縄臨床研修センターのセンター長を務めており、医療界では全国区クラスの人のようです。恥ずかしながら、私は知りませんでした。
 他方、「初期重症患者中心の検査方針は今では間違っている。直ちに検査拡大を進めなければならない」と主張した、と紹介されている東京都医師会の尾崎治夫会長の発言は重大です。「初期重症患者中心の検査方針は今では間違っている」ということは、いままでは正しかったというのが言外の意味であることはすぐ分かります。この期に及んでもなお、自らの重大な責任を率直に認めようとしない破廉恥さには呆れ返ります。御用学者はどこまでも御用学者だと、つくづく思い知らされます。
 韓国における昨日の新たな感染者はわずか6人でした。ハンギョレ日本語WSによれば、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者数の減少により、感染症専門病床の相当数が空いていることから、政府は一部を段階的に一般病床に転換することにした。各地域の医療サービスの中枢たる国公立病院では、COVID-19以外の患者も今より気軽に利用する余裕が生まれることとなった。政府はウイルスが再び流行する可能性を念頭に置き、危機に際しては病床を速やかに再確保する計画を各市・道と話し合っている。」という余裕が生まれています。文在寅大統領の支持率が62%と、1年6ヶ月ぶりに60%台を回復したそうですが、さもありなんです。
 同じ24日付けの朝鮮日報日本語WSは、「日本の医療システムの「堤防」崩壊」と題する東京特派員・李河遠(イ・ハウォン)の記事を掲載しています。人口10万人当たりのICU病床数が、アメリカ35床、ドイツ30床、フランスとイタリアが12床、スペインでも10床なのに、日本はわずか5床であることを示す図がついています。厚生労働省と御用学者たちは、この貧弱なICU体制を前提にし、これを守るために、検査を抑え込んできたことが分かろうというものです。
 安倍政権、厚労省、御用学者には、怒りで頭に血が上ります。

<中央日報:「【グローバルアイ】バカか、問題は検査だ」>
ある女性がキムチの漬け込み用のポリ袋で防護服を作る。ダンボール箱で型紙を作り、隙間をドライヤーで加熱するとビニールが溶けてくっつく。はさみで切って形を整えて被れば防護服になる。大阪の病院職員が3日間で4000枚を作ったという。この状況には腹が立つはずなのに、「医療用として使える」と言って笑顔だ。諦念も混ざっているかもしれないが、不条理劇のような不思議な光景だ。
医療現場では「医療崩壊が始まった」と訴えている。医療装備、人材不足が限界に至った。東京では少なくとも病院13カ所で感染が確認され、正常な診療が停止した。日本第一のがん病院では手術の8割を中断することにした。大阪も3次、4次医療機関がシャットダウンされた。日本医師会会長は「緊急を要しない手術の延期」を厚生労働省に要請した状態だ。
東京の56歳の男性は新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)が疑われて何度も保健所に電話したが、6日目にようやく検査が受けられた。だが、検査結果を受ける前に自宅で1人で孤独死した。この50代男性は病床の空きが出るのを待ちながら自宅で亡くなった。
これらの諸々の事態は新型コロナ検査を消極的に行ったことに帰結される。群星沖縄臨床研修センターの徳田安春氏は中央日報のインタビューに「検査をしないため感染者が増え、そのせいで重症患者が増えて死亡者が増えるのが医療崩壊」と指摘した。徳田氏は「日本の感染者は公式に確認されているものより12倍多い」と推算する。東京都医師会の尾崎治夫会長もインタビューで「初期重症患者中心の検査方針は今では間違っている。直ちに検査拡大を進めなければならない」と主張した。
それでも日本政府は検査を増やすことは脇に置いたまま他のことに熱心だ。穴の中に頭を深く突っ込むダチョウのように、問題の原因を直視しないでいる。いまだに問題はないという立場だ。官房長官は「医師が必要だと判断すれば検査をする方針には変わりなく、患者が増えても同様」(4月20日記者会見)と話した。検査は国立感染症研究所が掌握しているが、今はいっそ医療スタッフの責任にして手を引くような様子だ。
そうしながらも「人と人との接触を8割削減してほしい」という言葉だけをうんざりするほど繰り返している。新型コロナが落ち着かなければ、8割削減することができなかった国民の、都市封鎖ができない法システムのせいにするのではないか懸念される。
2011年東日本大震災の時、災害に対処する政府の無能力が白日の下に晒された。新型コロナ事態は政府が国民の健康を守る能力があるかどうかを問うている。右往左往、責任回避で一貫する姿勢に失望だけが大きくなりつつある。
<朝鮮日報:「日本の医療システムの「堤防」崩壊」>
 東京都の北にある埼玉県で50代の男性が21日、自宅で新型コロナウイルス感染症により死亡した。この男性は16日に陽性判定を受けたが、病床不足で入院できなかった。保健所はこの男性を軽症患者と判断、入院せずに自宅にとどまらせた。死亡前日、この男性は保健所側に状態の悪化を訴えたが、入院措置は取られなかった。埼玉県では14日にも70代の感染者が同じ理由で自宅隔離中に死亡した。 23日現在、埼玉県では感染者726人のうち、約半数が入院できずに自宅で療養している。
 こうした現象は埼玉県だけの問題ではない。東京都(3439人)、大阪(1380人)をはじめ、患者数が500人を超えた7つの自治体では、病床不足で自宅療養を要請したり、ホテルを借りて軽症患者を収容したりしている。
 今月に入って毎日新型コロナウイルス感染者400-500人が発生している日本では、医療施設や機器の不足で「医療崩壊」が現実のものになっているのではないかとの懸念が高まっている。
 何よりも新型コロナウイルス重症者を治療する集中治療室(ICU)のベッド数が大幅に不足している。日本全国で5709床に過ぎない。日本経済新聞によると、ドイツは人口10万人当たりのICU病床数が約30床だが、日本は5床だけだという。専門医も多くない。日本集中治療医学会が認定した集中治療専門医は1820人だけなので、医師の負担がますます大きくなっているとのことだ。
 このような状況では新型コロナウイルス患者を治療しなければならない医師たちに対して、医療用マスク、ガウン、ゴーグルなどの防護用品が適時に供給されず、不安が募っている。先月、医療用ガウンの代わりにゴミ袋をまとって治療に当たり、新型コロナウイルス感染症で死亡した米ニューヨークの男性看護師の事例があったが、それは日本でも起こり得る、と毎日新聞では23日、特集記事を通じて報道した。
 都内の病院のICUで新型コロナウイルス患者を担当する30代の女性看護師によると、最近関連患者が急増しているが、目・鼻・口を同時に覆って感染を防ぐことができるフェイスシールドの供給がなくなったという。一度使ったら捨てなければならない医療用ガウンは複数の医療従事者で使い回しされている。感染症治療では、1人の患者に接するたびに防護具を廃棄するのが原則だが、医療用マスクも数日に1回支給されるため、再利用しているという。この看護師は「今日は無事に終わったけど、明日はどうなるのか…」と言葉を濁した。
 毎日新聞は「若い医療スタッフから『この対策で(自分たちも)本当に感染していないのか』『いつまで(医療用品の)在庫が持つのか』と不安の声が上がっている」「男性勤務医は『(医療用品が)不足し始めたのは3月下旬。地獄が始まる予感がした。普段の医療が提供できず、既に(医療システムが)崩壊している』とうなだれた」と伝えた。
 また、NHKがこのほど、新型コロナウイルス感染症の患者と関連医療機関75カ所に手術用マスクの交換頻度を尋ねたところ、12カ所がマスク1枚を四日以上使用すると答えたという。23カ所は2-3日だとのことだ。病院の約半数がマスクを一日以上使用しているということだ。
 日本はこれまで、医療用マスクやガウンなどを中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国から輸入してきたが、新型コロナウイルス問題で医療用品の供給が円滑に行かなくなり、日本にも大きな影響を及ぼしている。安倍首相は11日、医療用ガウン100万着を一括で買い取り配布すると表明したが、まだ実現していない。日本政府はこれまで経済活性化にばかり集中してきたあまり、パンデミック(感染症の世界的流行)の予防措置はおろそかだったと指摘されている。医療機器を再利用するよう指示を下すのが安倍内閣の医療政策のすべてだ、という冷笑も聞こえてくる。