新型コロナ・ウィルス対策(安倍政権の対応)

2020.03.13.

今朝(3月13日)のNHKニュースで、トランプ大統領が東京五輪を1年延長する方がいいと発言したことを報道していました。3月12日付けの韓国中央日報日本語版WSは、「五輪=予定通りという安倍氏、水面下では1年延期案を検討中」と題する記事を載せ、日経新聞の報道に基づいて安倍首相がトランプ大統領とも相談しながら、1年延長案を検討している様子を報じています。トランプ発言は日本側との意思疎通の上であることを窺わせます。
 また、同じく12日付けのハンギョレ日本語版WSは、日本政府が設置した新型コロナウイルス(COVID-19)専門家会議のメンバーである押谷仁・東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授に対してチョ・ギウォン東京特派員が行ったインタビュー記事を掲載しました。①「韓国と中国から感染者が流入する確率は極めて低いため、公衆衛生学では今必要な対策ではないと、個人的に私は考えている」、②「新型コロナウイルスにも弱点があり、実は80%以上の人は誰にもウイルスを感染させない。ただし、一人の感染者が多くの人に感染させる事例がある。…今、日本は持ちこたえているが、これからどうなるかは微妙だ」、③「新型インフルエンザの場合には早期に一斉休校をすればきわめて效果がある。しかし、今回は違う。…一斉休校にどこまで效果があるのかという疑問がある。感染拡大を阻止する劇的な効果はないと思う」等の発言は、安倍首相の諸決定が独断専行であり、専門家の見解の裏付けがないことをハッキリ示しています。こういう専門家の発言が日本のメディアには出ているのでしょうか。
 また同日付のハンギョレは、さいたま市が、「転売の可能性がある」という理由で管内マスク配布対象から朝鮮幼稚園を除外する決定を行った(朝鮮幼稚園側の抗議に謝罪)という、あきれてものも言えないことが起こっていることも伝えています。
 また、同じく12日付けの新華網は、「日本の診断数が低いのはなぜか」という新華社記者・華義署名分析記事を掲載しています。この記事は、日本の専門家の発言として①日本は医療機構の負担軽減と日本社会へのショック軽減のためにコロナ検査の「敷居」を高くしている、②診断数が低いのはそのためで、実際はもっと多いはずだ、③「検査が難しい」のは日本政府の基本方針に合致している(政府は医療機関の負担を増やしたくなく、また、検査に伴う感染増加を嫌っている)④患者の80%以上は軽症で自然になおるし医者にかかっても特効薬はない、⑤日本は小家族が多いから若者から老人に移る可能性は低く、軽症者が家で静かにしているのが現実的だ、等の諸点を挙げています。
 私も、日本の診断数が低いのは検査の「敷居」を高くしている結果であり、実際ははるかに多いだろうと思います。「クラスター」を強調するのも検査網の未確立(韓国等の諸外国と比べた場合の著しい立ち後れ)が批判されないようにするための小手先細工ではないかと邪推したくなります。しかし検査の「敷居」を高くすることは、コロナを移しやすい、活発に行動する若者を検査対象から除外することを意味するものです。診断数を低めに誘導する安倍政権のアプローチは逆に感染者を増やす結果になるだけではないでしょうか。このような対応が続く限り、オリンピック開催までに事態を収束させることは不可能でしょう。安倍首相もそれが分かっているので、トランプと自分たちに都合の良い「1年延長」を話し合っているのだと思います。こうした低次元の考慮で物事が動かされるのはたまったものではありません。しかし、日本のメディアは相変わらず「大騒ぎの傍観」(野次馬)を決め込んでいます。
 以下に韓国メディアの報道を紹介しておきます。

<中央日報「五輪=予定通りという安倍氏、水面下では1年延期案を検討中」>
対外的には「新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)拡散にもオリンピック(五輪)は予定通り開催する」という立場を維持している日本政府内で「米国との意見調整を通した1年延期」案が提起されていると日本経済新聞が12日、報じた。
日経は「予定通りの開催が難しければ、首相とトランプ米大統領の関係を生かし、米国にも都合のよい1年延期案を共同提案したらどうかとの案も出ている」と伝えた。
最近、国際オリンピック委員会(IOC)内部でも「21年の同じ時期に延期するのは理論上は可能だ」という話が出た。
今年秋以後への延期や2年延期ではなくなぜ1年延期なのか。
2013年IOCと東京都・日本オリンピック委員会(JOC)が締結した開催都市契約には開催延期に対する直接的な規定はない。
「20年中に開催されない場合」はIOCが中止を判断できる、という規定だけがある。
この規定のために「開催都市契約は20年内の開催を前提としている。したがって20年内なら延期が可能だ」というのが一般的な解釈だった。
すなわち1年延長の場合、IOCと東京都が締結した契約に抵触する可能性があるにもかかわらず、日本政府内からこのような主張が出てきている背景には、五輪中継権料の「大きな損失」の米国内事情、中継権収入に対するIOCの立場、安倍首相の任期などが総合的に考慮されたという分析だ。
日経は「秋以降になると米プロフットボールNFLなど人気スポーツのイベントと重なる」とし「16年リオ五輪関連で得た収入51億ドルのうち放映権収入が約7割を占めており、人気スポーツと競合すれば収入減につながりかねない」とした。
巨額の中継権料を支払う米国の放送会社が五輪から背を向ける状況をIOCが懸念するほかはないということだ。
安倍首相の任期が2021年9月までという点は日本の立場では変数になりうる。「五輪成功開催を動力に今年8月以降は任期満了までの期間中に適当な時点に衆議院を解散し、総選挙をして国政の求心力を握る。その後、絶対的な影響力を維持したまま思い通りになる後継者に首相の席を譲る」というのが安倍首相が描く任期末のシナリオだった。
安倍首相と自民党にとっては、どうしても安倍首相の任期内にオリンピックを行う必要がある。
そのような延長線上で1年延期案、それも米国トランプ大統領を動かして米国と日本がこれを共同で提案する案が日本政府内で検討されているということだ。(以下省略)
<ハンギョレ「日本の韓中からの入国制限は、公衆衛生学的には必要な措置ではない」>
 日本政府が設置した新型コロナウイルス(COVID-19)専門家会議のメンバーである押谷仁・東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授は10日、感染拡散防止のための国際協力を強調した。また、韓国と中国から来る人々に対する日本政府の入国制限については、「専門家会議で議論したことはない」と話した。以下は一問一答。
-現在の日本の状況をどう判断するか。
=クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を除いては、大きな感染の拡大はない。北海道の札幌市が一時危険だったが持ちこたえており、東京、神奈川、大阪でも危険な兆候は見られるが持ちこたえている。
-ウィルスが夏になると弱まる可能性はあるか
=そうではない。短期的には弱まらない。最初は中国だけで感染者が各地で出た。今は中国が感染を效果的にコントロールしていて感染者が外に出ない。しかし、今は感染者が東南アジアや中東にもいる。急速に世界に感染が拡大している。中国以外の地域から感染者が流入する可能性もある。東南アジアと関係が深い韓国や日本は、短期的にはとても難しい状況になると思う。
-東京五輪は予定通り開催できるか
=世界がどうなるかにかかっている。すぐ収拾されることはないと思う。アフリカで今後流行がありうる。アフリカできわめて大きな流行が起きれば、五輪はできないだろう。日本国内の流行を抑制したからといって五輪ができるわけではない。世界的に急速に拡散する状況になり、世界のどこかの地域が五輪に参加できないとなれば、五輪を開催するのは難しいのではないか。
-新型コロナウイルスと普通のインフルエンザを比較すれば
=普通のインフルエンザとは比較にならないほど危険なウイルスだ。普通のインフルエンザは、ウイルスそのものは人を殺さない。高齢者が細菌性肺炎になったり心筋梗塞を起こしたりするインフルエンザ関連死で人が死ぬ。しかし、このウイルスはウイルス自体が人を殺す。高齢者にとって非常に危険なウイルスだ。また、インフルエンザにかかれば、概ね80~90代で死亡者が出る。しかし、新型コロナウイルスは、80代、90代だけではない。50、60、70代でも死亡する場合がある。季節性インフルエンザにはあまりないケースだ。
-韓国と中国に対する入国制限措置についてどう思うか。
=私は専門家会議のメンバーだが、韓国と中国からの入国制限は我々が推奨したことではない。(新型コロナウイルスは)世界に広がった。東南アジアに広がり、米国も危ないと言われている。一体どこまで(入国制限を)するのか。米国に感染が拡大すれば、米国からの入国を制限するのか。そうするには方法は鎖国しかない。これをするというオプションはもちろんあるが、きわめて大きな経済的損失が起きる。非常に厳しい状況にアグレッシブな対応をしなければならない状況もありうるが、今はそのような状況ではない。韓国と中国から感染者が流入する確率は極めて低いため、公衆衛生学では今必要な対策ではないと、個人的に私は考えている。
-菅義偉官房長官は、専門家会議を経ていないと認めた。専門家会議で議論はしたのか。
=議論されたことはない。(政府が専門家会議に)聞いたこともない。
-SARSとは異なり、感染の封じ込めは難しいという見解と理解しているが
=SARSのような封じ込めは現在不可能だ。しかし、新型コロナウイルスにも弱点があり、実は80%以上の人は誰にもウイルスを感染させない。ただし、一人の感染者が多くの人に感染させる事例がある。そうした例が、韓国のある宗教集団や大阪のライブハウスだ。我々はこれを(感染)クラスターと呼ぶ。今、日本は持ちこたえているが、これからどうなるかは微妙だ。
-水際対策だけを強調しない方が良いのか
=水際対策も重要だ。しかし、感染事例が一つ出たからといって騒ぎ立てずに、クラスターを作らないようにすることが重要だ。クラスターは密閉性の高い、ライブハウスや屋形船パーティーなどで起きやすい。
-日本政府が取った小中高校の休校に効果があるか
=新型インフルエンザや季節性インフルエンザでは、子どもたちが感染を拡散させる。子どもたちが感染してから、地域に広がる傾向がある。そのため、新型インフルエンザの場合には早期に一斉休校をすればきわめて效果がある。しかし、今回は違う。今回は子どもが大人から主に感染したケースだ。学校閉鎖での感染阻止は不可能だ。子どもたちの感染を減らす機会にはなるだろう。しかし、子どもたちはほとんどが重症にはならない。こうした点を考えれば、一斉休校にどこまで效果があるのかという疑問がある。感染拡大を阻止する劇的な効果はないと思う。
-国際的な取り組みはどうすれば良いか。
=まだわからないことがとても多い。皆で情報を共有し、このウイルスとどう効果的に戦うかを考えなければならない。先行して経験した中国から学ぶべき点がある。韓国と日本は医療体制が似ている。韓国では一つの宗教集団から広がった事件がある。日本もそうなるかもしれない。こうした場合にどうするか、日本が韓国から学ばなければならない。韓国も日本が持ちこたえている点が参考になるだろう。だから、政治的対立をしている場合ではない。皆で情報を共有し、どのように対処するかを考えるべきだ。
-日本のウイルス検査件数が足りないという批判があるが。
=どこまでどのように検査するかは微妙だ。日本は当初、韓国に比べて検査のキャパシティーが大幅に不足していた。今は拡充されている。とはいえ、風邪気味だからといって皆がウイルス検査を行うことは、どこの国でも不可能だ。戦略的に考えてみる必要がある。
<ハンギョレ「日本の自治体、管内マスク配布対象から朝鮮幼稚園を除外」>
 日本の地方自治体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、マスクを配布する際、朝鮮学幼稚園を除外し、関係者たちが抗議に出た。
 在日本朝鮮人総聯合会(総聯)の機関紙「朝鮮新報」によると、埼玉県さいたま市は、備蓄していたマスク24万枚をさいたま市内の保育所(保育園)や幼稚園、放課後児童クラブ、高齢者施設に勤務する職員向けに配布する計画を立てたものの、「埼玉朝鮮幼稚園のほか民間の塾」を対象から外した。10日、この事実を知った埼玉朝鮮幼稚園の園長が市に問い合わせたところ、市の担当職員が「(朝鮮幼稚園は)さいたま市の指導監督施設に該当しないため、マスクが不適切に使われた場合、指導できない」と説明したと、同紙は報じた。これに対し、朝鮮幼稚園関係者らが11日、市庁舎を訪問して抗議した。朝鮮幼稚園関係者らは「人権上、そして人道上、到底看過できない。許し難い行動だ」と抗議したと、同紙は伝えた。
 日本でもCOVID-19の感染拡大の影響で、マスクの品薄状態が続き、問題になっている。日本政府がマスク2000万枚を一括購入し、高齢者施設や保育園などに配布する計画を発表したほどだ。
 共同通信もさいたま市の職員が朝鮮幼稚園側にマスクを配布すれば「転売されるかもしれない」という趣旨で説明したと報じた。同通信によると、これについて市幹部が11日、朝鮮幼稚園長に「不適切だった」と謝罪したという。同通信はさいたま市幹部がマスク配布対象を再考する考えを示したとも報道した。