グリーンピース・ジャパン報告書『2020福島放射性汚染の拡散:気象影響と再汚染』

2020.03.11.

3月10日付けのハンギョレ日本語版WSは、グリーンピース・ジャパンが9日に東京で記者会見を行い、報告書『2020福島放射性汚染の拡散:気象影響と再汚染』を発表したことを伝えるとともに、福島県の浪江町、飯館村、大熊町などの放射能汚染状況を報道しました。私は、「東京五輪聖火リレーの出発地点で、日本政府が復興の象徴として広報してきたサッカー訓練施設「Jビレッジ」の駐車場では、地表面で測定した時に最大で時間当り71マイクロシーベルトに達する高い放射線量が測定された。これは、福島第1原発の事故以前に福島県一帯の放射線量水準を示す"バックグラウンド数値"(時間当り0.04マイクロシーベルト)の1775倍に達する高線量だ」とする点を含め、発表内容に愕然としました。
 私は、日本のメディアがどのように報じているのかが気になりました。私が定期購読しているのは朝日新聞と赤旗2紙だけですが、両紙の10日付け及び11日付けでは何も報道していません。赤旗は、11日付けで「福島第一原発事故9年」の特集記事(3面)と福島県富岡町の一部避難解除の記事(14面)を掲載していますが、(私は念入りにチェックしたつもりですが)グリーンピースに関する記事は見当たりませんでした。
気になったので、ネットで検索したところ、ヤフー・ニュースの記事だけがヒットしました。ところが、ヤフー・ニュースの記事の中身は私が読んだハンギョレ・日本語の記事と同じ日付の韓国・中央日報(日本語)の記事でした(ちなみに、私が毎日チェックしている韓国・中央日報日本語WSには同記事はなぜか見当たりません)。要するに、日本の主要メディアはグリーンピースの記者会見と報告書の発表について沈黙しているらしいのです。
 グリーンピース・ジャパンが3月9日に記者会見を行ったのは、3月11日の福島第一原発事故をにらんでのことであることは明らかです。日本のメディアが取り上げていないのは、3.11に当たって福島の農漁業者を慮ってのこと(さらには安倍政権に対する忖度あってのこと)でしょう。しかし、それは正しいことでしょうか。隠蔽の上で偽りの「安全」を強調することは「風評被害」とは次元をまったく異にする問題です。現実に、グリーンピースは「環境庁にこの事実を知らせ、福島原子力発電所の運営会社である東京電力が再除染を実施した」わけですから、政府も事実関係を認めていることは明らかです。
 私はかねがね、広島及び長崎に対する原爆投下(放射性物質の発生は投下爆発による一回限り)とは異なり、福島第一原発ではデブリが880トンも残っているので、放射能汚染を「完全除去」することができるはずがないと判断しています。福島に関する政府(大本営)発表の「安全宣言」はまったく信頼できないと思っています。グリーンピースの今回の報告は私の素人判断が間違っていないことを証明するものだと思います。
 私も福島の人々に対する思いでは誰にも負けないつもりです。しかし、政府が為すべきは、デブリを完全に取り除かない限り放射能汚染は長期にわたって続くことを踏まえた政策を行うことだと思います。その政策は、福島の農漁業者の廃農廃漁に対する完全補償、福島県民を含む国民に対する正確な情報提供と納得されうる対策実行の2点を最低限含むものでなければならないと思います。
 私が到底納得できないのは、日本のメディアが「都合の悪い真実から目を背けている」事実です。彼らの沈黙は彼らが政府と同罪であることを意味します。以下にハンギョレ日本語版記事とヤフー・ニュースが転載した中央日報記事を紹介し、私のコラムを訪れてくださる人たちがさらに広く拡散してくださることを期待します。なお、10日付けの韓国聯合ニュースの記事も併せて紹介します。

<ハンギョレ:「福島汚染、台風後に拡散…原発事故以前より1775倍の汚染地点も」>
 昨年の台風"ハギビス"(19号)が福島県を襲った後、放射性汚染物質が周辺地域に多量に漏れ出たと見られるという国際環境団体の調査結果が出てきた。
 グリーンピース・ジャパンは9日、東京で記者会見を行い、福島県の浪江町、飯舘村、大熊町などの放射線量調査に基づく報告書『2020福島放射性汚染の拡散:気象影響と再汚染』を発表した。調査時点は、昨年10月16日から11月5日までで、台風ハギビス(19号)が日本に大きな被害を残した後だった。
 グリーンピースは、雨水が流れたまった場所で、放射線量が周辺地域より数倍高い"ホットスポット"が多数発見されたと明らかにした。例えば、調査チームは福島第1原発から北西側に約30キロメートル離れた菅野みずえ氏の住宅周辺の放射線量を測定したが、水が流れてたまった地点で最大3マイクロシーベルト(μSv)の放射線量が測定された。地表面から1メートルの高さで測定した結果だ。同じ高さを基準として、日本政府の除染目標値が時間当り0.23マイクロシーベルトである点を考慮すれば、目標値の13倍以上の放射線量が測定されたわけだ。
 原子力発電所から約25キロメートル離れた国道周辺では、時間当り最大で7マイクロシーベルトの地点も見つかった。特に、東京五輪聖火リレーの出発地点で、日本政府が復興の象徴として広報してきたサッカー訓練施設「Jビレッジ」の駐車場では、地表面で測定した時に最大で時間当り71マイクロシーベルトに達する高い放射線量が測定された。これは、福島第1原発の事故以前に福島県一帯の放射線量水準を示す"バックグラウンド数値"(時間当り0.04マイクロシーベルト)の1775倍に達する高線量だ。
 グリーンピースは環境庁にこの事実を知らせ、福島原子力発電所の運営会社である東京電力が再除染を実施した。しかし、グリーンピースが東京電力の再除染後に再びJビレッジ周辺を調査したところ、駐車場から若干離れたところで最大時間当り2.6マイクロシーベルト(地表面から高さ10センチ)が測定された。
 グリーンピース日本事務所の鈴木かずえ気候エネルギー分野活動家は「台風など気象による放射能再汚染は数世紀にわたり続くだろう」とし「日本政府が強調する『すべて正常化している』という表現は現実と違う。日本政府は除染作業に失敗した」と批判した。自身の住宅調査に協力した避難民の菅野氏は「山から汚染物質が川に流れる。海に直接流れもする。汚染の広域化は大変なこと」とし「五輪だけに人々の視線を向けさせてはならない」と指摘した。
東京/チョ・ギウォン特派員、パク・ギヨン記者
<中央日報:グリーンピース「福島の放射能制御できていない、日本の五輪開催は'ダメヅマリ'を招く」>
国際環境団体グリーンピースが「放射能の危険を無視したオリンピック(五輪)の開催は日本政府の自充手(囲碁の自らダメヅマリを招く一手)」という立場を9日明らかにした。日本政府が福島原発事故後に行ってきた除染作業に失敗したというのが理由だ。
グリーンピースが2020年の東京五輪開催について正式に否定的な意見を出したのは今回が初めてだ。予定通りなら東京五輪は137日後の7月24日から開催される。
グリーンピースは昨年11~12月に福島の放射能濃度を現地調査した結果をまとめた報告書「2020福島の放射性汚染の拡散-気象の影響と再汚染」で「昨年台風19号(ハギビス)などの気象状況により、除染地域も放射能で再汚染された」とし「日本政府が『すべてが正常化した』という発表は現実とは異なる。日本政府は除染作業に失敗した」と述べた。
グリーンピース東アジアソウル事務所気候エネルギーキャンペーナーのチャン・マリ氏は「事故後9年も経ったが、放射性汚染状況は制御されず、むしろ拡散・再汚染された」とし「放射能の危険を無視した東京五輪の開催は日本政府の自充手になるだろう」と批判した。福島原発の爆発事故は2011年3月11日に発生した。
グリーンピースが昨年11月と12月の2度にわたり福島地域を踏査し、放射能濃度を調査した結果、道路など福島市内中心部でも放射能濃度が高い「ホットスポット」が45カ所発見された。福島市内の新幹線駅の乗車口付近や主要道路でも10カ所以上のホットスポットを発見したとグリーンピースは報告した。
国際原子力機関(IAEA)は、0.3~0.5毎時マイクロシーベルト(放射能測定単位)を超えると「危険」レベルと判断する。福島のホットスポット45カ所はすべて危険レベルを越え、1カ所は基準値の11倍、5.5毎時マイクロシーベルトまで測定された。原発事故前より137倍高い数値だ。
グリーンピースドイツ事務所の原子力専門家、ショーン・バーニー首席研究員は「五輪観覧のために福島を訪問する世界中の人々の安全のために福島の放射能汚染への対策を講じなければならない」と述べた。
26日から始まる聖火リレーの出発地「Jヴィレッジ」で71毎時マイクロシーベルトのホットスポットが見つかった。事故前の正常な状態の1775倍の水準だ。グリーンピースは「この濃度は昨年11月に日本政府が除染作業をした直後の12月に測定した数値で、日本政府の放射性汚染管理が問題だらけだということを示している」と指摘した。
グリーンピースは一度除染作業が行われた場所にも、昨年の台風19号による気象状況で放射性汚染物が広がり再汚染されたとみている。また、台風による再汚染は今後も繰り返される可能性が高いと判断した。
グリーンピース日本事務所気候エネルギーキャンペーナーの鈴木かずえ氏は「気象に起因する放射性再汚染は何世紀にもわたって続くだろう。日本政府が強調する『すべてが正常化』しているという表現は現実とは異なる。日本政府は除染作業に失敗した」と批判した。
グリーンピースは報告書を通じて日本政府にUN特別報告官の日本訪問要請を受け入れ、UN特別報告官の対話提案および指針に協力するよう勧告した。
<聯合ニュース:韓国団体「日本産食品の放射能汚染は今も深刻」>
【ソウル聯合ニュース】韓国の市民団体、市民放射能監視センターと環境運動連合は10日、ソウルで記者会見を開き、「日本産食品の放射能汚染が深刻な水準のまま続いている」と指摘した上で、東京五輪の選手村に放射能に汚染された恐れがある福島県産の食材を供給してはならないと日本政府に促した。
 両団体が厚生労働省の資料を分析し発表した報告書によると、日本政府が昨年検査した37万6696件の農水畜産物のうち6496件から放射性物質のセシウムが検出された。セシウムの検出率は野生肉が44.3%、農産物が17.4%、水産物が7.4%、加工食品が5.0%。
 特に福島県やその近隣など8県の水産物の7.9%からセシウムが検出された。ほかの地域の検出率(0.4%)の約20倍に上る。農産物のセシウム検出率も19.3%とほか地域の2.2倍だった。
 日本政府による2018年の検査での検出率は野生肉が44.6%、農産物が18.1%、水産物が7.0%、加工食品が2.5%だった。
 両団体は「福島県と周辺地域の自然環境の放射能汚染が1年前より大きく改善されていないことを示す結果だ」と指摘した。
 検査対象のうち、基準値(1キロ当たり100ベクレル以下)以上のセシウムが検出された食品の割合は把握されていない。
 両団体は、東京電力福島第1原発事故の真実を隠蔽(いんぺい)し、政治的な広報手段として五輪を活用することは事故収拾の役に立たないとした上で「日本政府は福島県産の食材を五輪選手村に供給する計画を中止すべきだ」と要求した。
 また、福島原発から出る放射性物質を含んだ処理水の海洋放出は取り返しがつかなくなるほど放射能汚染を深刻にさせる危険な行為だと指摘し、日本政府に対し思いとどまるよう求めた。