21世紀の日本と国際社会 浅井基文Webサイト

日中首脳会談における習近平発言

2019.02.26.

12月23日に行われた日中首脳会談における習近平発言は「新時代における中日関係の共同の戦略指針」及び「新時代における中日関係で必ず一貫して堅守するべき根本」を率直に提起した、極めて重要なものです。日中関係はこれまでの困難を克服して新しい軌道に乗りつつあるというのが一般的な見方です。しかし習近平は、「戦略的共通認識を明確にすること」「グローバルな視野に基づく思考で両国関係を企画すること」「安全保障における相互信頼」「建設的な安全保障関係」など、旧態依然のパワー・ポリティックス的発想に立っている安倍首相の打算的、実利的な対中アプローチを見抜いた上で、日本側の対中認識・アプローチの抜本的変化を要求する発言を行っています。日本国内ではこのもっとも重要な対日メッセージがまったく伝わっていませんし、この習近平発言に接した安倍首相には「馬の耳に念仏」でしかなかった可能性が大きいと思われます。短い発言ですが、私としては日中関係の今後のあり方に関する中国の基本的認識を示すものであり、日中関係のあるべき姿を考えるものものとしては忘れてはならないものだと思いますので、以下に紹介します(この発言は中国外交部WSに基づいています)。

 習近平は安倍晋三が第8回中日韓首脳会議出席のため訪中したことを歓迎した。習近平は次のように指摘した。双方の共同の努力のもと、中日関係は持続的に改善し、発展している。本年6月、私は首相と大阪で会合し、新時代の要求に合致した中日関係を構築し、共同で両国関係の新しい未来を切り開くことを推進することに同意した。現在、中日関係は重要な発展のチャンスに直面しており、中国は日本と密接な意思疎通を維持し、政治主導を強化し、中日関係が新しい高みに登ることを推進し、両国人民によりよい幸福を造り出すことを願っている。
 習近平は以下のように強調した。今日の世界はこの百年間で未だかつてなかった大きな変化の局面を経験している。情勢が複雑であればあるほど、我々はますます従容で迫らない戦略的定力を保ち、高所から遠くを見渡す全局的視野を備える必要がある。新時代の中日関係を計画する上では、まずは戦略的共通認識を明確にする必要がある。グローバルな視野で両国関係を考え、企画し、相互尊重を堅持し、小異を残して大同につくという基礎の上で意思疎通と協調を強め、手を携えて協力し、相互に利益のあるウィン・ウィンの新しいパラダイムの構築を積極的に推進するべきである。以上のことは、両国が新時代の中日関係を発展させる上での共同の戦略的指針となるべきである。両国は、正しい方向を把握し、中日関係4政治文献が確立した諸原則を厳格に守り、重大なセンシティヴな問題を適切に処理し、両国関係の政治的基礎をうち固めるべきである。以上のことは、両国が新時代の中日関係を発展させる際に一貫して堅守するべき根本であり、いかなる時も曖昧さと動揺とがあってはならない。両国は中日間の「互いに協力パートナーとなり、互いに脅威とはならない」という政治的な共通認識を実践し、「競争を協調に転じる」という精神に基づき、両国関係が一貫して正しい軌道に沿って前に向かって発展していくことを推進するべきである。
 (各分野における協力関係の強化を指摘した後)安全保障上の相互信頼を増進し、建設的な安全保障関係を頼積極的に構築するべきである。国際的な責任を果たし、多国間主義と自由貿易を擁護し、開放型の世界経済の構築を推進するべきである。