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中国共産党中央政治局集団学習

2019.02.23.

11月16日に出版された中国共産党の理論誌『求是』は、習近平総書記が2018年4月23日に党中央政治局集団学習において行った「『共産党宣言』とその時代的意義」と題する講話を行いました。習近平が『共産党宣言』について講話を行ったうこと自体、私にはとても新鮮でした。それとともに、党中央政治局が「集団学習」を行ってきていることについても改めて強い関心がわきました。中国の検索サイト「百度」を通じて調べたところ、様々な事実関係を確認することができました。日本国内では、「いまの中国はもはや社会主義ではない」とか、「大国主義、覇権主義の中国は社会主義国家とは言えない」とかいった類いの「中国観」が幅をきかせていますが、このような「中国観」に私は大きな違和感を覚えています。今回、党政治局集団学習の歩みをフォローすることで、私は、中国は大真面目かつ真剣に「中国の特色を持つ社会主義の道」を模索しながら歩んでいるという私のこれまでの「中国観」に関する確信を新たにしました。ちなみに、習近平はこの講話の前に、「弁証唯物主義の基本原理と方法論」(2015年1月23日)、「マルクス主義政治経済学の基本原理と方法論」(2015年11月23日)、「現代世界マルクス主義思潮及びその影響」(2017年9月29日)と題する講話も行っています。「中国的社会主義」とはいかなるものかを考える上でも有益だと思いますので、これらのテーマに関する習近平の発言内容も機会を見て紹介したいと思います。
 党政治局集団学習は、胡錦濤総書記時代(2002年11月15日-2012年11月15日)の2002年12月26日に第1回が行われ、第16期中央政治局では44回、第17期中央政治局では33回行われました。習近平総書記の時代(2012年11月15日-)になってからは、第18期中央政治局で43回、そして現在の第19期中央政治局ではこれまでに(本年11月29日現在)19回の集団学習が行われています。参考までに各回学習テーマは以下のとおりです。胡錦濤時代には時事的なテーマも散見されますが、しかし、理論問題、基本政策問題が圧倒的に多く、政治局における集団学習が中国指導部の思想を鍛え、また、中国内外重要政策の立案決定に重要な役割を果たしてきていることが窺えます。
 なお、胡錦濤時代のすべての集団学習は胡錦濤が主催しています。習近平時代に入って注目されるのは、19回目までは胡錦濤時代と同じく習近平主催の下で各分野の専門家が講義し、その後議論という形式をとっている旨紹介されていますが、2015年1月の第20回以後は習近平がテーマに関する講話を行ったと紹介されるようになっていることです。その後、党規約及び憲法に「習近平思想」が明記されることになったことを考えると興味深い変化です。

<第16期> *2002年12月から2007年9月までの58ヶ月間に44回、開催頻度は1ヶ月半弱に1回のペース。
○第1回(2002年12月26日):憲法と「小康社会」建設。
○第2回(2003年1月28日): 世界経済情勢と中国の経済発展。
○第3回(2003年3月28日):世界の就業発展トレンドと中国の就業政策研究。
○第4回(2003年4月28日):現代科学技術発展トレンドと中国の科学技術発展。
○第5回(2003年5月23日):世界の軍事変革発展態勢。
○第6回(2003年7月21日):党の思想理論の時代的発展の歴史的考察。
○第7回(2003年8月12日):世界文化産業発展状況と中国の文化産業発展戦略。
○第8回(2003年9月29日):「依法治国」及び社会主義政治文明建設。
○第9回(2003年11月23日):15世紀以来の世界主要国の発展の歴史的考察。
○第10回(2004年2月23日):世界構造と中国の安全保障環境。
○第11回((2004年3月29日):現代世界の農業発展状況と中国の農業発展。
○第12回(2004年4月26日):法制建設と社会主義市場経済システム改善。
○第13回(2004年5月28日):中国の哲学・社会科学の繁栄と発展。
○第14回(2004年6月29日):党の執政能力建設強化。
○第15回(2004年7月24日):国防建設と経済建設の協調的発展方針の堅持。
○第16回(2004年10月21日):中国の民族関係史のいくつかの問題。
○第17回(2004年12月1日):「中国社会主義道路」模索の歴史的考察。
○第18回(2004年12月27日):2020年に向けての中国の科学技術発展戦略。
○第19回(2005年1月24日):新時期における共産党員の先進性維持の研究。
○第20回(2005年2月21日):「社会主義和諧社会」構築。
○第21回(2005年4月15日):中国経済社会発展戦略のいくつかの問題。
○第22回(2005年5月31日):経済グローバル化のトレンドと今日の国際貿易発展の新特徴。
○第23回(2005年6月27日):国際エネルギー資源情勢と中国のエネルギー資源戦略。
○第24回(2005年8月26日):世界反ファシズム戦争の回顧と考察。
○第25回(2005年9月29日):国外都市化発展モデルと中国の特色ある都市化道路。
○第26回(2005年11月25日):世界マルクス主義研究と中国のマルクス主義理論研究及び建設工程。
○第27回(2005年12月20日): 行政管理システム改革と経済法律制度改善。
○第28回(2006年1月25日):社会主義新農村建設。
○第29回(2006年2月21日):世界産業構造調整トレンドと中国の経済成長方法変革加速戦略的選択。
○第30回(2006年3月27日):国外の安全生産の制度的措置と中国における安全生産の制度建設。
○第31回(2006年5月26日):国際知的財産権保護と中国の知的財産権保護の法律及び制度建設。
○第32回(2006年6月29日):科学的執政、民主的執政及び法律による執政の堅持。
○第33回(2006年7月25日):紅軍長征勝利の回顧と考察。
○第34回(2006年8月29日):世界の教育発展トレンドと中国の教育システム改革深化。
○第35回(2006年10月23日):国外医療衛生システムと中国の医療衛生事業の発展。
○第36回(2006年11月30日):中国の社会主義基層民主政治建設研究。
○第37回(2006年12月25日):中国の資源節約型社会の建設。
○第38回(2007年1月23日):世界インターネット技術発展と中国のインターネット文化建設及び管理。
○第39回(2007年2月15日):国外の地域的発展状況と中国の地域的協調発展。
○第40回(2007年3月23日):物権法の制定及び実施に関するいくつかの問題。
○第41回(2007年4月23日):中国における農業標準化及び食品の安全問題。
○第42回(2007年7月26日):南昌起義及び井崗山革命根拠地の建設。
○第43回(2007年8月28日):世界金融情勢と中国の金融システム改革。
○第44回(2007年9月28日):対外開放拡大と国家経済安全保障。
<第17期> *33回とあるが、具体的に紹介されたのは29回。2007年11月から2011年5月までの43ヶ月間に33回とすると、開催頻度はやはり1ヶ月半弱に1回のペース。
○第1回(2007年11月27日):中国の特色ある社会主義法律システムの改善と「依法治国」基本方針実行。
○第2回(2007年12月18日):現代世界宗教と中国における宗教工作強化。
○第3回(2008年1月29日):「小康社会」全面建設奮闘目標の実現と経済社会発展の推進。
○第4回(2008年2月23日):国外政府服務システム建設と中国における服務型政府建設。
○第5回(2008年4月28日):中国の経済発展方式変革加速の研究。
○第6回(2008年6月28日):グローバル気候変動と中国の気候変動対応能力建設強化。
○第7回(2008年7月26日):現代オリンピックと北京オリンピック開催。
○第8回(2008年9月28日):中国の特色ある社会主義理論体系研究。
○第9回(2008年11月29日):中国の科学発展推進問題の研究。
○第10回(2008年12月26日):改革開放深化問題の研究。
○第11回(2009年1月23日):中国の特色ある農業現代化道路の研究。
○第12回(2009年2月24日):世界経済情勢と中国経済発展。
○第13回(2009年5月23日):世界主要国社会保障システムと中国における社会保障システム建設。
○第14回(2009年6月30日):党内民主建設の積極的推進。
○第15回(2009年7月30日):中国の特色ある軍民融合的発展道路の研究。
○第16回(2009年9月9日):新中国成立以来の社会主義現代化に対する認識と実践。
○第17回(2009年11月27日):党建設科学化水準の向上。
○第18回(2010年1月8日):世界主要国財政システムと中国財税システム改革深化。
○第19回(2010年2月22日):2020年中国温室ガス排出コントロール行動目標実現問題。
○第20回(2010年5月28日):世界医薬衛生発展トレンドと中国の医薬衛生システム改革問題。
○第21回(2010年6月21日):党基層組織建設強化問題。
○第22回(2010年7月23日):中国文化体制改革深化問題。
○第23回(2010年9月29日):新時期の「人民内部矛盾」を正しく処理する問題の研究。
○第24回(2010年12月3日):上海世界万博経験総括。
○第25回(2010年12月28日):新たな歴史的起点で中国経済社会発展を推進する問題。
○第26回(2011年2月21日):教育及び人力資源建設の優先的発展。
○第27回((2011年3月28日):社会主義法治精神発揚と法律が経済社会発展を促進する役割の発揮。
○第28回(2011年4月26日):経済社会発展にとってより有利な人口環境創造。
○第29回(2011年5月30日):戦略的新興産業の育成と発展。
<第18期> *2012年11月から2017年9月までの59ヶ月間に43回で、頻度はやはり1ヶ月半弱に1回。
○第1回(2012年11月17日):第18回党大会精神貫徹。
○第2回(2012年12月31日):改革開放推進。
○第3回(2013年1月28日):「平和的発展道路」。
○第4回(2013年2月23日):「依法治国」推進。
○第5回(2013年4月19日):中国歴史における「反腐(敗)倡廉(潔)」。
○第6回(2013年5月24日):「生態文明」建設推進。
○第7回(2013年6月25日):中国の特色ある社会主義理論及び実践。
○第8回(2013年7月30日):海洋強国建設。
○第9回(2013年9月30日):「駆動発展戦略」創造。
○第10回(2013年10月29日):住宅保証・供給システム建設推進。
○第11回(2013年12月3日):歴史唯物主義基本原理と方法論。
○第12回(2013年12月30日):中国の文化ソフトパワー向上。
○第13回(2014年2月24日):「社会主義核心価値観」育成。
○第14回(2014年4月25日):国家安全及び社会安定の擁護。
○第15回(2014年5月26日):資源配置における市場の決定的役割と政府の役割の発揮。
○第16回(2014年6月30日):「作風」制度改革。
○第17回((2014年8月29日):世界軍事発展新トレンドと中国軍軍事創新。
○第18回(2014年10月13日):中国歴史上の国家ガヴァナンス。
○第19回(2014年12月5日):自由貿易区建設加速。
○第20回(2015年1月23日):弁証唯物主義基本原理と方法論。
○第21回(2015年3月24日):司法システム改革進化と司法的公正の保証。
○第22回(2015年4月30日):都市農村発展一体化体制メカニズム健全化。
○第23回(2015年5月29日):公共安全システム健全化。
○第24回(2015年6月26日):「反腐(敗)倡廉(潔)」法規制度建設強化。
○第25回(2015年7月30日):中国人民の抗日戦争の回顧と思考。
○第26回(2015年9月11日):「三厳三実」作風。
○第27回(2015年10月12日):グローバル・ガヴァナンス:構造とシステム。
○第28回(2015年11月23日):マルクス主義政治経済学の基本原理と方法論。
○第29回(2015年12月30日):中華民族の愛国主義精神の歴史的形成と発展。
○第30回(2016年1月29日):13期5カ年計画期の中国経済社会発展の戦略的重点。
○第31回(2016年4月29日):歴史上のシルク・ロードと海上シルク・ロード。
○第32回(2016年5月27日):中国人口老齢化のトレンドと対策。
○第33回(2016年6月28日):党内政治生活厳格化と党内政治生態浄化。
○第34回(2016年7月26日):国防及び軍隊の改革深化。
○第35回(2016年9月27日):G20サミット及びグローバル・ガヴァナンス・システム変革。
○第36回(2016年10月9日):インターネット強国戦略。
○第37回(2016年12月9日):中国歴史における法治と徳治。
○第38回(2017年1月22日):サプライ・サイド機構改革推進。
○第39回(2017年2月21日):「脱貧攻堅」及び「精准扶貧」。
○第40回(2017年4月25日):国家金融安全。
○第41回(2017年5月26日):グリーンな発展方式と生活方式の形成推進。
○第42回(2017年7月24日):軍隊の規模構成及び軍事力編制の改革推進、中国の特色ある現代軍事力システム。
○第43回((2017年9月29日):世界マルクス主義思潮及びその影響。
<第19期> *2017年10月から2019年11月までの26ヶ月間に19回。開催頻度は1ヶ月半弱に1回。
○第1回(2017年10月27日):第19回党大会精神。
○第2回(2017年12月8日):国家ビッグ・データ戦略とデジタル中国建設。
○第3回(2018年1月31日):現代経済システム建設。
○第4回(2018年2月24日):憲法と依法治国。
○第5回(2018年4月23日):共産党宣言とその時代的意義。
○第6回(2018年6月29日):党の政治建設強化。
○第7回(2018年7月31日):軍隊の有償サービス全面停止。
○第8回(2018年9月21日):農村振興戦略。
○第9回(2018年10月31日):人工知能(AI)発展の現状とトレンド。
○第10回(2018年11月26日):中国歴史における官僚政治。
○第11回(2018年12月13日):国家監察システム改革深化。
○第12回(2019年1月25日):オールメディア時代とメディアの融合的発展。
○第13回(2019年2月22日):金融サービス改善と金融リスク防止。
○第14回(2019年4月19日):五・四運動の歴史的意義と時代的価値。
○第15回(2019年6月24日):初心と使命の銘記、自己革命推進。
○第16回(2019年7月30日):軍事政策制度改革推進。
○第17回(2019年9月24日):新中国における国家制度と法律制度の形成と発展。
○第18回((2019年10月24日):ブロックチェーン発展の現状とトレンド。
○第19回(2019年11月29日):緊急管理のシステムと能力の建設。