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朝鮮中央通信:日韓問題に関する安倍政権批判

2019.07.20.

朝鮮中央通信は7月18日及び19日の両日にわたって「日本は被告席にある」(18日 以下「第1論評」)「政治的利をむさぼろうとする日本の不当な輸出規制措置」(19日 以下「第2論評」)「日本の未来は過去清算にある」(19日 以下「第3論評」)と立て続けに3本の朝鮮中央通信論評を掲載しました。私は現在まで数年にわたって朝鮮中央通信日本語WSをフォローしてきましたが、これほど立て続けに日本(安倍政治)批判を行ったのを見るのは初めての体験です。しかも3本とも韓国大法院による「徴用工」問題判決に対する安倍政権の対韓制裁措置発動に関するものです。これまで同通信がこの問題に関して報道したのは7月11日付の「南朝鮮大学生たちが日本の輸出規制措置に抗議して闘争」と題する短い事実関係紹介だけでした。私は、今回の安倍政権の動きが「朝鮮がらみ」(対韓国輸出規制3品目が韓国から朝鮮に横流しされた「疑い」を理由にして「選ばれた」)であることから、朝鮮がいかなる反応を示すか興味津々(?)だったので、朝鮮中央通信が激しい安倍政権批判を行うことは想定内でした(第1論評「特に看過できないのは、半導体核心素材が南朝鮮を経て北朝鮮に入りかねないなどの不当な口実を設けてわれわれに言い掛かりをつけていることである」)が、これほど集中的に行うということは想定をはるかに超えていました。
 また第2論評は安倍政権の狙いについて、「南朝鮮に対する輸出規制強化を通じて自国内の右翼勢力の結束と支持にも影響を及ぼすことで参院選挙を容易に済まし、憲法改正をはじめ自分らの宿望をなんとしても実現しようとしている」という一般に挙げられているポイントに加え、「地域構図で一番弱い輪、従順な存在である南朝鮮をいけにえにして対内外統治危機を免れようとしている」「貿易規制措置の拡大で南朝鮮の経済を打撃して当局に対する南朝鮮民衆の不満を引き起こし、窮地に追い込まれた親日売国勢力に再執権の道を開いてやろうという中長期的な目的も潜んでいる」「南朝鮮・日本関係の悪化を望まない宗主(浅井注:アメリカ)を刺激して朝鮮半島問題から押し出された自国の利益が重視されるようにしようとするところにも、緻密に打算された日本の下心がある」という、朝鮮の関心の所在を窺わせる注目に値する分析を行っています。
 その上で第3論評は「安倍一味の腹黒い下心」に対して、「日本の反動層がわが同胞の憤怒を触発させる行為だけ選んで働きながら図々しくいわゆる対話をうんぬんするのは、笑止千万」と安倍首相の「条件なしの対話」発言を一蹴し、「はっきり謝罪し、賠償しなければならず、それを抜きにしては平壌行きの切符も得られない」と引導を渡しています。安倍首相の「地球儀俯瞰外交」は対ロシアで完全に行き詰まり、対イランで醜態をさらし、対アメリカでもトランプの気まぐれに完全に振り回され、もはや「死に体」です。行き当たりばったりの安倍外交の当然の報いです。安倍首相としては乾坤一擲でなりふり構わない対朝アプローチを行っているつもりでしょうが、今回の対韓制裁措置発動に朝鮮ファクターを巻き込む「お粗末」さによって朝鮮から三行半を突きつけられる結果を招いているのです。四面楚歌とは正にこのことです。
 7月20日以後も朝鮮中央通信論評が出るかもしれませんが、この3本だけでも十分な完結性があると思いますので以下に紹介しておきます。

日本は被告席にある 朝鮮中央通信社論評
【平壌7月18日発朝鮮中央通信】先日、南朝鮮では日本の戦犯企業は強制徴用被害者に賠償すべきだという法院の判決が下された。
これに服従せず日本当局は、戦後賠償問題が「完全で、最終的に解決された」「対抗措置を講じるべきだ」と怏々としたあげく、ごう慢にも南朝鮮に対する輸出規制措置を断行した。
わが民族に永久にすすげない罪悪を犯しておきながら謝罪と賠償どころか、あらゆる妄言と妄動をこととし、しまいには不当極まりない経済報復まで強行して破廉恥に振る舞う日本の行為は全同胞の憤激をかき立てている。
特に看過できないのは、半導体核心素材が南朝鮮を経て北朝鮮に入りかねないなどの不当な口実を設けてわれわれに言い掛かりをつけていることである。
これは、根拠のない経済報復を「国家安保問題」「国際的問題」にまどわして正当化してみようとするずる賢い術数として根深い対朝鮮敵視政策の発露であり、わが朝鮮に対する許せない政治的挑発である。
いまだに、歴史の法廷に被告として立っている日本は口が十あっても何も言えない。
過去に日帝が働いた朝鮮に対する長期間の不法占領と野蛮な植民地支配によって、わが民族は実に多大な人的・物的・精神的・道徳的被害を受けたし、その跡は現在まで民族分裂の現実の中に生々しく残っている。
にもかかわらず、日本の反動層は朝鮮人民にひざまずいて謝罪し、賠償する代わりに、過去清算をあくまで回避しているばかりでなく、かえって朝鮮半島情勢の悪化と同族対決を絶えずあおり立てて漁夫の利を得てきた。
最近、地域に前例のない平和の気流が到来した中でも朝米関係、北南関係の改善に各方から障害をきたしながら、わが民族の利益と地域の平和を自分らの政略実現のいけにえにしようとのさばっている。
事実上、誰それに対する「制裁・圧迫共助」だの、「連帯」だのとして利がある時は仲がよく、悪気が起こればためらわずに食い下がる島国一族の振る舞いは絶対に信頼できない日本の実体を国際社会に再度刻印させている。
日本が朝鮮半島を巡る地域情勢の流れから完全に押し出されて「蚊帳の外」に置かれたのは、あまりにも当然である。
日本は、被告席にある自国の境遇をはっきり知って過去清算からしろ。
政治的利をむさぼろうとする日本の不当な輸出規制措置 朝鮮中央通信社論評
【平壌7月19日発朝鮮中央通信】日本の輸出規制措置を巡って南朝鮮で反日機運が急激に高まっている中で16日、日本の内閣官房長官が出て、安全保障を目的に輸出管理を適正に実施するためのもので、なんらかの報復措置ではないと説明した。
これは、強制徴用被害者に対する賠償判決と「対北戦略物資不法輸出疑惑」など、日本が輸出規制の背景に提示した問題に対する各界の激烈な非難と糾弾を意識した曖昧模糊(あいまいもこ)たる弁解だと言わざるを得ない。
あえて、日本当局者らの言葉を借りるなら、なぜよりによって現時点で南朝鮮に対する輸出規制措置を断行したかということである。
現在、日本は対外的には朝鮮半島と地域の平和の流れから完全に押し出されて深刻な外交的孤立に直面し、対内的には参院選挙という重大な政治日程を目前にしている。
今こそ、日本の政客らにとって重要な政治的峠だと言える。
他国を犠牲にして自国の利をむさぼるのに長けている日本の反動層は、地域構図で一番弱い輪、従順な存在である南朝鮮をいけにえにして対内外統治危機を免れようとしている。
輸出規制措置で南朝鮮を圧迫して朝鮮半島の平和気流を破壊し、自分らの軍国主義野望の実現に有利な政治的環境を整えるということである。
ひいては、貿易規制措置の拡大で南朝鮮の経済を打撃して当局に対する南朝鮮民衆の不満を引き起こし、窮地に追い込まれた親日売国勢力に再執権の道を開いてやろうという中長期的な目的も潜んでいる。
それだけでなく、南朝鮮・日本関係の悪化を望まない宗主を刺激して朝鮮半島問題から押し出された自国の利益が重視されるようにしようとするところにも、緻密(ちみつ)に打算された日本の下心がある。
日本の反動層はまた、南朝鮮に対する輸出規制強化を通じて自国内の右翼勢力の結束と支持にも影響を及ぼすことで参院選挙を容易に済まし、憲法改正をはじめ自分らの宿望をなんとしても実現しようとしている。
これにまさに、南朝鮮・日本関係の悪化による損害を補償して余るだけの日本の政治的・外交的利益がある。
今、南朝鮮のメディアと各階層の市民社会団体は日本の破廉恥な腹黒い下心を暴露、糾弾し、不当な経済報復措置に抵抗する闘争を果敢に展開している。
これは、南朝鮮を自分らの不純な政治的野望実現のいけにえにして朝鮮半島と地域の大事な平和を害しようとする日本の反動層に対する民心のこみ上げる憎悪と憤怒の爆発である。
全同胞は、今回の機会に千年来の敵に正義を愛し、不正義を容認しない朝鮮民族の強靭な気概と本領をはっきりと示さなければならない。
日本の未来は過去清算にある 朝鮮中央通信社論評
【平壌7月19日発朝鮮中央通信】過去の犯罪史を否定する日本の破廉恥さが、極に達している。
周知のごとく、日本当局は強制徴用被害者に賠償すべきだという南朝鮮法院の判決が下されると、それに反発して輸出規制という経済報復に踏み出した。
個別的企業に課された賠償判決さえ全面否定しながらそれに国家的な報復措置で応えている日本の振る舞いは、わが民族に働いた過去の日帝の千秋にすすげない罪悪を認定も、反省もせず、清算もしないという内心を公然とさらけ出したことになる。
日本が歴史と人類に負っている罪悪の借財は、実に多大である。
20世紀にわれわれの国権を強奪した日帝は、数多くの朝鮮人を拉致、連行して奴隷労働と侵略戦争に駆り出し、100余万人の朝鮮人民を虐殺したし、20万人に及ぶ朝鮮女性を旧日本軍好色狂らの「獲物」につくった。
日本の過去罪悪史は、その一ページ一ページが朝鮮民族の血で塗られている。
わが民族に及ぼした人的・物的・精神・道徳的損失は、日本という国をそっくりささげてもとうてい賠償できないものである。
にもかかわらず、日本の反動層は朝鮮人民にひざまずいて謝罪し、賠償する代わりに、過去清算にあくまでも顔をそむけているばかりか、むしろ汚らわしい罪悪を正当化している。
過去の罪悪に対する責任を永遠に回避し、自分らに向けられる非難の矛先をよそに回して目前に迫った参院選挙と軍国主義復活に有利な政治的環境を整えようとする安倍一味の腹黒い下心は覆い隠せない。
過去清算は、わが民族と人類に負った日本の法律的、道徳的義務である。
日本の反動層がわが同胞の憤怒を触発させる行為だけ選んで働きながら図々しくいわゆる対話をうんぬんするのは、笑止千万なことである。
日本の過去清算問題に対するわれわれの立場と意志は、確固不動である。
日本は過去にわが民族に及ぼした全ての被害と苦痛に対してはっきり謝罪し、賠償しなければならず、それを抜きにしては平壌行きの切符も得られないということを認識すべきである。
日本の未来は、過去清算にある。