南シナ海仲裁裁定の問題点(中国専門家の指摘)

2016.07.18.

昨日(7月17日)のコラムで、南シナ海の仲裁裁定の問題点を指摘しましたが、同日付の中国新聞網は、厦門大学南海研究院院長の傅崐成のインタビュー発言を掲載しており、仲裁裁定が南シナ海には「島」の定義に当てはまるものはないと断じたことは「天下大乱」を導くものだと厳しく批判したことを紹介しています。短い発言ですが、私がコラムで書いたことを、国連海洋法条約における「島」の定義と仲裁裁定が採用した「島」の定義との重大な違いを明らかにすることでさらに分かりやすく理解できるように説明するものなので、参考に供します。

 南海仲裁裁判所は、南沙諸島には「島」に関する厳格な定義に当てはまるものはひとつもないとしたが、このような定義が仮に国際的に受け入れられるとすれば「天下大乱」となる。なぜならば、多くの小島はこの定義の基準を満たさなくなるからだ。
 国連海洋法条約における「島」であるか否かの判断基準は、「人間の居住を維持することができるか否か」である。ところが仲裁裁定が示した判断基準は、「実際に人々が自然に形成した居住集落(浅井注:裁定ではcommunity)があるか否か」である。すなわち、問題が(条約の)「できるか否か」から(裁定で)「実際にあるか否か」にすり替えられている。
 日本が200カイリの排他的経済水域を持つと主張している沖ノ鳥島はやや大きなテーブル大の大きさしかなく、明らかに誰一人としてそこで居住したことはない。アメリカのジョンストン礁も同じように極めて小さいが、工事後の面積はカリフォルニア州に相当し、それに基づいて200カイリの排他的経済水域を主張している。仲裁裁定の判断基準に基づくと、これも放棄しなければならないのではないか。
 実際、ほとんどの小島は「実際に人々が自然に形成した居住集落があるか否か」という定義を満たさない。他方、(南沙諸島にある)太平島は、1000年以上にわたって中国の漁民が長期あるいは短期で居住してきたのであり、仲裁裁定が太平島を島と見なさないのは「極めて驚き」である。