(原審:大阪高判昭和51年2月10日(昭和45年(ネ)第603号))
<事案の概要>
X1(原告【A】)は,次の実用新案について登録出願のうえ権利付与を受けていた。
考案の名称 | 金属編籠の縁編組装置 |
出願 | 昭和34年3月27日(実願昭34-17671号) |
公告 | 昭和37年1月23日(実公昭37-997号) |
登録 | 昭和37年5月31日(第571193号) |
X1は,その後X2(原告アートメタル株式会社(以下,原告会社という))に該実用新案権を譲渡し昭和41年4月26日移転登録をした。X2は,昭和40年6月,X1から該実用新案権につき独占的な実施許諾を受け,以来昭和41年4月26日該実用新案権を取得するまでの間その通常実施権者であった。
Y1(被告深江金属工業株式会社(以下,被告深江金属という))は,昭和40年6月頃,別紙イ号図面及び説明書記載の手芸用糸入れ金属編籠(以下,イ号製品という)を製作したうえ,Y2(被告株式会社阪急百貨店(以下,被告阪急という))に販売し,Y2はこれをY3(被告鐘淵紡績株式会社(以下,被告鐘紡という))に販売し,Y3はこれを各方面に拡布した。
Xらは,Y1らの行為が,Xらの実用新案権を侵害するものであるとして,Y1らに対し,損害賠償を求めて訴えを提起した。
第一審(大阪地判昭和45年4月17日(昭和42年(ワ)第412号))は,Xらの請求を棄却した。
Xら控訴。
控訴審(大阪高判昭和51年2月10日(昭和45年(ネ)第603号))は,Xらの控訴を棄却した。
Xら上告。
なお,本件実用新案は,最判昭和55年4月8日(昭和55年(行ツ)第9号,第10号)により,登録が無効であることが確定している。
<判決>
上告棄却。
「・・・本件実用新案登録に係る考案が,その登録出願時において新規性を有しなかつたことを理由として右登録を無効とすべき旨の審決の確定したことは,当小法廷が昭和55年(行ツ)第9号及び同第10号各審決取消請求事件につきそれぞれ昭和55年4月8日に言い渡した判決に徴し,顕著である。そして,このような理由により右実用新案登録を無効とすべき旨の審決が確定した場合において,その実用新案権が初めから存在しなかつたものとみなされることは,実用新案法41条によつて準用される特許法125条本文の規定により明らかである。
したがつて,本件実用新案権が存在することを前提とする上告人らの本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないことが明白であるから,棄却されるべきものである。してみれば,これと結論を同じくする原審の判断は,結局,正当であることに帰する。論旨は,採用することができない。
よつて,民訴法396条,384条2項,95条,89条,93条に従い,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」