新井仁之:フーリエ解析学

作成日:2022-11-16
最終更新日:

概要

まえがきから引用する。

(前略)本書ではこのフーリエ解析を基礎からはじめ,特に多変数の場合に焦点を当てて解説している. (中略)この本では,そのような応用に使われている多変数フーリエ解析を純粋数学の立場から述べることを試みている.

文中には問がある。解答はない。

正誤表ほか付録が下記にある。
http://www.araiweb.matrix.jp/fourier2/fouri2.html

感想

私のような、頭が弱い者にはわからない。ただ、少しは問題をやってみよう。p.5 にある次の問題だ。なお、 本書では R を実数全体のなす集合とし、C を複素数全体のなす集合としている。 また K により R または C により表すこととしている。 このページでは RCKをそれぞれ `RR, CC, bbbK` で表す。

問題 1.1 `v_0, cdots, v_(N-1) in bbbK^N` を `bbbK^N` の基底とする.`x in bbbK^n` に対して, (1.1) の `alpha_0, cdots, alpha_(N-1)` は一意的に定まることを示せ.

理系のための線型代数の基礎の pp.17-18を参考にして次のように解答した。 ここで (1.1) 式はあるスカラー `alpha_0, cdots, alpha_(r-1)` とベクトル `x, v_0, cdots, v_(r-1)` に関する次の等式
`x = alpha_0v_0 + cdots + alpha_(r-1)v_(r-1)`
である。本書注意の 1.2 (p.5) により、線形代数の一般論から,`v_0, cdots, v_(r-1)` が `bbbK^N` の基底であれば `r = N` であることが証明できる ので、以下 `r = N` とする。さて、以下解答である。

(1.1) で `r = N` としてよいので、

`x = alpha_0v_0 + cdots + alpha_(V-1)v_(V-1)`
を改めて(1.1) として解答する。かりにベクトル `x` の表し方が二通りあるとすれば、スカラー `alpha_0, cdots, alpha_(V-1)` とは別に スカラー `beta_0, cdots, beta_(V-1)` が存在して、次の等式がなりたつ:
`alpha_0v_0 + cdots + alpha_(V-1)v_(V-1) = beta_0v_0 + cdots + beta_(V-1)v_(V-1)`。
この等式から
`(alpha_0 - beta_0) v_0 + cdots + (alpha_(V-1) - beta_(V-1))v_(V-1) = 0`
基底の定義(本書定義1.1 (1))から、`v_0, cdots, v_(N-1)` は線形独立であるから、
`alpha_0 - beta_0 = 0, cdots, alpha_(N-1) - beta_(N-1) = 0`
`alpha_0 = beta_0 , cdots, alpha_(N-1) = beta_(N-1)`
よって (1.1) の `alpha_0, cdots, alpha_(N-1)` は一意的に定まる。

システムの話

フーリエ変換は数学者だけでなく物理学者も工学者も取り上げるが、z 変換となるとほとんどが工学者しか取り上げない。 本書は第 3 部で z 変換やハーディ空間を取り上げていて、システムの安定性についても触れられている。数学書では珍しいと思う。

講座<数学の考え方>

数式記述

数式記述は ASCIIMathML を、 数式表現は MathJax を用いている。

書誌情報

書名フーリエ解析学
著者新井仁之
発行日2003 年 7 月 5 日(初版第 1 刷)
発行元朝倉書店
定価3400 円(本体)
サイズ276ページ
ISBN4-254-11597-0
その他草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi