■ さらに問う、副作用多発を知った厚生省の判断 (04.6.13公表、04.6.19、04.10.17更新)さらに更新準備中

1.大阪地裁一審勝訴判決にも納得できない「国の責任」

問題点:、死亡や難聴、麻ひ事例発生、無菌性髄膜炎多発を知った段階で従来の麻しんワクチン単独接種に戻してMMRワクチンの評価をすることで子ども達の安全を確保すべきであった。裁判所も国の責任を甘く見ている。「母里意見書」を重視すべきである。裁判の行く末にかかわらずこの「国の責任」を認めさせることが最大の課題といえる。

2.阿部議員第3回質問主意書で厚労省が調査を開始

@ 04.4.15阿部質問主意書で「全国市区町村の広報紙等を取り寄せ、MMR中止の事実を精査」することを要求

A 04.4.28付健康局結核感染症課課長通知で調査依頼

 しかし、その調査への市区町村の回答にずさんさがあることが次々に判明している。調査依頼は89年当時の広報紙等を重視しているが、広報担当に保管されている広報紙を確認しようともせずに「文書不存在につき不明」などと回答している事例が数多く確認されている。おそらく全市町村の8割程度は広報紙等を確認せずに回答している可能性がある。⇒04.6.17付「要望書」提出、結果は次々項Cで衆議院へ

B その調査にもとづき、04.7.7に質問主意書への答弁を予定

 前項Aの状況を放置しては、7月7日の答弁が事実を正しく反映したものとならないことが明白である。

C 04.7.6答弁書がでる⇒質問と答弁(衆議院ホームページ参照)

3.第4回質問主意書 04.6.15提出
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/159194.htm

 70年代から90年代にかけ行われた予防接種禍集団訴訟(東京・名古屋・大阪・福岡)の勝訴が主因となった1994年の予防接種法改正により開始された「予防接種後副反応報告」による副作用情報の収集がある。
しかし、それ以前から「事故報告・健康被害発生報告」などの名称で市区町村からの報告が実施されていたのであり、MMRについても報告があったはず。
 その報告を集計した情報が中薬審や公衆衛生審議会には提出されていないことが判明している。担当者は集計すらしていなかったと明言している。そのことを主意書で確認する予定。

4.第5回質問主意書 提出予定

 第3回阿部質問主意書が、厚生省がすべき「中止」判断を自治体がやっていることを指摘しようとしたが、それのみならず医療機関が独自に中止判断していることも指摘される必要がある。
 自治体や医療機関がたとえ遅くとも中止判断を行った事実をもって厚生省の対応の誤りを明確にする予定。


■ 一審判決(03.3.13大阪地裁)「国の過失について」より引用

  (4) 製造承認後の過失について
   ア 原告らは,被告国は,本件MMRワクチンの予防接種実施後,副反応情報を収集し,かつ,看過しがたい副反応の発症が明らかになったときは,直ちに当該予防接種の実施を中止するよう地方自治体に行政指導すべき法的義務を負い,また,その時点で明確に予防接種による副反応であると断定できない場合であっても,予防接種後,看過しがたい事故が多発し,それが当該予防接種による副反応の可能性があるときは,事故の原因が明らかになるまでは,当該予防接種を一時見合わせる等の措置をとる義務を負っており,また,当該医薬品の安全性に合理的な疑いが生じたときは,厚生大臣は,直ちに当該ワクチンにつき,薬事法上の緊急命令を発すべき義務を負っており,被告国は,カナダにおける副反応報告及び前橋市医師会による本件MMRワクチン副反応報告を知り得ることができたほか,PCR法によるウイルス鑑別法の確立により,平成元年9月ころには,本件MMRワクチンにより無菌性髄膜炎をはじめとする多数の健康被害が発生していることを知り得たものであるから,遅くとも同年10月中旬の時点で,被告国自身が接種を一時見合わせる措置をとり,あるいは,ワクチンメーカーである被告阪大微研に対しても薬事法上の緊急命令を行使すべき義務があったにもかかわらず,漫然とこれを放置したと主張する。

   イ 確かに,被告国には,MMRワクチンの接種を一時見合わせる措置をとることなどを検討すべき機会として,C2(原告)が接種を受けた平成3年6月25日までに,上記のとおり,次の機会があったものと認められる。

(ア) カナダでは,MMRワクチン(トリビリックスワクチン)の接種後,数か月後に3人の無菌性髄膜炎の患者が発生したことが,昭和62年9月5日発行の医学雑誌「カナダディズィーズウイークリーレポート」で報告され,カナダのオンタリオ州保健省は,昭和63年7月,占部株ワクチンを含むMMRワクチンの使用禁止,在庫回収の措置を採り,これは同年11月19日発行の医学雑誌「カナダディズィーズウイークリーレポート」で報じられており,同月,カナダ健康保健省の要請により,販売業者は,占部株ワクチンを含むMMRワクチンの使用を中止している。被告国は,これらの情報を平成元年8月ころまでには知っていた。

(イ) 平成元年3月,予研のLウイルス部長らによるPCR法の導入によって,同年7月,従来,野生株によると思われていた無菌性髄膜炎が,ワクチン株によるものである可能性があることを指摘されている。

(ウ) 厚生省は,その調査により,同年4月以降の被接種者約60万人ないし70万人のうち,同年9月4日までに同ワクチンの接種により無菌性髄膜炎を発症した疑いのある患者が4人(同月8日までに,更に2人)いること(10万人から20万人に1人の割合であること)を知った。

(エ) 前橋市医師会のO医師は,同月17日,高崎市で開催された日本小児科学会群馬地方会において,同年4月から6月までの間に,前橋市でMMRワクチンの接種を受けた1800人のうち,3名について無菌性髄膜炎が発症したと報告し,これは同日付けの群馬小児科会報に発表された。

(オ) 厚生省は,同年10月23日ころ,MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生状況について,同年4月以降同年10月23日までにMMRワクチンの接種を受けた約50万人のうち,接種後2か月以内に何らかの異常を来したとする例が125件あり,そのうち,無菌性髄膜炎を疑われるものは,80件であったことを知った。

(カ) 厚生省は,平成元年10月25日,O医師から,MMRワクチン被接種者1834人のうち接種後に無菌性髄膜炎を発症した症例が10人と184人に1人の高率で発生しているとの報告を受けた。
(キ) 大阪府環境保健部長は,同月31日,大阪府の各市町村長に対し,MMRワクチンの接種は見合わせる方向で対応されたいとの通知書を発し,高槻市は同年11月1日,豊中市は,同年11月2日,MMRワクチンの接種の一時中止を決定した。
(ク) 厚生省は,同年10月25日,カナダにおいてMMRワクチンの自主的な販売中止とされたことについて審議している。

(ケ) 厚生省は,平成2年1月18日ころ,平成元年4月1日から同年10月31日までの間に,約63万人がMMRワクチンの接種を受けたが,そのうち,MMRワクチン接種後に臨床的に無菌性髄膜炎と診断された者は311名であり,そのうちワクチン接種が原因とされたものが67名存在したことを知り,MMRワクチン接種後のおたふくかぜワクチン接種によると思われる無菌性髄膜炎の発生頻度は,およそ数千人に一人と考えていた。また,上記311名の中には,脳脊髄膜炎と診断された者及び脊髄炎による下肢弛緩性麻博と診断された者がそれぞれ1名いたことを知った。

(コ) その結果,厚生省は,平成2年12月ころには,MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎は,数千人に1人という従来考えられていたよりはるかに高い確率で発生していると認識するようになった。

(サ) カナダ健康福祉省は,平成2年5月,6万2000人に1人の割合で無菌性髄膜炎が発生しているとの報告を受けて,平成2年発行の日本の医学雑誌での副反応報告をも参考にして,占部株ワクチンを含むMMRワクチンのカナダでの販売を禁止した。これは平成2年12月15日発行の医学雑誌「カナダディズィーズウイークリーレポート」に報じられていた。

(シ) 厚生省は,平成3年5月31日ころには,平成元年4月から平成2年10月までの間にMMRワクチンを接種した者のうち,無菌性髄膜炎を発症した者の割合は約1200人に1人と従来考えられていた頻度より高率であることを知った。

     なお,原告らは,福島県が,厚生省に対し,平成元年7月に,同年5月9日にMMRワクチン接種を受けた小児が同月16日急性心不全により死亡したとの連絡をしたことや,東京都が,同年10月,厚生省に対し,同年5月17日にMMRワクチン接種を受けた小児に2級程度の重度の聴力障害が残存しているとの報告をしたことを指摘するが,これはその症状からみてMMRワクチン接種との関係は明らかではない。

   ウ これらの事実経過の中で,MMRワクチンの副反応としてかなりの無菌性髄膜炎が生じることは,上記のとおり,鑑別法としてPCR法が導入されてから明らかとなった事実であるが,これが明らかになった以上,カナダにおけるように,速やかにMMRワクチンの使用を一時的にせよ停止して,その因果関係や発生率を改めて審査するという扱いを採っていれば,本件のような重篤な結果を招かなかったといえることは明らかである。
     また,厚生省の独自の調査によって,平成元年9月当時は,10万人から20万人に1人の割合であると考えた無菌性髄膜炎の発生率について,同月10月には,前橋市医師会のO医師から184人に1人の高率で発生しているとの報告を直接受けており,また,同年10月ころまでにはカナダにおける自主的な販売中止の事実を知っており,平成2年1月までには独自の調査により無菌性髄膜炎の発生頻度がおよそ数千人に1人であること,平成3年5月ころまでには,これが約1200人に1人であることを知るに至ったのであるから,予期している以上の副反応が生じていること,しかも調査を重ねるごとにその発生率が高いことが次第に明らかになっている状況では,慎重を期してMMRワクチン接種の一時見合わせの措置を採ることも行政上の判断として望ましいところであったと考えられる。

   エ しかし,以上のような事実,特にカナダにおける副反応情報や前橋市医師会による副反応報告があり,これを国が認識していたとしても,これらの報告がなされた時点では,その基礎となる資料及びその分析の正確性や個々の各症例とMMRワクチン接種との因果関係は直ちに明らかであったとまではいえず,それらの報告からMMRワクチンについて看過しがたい事故が多発しているとまでは判断し得えないから,これらの報告から,直ちにMMRワクチンの安全性に合理的な疑いが生じたとも,MMRワクチンの安全性が明白に否定されたともいえないと考えられる。
     また,MMRワクチンは,上記のとおり,未だ流行を繰り返し,時に重い合併症や後遺症を伴うことがある風しんとおたふくかぜについてもワクチン接種の推進によってその集団防衛作用により流行を抑制するという有用性が認められていたものであるところ,副反応である無菌性髄膜炎は一般的には予後の良いものであると認識されており,また,上記のとおり,脳脊髄膜炎と診断された者及び脊髄炎による下肢弛緩性麻博と診断された者各1名についても転帰は良好であったことなどからすると,上記のような副反応の調査結果が出ているという状況があったとしても,これから被告国に,MMRワクチン接種の一時見合わせの措置を講ずべき義務があったとまでは認められない。

     したがって,ワクチンの有用性に関わらずワクチン接種による副反応の出現を許さないという考え方に立って,慎重に対処すべきであるとすれば,上記のような事情のもとでMMRワクチン接種の一時見合わせの措置を講じることも考えられるが,それは行政上の裁量の範囲内であると考えられる。

     したがって,被告国に,MMRワクチン接種の一時見合わせの措置を講ずべき法的な義務があったとは認められないし,また薬事法上の緊急命令を発すべき義務があったとも認められない。