■04.4.15提出 阿部議員質問主意書と04.7.6答弁書

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 平成十六年四月十五日提出
質問第七七号

MMRワクチンに関する質問主意書
提出者  阿部知子
MMRワクチンに関する質問主意書

 二〇〇二(平成一四)年七月三一日(主意書一という)、同一一月一二日(主意書二という)の質問に引き続き、MMRワクチンによる副作用被害多発に関する真相の解明と今後の予防接種行政及び薬事行政における安全性確保や信頼性の向上を願って以下の質問をする。
 平成一四年六月の第一五四回国会における坂口厚生労働大臣の答弁に次のくだりがある。(一五四回・参・厚生労働委員会・一三号 内藤正光議員への答弁から引用)

〇内藤正光君 (略)大臣に、なぜ日本において薬害がこうも多発するのか、薬害被害が絶えないのか、その理由について大臣なりの御所見をお伺いしたいと思います。
〇国務大臣(坂口力君) 御指摘のように、幾つもの薬害が生じてきたことは事実でございます。
 それには幾つかの理由があるというふうに思っておりますが、一つは、やはり厚生労働省自身の体制の中にも薬なりあるいは医療機器なり、そうしたものに対する承認の体制が十分でなかったと私は思っております。人的にも十分でなかったと。その点は反省をいたしまして、特にHIV以後、その反省をして増員もしているところでございますが、そこが一つあったと。
 さらに、一度承認をしてしまうと、その後、医療の進歩あるいはまた科学の進歩等によって様々な問題が起こってきましたときに、それを変えるという、ある時点のところでそれを、今までの方針を変更するということにやはり手間取ってきたと。そこはもう、学問的にそこは成り立たないことには変えないという私は部分があったというふうに思っています。ですから、そこはある程度、学問的にそれが確立されるというところまで行かなくても、危険性があるというふうに知ったときに、既に先に手を一遍打つと。そして、もしも誤っていれば後でお断りをする以外にないわけでありますが、そのぐらいな措置を取るということがやっぱり大事なんではないかと。しかし、そこが確実になってから、なってからというのがやはり遅くなってしまう原因になっているというふうに私は思っている次第でございます。(国会会議録より引用、終わり)

 ここに示された考え方は、医薬品の安全性確保はかくあるべきという坂口大臣のわかりやすい見解であり支持できるものである。
(着色部分は答弁書)
 平成十六年七月六日受領
答弁第七七号

  内閣衆質一五九第七七号
  平成十六年七月六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員阿部知子君提出MMRワクチンに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員阿部知子君提出MMRワクチンに関する質問に対する答弁書
厚生労働省が「慎重接種」の通知を発する平成元年一〇月二五日に、あるいはそれ以前にMMRワクチンを中止してはしか単味ワクチン接種(従来方式)に戻すことは単味ワクチンの在庫状況(根拠資料は、厚生労働省提供の細菌製剤協会在庫調べ 平成元年秋)からして可能だったと思われる。
 先の答弁書において、同年七月までに死亡を含む重い症例が存在したにもかかわらず、症例の詳細が不明だから検討する状況にはなかったとあるが、詳細が不明なら情報を集めて検討すべきであり、国は安全対策を怠ったことになる。単味ワクチンで予防接種法上のはしか対策はできる。おたふくかぜは国が予防接種法上責任をもつことが規定された感染症ではない。
 また、先ごろ厚生労働省から提供されたMMRワクチン接種による被害認定状況の一覧表によると、平成元年七月末までの接種で、四〇例以上の救済事例があり、同年九月末までには、八〇例ほどの救済事例があったことが判明した。しかもそこには、同年五月の死亡例(後に救済)、七月の障害を残した重症例二件(後に救済)が含まれているのである。
 子どもたちの安全を確保するため、平成元年の早い段階で従来のはしかワクチン単独接種方式に戻すという方針転換をなぜしなかったのか、見解はいかがか。(主意書二の五関連)
一について
 乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の接種に係る副反応については、平成元年九月頃には新聞等により報道されていたことから、情報収集に努めていたが、正確な情報把握ができず、平成元年十月二十五日に公衆衛生審議会伝染病予防部会予防接種委員会が取りまとめた「MMRワクチン及びおたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎について(意見)」において、正確な無菌性髄膜炎の発生頻度の把握を行うとともに、その結果が判明するまでの間、おたふくかぜの自然流行の状況を勘案しつつ、MMRワクチン接種を慎重に行う必要があるとされたところである。
 厚生省としては、同意見を踏まえ、直ちに「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(平成元年十月二十五日付け健医感発第九十三号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知。以下「平成元年十月通知」という。)を発出し、都道府県に対して、MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生状況についての調査結果が判明するまでの間、MMRワクチン接種の実施に慎重を期されたい旨を通知したところである。
 また、御指摘の平成元年五月から七月までの間のMMRワクチンの接種に係る健康被害事例については、症例の詳細及び予防接種との因果関係が不明であったため、平成元年当時において、MMRワクチンの使用の是非等について検討を行う状況にはなかったものと考えている。
 予防接種の継続、中止等の判断については、接種による発病防止の効果と副反応とを総合的に考慮し、最新の医学的知見に基づいて、慎重に行われる必要があるが、MMRワクチンの接種に係る判断については、前述のような経過から、平成元年の早い時点において、麻しん単独ワクチンを使用する方針に転換すべきであるとの判断には至らなかったものと考えている。
 平成元年一二月に開催された中央薬事審議会生物製剤調査会に提出された薬務局生物製剤課の資料にある「医薬品の有効性の限界近くに位置」の認識については、そもそも政策決定のために諮問する審議会に対し、基礎資料のみならずMMRワクチンの安全性もしくは有効性について、薬務局が自らの認識を示したことに同局の深刻な捉え方が伺われる。あるいはその時期までに薬務局はMMRワクチンの使用見合わせを選択する方向に傾いていたと考えられる。
 ところで、厚生労働省が公表した副作用発生率は、
 平成元年 一〇万から二〇万に一人
 平成五年 一〇〇〇人に一人(一八〇万接種でおよそ一八〇〇例)
と副作用発生率が一〇〇ないし二〇〇倍に上がる中、「医薬品の有効性の限界近くに位置」の認識が変わったことを伺わせる薬事行政上の「使用中止、回収」などの処置がないまま経過している。重ねて述べるが、MMRでなければはしか対策ができないものではない、従来方式(はしかワクチン単独接種)に戻すことが可能な状況の中、添付文書をかすかに改訂するなどの措置のみであったことは承服しがたいことである。最終的に予防接種法における「当面接種見合わせ」が平成五年四月二六日に決定されても、薬事行政においては任意接種上のMMRやおたふくかぜワクチンについてはその後現在まで中止されることなく放置され、副作用被害を生み続けている。
 平成一〇年には阪大微生物研究会製MMRワクチンの再審査の指示が出されたというがメーカーがデータを提出しないまま経過している状況にあるという。現時点では、厚生労働省はMMRワクチンの副作用被害多発の真相を解明することもなく放置しているのである。
 右の状況にある北里研究所、阪大微生物研究会、武田薬品工業のMMRワクチンおよび阪大微研会のおたふくかぜワクチンは直ちに承認取消しの処分を行い、国産MMRワクチンの副作用被害多発の科学的な解明と新たな開発研究を促すべきと考えるが見解はいかがか。
二について
 社団法人北里研究所及び武田薬品工業株式会社のMMRワクチンについては、「医薬品の製造等の承認の整理について」(昭和四十六年六月二十九日付け薬発第五百八十八号厚生省薬務局長通知)に基づき承認書が両法人から厚生労働大臣へ返納されている。
 財団法人阪大微生物病研究会(以下「阪大微研」という。)のMMRワクチン及びおたふくかぜワクチンについても、既に製造が中止されていると承知しているが、阪大微研のMMRワクチンについては、現在、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条の四の規定に基づき、有効性、安全性等について再審査を行っているところであり、阪大微研のMMRワクチン及びおたふくかぜワクチンの承認の取扱いについては、その結果を待って適切に対処してまいりたい。なお、副反応の解明については、再審査の中で評価を行うことと承知している。
 また、ワクチンを含めた医薬品の新たな研究開発については、民間企業が主体となって研究開発を行うとともに、国としても研究開発の環境整備に積極的に取り組んできているところであり、今後とも、国民の保健医療水準の向上が実現できるよう、努めてまいりたい。
 平成元年四月MMRワクチン導入にあたり、「保護者が希望した場合使用することができる」とされた。しかし、大阪府高槻市の広報紙平成元年三月号(別紙参照)によれば、「はしかワクチンからMMRワクチンに切り替えた」と記載されていることからして、高槻市民にとって選択の余地なくMMRワクチンを強制されたのであり、法令に反してMMR積極推進がなされたといえる。類似の実態は他の自治体でも存在した可能性が高い。国は、接種当日までに保護者がはしかワクチンかMMRワクチンの選択をすることが可能な仕組みをどのように確保していたか、当時、全ての市区町村でどのように広報されたかそれぞれの広報紙を取り寄せ確認の上、見解を述べよ。
三について
 「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(MMRワクチン)の接種に関する調査について」(平成十六年四月二十八日付け健感発第○四二八○○二号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)により全国の市区町村に対する調査を行った結果、平成十六年六月二十三日時点で三千百五十一の市区町村から回答があり、平成元年MMRワクチン導入時の広報等が残っていると回答があった三百一の市区町村のうち、百十六の市区町村においてMMRワクチンのみの接種を実施する旨を、百八十五の市区町村において麻しん単独ワクチン及びMMRワクチンの接種を実施する旨を広報していたことが確認された。
 MMRワクチンの導入に際しては、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(昭和六十三年十二月十九日付け健医感発第九十三号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知。以下「室長通知」という。)において、MMRワクチンについて「積極的な活用が図られるよう貴管下市町村長の指導に遺憾なきを期されたい。」と示した上で、その接種の実施に当たっての留意事項として、MMRワクチンを希望者には使ってもよいこととする旨周知していたものであり、右に述べた百十六の市区町村においては、MMRワクチンの積極的な活用を図るとの室長通知の趣旨を踏まえ、MMRワクチンのみの接種を実施する旨広報する等の判断を行ったものと考えている。
 平成元年一〇月二五日の「慎重接種」の通知以後、同月三〇日東京都国分寺市、一一月静岡県、他、大阪府、京都府など接種を中止した自治体がある。全国都道府県・市区町村の広報紙等を取り寄せ、平成元年から同五年において、副作用が多発するなか、MMR接種を中止または再開したことなどの対応状況を可能な限り明らかにし、厚生省の判断が自治体レベルでの混乱、混迷の状況を引き起こしたのかそうでないのか見解を述べよ。
四について
 平成元年度から平成五年度までの間における市区町村によるMMRワクチンの接種の中止又は再開の状況については、別表のとおりである。

別表

年 度 「MMRワクチンの使用
を中止した」と回答が
あった数
「MMRワクチンの使用
を再開した」と回答が
あった数
平成元年度 356 31
平成2年度 167 51
平成3年度 77 18
平成4年度 140 10
(注)平成5年度 228
合 計 968 116
(注)平成5年度は、MMRワクチン接種の実施が見合わされた
平成5年4月27日までの数である。

 このような市区町村の対応については、平成元年十月通知により、各地域におけるおたふくかぜの流行状況を勘案し、慎重に判断した上でMMRワクチンの接種を実施するよう指示していたこと、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(平成元年十二月二十八日付け健医感発第百十二号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知)等により、麻しんの定期の予防接種時においては原則として麻しんワクチンを使用し、保護者からの申出があった場合にはMMRワクチンの接種の実施体制を確保する旨指示していたこと等により、それぞれの地域の事情に応じた取扱いをしたものと考えており、当時の厚生省の判断が自治体での混乱、混迷の状況を引き起こしたとは考えていない。
 昨年七月一六日衆議院厚生労働委員会にて、MMR認定被害者の長期予後を調査する必要について質問した際、坂口大臣は「・・・厚生労働省として、今どういう状況にあるかということを把握できるかどうか、ちょっと聞いてみないとわかりませんが、その当時、その障害のありました皆さん方の住所、氏名というものをしっかりと把握させていただいたといたしましても、それからかなり時間がたった後で、住所等もお変わりになっている場合もございましょうし、把握できるかどうか、あるいは、都道府県なり市町村にお願いをして、そこが把握できるかどうか、そんなこともあろうかと思います。一遍やってみますと言うだけの自信はなかなかございませんけれども、そうしたことが可能かどうか、一遍ひとつ議論をしてみたいというふうに思います。」と回答している。
 その後の情報として、イギリスにおけるMMRワクチン接種後に自閉症を発症した方々の訴訟が一九九八年に提訴され、今年中には判決が出る予定であることが判明した。その弁護団によると、MMRワクチンに阪大微研会製のウラベ株おたふくかぜワクチンが混合されたワクチンほど自閉症発症の危険性が高いという傾向があるようだともいわれている。日本においてはMMR接種当時の関係者の意識にはなかったと思われるが、ここ数年の間に国立感染症研究所関係者が予備的な調査を行い、原因はさておきMMR導入前とあとでは自閉症の出現率があがっているという報告を出している。
 無菌性髄膜炎の長期予後のみならず、最近まで話題にならなかった自閉症の懸念さえ出る中、まさに一〇四〇人という認定被害者、それ以外にも多数報告された被害者の現状を可能な限り追跡調査する必要がますます高まったといえる。加えてイギリスで被告となっている企業のMMRワクチン輸入申請が化学及血清療法研究所から出され、一年を経過しているが、その審査過程で自閉症に関する検討は行われていないという厚生労働省の回答もあった。しかし、自閉症についての検討がないまま市場に出て、あるいは海外から対策を迫られている麻疹問題でMMRを導入するなどということで自閉症が発生するということになれば、新たな薬害として政府は非難されることにもなりかねない状況にある。
 最近になり、平成二年MMR接種でその翌年、接種前から疑いがあった自閉症の確定的な診断があり、さらにその翌年亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の疑いありで死亡した事例があったこと(救済は拒否された)が判明した。
 よって、次のことについて見解を求める。
 (ア) 被害者の現状を調査すること(市町村の協力を得れば相当数把握できると思われる)
 (イ) その際、自閉症あるいはそれに近い状況がないかにも注目すること
 (ウ) 薬事・食品衛生審議会のMMRワクチン輸入の審査過程において、日本のMMRワクチンの起こした問題を科学的に解明すること
 (エ) 審査過程において自閉症の問題に関する情報収集を申請者に求め、慎重に審査すること
五の(ア)及び(イ)について
 MMRワクチンの接種により健康被害を受け、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)に基づく障害児養育年金又は医療費等の支給を受けた者の現状については、平成十六年四月現在において障害児養育年金等を受給中である者は、その障害の状態等に変化があった場合の届出を通じて、これ以外の者は、MMRワクチンの接種による疾病にかかった場合等における医療費等の支給申請を通じて把握することができるため、新たに調査を行う必要はないと考えている。
 なお、現在の医学的知見においては、MMRワクチンの接種と自閉症との間には因果関係は認められないものと考えている。

五の(ウ)及び(エ)について
 御指摘のMMRワクチンについては、薬事法第二十三条の規定に基づく輸入承認に係る審査を行っているところであり、審査内容に係る点については、輸入承認を申請した企業の正当な利益を害するおそれがあるため、答弁を差し控えたいが、有効性、安全性等に係る情報に基づき、適切に審査を行ってまいりたい。
 主意書一及び二に対する答弁を通じて、副反応多発をめぐる予防接種行政・薬事行政両面の対応について、いまだ国民が納得できる説明がなされていない。MMRワクチンの導入から接種見合わせにいたる全経過について、第三者機関において検証することが今後の予防接種行政・薬事行政の信頼性向上に寄与すると考えられるが政府の見解はいかがか。
六について
 麻しんの定期予防接種におけるMMRワクチンの使用については、その接種が可能となった昭和六十三年十二月十九日以降、平成五年四月二十七日に使用を見合わせるまでの間、公衆衛生審議会及び中央薬事審議会においてその時点の最新の科学的知見に基づいた客観的かつ専門的な審議が随時行われており、その結果を踏まえ、逐次適切な行政判断をしてきており、この経過について第三者機関により検証を行う必要はないと考えている。
右質問する。

別紙(参考)

引用者 注 答弁書本文「三について」にある調査集計の数値
は以下のとおり

回答総数 平成元年MMR導入時の広報等が残っていると
回答があった市区町村の数
3,151
301
のうち
MMRワクチンのみ接種する
旨の広報
116
麻しん単独及びMMRワクチ
ンの接種を実施する旨の広報
185

引用者 注  「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(MMRワクチン)の接種に関する調査について」(平成十六年四月二十八日付け健感発第○四二八○○二号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
とは→こちら