トリプタンの副作用と問題点(こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

トリプタンの副作用と問題点

トリプタンの副作用について

 トリプタン製剤が使われ始めて20年以上が経過しましたが、重篤な副作用の報告はほとんどなく、安全性が高いお薬と評価されています。副作用として比較的多いのは、頚・胸・のど・肩の締めつけ感や圧迫感、息苦しさといった不快感で、トリプタン感覚とも呼ばれ、トリプタン製剤特有の副作用です。トリプタン感覚は服薬後30分以内に出現することが多く、何もしないでも自然に消失していきますが、現在国内で市販される5種類のトリプタン(スマトリプタン・ゾルミトリプタン・エレトリプタン・リザトリプタン・ナラトリプタン)のいずれにおいても報告されています。狭心症や心筋梗塞との関連で最も気になる副作用といえますが、実際は心臓の異常ではないことが証明されていて、食道や首、胸の筋肉の収縮によると考えられています。従ってトリプタン感覚が出現しても心配は要りませんが、次回受診時医師にそのことを報告してください。
 その他の副作用として眠気や倦怠感などがありますが、トリプタン感覚や眠気、倦怠感などの副作用は、トリプタンの種類を変えたり、服薬タイミングを変えたりすることによって軽減できる場合がほとんどなので、次回受診時に医師にご相談ください。

トリプタンの感受性について

 現在日本国内では、5種類のトリプタン(スマトリプタン・ゾルミトリプタン・エレトリプタン・リザトリプタン・ナラトリプタン)について、7種類の経口薬と1種類の点鼻薬および2種類の注射薬が市販されています。各トリプタンに対する感受性や副作用の出方には個人差があって、ひとつのトリプタンが効かなかったり副作用が強く出ても、他のトリプタンでは問題ないことがあります。従って有効なトリプタンを見つけるまで、ある程度の試行錯誤は避けられない場合もあります。いずれのトリプタンにも反応しない人(ノンレスポンダー)は数%以下と考えられていますので、医師と一緒に自分に合ったトリプタンを探していきましょう。初回トリプタンが無効の場合、一般的な検討手順として、まず片頭痛発作時に使用したかどうか、次に適切な服薬タイミングで服用したかどうかを検討します。また効果の程度(全く反応がなかったか、ある程度有効だったか)、副作用の有無などを検討して、投与量や併用薬の調整、別の剤型・別のトリプタンへの変更などの対応策を考えます。
 また1ヶ月に10回以上で3ヶ月を超えてトリプタンを慢性的に服用するなどの使い方をすると、トリプタンによる薬物乱用頭痛が起こることも知られていて、それを防ぐために医師は処方量と処方期間を常に注意しています。従って他院でトリプタンの追加処方を受けた場合は、そのことを医師に伝えておいてください。トリプタンの使用量が異常に増えてきた場合は、原因を検討して、製剤変更・併用薬・予防投薬・服薬指導などの対応策を考えます。

トリプタンに関するその他の問題点

 その他の問題点としてはトリプタン製剤の薬価が高いことが挙げられます。トリプタンの経口薬・点鼻薬はいずれも1錠(1個)800~1000円前後の薬価で、3割負担の人の場合、1錠(1個)250~300円程度の自己負担額となります。従って市販の鎮痛薬で充分満足できる程度の片頭痛であれば、必ずしも無理にトリプタンを使う必要はなく、実際にのみ比べてみて、費用対効果を検討してみることも大切です。また一部のトリプタンには最近ジェネリック医薬品が発売されています。先行品とのみ比べてみて、特に効果やのみやすさに差がなければ、ジェネリック医薬品の使用も現実的な選択肢といえます。