トムラウシ・フラワートレッキング 第5日

7月19日 晴れのち曇

2:30に起床、食事をとって、テントを撤収。空は晴れ渡っている。ホントに下りちゃっていいのかな・・・
頭の中には、ハクサンイチゲで埋め尽くされた五色が原とバックにそびえたつトムラウシの映像が舞う。

5:15 ヒサゴ沼キャンプ場を出発(高度計:1630m, 温度計:18.4℃)

雪渓コースからのトムラウシ
雪渓コースからのトムラウシ
雪渓コースで化雲岳を目指す。踏み跡を探すのは困難だったが、幸い見晴しがよいので、ずっと先のペンキマークの取り付き点がよく見えた。斜面もさほど急でなく、ヒサゴのコルを経由してヒサゴ沼に行くよりははるかに簡単なように思えた。
雪渓の周りもやはり花が美しく、チングルマの群落が目を楽しませてくれた。上まで行くとトムラウシもきれいに見えた。ホントに下りちゃっていいのかな・・・

6:17 化雲岳分岐(1875m, 25.8℃)

化雲のへそ
化雲のへそ
雪渓コース上部から土の道に取り付くと、すぐに木道になり、わずかな時間で化雲岳分岐に着いた。それにしてもいい天気だ。ああ、下りたくない・・・

6:35 神遊びの庭

神遊びの庭からトムラウシ
神遊びの庭からトムラウシ
分岐にザックを置いて、巻き道の花畑へ。おととい通った「神遊びの庭」である。この花畑越しにトムラウシが見られたらいいなあと思っていたら、今その願いがかなった。ここは一面がチングルマ、エゾコザクラ、エゾツガザクラであった。
しかし、見る見るうちにトムラウシに笠雲が湧き出してきた。いや、湧き出したというより雲が吸い込まれて行くような感じだった。

7:09 化雲岳着(1925m, 28.6℃)

化雲岳より旭岳
化雲岳より旭岳
分岐にもどってまたザックを担ぎ、10分ほどで化雲岳に。展望は360度であった(ぐるぐる写真)。旭岳方面はよく見えたが、トムラウシはすでに雲の中であった。

7:34 稜線

化雲岳 - ポン化雲岳の縦走路
化雲岳 - ポン化雲岳の縦走路
化雲岳からポン化雲岳へは気持ちのよい稜線の道を行く。途中にはヨツバシオガマの花畑があり、見渡す限りピンク色に染まっていた。ヨツバシオガマのこのような大群落は初めて見た。
写真正面の丘のてっぺんからポン沼を見下ろしながら軽食をとっていたら、正面の旭岳がすっかり雲に包まれてしまった。そして、それ以後再び姿を見せることはなかった。トムラウシともこの丘でお別れだ。振りかえってずっと見ていたが、やはり雲の中であった。

8:29 ポン沼(1895m, 25.2℃)

一面の花畑の中を行く
一面の花畑の中を行く
小さな沼だが、周囲は当然のように花でいっぱいだ。
ポン化雲岳のピークは通らない。道自体もついていないようだ。しかしこのポン化雲岳の斜面がすばらしい。全山花で、斜面は白とピンクと緑。
そして花の中を行く道がしばらく続く。この辺りは今回の行程の中で一番のスケールの大花畑であった。そのあと礫地になりコマクサが姿を見せてくれた。下りにさしかかると腰ほどの丈のハイマツの道になり、花は終わりとなる。山は曇だがこの周辺は日が照り付け、徐々に消耗してくる。

9:30 第二公園通過

ぬかるみの悪路
ぬかるみの悪路
第二公園はなんということはない草原であった。
ここからいよいよぬかるみの道が始まる。脇の笹を刈り払って道をつくってはいるが、連続していないので結局泥の中を歩くことになる。また、蚊がすごい。ちょっと立ち休憩すると待ってましたとばかりに吸い付いてくる。日ざしも相変わらず強い。泥・蚊・暑さの三重苦にさいなまれ、かなりまいってきた。

10時過ぎに登りのパーティと遭遇。第一公園から1時間くらいかかったとのこと。第一公園までずっとこの悪路が続くという。ワタスゲの穂がゆれる湿原を思い浮べて気力を奮い立たせる。

11:22 第一公園(1360m, 28.6℃)

第一公園
第一公園・木道と旭岳
最後に涸れ沢を渡るとようやく第一公園だ。幸い、一度も転ばずに泥濘地帯は通過できた。
公園入り口にはエゾカンゾウがいくつか咲いていた。また、チングルマ、エゾコザクラ、ワタスゲの穂がちょうど盛りであった。湿原はエゾマツに囲まれているようだが、ところどころ林の切れ間からその奥にもずっと続いているさまがうかがえる。そしてはるか遠くまでワタスゲの白い穂で埋まっていた。ガイド本に「縦走のフィナーレを飾る花の散歩道」とあったがまさしくそのとおり。旭岳が見えていたらもっと感動は大きかったに違いない。

11:51 第一公園を出発(1335m, 30.2℃)

ワタスゲ
ワタスゲの穂がゆれる
花々を眺めてゆっくり休んだあと、第一公園を出発。
木道は公園の下の外れから設置が進んでいて、我々が最初に着いた上部地域にはまだ材料が転がっていた。工事は7割方終了といったところだろうか。木道区間は普通に歩いても数分かかるくらいで、その間周囲はずっとワタスゲの原で、荷物さえ軽ければスキップでもしたい気分であった。
気が付くと空は雲に覆われていて、あれほどきつかった日差しが弱くなっていた。

13:29 滝見台着(910m, 24.6℃)

羽衣の滝
羽衣の滝
第一公園のあとは最初一気に下り、その後ゆるやかになる。ところどころぬかるみはあるものの、それまでに比べると天国のようなよい道になる。ずっと下るものだと思っていると時折ゲリラ的に短い登りが出現。これがまた結構こたえる。
3,4回ほどゲリラが出現したあと、ようやく滝見台に到着。ベンチがあるが蚊が多くて落ち着いて腰かけていられない。
いつのまにか空はどんよりと曇っている。いつ雨が降ってもおかしくない雰囲気だ。

14:17 天人峡温泉着(620m, 25.4℃)

滝見台より下の道は一般観光客向けに出来ているようで、たいへん歩きやすかった。それほど急でなく、階段も木の根もほとんどなく、ぬかるみもない。少し崩壊して荒れている場所もあったが山ヤにはノープロブレム。40分ほど下ると天人閣の赤い屋根が見え、駆け下るようにラストスパート、ついに天人峡温泉に到着。
この下りでは2人の単独行者に抜かれ、また登りパーティ1組とすれ違っただけでたいへん静かであった。
下山後はバス停から目に付いた天人峡パークホテルに宿をとった。風呂に入り手足を伸ばしたときはほんとうに気持ち良く、憧れの山を歩けた充足した幸せな気分になれた。風呂からあがって少しすると、どしゃ降りになった。もう少し遅れていたら雨にやられていたところだった。またこの雨では翌日以降、あの第二・第一公園間の悪路はさらにひどいことになっていただろう。予定を切り上げて早く降りてきて正解だったのだ。
翌日は、午後の飛行機までの時間、旭川市内を見物してまわった。美味い酒にもありつけた。
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