跡書 1.軸先はアート 2.目の眼 3.戸越神社 4.八犬伝
5.方広寺梵鐘銘文拓本掛軸と搔落し茶碗・兎

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5. 方広寺梵鐘銘文拓本と掻落し茶碗・兎

 方広寺鐘拓本軸
京都国立博物館の西隣にある京大仏(方広寺)の梵鐘の銘は中世の安土桃山時代が終わり、近世の江戸時代への分岐点になる銘文であります。

「所庶幾者 国家安康 四海施化 万歳伝芳 君臣豊楽 子孫殷昌 佛門柱礎」

国家安康は家康の名を分けてしまい、君臣豊楽は豊臣家の繁栄を望む下心であると、家康はいちゃもんをつけ、大坂冬の陣と夏の陣で豊臣家を滅ぼします。お寺ではこの釣鐘の解説のため、チョークでその字の部分を白く囲んでいます。かってお寺の許可を得て、夜、木の梯子を上って採拓いたしました。ありがたいことです。
数年前京都市立美術館の依頼でお隣の豊臣家を祀った豊国神社の巨大な石碑を採らしてもらったことや、寧々の菩提寺・高台寺の梵鐘の銘の拓本を採ったこと等考えると、随分太閤秀吉様にはご縁があります。


この掛軸は私の60年代の創作掛軸。作品の周りの表紙の紙は宇陀紙を墨液で染めたもので、和紙職人・坂本直昭の作品です。彼の紙はほとんど大きくて硬い紙が多いのですが、たまたま見つけた柔らかな素敵な紙を耳もつけたまま、模様のないところをくり抜いて掛軸にしましたまた軸先は素焼きのもので、右側は壊れてしまいました。

    実は撮影後左も割れました(´;ω;`)
2023.1.31
 軸先
 
掛軸の下にある茶碗は「搔き落し茶碗(波兎)」黒石窯造・榊原勇一作。削って模様をだす技法。兎の目と耳のみ赤なのは素敵です。
茶碗のお隣はヨーロッパのタイルで飛びうさぎが描かれています。バンクシーの絵みたい❣
どちらも先月、名古屋のカルチャーで、茶道利休孫から伝わる宗偏流の茶人で、フラメンコのお仕事をしておられます。奥様はフラメンコの踊り手。敷いてある藍染のうさぎ紋と花兎金襴。左の金襴は裏を出して裏打。モノクロ感を出しました。タイルの下は兎懐紙。

 軸と茶碗
 うさぎタイル


4. 八犬伝(南総里見八犬伝)より

 軸  版
本
明治本 「南総里見八犬伝」
  小さなとき、学者であった父の書斎の本棚、押入れを潰した天井までの作り付けの大きな本棚の一角に革表紙の不思議な本が四冊ありました。好奇心旺盛な本好きの私は、父の留守に良く紐解いてみました。
そこには、とってもおどろどろしい絵が入っていました。飛んでいる生首、ほとばしる血潮、それが南総里見八犬伝との出会いでありました。所々読んでみたのですが、あまりにも難解で理解できず、挿絵を観て楽しんでいました。
何時の頃からか、この挿し絵を作品にしたいと思ってましたが、何分にも画才がなく、あきらめていたところ、PCの発達で自分でも簡単な画像処理が出来るようになり、ここに一つの形として創作掛軸に仕立てることが出来ました。                  
 軸  版
【八犬伝絵掛軸】
「南総里見八犬伝」(明治四十二年・金港堂)に掲載されている何百とある口絵や挿図から、絵になり易い八点を選び画像処理して、オリジナルなものにしました。特に目を青にすることで異次元の世界を現し、血を赤くすることで異常な世界を強調しています。
周りの表紙は明治から大正にかけての古裂を使用し、江戸時代の雰囲気を再現しています。

← 八犬子(髷歳白地蔵之図・巻頭口絵)
巻頭には口絵が六葉描かれています。これから始まる物語の暗示がちりばめられた複雑な絵ですが、苦難が待っている八犬士の子供の夢の世界、実際に八犬士全て揃うのは物語りも後半、当時の読者は十年以上待たされます。 
 【南総里見八犬伝とは】

滝沢(曲亭)馬琴のこの長編ロマン伝奇小説は、江戸時代文化十一年(一八一四)に発表され、全百六冊が完成したのは二十八年後、馬琴が七十六歳となっていました。
当時から水滸伝に比肩するものといわれ、私には日本版「ロード・オブ・ザリング」と思う作品です。彼らは指輪を中心に魔界の悪と戦うのですが、ここでは聖玉を中心に戦います。八犬士とそれを取り巻く百人にも及ぶ登場人物や妖怪、房総半島を中心にするも、京まで延びた舞台のスケール、戦争あり、決闘あり、魔術あり、恋愛あり、目くるめく八犬伝の世界を語り尽くせるものではありません。
 和本
さて八犬伝をはじめて紐解いて驚いた口絵や挿絵、実は馬琴自らが下絵を描き、彫らせたといわれています。単なる挿絵ではなく、物語の無くてはならないファクターで私は絵の少ない絵物語ではないかと思っています。
 パンフ  展
 八犬伝の作品は、 2006年3月28日~4月2日にかけて、東京銀座・鳩居堂ギャラリーでの「夏秋の世界・南総里見八犬伝」でお披露目しました。当時はプリントできる薄い和紙が小さく、小さな掛軸の展示になりましたが、その分周りの裂地や凝ったデザインにし、よりアート的な掛軸となりました。

その展覧会の後、八月歌舞伎座で南総里見八犬伝通し狂言で行われました。何十年に一回くらいしか上演されない演目を見逃すわけにはいかないということで、千秋楽に家内を誘って鑑賞できました。私はあくる日の東京の教室、家内は京都の店を留守にできず、なんと高速バス日帰りという曲芸に近い鑑賞となりましたが、大感激のナイトショーでした。このあと歌舞伎座は建て替えられました。
ところでこの年6月9日(我が誕生日)サッカーワールドカップがドイツで開催、日本は予選敗退しました。
 屋根  歌舞伎の八犬伝の一番の見せ場は芳流閣大屋根での立ち回り(大タテ)です。左は当時の場面で、六代目市川染五郎(九代目松本幸四郎)が主演の犬塚信乃を演じ、犬飼源八(現・中村銀之助)との大立ち回り!
下は2022年1月国立劇場で行われた歌舞伎・南総里見八犬伝をテレビで上映されたもの。信乃には尾上菊之助、源八は尾上松緑。物語の後半がおもで、伏せ姫は出てきません。またドローンがでるなど現代風の味付けがされています。これは七代目尾上菊五郎が監修からでしょうか?
実は六代目尾上菊五郎は祖母と昵懇で、六代目といえば尾上菊五郎を挿す名優でした!
 kabuki
 扇雀 福助 
 伏せ姫を演じた中村扇雀    犬塚毛野を演じる中村福助。大名跡・中村歌右衛門を襲名する直前の2013年病に倒れられた。坂東玉三郎と二分する美女ぶり?闘病生活の後復帰され、舞台に出ておられます。実はFBでオトモダチです(^_-)-☆


3. 戸越八幡神社由緒絵巻と天井画 (兎の神社・来年は卯年!)もどる

 戸越八幡  うさぎ
戸越八幡神社社殿天井画(土光洋子画)
東京品川にある戸越銀座は下町銀座として、よくテレビなどに出ます。その一角に1500年代創建の戸越八幡神社が鎮座、昨年私の拓本掛軸を展示した「旅する拓本展」の八幡松花堂美術館の元となる石清水八幡宮の御分霊が祀られている由緒ある神社ではあります。ご縁をいただき、土光洋子画家の描かれた縁起絵巻の製作をさせていただきお納めいたしました。

また安政二年創建の御社殿改修され、その社殿の天井にやはり土光さんの天井画が貼られました。その絵の裏打も私の方でさせていただきました。ありがたく光栄に存じます。ここに一端を紹介したいと思います。
 巻物その絵巻が過日「土光洋子出版記念日本画展」で展示されました。
出版された「台湾80歳から学んだ故郷」については鴨東史談にて述べます。
 戸越神社本殿
 戸越神社うさぎ
 巻物うさぎ
 戸越八幡神社の由緒縁起絵巻(土光洋子画)

2. 目の眼  もどる

 目の眼  迷店
 骨董月刊誌「目の眼」令和元年六月号に総芸舎が京都迷店案内で紹介されました。
メインの特集も白洲正子さんの孫の白洲信哉さんの記事やデービッド・アトキンソンさんの記事も読み応えあります。特に刀剣の記事は拓本でも取り上げます。
それを見たといってオーストラリアの観光客が刷毛と「拓本入門」(淡交社刊)を買ってくれました。サインさせてもらいました。おおきに!(2019.5.20)  

1. 掛軸の軸先はアート  もどる    表装

 掛軸はアートや書を掛けて飾る形態ですが、片づけるためには棒に巻きます。それが軸です。巻きやすさと本体の縁を傷まぬようにするため軸棒の両端に軸先をつけます。最初は棒が少し長めで処理したのでしょうが、掛軸そのものが信仰の対象やアートの額縁的役目を果たすようになると、軸先は色や形を工夫して、装飾化していきました。でもほとんどが木製や骨製のシンプルなもので済まされ、最近ではプラスチックなどで代用されるしまつです。私は軸先も、掛軸全体の一つの装飾と思い、色々凝ってつけてみました。最近はいい軸先を作れる職人がいなくなって残念です。  南大門楓   東大寺南大門
獅子台座石彫楓

掛軸(夏秋拓・装)軸先は朱漆の地に金で蓮を描いたもの
 印仏
印仏(浄瑠璃寺)掛軸
(夏秋拓・装)軸先は漆を墨流し風にしたものです
 軸先1 
 アンコールワット拓本舞踏掛軸
 軸先2
アンコールワット拓本舞踏掛軸(夏秋拓・装)軸先は彼の地で作られた瓶の蓋を利用しました。

平等院梵鐘天女拓本掛軸(夏秋拓・装)
軸先は檀巻で撥型になった朱色軸
平等院梵鐘天女拓本掛軸(夏秋拓・装) 
 八角燈籠  八角燈籠獅子掛軸軸先
東大寺八角燈籠火袋獅子拓本掛軸
(夏秋拓・装)
軸先は大聖寺伊万里と言われるものです。伊万里と言っても石川県九谷です。とっても珍しい軸先です。 
 大聖寺本
かって京都書院というアート系のユニークな書店が河原町四条にありました。創始者も跡を継いだ二代目も知り合いでした。なかでも京都アーツコレクションはとっても素敵な文庫本スタイルの美術書でした。著者の高田さんからいただいた本です。 

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