Corporate Europe Observatory(CEO) 2021年7月13日
業界団体は欧州理事会に影響を与えるために 秘密の経路を支配している 情報源:Corporate Europe Observatory, July 13, 2021 Business lobbies dominate secret channel to influence Council https://corporateeurope.org/en/2021/07/ business-lobbies-dominate-secret-channel 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2021年8月月5日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/210713_CEO_ Business_lobbies_dominate_secret_channel_to_influence_Council.html EU理事会の 150の作業部会について聞いたことがないかもしれないが、それらは、提案された EU法及び政策に関して加盟国が理事会でとる立場を準備する上で重要な役割を果たす。 欧州企業監視所(Corporate Europe Observatory(CEO))による新しい研究は、競争力と成長に関する重要なある作業部会が、どのようにして企業利益団体への特権的なアクセスを提供し、彼らの要求を提示し、議論するかを示している。これらの会議への出席者数に関して、企業利益団体は労働組合や NGOs を 13対1で上回っているが、「競争力」、「単一市場の完成」、「革新」、「より良い規制」という一般的な EU の正統性への反対派は招待されない。 閉じられたドアーの向こう側で、何が言われているのか、誰が言っているのかについての透明性がほとんど、又は全くないこの秘密の企業活動は確かに業界から高く評価されている。この慣行は何年にもわたって続いており、この研究での分析対象期間の 30か月よりずっと前から行われていた可能性がある。それは、招待状を発行する理事会議長国を保持する加盟国政府によって促進され、全体としては、大企業の招待を行うにはあまりにも熱心な理事会の文脈で見る必要がある。一方、理事会事務局は介入できないようであり、この問題に関するガイドラインを整備するという 2019年7月の公約は達成されていない。 理事会作業部会−あなたが知る必要があること EU理事会には 150以上の作業部会とその他の準備機関があり、加盟国の大臣が合意するための政策と法案に関する立場を確立している。 27の加盟国の当局者は、時には毎週、作業部会の会議に出席する。理事会の交代議長国(現在はスロベニア、以前はポルトガルとドイツ)を保持する加盟国は、作業部会会合の議題を設定し、議長を務める責任がある。したがって、外部からスピーカーを招待するかどうかは彼らの決定による。 この分析の焦点は、より良い規制、産業、国内市場、及び観光に関するそれぞれの分科会を介して会合する競争力と成長に関する作業部会である。加盟国の大臣の競争力理事会のために立場と決議の案を準備する。現在の作業プログラムには、EUのデジタル戦略、産業政策、単一市場(訳注1)のさまざまな側面などの注目の話題が含まれている。今後の問題には、EU内に投資する企業にとって本質的に法的特権である、新しい形態の「投資家対国家紛争解決(ISDS)」を提供するという物議を醸す計画を含む。 理事会の作業部会の活動と運営は、立法案に関する理事会の立場の展開と EUの議題の設定において彼らが果たす重要な役割を考慮して十分に精査されてはいない。これは、彼らが運営することを許可されている秘密の方法を反映している。立法文書は日常的に公開されておらず、加盟国によって明確にされた議論や立場を議事録にとることは求められない。この不透明性は、欧州オンブズマン(訳注2)、欧州議会議員(MEP)、及び調査ヨーロッパ(Investigate Europe)によって強く批判されているが、COE(Corporate Europe Observatory)は、これらの作業部会がいかに企業ロビイストの主要な標的であるかを描いている。非常に多くの問題について、加盟国の大臣と役人は企業の利益のための「仲介者」として行動する。そして、以下に述べるように、理事会の作業部会の会議に取り組む機会は、確かに企業のロビー活動の戦力を後押しすることを意味する。 ブリュッセル最大の企業ロビーが権勢を振るう このスプレッドシートが明らかにしているように、業界のロビーグループは、他のどのタイプの外部組織よりも、競争力と成長に関する理事会の作業部会にはるかに多くアクセスしている。合計 80人の外部スピーカーのうち 52人が企業、業界団体、またはコンサルタント会社から来ており、NGOs や労働組合からは 4人しか来ていないため、分析対象となった 30か月の間に業界の出席者は公益団体を13:1上回った。 欧州経営者連盟(BusinessEurope)、デジタルヨーロッパ(DigitalEurope)、欧州化学工業連盟(CEFIC)、産業のための欧州円卓会議(European Round Table for Industry )、マイクロソフト(Microsoft)、サノフィ(Sanofi)(パリを本拠とする製薬・バイオテクノロジー企業)。これらは、調査期間中に理事会の政策立案者への特権的なアクセスを享受し、プレゼンテーションを行い、作業部会での議論に参加した企業利益団体のほんの一部である。これらはブリュッセルで最も支出の多いロビーグループの一部であり、これら 6つのグループにより申告された EUロビー支出の合計は年間 2,100万ユーロ(約27億3,000万円)を超えている。 欧州経営者連盟(BusinessEurope)だけでも、調査期間中に少なくとも 7 回作業部会に参加し、規制緩和、人工知能、単一市場について話し合っていいる。欧州経営者連盟は EUレベルの社会的パートナー(EUの意思決定者へのアクセスの一部を正当化するために時には使用される)であるが、労働組合の社会的パートナーである欧州労働組合連合(European Trade Union Confederation)は、分析期間中の 30か月間にわずか1回、作業部会の会合に参加しただけである。 ビッグテック(BigTech)(訳注3)の利益は、作業部会の会議でよく表されているように見える。 マイクロソフト単独の出席に加えて、マイクロソフト、アップル、フェイスブック及びグーグルは欧州経営者連盟(7回の会議)、デジタルヨーロッパ(1回の会議)、及びシンクタンクである欧州政策研究センター(5回の会議)の会員として出席している。欧州国際政治経済センター(ECIPE)も1回の会議に出席し、技術ロビーと密接な関係がある。これは、この作業部会が EU のデジタル戦略とそれに付随する法律の理事会による精査に責任があることを考えると特に関連性がある。 2020年12月中旬から 6か月の間に、提案されたデジタル市場法、及び/又はデジタルサービス法は、作業部会の内部市場分科会で 25回議論された(スプレッドシート)。 中小(SME)企業分野は完全に除外されているわけではないが、この分野の業界団体 SMEUnited の出席は、合計3回の会議であり、これはすべての外部スピーカーの 4%にすぎない。 この作業部会はまた、招待スピーカーの環境に配慮した資格についてあまりうるさくないようである。 Eurofer(鉄鋼メーカー)、Eurometaux(金属生産者)、CEFIC(化学産業)、CEMBUREAU(セメント産業)、及び Nederlandse Gasunie(化石ガス会社)はすべてスピーカーのリストに含まれている。 特権アクセスとはこのようなものである 招待状は加盟国の役人を知るための比類のない方法を提供するので、積極的なロビイストにとって、これらの理事会の作業部会会合に出席するための招待状を受け取ることは、どれほど好都合なことであろうか。理事会はそのような作業部会に出席する役人のリストを公表し続けることはないので、この個人的な接触は招待されたロビイストを内部の軌道に乗せるのに役立つ可能性があり、勤勉なロビイストによって大切にされるであろう。 さらに、これらの会合は、組織とその要求を提示する機会を提供する。スピーカーは正確な話題について話し、彼らのプレゼンテーションは通常、その後すぐに作業部会のメンバーに回覧され、ロビイストがすでに許可されている特権アクセスを強化する。そして、これらのプレゼンテーションの話題は無作為に選択されていない。企業ロビーの意見の後に、同じ話題に関する理事会の議論が続くことがある。これは、ロビーグループにその後の議論に影響を与える絶好の機会を効果的に提供する。
反対意見は招待されない スプレッドシートが示すように、NGOs と労働組合は合わせて、この作業部会に対処するためにビジネス利益団体に提供されるアクセスの 13分の1 しか受けられなかった。これは、作業部会が環境団体、消費者団体、労働組合などに関心のある多くの問題を扱っているという事実にもかかわらずである。これらには、”より良い規制”、デジタル戦略、化学物質規制、林業、原材料、産業戦略などが含まれる。 上記のように、参加しているシンクタンクの中には、企業の利益に近いことで知られているものもある。作業部会に出席している当局者が反対意見にさらされていないことは明らかである。 その好例は、EU の物議を醸している規制緩和の推進力である”より良い規制”をテーマのひとつとする作業部会の分科会であり、同分科会は調査期間中に18回の会合が開催された。これらのうち、19人の招待ピーカーが 10回の会合に参加した。 EUレベルでの規制緩和を熱心に支持している欧州経営者連盟(BusinessEurope)は常連の参加でありし、4回の会議に出席した。彼らのニュースレターでは、”より良い規制”に関するプレゼンテーションのひとつが”作業部会の多くのメンバーに好評であり、建設的な意見交換を促進した”と報告されている。どうやら、欧州経営者連盟(BusinessEurope)は、非常に物議を醸している規制緩和を支持する立場である”規制の簡素化(regulatory simplification)”を主張するなど、さまざまな点を指摘することができたようである。 一方、シンクタンクである欧州政策研究センター(CEPS)は、欧州委員会の”より良い規制”の重要な要素であり物議を醸している”ワンイン、ワンアウト(One in, One out)”アプローチをいかに実施するかを検討したドイツ政府から委託された研究の発表を含め、分科会で 3回演説した。欧州政策研究センター(CEPS)の調査は、労働組合運動によって批判されてきた。富裕国の政府の組織である経済協力開発機構(OECD)も、4回出席した。この分科会に取り組む唯一の NGO であるオープン・ガバメント・パートナーシップ(Open Government Partnership)(原注:運営委員会に多くの政府が含まれているため、従来のNGOではない)は、”より良い規制”の正統性に異議を唱えず、代わりに透明性、参加、説明責任の必要性を示した。 ”より良い規制”は、単なる技術的な規制プロセスではない。それは企業寄りの政治的議題である。しかし、作業部会は”より良い規制”の支持者からしか意見を聞いていない。 ”より良い規制”とその環境、人間の健康、労働者の権利、消費者の権利への脅威について批判的な意見を持っている労働組合や NGOs の意見を聞いていない。 密室での秘密の議論 上述したように、企業のロビーグループがこれらの作業部会の会議に取り組む様子は、公式の理事会の情報源からではなく、彼らのニュースレターの自慢話から簡単に見つけることができる。 2019年に我々が理事会に報告して以来、この慣行は改善されているが、非常に頻繁に公開されている作業部会の議題では、”利害関係者”は他の情報を提供せずに出席すると述べている。 さらに、我々のスプレッドシートは、3つの会議で外部プレゼンテーションが行われたことを議題が示しているが、理事会はそれらの参加者が誰であるかについての情報を示していないことを示している。たとえば、ルーマニアで開催された2019年5月の作業部会会合(当時は理事会議長国で開催)の議題は、”自動車産業”と”EU化学産業”がプレゼンテーションを行ったことを示している。しかし、理事会事務局は、どのロビーが関与したかを含め、”この会議に関連する他の文書は見つからなかった”と我々に話した。これは、透明性と適切な記録管理の欠如についての懸念を示している。 さらに、ロビイストによるプレゼンテーションは、理事会会合のウェブサイトページに積極的に公開されるのではなく、文書開示要求の手続きを介して取得する必要がある(一例としてこれを参照)。これらは理事会の職員によって協力的に取り扱われるが、要求されたときに文書が常に利用可能になるとは限らず、理事会のウェブサイトは非常に効果のない透明性ツールであり、使いにくく、混乱を招く。奇妙なことに、より良い規制規分科会のほとんどの会議は、”競争・成長−造船(Competit.Growth - Shipbuilding)”の会議としてラベル付けされているが、そのようなグループは存在せず、造船は議題のトピックではない。重要なことに、これは会議の追跡が容易ではないことを意味する。 驚いたことに、作業部会の会議議事録を作成する要求はない。つまり、議論は本質的に密室で行われ、このロビー経路は一般市民やメディアの監視の対象にならない。 最後に、一部の招待者は EU ロビー透明性登録の対象ではない。これには、156の業界メンバーを擁し、”野心的な EU産業戦略のキャンペーンに専念している”業界団体の連合組織である Industry4Europe が含まれ(登録対象でない)、この作業部会には 2回出席している。 理事会議長国の意のままに 理事会の交代議長国(現在のスロベニア)を保持している加盟国は、作業部会の会議の議題を設定し、外部の講演者を招待することについて大きな裁量が与えられている。我々のスプレッドシートによると、フィンランドとクロアチアが議長国の場合、外部スピーカーの 75%はビジネスの観点からであった。ルーマニアとドイツが議長国の場合は、それぞれ72%と64%であった。 多くの議長国はこれを国内企業を支援する機会として利用している。分析期間中、オーストリア(AVL List GmbH)、フィンランド(DIMECC及びMetsaGroup)、ドイツ(Festo and Fraunhofer Institute for Material Flow and Logistics)、及びポルトガル(Indico Capital Partners)は全て、作業部会への出席のために国内の企業を招待した。ドイツ政府はまた、国内の労働組合にも会議の演説を依頼したが、調査した30か月の期間中に出席した他の労働組合は一組織だけであった。 これは、国内のビジネス利益団体への全くの偶然または好意であろうか? それは確かに、スポンサー契約から一回限りの政策イニシアチブ、そして公開イベントまで、国内の企業利益団体を促進するための手段としてEU議長国がどのように使用されているかというより広い文脈で見られるべきである。 しかし、産業界が特権アクセスを確保するのは、これらの作業部会会合だけではない。交代する EU議長国を保持する政府は、企業ロビーとの非公式会を開催することがよくある。欧州サービスフォーラム(サービスに関する業界のロビー団体)は、重要な理事会の準備機関である貿易政策委員会(Trade Policy Committee)と定期的に非公式の会合を開いている(これとこれを参照)。これらの会合は理事会の議長によって主催され、ボーダフォン、HSBC、ドイツテレコムなどが加盟国や欧州委員会の職員と居心地の良いチャットやカクテルさえ楽しむことを可能にした。 一方、コレペール(Coreper)会議(加盟国の大使を集めた理事会の会合)のサイドイベントでは、議長国が非公式の昼食会や朝食会を組織することがあり、DigitalEurope や Allied for Startups(その取締役会には Google、Apple、Facebookが含まれる)などが加盟国首脳らと懇談することができる。 2012年以来、”産業の友(Friends of Industry)”と自称する理事会加盟国のグループが”EUレベルでの産業政策に関連する最近の進展について話し合うために”年に 1回会合を開いている。 2019年10月、産業の友(Friends of Industry)は、オーストリア政府がウィーンで開催した会議で、オーストリア産業連盟(Federation of Austrian Industry)、オーストリア連邦経済会議所(Austrian Federal Economic Chamber)、中小企業連合(SME United)、及び欧州鉄道産業連合(Union des IndustriesFerroviairesEuropeennes)と会談した。結果として得られた宣言は、貿易、気候政策、デジタル化など、さまざまな業界の要求を採用している。 行動すべき時 2019年7月、欧州企業監視所(Corporate Europe Observatory / CEO)は、企業ロビーが競争力と成長に関する作業部会への特権アクセスを提供される方法について、理事会に苦情を書いた。事務総長の迅速な対応は、”これまでの慣行を見直し、理事会とその準備機関の会議への外部ゲストの出席に関する[理事会]サービスと大統領のガイドラインを発行する”と述べた。 しかし、2年経ってもガイドラインは実現しておらず、企業ロビーによる特権アクセスは継続している。理事会事務局は、この問題に関する最新情報を提供することを求める我々の最近の要請に応じていない。 理事会は、この件に関するガイドラインを作成するという約束を実行する必要がある。開催されたすべての会議の議事録の公開を含め、理事会の作業部会の作業については極めて高い透明性が求められる。 しかし、これらのガイドラインは十分ではない。特権アクセスと企業への偏向の問題に取り組むためのさらなる行動が求められる。私的及び商業的利益を有する人々は、重要な話題に関する理事会の立場を発展させる任務を負っている加盟国の役人に、彼らが政策要求を提示するための招待で優遇されるべきではない。 企業のロビイストのためのこの秘密のチャネルをブロックし、 EU機関と加盟国が”単一市場を完成させ”、業界を守るために唱える EUのマントラ(呪文)に挑戦する時が来た。 訳注1
訳注3
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