米化学会 ES&T エンバイロンメンタル 2008年11月19日
カリフォルニア州 全米で初の
グリーンケミストリー・プログラムを立ち上げる


情報源 ES&T Environmental News - November 19, 2008
California launches nation's first green chemistry program
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/es802974r

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年12月2日


 9月29日、カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガー(共和党)の署名をもって、カリフォルニア州は、規制スキームを包括的な化学物質政策の方向に動かす二つの法律を承認する最初のアメリカの州となった(訳注1)。この立法は公衆環境健康の保護を改善し、グリーンケミストリー、すなわち有害物質の使用又は発生を削減又は廃絶する化学製品とプロセスの設計を促進することを意図している。

 カリフォルニア化学産業協会(CICC)やエンバイロンメンタルディフェンス・ファンド(EDF)を含むビジネス及び環境団体はこの二つの法とそのプロセスを賞賛した。しかし他の専門家らはこれらの最初の取り組みはグリーンケミストリープログラムの確立に至らなかっと述べている。

 エール大学のグリーンケミストリー及びグリーンエンジニアリング センターのディレクターであり、カリフォルニアのグリーンケミストリー・イニシアティブ科学諮問委員会のメンバーであったポール・アナスタスはこの新たな法律を批判した。”同委員会は、安全な化学製品とプロセスの研究と開発を支援し、産業が既存のプロセスを再構築するためのインセンティブを与えることの必要性を強調した”と彼は述べている。”これらの勧告は新たな法に含まれていない”。

 同法は昨年EUで採択された包括的なアプローチを取り入れていない。化学物質の登録、評価、認可、及び制限(REACH)プログラムは、化学物質が特定の用途に対し安全であることをこと示すデータを供給することを会社に義務付けている。

 アメリカにはREACHのようなプログラムは存在しない。化学物質を規制するよう設計された法律である有害物質規正法(TSCA)は多くの欠陥を持っている。カリフォルニアはTSCAの欠陥に対して明示的対応した最初の州である。メイン州とワシントン州は市場における有害な化学物質の使用を削減するための自分たちの計画に取り組んでいる。

 新たな法律(AB 1879 及び SB 509)(訳注2)は、カリフォルニア有害物質規制局(DTSC)に、”懸念ある化学物質”を特定し優先付けるために2年間を与えるものである。”懸念ある化学物質”は同法の中でまだ定義されていない言葉であるが有毒性、残留性、生体蓄積性を有すると見なされる物質を含むように見える。同法は、グリーンリボン科学委員会(Green Ribbon Science Pane)に対し実施の取り組みにかかわるカリフォルニア州当局者に助言を与えることを義務付け、全ての州環境部局の首脳からなるカリフォルニア環境政策評議会(California Environmental Policy Council (CEPC))の役割を拡大するであろう。同法パッケージはビジネスと消費者のための新たなオンラインの有害物質情報センター(Toxics Information Clearinghouse)を含んでいる。

 議会に委託された2006年カリフォルニア大学レポートは同法案の枠組みを確立し、化学物質物質ごとのアプローチから脱却しもっと包括的な政策に向かうよう求めている。

 ”我々は、化学物質物質市場は、機能、価格、性能について優れた情報を持っていることを見出しているが、有害性については過小評価されている”とカリフォルニア大学バークレー校の公衆健康研究者であり、2006年レポートの共著者であるミカエル・ウィルソンは述べている。”これらの法案は新たなデータ要求を含んでいないが、それらは非常に手堅いスタートであり我々は進化し続けることを期待している”。

 カリフォルニア化学産業協会(CICC)のディレクター、ジョーン・ウルリッチは、両方の法が気に入っていると述べている。”グリーンケミストリーの概念は、持続可能な発展又は持続可能な産業としての化学物質産業のやり方と矛盾するということは全くない”。

 おそらく最大の懸念は、新たな法は化学物質データを提供することを会社に求めていないことであると非営利の法・政策グループである国際環境法センター(Center for International Environmental Law)のダリル・ディッツは述べている。

 これはカリフォルニア有害物質規制局(DTSC)非常に重い責務を課すものであり、既存の化学物質物質とその代替物質に関するライフサイクル評価を実施しなくてはならない。”これはその責務を産業側に課すREACHとは180度異なるものである”とディッツは述べている。”この精巧なプロセスは分析による麻痺(paralysis by analysis)を引き起こす”。

 ライフサイクル・アナリシスは代替物質を評価するためのひとつの方法を提供し、意図しない結果を回避する。例えば、1979年に米EPAはメチル・トリブチル・エーテル(MTBE)をガソリン添加剤として承認したが、後に研究者らはそれが地下水を汚染することがあることを確認した。MTBEの新たな代替物質エタノールもまた問題を持っており、亜kらかに食料用トウモロコシの供給を混乱させ、肥料排水をミズリー川に流している。

 しかし、エンバイロンメンタル・ディフェンス・ファンド(EDF)の上席科学者リチャード・デニソンは楽観的である。”誰もこれが完全なパッケージであるとは考えていない。それは今後多くのプロセスが待ち受けるまさに最初のプロセスである”と彼は述べている。


訳注1
訳注2
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