ブラウン大学メディア・リレイション 2007年1月2日
欧州連合は化学物質の安全性に関してアメリカの先を行く

情報源:Brown University Media Relations January 2, 2007
European Union Outpaces United States on Chemical Safety
http://www.brown.edu/Administration/News_Bureau/2006-07/06-074.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年1月12日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/brown/eu_outpaces_us.html

 新たなヨーロッパの環境政策は、アメリカを拠点とする電子機器メーカーにも製造法を変えさせるかもしれないとブラウン大学及びボストン大学の政策アナリストは述べている。ブラウン大学国際研究ワトソン研究所客員研究員のスタシー D. バンディビ−ルとボストン大学国際関係学助教授のヘンリック・セリンは月刊誌『環境』12月号で議論ある新たな政策を分析した。


 【プロビデンス、ロードアイランド州、ブラウン大学】 最近、欧州連合は電子廃棄物及び潜在的に有害な化学物質に関する世界で最も厳しい政策のいくつかを採択した。新たな規制の経済的及び環境的な影響はヨーロッパからはるかに離れたアメリカでも感じられる”とブラウン大学国際研究ワトソン研究所客員研究員のスタシー D. バンディビ−ルは述べている。バンディビ−ルは、ボストン大学国際関係学助教授のヘンリック・セリンとの共著により、今月号の月刊誌『環境』の中で、世界中の電子機器製造会社と化学会社に及ぼすように見える波及効果を分析した(PDF)。

 特に、最近の3つのEU環境政策が徐々に欧州連合の27加盟国中で実施されてきている。2003年に採択された二つの電子廃棄物指令(訳注1)は製造者が消費者の使用積み電子機器を無料で処分することを求め、開発途上国に処分のために有害廃棄物を輸出することを禁じている。今週、REACHと呼ばれる新たな規制が採択されたが、それは新規物質とともに30,000種以上の既存化学物質についても登録と選択的な評価を求めるものである。

 これらの規制は家庭電気製品、おもちゃ、コンピュータ、及びその他多くの物を含む製品に影響を及ぼす。”電子廃棄物の問題は劇的に増加している。アメリカ及び世界中で多くの有害物質を含む数億台の携帯電話、テレビ、コンピュータ及びその他の電子電子製品が使用され廃棄されている”とバンディビ−ルは述べた。

 欧州連合の政策は議論の的となっている。一方ではこの規制は、廃棄される化学物質と電子・電気製品によって及ぼされる生態系と人の健康のリスクについての懸念の増大に目を向けている。しかしアメリカ政府と産業界は数十万ドル(数千億円)のコストと失業の可能性を指摘する。

 バンディビ−ルとセリンは、ほとんどの会社は複数の市場でビジネスを行っているが可能な限り数の少ない基準で製品を製造することを望んでいると主張している。彼らはしばしば、異なる市場で異なる製造プロセスで対応するよりも最も厳格な基準に従うことの方をしばしば望んでいる。その結果、もし、ヒューレットパッカードやデルのようなアメリカの会社がEU基準に合致するようノートパソコンの再設計する又は製品中に使用されている化学物質を代替する必要があるのなら、彼らは欧州連合向け以外に製造されるノートパソコンも同じように変更したいと望むであろう。

 4億8,500万の市民からなる欧州の市場規模は大きいので、アメリカ及びアジアの製造者に欧州基準に合うよう圧力をかけ、その結果、世界中に”グリーン”な製品を広めるであろうと著者らは強く主張している。さらに、REACHによってもたらされる新たな有害リスク情報は、アメリカ及びその他どこの国においても環境擁護者らが特定の支持できるデータをもって彼らの取組に専心することができるようにするかもしれない。

 1970年代と80年代に、アメリカは消費者と環境保護のために世界に通じる多くの製品基準を規定した。今日、ヨーロッパがこの役割を果たしており、アメリカ政府と産業界はヨーロッパ及び国際基準に反対している。欧州連合の政策を批判する人々は数十億ドル(数千億円)のコストを予想し、一方、支持する人々は製造者にかかるどのようなコスト増加も、それ以前は消費者、環境、及び数千の有害物質を扱う廃棄物処理業者が負担していたと主張する。

 この複雑な議論の場で、欧州連合自身の経済政策と環境政策の間にすらある矛盾があると著者らは述べている。バンディビ−ルとセリンはヨーロッパが”社会的及び環境的に持続可能な経済成長を促進するための一貫した戦略の形成と実施の重大な課題”に直面していると見ている。ヨーロッパがそうなら、世界の残りの国々もそのことに注目すべきであると著者らは述べている。

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訳注1




化学物質問題市民研究会
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