2005年7月11日 EUプレスリリース
廃電気電子機器に関するEU政策Q&A
WEEE と RoHS


情報源:Questions & Answers on EU Policies on Electric and Electronic Waste
EU Press Release MEMO/05/248, Brussels, 11 July 2005
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/05/248&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

抄訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年7月23日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/EU_E-Waste_QA.html


1) 廃電気電子機器の問題とは何か?

 廃電気電子機器は非常に広範囲の製品からの廃棄物である。それらには、大小家庭電器製品、IT及び通信機器、照明機器、消費者用機器(ラジオ、テレビ、ビデオカメラ、音響機器など)が含まれる。これらの機器は多くの異なる材料から作られており、それらのうちのあるものは有害物質である。それらの有害物質が、廃電気電子機器の処理段階で、特に埋め立てや焼却において適切に処理がなされない場合に、重大な環境問題を引き起こす原因となる。

 実際、それぞれの電気電子機器は、いくつかの基本要素の組み合わせからできている。回路基盤、ケーブル、コード、ワイヤー、難燃剤を含むプラスチック、水銀スイッチ、CRTや液晶表示装置、蓄電池/バッテリー、発光装置、コンデンサーなどである。

 これらの要素に含まれる環境的に問題ある物質としては、重金属(水銀、鉛、カドミウム、クロム)、ハロゲン化合物(CFCs、PCBs、PVCs、臭素系難燃剤/訳注:ハロゲン化合物とはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(BR)、 ヨウ素(I)の4元素を含む化合物の総称)などがある。これらの物質の多くは有毒であり、放出されると人間の健康にリスクを及ぼす可能性がある。例えば、鉛は神経系を損傷し、心臓血管系や腎臓にも有害な影響を及ぼす。カドミウムはまた、腎臓機能に影響を与え、脳の損傷を引き起こす。

 今までは、廃電気電子機器の90%以上は、前処理を行わずに埋め立て、焼却、又は再生(回収)が行われており、このことは汚染物質が環境に放出され、大気、水、土壌を汚染することを意味する。

 1998年の廃電気電子機器(WEEE)に関するデータによれば、居住者一人当たり年間 14 kgのWEEEを出しており、年間総計600万トン(自治体廃棄物の4%)に達する。WEEEは毎年3〜5%増加しており、他のどの廃棄物よりも増加率が高く、廃棄物の平均増加率の3倍である。今日では、市民は一人当たり年間17〜20kgのWEEEを出していると思われる。

2) EUは廃電気電子機器について何をしているのか?

 EUは廃電気電子機器によって起こされる問題に対処するために二つの指令採択している。

 廃電気電子機器に関する指令(WEEE指令)[1]は、埋め立て又は焼却で処分されている廃電気電子機器の量を削減するために、そのような廃棄物の発生を抑制し、再使用、リサイクリング、及び、その他の形で再生することを目指している。したがって、WEEEの収集、再生、及び再使用/リサイクリングが求められる。適切ならば、全ての機器の再使用を優先すべきである。

 電気電子機器における特定有害物質使用制限指令(RoHS指令)[2]は、廃棄物処理の段階で健全な再生を容易にして問題を防ぐために、電気電子機器に含まれる水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、及びポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)を代替物が入手可能なら、代替することを求めるものである。(CFCs、PCBs、及びPVCsに関しては他のEUの規制がある。)

3) WEEE指令の主要な規定は何か? その期限はいつか?

 WEEE指令は2003年8月13日に加盟国を法的に拘束するようになった。

2005年:加盟国は製造者の登録を行いこれを保持し、市場に出され、収集され、再生され、再使用され、リサイクルされた製品の量に関する情報を2年毎に欧州委員会に報告しなくてはならない。加盟国は、この指令の実施状況の報告書を3年毎に欧州委員会に送付しなくてはならない。

2005年8月13日:この期限までに、加盟国は収集システムを確立し、電気電子機器製造者は収集、処理、再生、及び環境的に健全な処分のための資金を調達しなくてはならない。収集とは消費者が新しい製品を購入する時に、新製品1台につき古い電子電機機器1台を手渡せることを意味する。さらに、WEEEを保有する誰でも、及び流通業者が無料で持ち込むことができる収集拠点もある。そのような収集拠点は持ち込み易さと人口密集度を考慮して設置されなくてはならない。

 2005年8月13日以降に市場に出された全ての製品は、消費者がこれらの製品を安易には捨てることができないことを知らせるためにごみ容器に×印のついたマークをつけなくてはならない。

 資金調達システムは、収集、処理、再生、及びWEEEの削減のための資金調達を確保するためのものである。製造者が2005年8月13日以降に新たな製品を市場に出す場合には、これらのコストをカバーするための資金保証(例えば、保険、封鎖勘定用の充当金、共同スキームへの参加など)を準備しなくてはならない。これは、製造者がもはや存在せず、誰も面倒を見ない”孤児製品”を防ぐことになる。

 2005年8月13日以前に市場に出された製品の廃棄物、いわゆる”歴史的WEEE”の取り扱いに関し、製造者は共同システムに参加しなくてはならない。共同資金調達は、新製品に関して均一料金賦課又無料という形をとることができる。

2006年12月31日:この期限までに、加盟国は、居住者一人当たり年間4kgの分別収集を達成しなくてはならない。製造者は、処理のために送られて来るWEEEに対し、当該機器の平均重量に基づき計算された様々な再生とリサイクリング/再使用の目標を満たすようにしなくてはならない。機器は再使用できるよう修理が優先されなくてはならない。それが可能ではない場合には、WEEE指令は部品要素の再使用のための、及び部品要素が含む材料のリサイクリングと再生のための目標を規定している。

 例えば、冷蔵庫や電子レンジなどのような大型家電の再生率は最低80%であり、それらの部品要素、材料及び物質の再使用/リサイクリング率は75%である。小型家電、照明器具、電子・電気工具、おもちゃ、レジャー・スポーツ用機器、監視制御用計器の再生率は70%であり、それらの部品要素、材料及び物質の再使用/リサイクリング率は50%である。機器のカテゴリー毎に異なる再生率及び再使用/リサイクリング率が規定されている。

新規加盟国:2004年5月1日にEUに加盟した10加盟国は、居住者一人当たり年間4kgの分別収集の目標達成については、再生率及び再使用/リサイクリング率の目標達成とともに、24ヶ月の期限延長が許されている(スロベニアは12ヶ月)。

4) RoSH指令の主要な規定は何で、その期限はいつか?

2006年7月1日:この期日をもって、製造者は有害物質である水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、及びポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)を含む電気電子機器を市場に出すことは許されなくなる。

  RoSH指令の付属書は、代替物質が入手できないために、この物質禁止から免除されるリストである。この指令はまた、もし有害物質の排除が技術的又は科学的に実現可能でない、又は代替によって引き起こされる環境、健康、及び消費者安全への負の影響が環境、健康及び消費者の安全利益より大きい場合には、科学的及び技術的進歩に照らして作成される免除リストを適用するために付属書を修正することを許している。

5) 加盟国、消費者、欧州委員会のそれぞれの役割は何か?

加盟国:加盟国の役割は、WEEE指令及びRoHS指令の規定を自国の法律に展開することである(7項参照)。さらに、加盟国は製造者が全ての義務を果たすことを確実にしなくてはならない(参照3項及び4項)。

消費者:消費者はもはや安易に古い電気電子機器を廃棄すべきでない。2005年8月13日から、消費者は新しい製品を購入する場合には新製品1台につき古い製品1台を店に無料で引き取ってもらうか、他の収集拠点に持ち込んで無料で引き渡すことができる。また、同日より新しい電気電子機器には消費者に分別廃棄物として処分しなくてはならないことを知らせる、ごみ容器に×印のついたマークがつけられる(参照3項)。WEEEを分別収集し、それを収集拠点に持って行くことで、市民は健全な再使用、リサイクリング、及びその他の再生(回収)に貢献することになる。

欧州委員会:欧州委員会は二つの指令の実施を支援する。欧州委員会は指令に関連する解釈の問題に関し、加盟国に指針を与えている。その目的のために、FQAの形の指針が作成されている。環境総局のウェブサイトに掲載されている。
http://europa.eu.int/comm/environment/waste/weee_index.htm

 2003年、欧州委員会は、一般家庭以外の使用者からのWEEEに対する資金調達義務を明確にするためにWEEE指令への修正を採択した[3]。2004年、欧州委員会は、欧州委員会にWEEE指令の実施の進捗を報告するために加盟国が回答すべき質問書様式に関する決定(Decision)を採択した[4]。2005年、データ様式の決定を採択した。

 現在、欧州委員会は、さらに物質禁止を免除を許することにより、及び、RoHS指令の下で取り扱われる有害物質の最大濃度を規定することにより、RoHS指令を修正する追加決定を採択するよう手続き中である。

6) この二つの指令の実現でどのくらいのコストがかかり、産業界の競争力をどの程度脅かすのか? 結果として電気電子機器の価格は上がるのか?

 二つの指令の規定は、EUの製造者と非EUの製造者を差別しない。同様に、RoHS指令の下で取り扱われる有害物質の代替のコストはEUの製造者と非EUの製造者は等しく負うことになる。したがって競争力は脅かされない。

 WEEE指令を順守するためにかかる全体コストはEU全体で年間5〜9億ユーロ(650〜1,200億円)と見積もられている。このうち300〜600億ユーロが収集に費やされれ、200〜300億ユーロが再生、再使用及びリサイクリングに費やされる。

 その結果、価格上昇はほとんどの電気電子機器で1%、冷蔵庫、テレビ、及び監視装置で2〜3%の上昇が見積もられる。コストと価格上昇は二つの指令がもたらす利益に照らして正当なものと考えられる。

 その主たる目的は人間の健康と環境を保護することである。しかし、WEEEのリサイクリングはまた、原油換算で年間280万トン相当のエネルギーの節減をもたらす。その結果、資源の利用に関連する負の環境影響が減少する。さらに二つの指令は新規原料の製造コストを節減し、廃棄処分のコストを節減する。

7) 二つの指令は加盟国においてどのように展開されるのか?

 WEEE指令とRoHS指令は2003年2月13日に発効し、加盟国が自国の法律に展開する期限は2004年8月13日である。

 現在までの所、オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、スペイン、フィンランド、ギリシャ、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、スロバキア、及びスロベニアがWEEE指令を自国の法に展開したと報告している。

 RoHS指令に関しては、オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ギリシャ、スペイン、ドイツ、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スウェーデン、スロバキア、及びスロベニアがが実施した。

 欧州委員会は現在、届けられたれた措置が指令の義務を正しく展開しているかどうか評価を実施している。これらの指令をまだ展開していない、あるいは正しく展開していない加盟国に対し違反手続きをとるかどうかは欧州委員会が決めることである。
 WEEE指令とRoHS指令に関する更なる情報は下記ウェブサイトで見ることができる。:
 http://europa.eu.int/comm/environment/waste/weee_index.htm

 加盟国で実施されているシステムの詳細に関し、例えば:  ベルギーの回収システム 2001年7月1日実施
 http://www.recupel.be

 オランダの回収システム 1999年1月1日実施
 http://www.nvmp.nl
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[1] Directive 2002/96/EC of the European Parliament and of the Council of 27 January 2003 on waste electrical and electronic equipment [Official Journal L 37 of 13.2.2003], as amended by Directive 2003/108/EC [Official Journal L 345 of 31.12.2003].

[2] Directive 2002/95/EC of the European Parliament and of the Council of 27 January 2003 on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment [Official Journal L 37 of 13.2.2003].

[3] This amendment, Directive 2003/108/EC [Official Journal L 345 of 31.12.2003] relates to the financing of WEEE from users other than private households. For WEEE put on the market after 2005, producers have to cover the costs arising from its management. For historical waste, producers will finance the costs if they have replaced the product with an equivalent product or one that is fulfilling the same function. But the arrangements also include the option of user financial responsibility. For other historical waste, the financing is covered by the users.

[4] Decision 2004/249/EC


参照:
廃電気電子機器指令(WEEE 指令)2002/96/ECの紹介(抄訳) (当研究会訳)
電気電子機器における特定有害物質使用制限指令(RoHS指令)2002/95/ECの紹介(抄訳) (当研究会訳)
Waste Electrical and Electronic Equipment




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