2014年9月25日 欧州企業監視所(CEO)プレスリリース
議論ある物質についてEUに助言している
科学者の3分の2は、産業側とつながりがある


情報源:Corporate Europe Observatory (CEO), September 25, 2014
Two-thirds of scientists advising the EU on controversial substances have industry links
http://corporateeurope.org/pressreleases/2014/09/
two-thirds-scientists-advising-eu-controversial-substances-have-industry-links


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年10月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/
140925_CEO_Two-thirds_of_scientists_industry_links.html

 議論ある4つの化学物質の安全性評価に関する新たな研究が、関連する科学者の3分の2(67%)が、評価により影響を受ける産業側とのつながりのために、少なくともひとつ、ある者はそれ以上の利益相反があることを示した。評価された物質は、内分泌かく乱性のパラベンとDNAを損傷するナノ形状の二酸化チタン(訳注:及びナノ銀と歯科用水銀アマルガム)を含んでいた。それらの全てはすでに市場で入手することができる物質である。

 本日発表された欧州企業監視所(Corporate Europe Observatory / CEO)による新たな報告書『Chemical conflicts(化学物質の利害対立)』は、消費者問題に責任がある欧州委員会の部局である健康消費者保護総局(DG SANCO)の下にある科学委員会の不適切な独立性ポリシーを明らかにしている。
 科学委員会は、シャンプーから哺乳びんまで、非常に広い範囲の日用品の中に見出される化学物質の人間及び環境へのリスクを評価する。彼らの意見は欧州委員会の規制当局に指針を示し、規制当局は市場にあるどの化学物質がどのレベルで安全なのか、そしてどれが禁止されるべきかを決定する。そのような化学物質が正しく規制されなければ、人間と環境に大きな害を引き起こす可能性があり、またどのような規制も重大な商業上の影響 もたらす。

 欧州企業監視所(CEO)のパスコエ・サビドは次のように述べた。

 ”内分泌かく乱性パラベンのような物質の潜在的なリスクを判断することは、我々が健康な生活、健康な環境、又はまだ生まれていない赤ちゃんの健康な発達を享受するかどうかということに大きな影響を及ぼすことができる。しかし、これらの評価は、公衆の健康に影響を及ぼすだけでなく、そのような物質を製造し使用する会社の財務的運命を定めることにかかわる。このことは、専門的な助言を提供する科学者の独立性は、産業側の影響の疑惑を招かぬよう保たれる必要があることを意味する。しかし実際には違う”。

 検証された4つの物質(パラベン、ナノ二酸化チタン、ナノ銀、歯科用水銀アマルガム)に関する科学委員会の意見に関与した57人の全委員の年次宣言を調べると、科学者の3分の2(67%)が評価された化学物質に関して直接的又間接的利益の関わる産業側とのつながりを持つことが発見された。宣言は、よく知られた医薬品の巨 人GlaxoSmithKline、化学物質の巨獣 DuPont、そして消費者製品のヘビー級 Unilever を含む。

 宣言書の中での最も典型的な利益相反は、産業側のための顧問又は助言者としての役割りであり、その製品が科学委員会の意見に従い規制された会社に対するサービスのために専門家への直接的な支払い、又はある場合には彼らの研究所への支払いを伴うことを意味する。

 サビドは次のように述べた。

 ”狭い利益相反ポリシー及び、事前審査と相互チェックのための不十分なリソースが科学委員会の独立性をひどく損なった。作成される評価が公衆の期待に耐え得ることを確実にするために、健康消費者保護総局(DG SANCO)は、そのプロセスと手続きがどのようになされてきたのかを真剣に検証する必要がある。このことは、利益相反の定義を拡大するような変更を直ちに実施するともに、リスク評価における独立の公的科学者の参加を増やすというような、より長期的な目標、及び最終的には産業と彼らが製造する製品の安全性評価のつながりを全て止めることを含む”。

 著者らは、健康消費者保護総局(DG SANCO)が、どのように独立性原則に則したかだけでなく、卓越性と透明性も評価した。健康消費者保護総局(DG SANCO)、欧州委員会で働く科学者、委員会の仕事をフォローする科学者、そして公益団体との間のインタビューで、懸念すべき欠陥が明らかにされた(原注1)。3原則すべてを満たすための勧告は報告書中に示されている。

原注1
 これらの欠陥は次のことを含む。◆多様な科学的専門領域の欠如 ◆科学者らが少数意見の草稿を記述することの阻止。 ◆利害関係者対話におけるレベルと品質の非常に大きな乖離 ◆の一貫しない及び/又は透明性のない証拠の収集と採用の方法。


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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