第8回バーゼル条約締約国会議 バーゼルアクションネットワーク報告 2006年12月2日 ナイロビ 情報源:Basel Action Network Report and Press Statements on the Results of the Eighth Conference of the Parties of the Basel Convention 2 December 2006, Nairobi http://www.ban.org/cop8/COP8BANReport.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2006年12月13日 更新日:2006年12月25日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP8_Report/BAN_COP8_Report.html ![]() BANは、第8回バーゼル条約締約国会議の議題の中で最も重要な問題に関し下記に報告する。写真は Environmental News Bulletin のご好意によるものである。 BAN一般声明:”コートジボワールの悲劇を目の当たりにして、諸国はバーゼル条約とバーゼル禁止修正条項を以前にまして効果あるものとし、それらが批准され厳格に実施されることを確実にしようとしているように見え、概して言えばこの会議は大成功であったと言える”とバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)のジム・パッケトは述べた。同時に、バーゼル禁止修正条項のもつれた糸を解きほぐそうとした国々は打撃を受けた。最後に同条約は NGOs が長らく言ってきた電子廃棄物(e-waste)危機の深刻性を認め、電子機器の環境を配慮した設計と世界の電子廃棄物の不正売買を終わらせることを誓った。 ■バーゼル禁止修正条項の発効 コートジボワールの悲劇は有害廃棄物の先進国から途上国への輸出を禁じるバーゼル禁止が必要であるということを世界中に再び覚醒させたということが非常に明確になった。このバーゼル禁止修正に断固として反対することで知られる諸国のグループは、インド、アメリカ、日本、カナダ、オーストラリア、及びカナダだけに縮小したことが明らかになった。興味深いことに、かつては反対国であった韓国は禁止に対する反対を取り下げ、JUSCANZ グループ陣営からの初めての脱退となった。この点について韓国は賞賛されなくてはならない。 日本は有害廃棄物の途上国への輸出を合法化させようと最も強硬に要求して孤立した。日本は、資源の乏しい島国なので ”リサイクリング社会” に生きる必要があり、したがって有害廃棄物を近隣諸国に輸出する必要があると主張した。彼らは議場で、”禁止に完全に反対する”と述べた。 同様にアメリカの無党派デービッド・ブラウン氏はバーゼル禁止は WTO の責務に矛盾し、第11条(二国間の、多数国間の及び地域的な協定)を無効にするかもしれないと述べた。彼は第17条の解釈についてBANを公に非難した(下記を参照)。 一方、会議においてバーゼル禁止の賛同国は欧州連合、アフリカグループ、アラブグループ、ラテンアメリカグループ、ノルウェー、スイス、多くに東ヨーロッパ諸国、中国、その他アジア諸国などが多数を占めた。投票になればバーゼル禁止は圧倒的に採択されるだろうことが明確になった。実際、バーゼル禁止修正条項が採択されて以来初めて、4つの文字”vote(投票)”が成功の見込める選択肢として見えてきた。
第17条(5)の曖昧さの解決: バーゼル禁止修正の問題は、国の数とどの国の批准が発効のために勘定されるのかに関する第17条の曖昧な文言についての疑問と不可分に関連している。 実際に二つの解釈がある。ひとつは、1995年の採択時に実際に出席していた国(95カ国)の[3分の2以上の(訳者追記)]批准で発効されるとするものであり、62の批准で十分である。現在の批准国は63である。圧倒的に多数の国は即座に発効という解釈である。 一方、日本、アメリカ、カナダ、ニュージランド、オーストラリアは、最初は、現在の加盟国数(168)の4分の3、すなわち128カ国の批准が必要であるとする国連法務部の標準(default position)を主張したが、それは今後さらに20年かかりそうな選択肢である。その後、彼らは加盟国が決定することを許されるということを認めさせられたので戦術を変え、どのような結果も出ないような議論を主張した。対立する二派は全体委員会の議長により退席し妥協案を出すよう求められた。 多くの時間が経過した後に、前文で早期発効を求めるが、本文で早期の解釈を求め、しかしどちらの解釈が望ましいかについては中立を保ち、次回の締約国会議で検討するという妥協に達した。この合意を受けて、欧州連合が禁止連合を代表して発言し、論点はCOP9までに解決されなくてはならないと述べた。 BANの見解として、反対派は間違いなく可能な限り発効を遅らせようとするであろうし、日本のような国は、捕鯨の国際的な禁止を阻止するために過去数年間実施して成功してきたように、途上国を買収しようとするであろう。この種の政治的工作を監視する必要がある。 BANの声明:”我々は昨日、そして数年前からこの禁止を必要としてきた”とバーゼル・アクション・ネットワークのコーディネータ、ジム・パケットは述べた。どの62か国が批准したかということは重要ではく、私は締約国の大部分は禁止の実施は遅すぎると認めていると思う。毎日、合法的に廃棄物取引が行われており、死亡と疾病の長期的なリスクに対し警鐘が鳴リ続けている。 ■電子廃棄物 拡大局(The Expanded Bureau)は、”電子廃棄物に対する革新的な解決”というテーマを選定し、「ハイレベル E-Waste ワールドフォーラム」を開催した。フォーラムはUNEPのエグゼクティブ・ディレクター、アキム・スタイナーによって主宰され、初日の開会の挨拶の中でバーゼル・アクション・ネットワークの活動を引用して讃えた。同様にノーベル賞を受賞したケニアのグリーンベルト運動のワンガリ・マータイさんは、グリーンピース、バーゼル・アクション・ネットワーク、シリコンバレー有毒物質連合及びその他のNGOs をこの問題について世界的に取り組み、問題を明らかにしたことを引用し賞賛した。 ハイレベル・フォーラムの目標と重点は、バーゼル条約の姿や妥当性を述べることなく電子廃棄物に関する問題意識を提起することであり、そのことがナイロビ宣言及び行動の決定をもたらすであろうということであった。多くの人々は、事務局がこの問題をバーゼルの問題として世界の最前線にもたらしたNGOsを排除したことに驚かされた。パネルに参加したNGOは非唱道(non-advocac)団体である国際持続可能な開発研究所(IISD)だけであった。一方、このフォーラムにはノキア、ヒューレットパッカード、日本の同和鉱業など多くの産業代表者が招待された。 ナイロビ宣言で各国は次のことを認めた。
その中で重要な点は:
BANの声明:”アメリカと日本の不平にもかかわらず、世界の大部分が電子機器での有害物質の使用を生産者拡大責任通じてゼロに削減する基本的な必要性を理解したということを見るのは愉快なことである。同時に、貧しい人々を犠牲にするだけでなく、有害物質の排除とグリーン設計を行う上流の責任目標を反故にする有害電子廃棄物輸出を防止するための強い要求があった”とバーゼル・アクション・ネットワークのコーディネータ、ジム・パケットは述べた。 ■船舶解体と廃棄船
船舶解体諸国グループはIMO条約にそれほど満足していないことが明らかになり、製造者には最小限の義務を求める一方で製造者責任をもっと求めるという考え方を支持する傾向があった。実際、会議全体の中で明らかになった最も衝撃的なことの一つは総会でインドがIMO条約の展開を支持しないと述べたことであった。IMOの代表はインドの発言に驚きを隠さず、”彼が言っていることをまじめに受け取らないことにするか、もし、まじめに受け取るなら私は自分の時間を無駄にしていることになる”と述べた。実際に、もしインドが同条約に加わらないなら、同条約は意味のないものになる。
それにも関わらず、先のCOP(決議 VII/26)の達成を覆そうとする努力は阻まれ、特にIMO条約は”同等の管理レベル”をもたらさなくてはならないとする原則は保持された。 さらに、IMO条約ドラフトに対する疑念はワーキング・グループの場及び総会の場においてますます明らかになってきたことは非常に興味深いことであった。しかし、アフリカ諸国の中に将来の船舶問題には対応できないというバーゼル条約の不十分さに関して問題意識が持ち上がったことは明らかである。さらに、船舶解体国に対する資金調達を行っていないこと及び輸出に先立ち船舶汚染の事前除去のような上流側の責任がとられていないことなどが船舶解体国によるIMO条約に対する批判として提起されたことは興味あることである。 決議中の注目すべき項目
最後に、他の第三者会議が開催されるべきというILO/IMO/バーゼル合同ワーキング・グループに関する決議が採択された。 BANの声明:”海運権益は、IMO条約ドラフトは当分発効しないであろうという事実、そしてその期間に2000隻以上の一重殻石油タンカーが世界中で現役を退くという事実にもかかわらず、バーゼル条約を侵害し可能性ある全ての能力を阻止し続けた”と船舶解体に関するNGOプラットフォーム及びバーゼル・アクション・ネットワークの報道担当ジム・パケットは述べた。”このことは疑いなく数年の間に悲劇的にもその無責任さを証明するであろう” 訳注:船舶解体に関する一般情報は当研究会の下記ウェブサイトをご覧ください。 ■低含有POPs (残留性有機汚染物質) アフリカ・グループによる修正要求のおかげで、不適切に高い現在の低含有量POPs レベル規制値を暫定的なものであるとし、2008年に先立ちこれらのレベルに関してもっと検討するという目標を勝ち取ることができた。 これは、初めてバーゼル会議に参加して歓迎された国際POPs廃絶ネットワーク(IPEN)の主要な目標であった。現在の低レベルな規制値ではアフリカやその他の開発途上国にダイオキシンやPOPs貿易の洪水もたらすことになるという懸念がその見直しの要求を促進した。 BANの声明:暫定的なものであると同意されたダイオキシンのようないわゆる低含有POPSの規制値は現在、非常に高く設定されている。もしこのままなら、ダイオキシンはこれらの規制値、あるいはその規制値まで希釈すれば、自由に輸出することができるということをあくどい廃棄物取り扱い業者に伝えるようなものであるとバーゼル・アクション・ネットワークにジムパケットは述べた。”我々はストックホルム条約が塩素産業あるいはダイオキシンで汚染された廃棄物や土壌を浄化することを嫌がる諸国によって乗っ取られることを許すことはできない”と彼は述べた。 ■携帯電話の国境を越える移動に関する指針文書 携帯電話パートナーシップ・イニシアティブ(MPPI)の携帯電話ワーキング・グループの一員としてBANは加盟国とともに移動電話・インターネット協会(CTIA)及びアメリカ政府と激しく戦わなくてはならなかった。それは彼らがこのパートナーシップを利用してバーゼル条約の国境を越える移動のルールから携帯電話を免除するよう提案したからである。 彼らはリサイクリング及び廃棄のための輸出について主張を通すことには失敗したが、彼らは修理後の再利用のための輸出について非法規的アプローチを執拗に提案し続けた。妥協案として、ワーキンググループは加盟国に対して二つのオプションを提示することに同意した。一つは決定木(ディシジョン・ツリー)アプローチと呼ばれるものでバーゼル条約の規定を正しく適用するものであり、もう一つは自主的アプローチと呼ばれるものである。 加盟国は、産業界の参加は産業界が好まなバーゼル条約を逃れる非法規的スキームを作ることになると見ており、BANも産業界の参加を警告していた。事前会合配布したBANの新聞で、また会議場で、BANは開発途上国はパートナーシップに加わっておらず、その結果、危険な先例が自主的アプローチとして知られるパートナーシップからもたらされると加盟国に伝えた。その理由で我々は指針文書は暫定的にのみ採択されるべきであると要求した。 我々が産業側の参加を警告したとおり、オーストラリアやカナダなどの少数の例外を除き加盟国は、自主的アプローチの実態を知ってハッピーではなくなった。欧州連合は1年半の間機能した指針文書を”留意”することだけを望んだ。ブラジルは使用済み携帯電話の輸入を全面的に禁止する権利を持つと信じるとすら述べたが、多くの国々はこのことがらを自由討議ワーキング・グループ(OEWG)内で議論する時間を自身に与えるために暫定的に採択することだけを望み、さらに将来のパートナーシップに開発途上国を含めることを要求した。 最終的な決議は下記を要求した。
■プロボ・コアラ号/コートジボアールの悲劇
この悲劇はバーゼル条約のルールをの厳格な適用の要求とバーゼル禁止修正条項の早急な発効の動きを活気づかせた。コートジボアール代表による水曜日の朝の加盟国へのプレゼンテーションはその客観的な説明とすざましい犯罪及びその場面を示して圧倒した。 政府声明は同国での最もひどい危害に対しすでに3,000万ドル(33億円)以上を自国の予算から出費したが、日本からの200万ドル(2億2,00万円)以外は国際的な資金援助がないと述べた。日本は廃棄物貿易にドアを開けるよう激しく圧力をかける一方で、この不法輸出事件に同情的であるということを示すために十分豊かな国である。 会議において発表されたコートジボアールに関する議長声明及びその他の声明:
訳注:コートジボアール事件関連情報
国境を越えてアフリカに持ち込まれる危険廃棄物に関するバマコ協定 (Bamako Convention on Transboundary Hazardous Waste into Africa) 1991年、この協定は 「人間又は環境に害を及ぼす物質の環境中への排出を防ぐために、汚染問題に対し未然防止及び予防的アプローチを実施する・・・」と述べている。 ■アジアにおける廃棄物に関する日本側のイベント 日本がスポンサーとなったサイド・イベントで、BANは、日本が彼らのアジアにおける”リサイクリング社会”構築の一環として、地域の発展途上国に有害廃棄物輸出することに賛成していると日本に白状させた。日本による3Rs、キャパシティ・ビルディング、環境に適切な管理、リサイクル社会などの言葉の使用は全て、非常に周到に用意されたバーゼル条約及びバーゼル禁止修正条項への破壊的な攻撃の一部である。 次にBANは日本のサイド・イベントに参加した人々に日本が医薬廃棄物や医療廃棄物の関税をゼロに下げさせる試みをフィリピンに対して行った最近の出来事を知らせた。BANの報告書 JPEPA as a Step in Japan's Greater Plan to Liberalize Hazardous Waste Trade in Asia, 8 November 2006 は下記 URL から入手可能である。 http://www.ban.org/library/JPEPA_report.pdf 訳注: ・バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)報告書 2006年11月8日/日本フィリピン経済連携協定(JPEPA) 日本のアジアにおける有害廃棄物貿易の自由化構想の第一歩 (当研究会訳) 廃棄物の問題が持ち上がると、日本は、一般的に関税を撤廃しようとしただけで、有害廃棄物の輸入を禁止しているフィリピンの国内法を無効にするような企てがあったことを否定した。日本は、バーゼル条約及び特に開発途上国への国境を越えた移動を最小にするというその主要な義務に反対する戦いの中で、孤立していることが明白になった。 日本は市場においてバーゼル条約を転覆するために権力と影響力を行使し、非常に巧妙に振舞っている。日本はバーゼル条約に対する単独での最大の貢献国家であり豊富な金と影響力を持っていることをよく頭に入れておかなくてはならない。彼らの基金の恐るべき支出の例のひとつは、会議の開会式のために作成されたビデオであり、その中で、透明性をもった地域の廃棄物協定と高水準ばかりがエコーしていた。バーゼル条約の事務局長サチコ・クワバラ・ヤマモトはスピーチの中で、地域の廃棄物貿易協定は透明性等がある限りよいことだとバーゼル条約の義務に反することを述べた。さらに日本が身に付けた公衆との関係を良好に保つやり方は、廃棄物の輸出自由化を非常に巧妙に実現するための仮面である3Rイニシアティブを推進するためにワンガリ・マータイ女史をを利用することであった。彼女は日本の3Rプログラムのほとんどのパンフレットに登場する。 印象をよくするために、日本は違法な取引の阻止と呼んでいる多くの取組を紹介したが、一方日本が同時に推進していることの多くはバーゼル禁止修正条項が実施されてたいれば違法な行為である。 BANの声明: ”日本は現在、バーゼル条約及び国際的な環境正義の原則に全く反して有害廃棄物の国際的貿易を推進する強力な裏切り者として世界のコミュニティで孤立している”とバーゼル・アクション・ネットワークのジム・パケットは述べた。”国際捕鯨禁止に対する攻撃の中で行われたように、諸国はバーゼル禁止修正条項が発効するのを阻止するための見返りを受けることを期待でき、そして廃棄物と廃棄物の自由化を受け取ることができる。我々は開発途上国が自身の安全を守り、この露骨な廃棄物植民地主義に抵抗することを望む。” UNEP会議報告:http://www.iisd.ca/basel/cop8/27nov.html 会議に提出されたBANの論文及び記事:http://www.ban.org
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