BAN 有害廃棄物ニュース 2006年10月13日
船舶解体に関する人権・環境団体プラットフォーム プレスリリース
船舶解体に関するIMO条約案は倫理にもとる

情報源:Toxic Trade News / 13 October 2006
NGO Platform on Shipbreaking - Press Release, 13 October 2006 (London)
Draft IMO Treaty on Ship Scrapping Immoral
http://www.ban.org/ban_news/2006/061013_ship_scrapping_immoral.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年10月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/06_10_13_Draft_IMO_Treaty


 【2006年10月13日(ロンドン)】−労働者、人権、及び環境 NGOs の連合は、環境を損ない開発途上国の貧しい人々の労働力を搾取する全くひどい世界の船舶解体問題を管理するための国際法を制定するために行われている国際海事機関(IMO)の会議で今週示されたIMO条約案を倫理にもとるものとして非難した。

 同条約案は、インド、バングラディシュ、パキスタンのような国に廃船を輸出する前に有害物質をの一次除去を海運業界に求めておらず、また、過去の汚染の浄化、現状の改善、又は将来のグリーンな船舶解体の確保のためのコスト支払うことを産業側に求めていない。広く受け入れられている”汚染者負担の原則”は同条約案には適用されておらず、産業界全体で負担すべきコストを船舶解体国が負担するよう期待されている。

 ”この条約案は、原則が欠けている”とプラットフォームの幹事イングビルド・ジェンセンは述べた。”第一にそれは世界的に非難されている有害廃棄物を貧しい人々に向けて投棄することを認めているが、これははなはだ倫理にもとることである。これは、投棄者がもたらした損害に対する投棄者の支払いの回避を許すことにより、ひどい目に合わせた上にさらに侮辱を加えるものである。”

 この会議は、海運業界の権益と海運国家の権力−ノルウェー、アメリカ、ドイツ、日本、及びギリシャに支配されている。一方、国際労働機関(ILO)、労働組合、国連のバーゼル条約、船舶解体労働者、グリーンな船舶解体業者、及び環境と人権団体を含むその他の利害関係者の利益は無視又は拒絶されている。

 現在、世界のアスベスト及びPCBで汚染された船舶の約95%が、世界で最も貧しい人々、最も保護されていない人々、そして必死で仕事を求める労働者らによって解体されている”とバーゼル・アクション・ネットワークのジム・パケットは述べた。”それは倫理にそむくものであり、人権と環境の両方に対する侮辱である。しかし、同条約案の作成を主導しているノルウェーのような国々は、危険を貧者に押し付けるという不平等を継続しようと企んでいる。”

 この条約は、今のままでは、人権と環境を保護するための主要な国際的規範と基準を侵すことになる。これらには特に、安全で健康な労働環境の権利を守る国連のILO条約や、有毒/有害廃棄物の移動を管理しさらには禁止すらするバーゼル条約がある。

 つい先月、インド最高裁によって設立された特別委員会が、アスベスト肺と事故による死亡がインドにある世界最大の船舶解体場の数千人の労働者に被害を与えているという大変な状況を明らかにした(脚注1訳注1)。

 ”この最近の調査結果は悲しいことに、長年、南アジアでの船舶解体現場で起きている惨事について我々が言ってきたことの全てを裏付けるものである”と船舶解体に関するNGOプラットフォームの幹事イングビルド・ジェンセンはブリュッセルから述べた。”死亡と犠牲者の肺の中の証拠が示す疾病及び多くの事故は、恥知らずで貪欲な海運業界と彼らを守る政府の責任である。”

更なる情報の連絡先:
  • Ingvild Jenssen, NGO Platform on Shipbreaking, in Brussels, Belgium: +32 485 190 920
  • Kevin Stairs, Greenpeace International, in Amsterdam, Netherlands: +49-6221 809941 (+49-1799282037 mobile)
  • Jim Puckett, Basel Action Network, of Seattle, USA: +1.354.0391 (mobile), +1.652.5555 (office)

脚注1
 インド環境森林省長官プロディプト・ゴーシュに率いられた技術専門家特別12人委員会によって最近なされた審議結果は200ページの報告書に示されて先週、最高裁に提出された。一般的に保守的な委員会によるこの報告書は、X線写真により労働者の16%にアスベスト肺があること、また年間に労働者1000人に2人の事故死が起きていることを示している。呼吸障害を引き起こすアスベスト肺は肺がんをもたらす。治療方法はない。


訳注1
BAN 有害廃棄物ニュース 2006年9月14日/船舶解体に関する人権・環境団体プラットフォーム プレスリリース/人権・環境の12団体 ”有毒船”の解体を即座に中止するよう要求最近のインドでの死亡と疾病の調査結果を受けて ”SSノルウェー号”の解体も禁止すべき(当研究会訳)



化学物質問題市民研究会
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