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 2年前に卒業したCから電話がかかってきた。二つ上の姉Mも卒業生で、ほんの時たま二人は連絡してくる。
 特に用があるというより、二人に言わせると「先生に会いたくなるんだよね」ということらしい。いつもたわいないお喋りでの近況報告を聞いて一時間余りを過ごす。
 私は用事以外で人と時間を共有することに慣れていない(この歳で!)。だから、求めて外に向かわない私の生活の中で、MとCのように慣れ親しんでくる関係は、居心地が定まらぬ感覚を伴う。それでも私が、二人を遠ざけずに時間を割くのは、二人には私を利用しようという気持ちが一切ないからだ。
 何かを教えてもらいたい、何か頼みたい、相談したい、聞いてほしい……そういったことは学校にいる間はごく普通にあって当たり前のことだが、卒業してもそういう関係のまま連絡してくる人はたまにいた(今もいる)。しかし、私は、現在地を共有しない間柄になったら、もう私は過去の人だと切り変えてほしいと思っている。
 教員になってすぐのころの教え子の中には、今もお互いを「ちゃん」付けで呼ぶ友人になった人もある。でも、自分が言わば「教師」として時を重ねてからは、生徒との関係性はある一時期だけの歴史(期間限定)でありたいと思ってきた。年齢差は開く一方だから当たり前だけど。
 それはさておき、MとCの話に戻そう。
 彼女たちは卒業時に決まった会社にきちんと勤めていて、今は三交代勤務をしている。私の都合のいい時に会えたらと言うので、二人の仕事の休みである二週間後の日曜日に約束した。二人の希望は「十九時頃」。
 了承したが、目を悪くした今は、夜間の運転は避けたい。それで、「もし雨天だったら、車では行けないから、我が家近くのお店で会いましょう」と、歩いて行ける場所にあるいくつかの候補を挙げておいた。
 約束した二週間後の日曜日、この日は台風の影響で午後から本降りとなった。
 午後になっても特別何も連絡がこないので、これは今日はお流れだな、と思っていた。そうしたら、四時近くなって、「雨だからお迎えに行きます、〇〇というお店に行こうと思います」と言ってきた。全く知らない、どこにあるかもわからない。
 ありがたく、申し出を受けることにする。
 土砂降りに近い天候の中、二人はきっちり時間どおりに待ち合わせ場所で私を待っていた。
 一五分ほど走って行った先は、しゃれたカフェだった。Cの運転は上手で、まったく危なげがない。Mも免許を持っているけれど、この日は勤務明けで、助手席係なのだと言う。自然にお互いの疲れ具合とかを思い合って生活の中の立ち位置を決める人間力、それがこの二人には備わっている。
 さて、そんな二人は何を話すのかと思っていたら、やっぱり特別なことが出てくるのではなかった。
 注文して運ばれてきたピザの食べ方の話(食べ方にルールなどあるのか?)、前菜のアボカドの日本名の話(ワニナシ、「鰐梨」と書く、これは私が教えてオオウケ)、会社の同僚が「ツンデレ」だとか言うので、それはどういう態度をなのかを教えてもらった。
 一時間余りいろいろなことを楽しくおしゃべりした後、Cが、一〇月から通信制の大学に行くつもりだと言い、Mも日本語検定1級と英検にチャレンジすると、頼もしいことを宣言してくれた。 「じゃあ、先生、また! いろいろ報告できるときに! 」
 私を家の近くまで送ってくれて、二人は元気に笑って帰って行った。 (さ)