ツールドニッポン2002実戦編
5月4日 高知〜阿蘇(342.97km)
エマージェンシー地図より
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ラリーの朝は早い。
5時、小屋の主であるニワトリに叩き起こされる。
朝食を取ろうとするが、胃が張っていて、食が進まない。
よくよく考えると、ついさっき晩飯を食べたばかりだった・・・
今日1本目のSSは、昨夜のSSを逆走するはずだったけれど、
コンディションの悪さからキャンセルとなる。
今日は、九州に渡るフェリーの時間の制約もあるので、
それも、SSキャンセルの理由だろう。
スタートの順番を確認する気力もなく、
ただひたすらオフィシャルの呼び出しを待つ。
(後で気が付いたが、四国では一枚も写真を撮っていなかった・・・)
後日届いた公式発表によると、
昨夜のSSは、途中からエスケープルートが
作られたりして、「公平性が損なわれた」とのこと。
公平に計測が成立したのは上位8名のみ。
というわけで、全員に8位のエントラントと同一のタイムが与えられた。
因みに僕の順位は、なぜか52位まで上昇していた。
スタートし、昨日走って来た(?)であろうコースを見る。
暗くて、状況がよく分からないのが幸いだったかも知れない。
道幅の狭い、滑りやすい路面では、下手をすれば崖落ちも十分あり得ただろう。
コース脇に放置されたリタイア車両が、
昨夜のSSの壮絶さ、楽しさ(?)を静かに物語っているようだった。
§
舗装路に出ると、ルートは南へと向かう。
国道32号を行き、海沿いの県道14号を進む。
有料の橋を渡ると、そこは桂浜。坂本竜馬の銅像があるが、
9年前に見ているので、今回はパス。
海岸沿いの道が続く。
国道56号で内陸に入り、峠を超えると、
林道手前に、エントラント達が溜まっている。
林道が崖崩れで通過出来ないらしく、迂回ルートの指示待ちである。
結構な時間を待たされるが、ルート説明の後、三々五々出発。
1.5車線の幅の狭い舗装路が続く。
四国ならではの岩のせり出した道は、神経を使うし、
時間が掛かる割りに、距離が稼げない。
フェリーの出発時間が迫り、焦りが入る中、先を急ぐ。
時間ぎりぎりで八幡浜のフェリーターミナルに到着。
オフィシャルに急かされるように通過チェックを受け、乗船口へ。
§
13時40分、大分県別府へと向けて、船は出発した。
フェリーの中では、少しでも疲れを取ろうと、眠りにつく。
というよりも、昨日の疲れのせいで、自然に寝入ってしまった。
目が覚め、程なくすると別府到着の知らせ。
止むかと思われた雨も、まだ降り続いている。
約3時間の船旅は終わり、雨の九州に上陸する・・・
・・・・・2年前、2000年4月の夕刻
川崎発のフェリーが、雨の宮崎港に着岸した。
フェリーターミナルを後にし、最初の信号に差し掛かる手前のこと。
エンジンが、急にストップした。
セルをいくら回しても、エンジンがかかる気配がない。
降りしきる雨の中、プラグを外すが、火花が飛んでいない。
点火コイルの故障らしい。
行きつけのコクボモータースに電話してみると、
すぐそばにBMWのディーラーがあるという。
連絡を取ってもらい、待つこと10分。
やって来たのは、オートショップユタカの広川さん。
トランポに乗せてもらい店まで運んでもらう。
原因は、やはり点火コイルで、クラックから浸入した雨水が
点火コイルをショートさせたようだった。
もしも、今日、雨が降っていなかったら、
故障せずに走り続けることが出来たかも知れない。
でも、ここで故障してくれて本当に良かったと思った。
これが、人里離れた山の中だったらと考えると、ぞっとする・・・・・
雨のせいもあり、そんなことを思い出していた。
きっと、雨の九州に来るたびに、そのことを思い出すのだろう。
§
カッパを着込み、船を降りる。
ICOのスイッチを入れ、再びコマ図のトレースが始まった。
今日のゴールまでは、たったの120km。
だんだんと距離に対する感覚が変わってきている。
100kmや200kmなら、何てことないと思えるようになっていた。
国道10号を20kmほど行き、国道210号に入る。
途中、地元スタッフであるカオルエンジニアリングの
店の前を通過する。当然(?)店は閉まっていたが、
張り紙に気が付いた。
「明日はゴール! 今日はカレー!」
なんだか、心が暖かくなり、やる気が出てきた。
§
湯布院付近で、国道から外れて山に入り、SSへ向かう。
今日のSSは、林道を使った7.38kmのステージだ。
SSがスタートした。
ダートは、すぐにアスファルトに変わり、ここぞとばかりにアクセルを開ける。
ダートに戻ると、またへなちょこ走りに戻る。
道に覆い被さった木の枝が、邪魔だ。
路面をよく見たいが、枝をよけるので精一杯。
余裕のない走りが続くが、スピードは落とさない。
一際太い枝が、前方に立ちはだかる。
これに引っ掛かるわけには行かない。
首をすくめて、よけたつもりだった。
が、しかし・・・
よけ方が甘く、ヘルメットのバイザーが引っ掛かってしまった!
これでもかと言うばかりに、首が後方に引っ張られ、
真上を向かされてしまう。
でも、なんとか落車は免れた。
そこからは、一気にペースダウン・・・
慎重な走りでSS終了。
1人のエントラントと、「あの枝は、やばかったね」と話す。
§
SSを終えるころ、辺りは暗くなり始めていた。
のどかな田園地帯のあぜ道を行く。
日の暮れたやまなみハイウェイを少しだけ走る。
雄大な九重山の眺めは明日にお預けだ。
暗闇の中、ひたすらコマ図を追う。
そして、今日のビバーク地であるゴンドーシャロレー牧場に到着した。
テントを設営して、夕食へ向かおうとしているところに、
バカミーメンバーの#40内田さん、#45鵜澤さんが帰着した。
途中で温泉に入って来たと言う。
やはり、それぐらいの余裕が必要だよね。
2人のテント設営を待って、夕食へ向かう。
カオルエンジニアリングの張り紙通り、メニューはカレーライス。
それに加え、サラダに、ビールも付いている。
疲れきった体に染み入るビールの美味さといったら、
言葉にはならんですね。
明日で終るという安堵感からか、
その場は、前夜祭のような雰囲気に包まれている。
ほろ酔い気分で、眠りについた。
いよいよ明日は、ゴールだ。