ツールドニッポン2002実戦編

 

5月4日 高知〜阿蘇(342.97km)

P5120014.JPG (107251 バイト) P5120013.JPG (112289 バイト)

エマージェンシー地図より

(クリックすると大きく表示されます)

 

ラリーの朝は早い。

5時、小屋の主であるニワトリに叩き起こされる。

朝食を取ろうとするが、胃が張っていて、食が進まない。

よくよく考えると、ついさっき晩飯を食べたばかりだった・・・

今日1本目のSSは、昨夜のSSを逆走するはずだったけれど、

コンディションの悪さからキャンセルとなる。

今日は、九州に渡るフェリーの時間の制約もあるので、

それも、SSキャンセルの理由だろう。

スタートの順番を確認する気力もなく、

ただひたすらオフィシャルの呼び出しを待つ。

(後で気が付いたが、四国では一枚も写真を撮っていなかった・・・)

 

後日届いた公式発表によると、

昨夜のSSは、途中からエスケープルートが

作られたりして、「公平性が損なわれた」とのこと。

公平に計測が成立したのは上位8名のみ。

というわけで、全員に8位のエントラントと同一のタイムが与えられた。

因みに僕の順位は、なぜか52位まで上昇していた。

 

スタートし、昨日走って来た(?)であろうコースを見る。

暗くて、状況がよく分からないのが幸いだったかも知れない。

道幅の狭い、滑りやすい路面では、下手をすれば崖落ちも十分あり得ただろう。

コース脇に放置されたリタイア車両が、

昨夜のSSの壮絶さ、楽しさ(?)を静かに物語っているようだった。

§

舗装路に出ると、ルートは南へと向かう。

国道32号を行き、海沿いの県道14号を進む。

有料の橋を渡ると、そこは桂浜。坂本竜馬の銅像があるが、

9年前に見ているので、今回はパス。

海岸沿いの道が続く。

国道56号で内陸に入り、峠を超えると、

林道手前に、エントラント達が溜まっている。

林道が崖崩れで通過出来ないらしく、迂回ルートの指示待ちである。

結構な時間を待たされるが、ルート説明の後、三々五々出発。

1.5車線の幅の狭い舗装路が続く。

四国ならではの岩のせり出した道は、神経を使うし、

時間が掛かる割りに、距離が稼げない。

フェリーの出発時間が迫り、焦りが入る中、先を急ぐ。

時間ぎりぎりで八幡浜のフェリーターミナルに到着。

オフィシャルに急かされるように通過チェックを受け、乗船口へ。

§

13時40分、大分県別府へと向けて、船は出発した。

フェリーの中では、少しでも疲れを取ろうと、眠りにつく。

というよりも、昨日の疲れのせいで、自然に寝入ってしまった。

目が覚め、程なくすると別府到着の知らせ。

止むかと思われた雨も、まだ降り続いている。

約3時間の船旅は終わり、雨の九州に上陸する・・・

 

・・・・・2年前、2000年4月の夕刻

川崎発のフェリーが、雨の宮崎港に着岸した。

フェリーターミナルを後にし、最初の信号に差し掛かる手前のこと。

エンジンが、急にストップした。

セルをいくら回しても、エンジンがかかる気配がない。

降りしきる雨の中、プラグを外すが、火花が飛んでいない。

点火コイルの故障らしい。

行きつけのコクボモータースに電話してみると、

すぐそばにBMWのディーラーがあるという。

連絡を取ってもらい、待つこと10分。

やって来たのは、オートショップユタカの広川さん。

トランポに乗せてもらい店まで運んでもらう。

原因は、やはり点火コイルで、クラックから浸入した雨水が

点火コイルをショートさせたようだった。

もしも、今日、雨が降っていなかったら、

故障せずに走り続けることが出来たかも知れない。

でも、ここで故障してくれて本当に良かったと思った。

これが、人里離れた山の中だったらと考えると、ぞっとする・・・・・

 

雨のせいもあり、そんなことを思い出していた。

きっと、雨の九州に来るたびに、そのことを思い出すのだろう。

§

カッパを着込み、船を降りる。

ICOのスイッチを入れ、再びコマ図のトレースが始まった。

今日のゴールまでは、たったの120km。

だんだんと距離に対する感覚が変わってきている。

100kmや200kmなら、何てことないと思えるようになっていた。

国道10号を20kmほど行き、国道210号に入る。

途中、地元スタッフであるカオルエンジニアリングの

店の前を通過する。当然(?)店は閉まっていたが、

張り紙に気が付いた。

「明日はゴール! 今日はカレー!」

なんだか、心が暖かくなり、やる気が出てきた。

§

湯布院付近で、国道から外れて山に入り、SSへ向かう。

今日のSSは、林道を使った7.38kmのステージだ。

SSがスタートした。

ダートは、すぐにアスファルトに変わり、ここぞとばかりにアクセルを開ける。

ダートに戻ると、またへなちょこ走りに戻る。

道に覆い被さった木の枝が、邪魔だ。

路面をよく見たいが、枝をよけるので精一杯。

余裕のない走りが続くが、スピードは落とさない。

一際太い枝が、前方に立ちはだかる。

これに引っ掛かるわけには行かない。

首をすくめて、よけたつもりだった。

が、しかし・・・

よけ方が甘く、ヘルメットのバイザーが引っ掛かってしまった!

これでもかと言うばかりに、首が後方に引っ張られ、

真上を向かされてしまう。

でも、なんとか落車は免れた。

そこからは、一気にペースダウン・・・

慎重な走りでSS終了。

1人のエントラントと、「あの枝は、やばかったね」と話す。

§

SSを終えるころ、辺りは暗くなり始めていた。

のどかな田園地帯のあぜ道を行く。

日の暮れたやまなみハイウェイを少しだけ走る。

雄大な九重山の眺めは明日にお預けだ。

暗闇の中、ひたすらコマ図を追う。

そして、今日のビバーク地であるゴンドーシャロレー牧場に到着した。

テントを設営して、夕食へ向かおうとしているところに、

バカミーメンバーの#40内田さん、#45鵜澤さんが帰着した。

途中で温泉に入って来たと言う。

やはり、それぐらいの余裕が必要だよね。

2人のテント設営を待って、夕食へ向かう。

カオルエンジニアリングの張り紙通り、メニューはカレーライス。

それに加え、サラダに、ビールも付いている。

疲れきった体に染み入るビールの美味さといったら、

言葉にはならんですね。

明日で終るという安堵感からか、

その場は、前夜祭のような雰囲気に包まれている。

ほろ酔い気分で、眠りについた。

いよいよ明日は、ゴールだ。

 

前の日に戻る    次の日に続く

 

実戦編表紙に戻る

準備編に戻る

バイクのページへ戻る

HOME