ツールドニッポン2002実戦編
4月30日 ニセコ〜十和田(265.62km)
エマージェンシー地図より
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ラリーの朝は、やはり早い。
4時半頃、ふと目を覚ますと、すでに周りでは撤収作業が始まっている。
おいおい、ちょっと早過ぎるんじゃないの。
でも、ブリーフィングが5時半から始まる事を考えると、
決して早過ぎないことに気づき、眠い目をこすりながら、準備を始める。
今日は、天気予報通り、朝から雨模様である。
あわよくば、全日程を快晴でと思っていたけれど、甘かった。
朝食後、カッパを着込み、ブリーフィング場所であるトラックの所へ。
ここで、ダッフルバックを預けようとしたら、なんと重量オーバー。
出発時から、なにも変わってないはずなのに何故?
衣類が、汗を吸って重くなったのだろうか・・・
仕方なく、スペアパーツ類1kgをリュックに移し、計量をパスした。
§
昨日のSSで、さらに順位は落ち、スタートの順番は70番目。
6時35分のスタートである。
小雨舞う中、スタートの順番を待つ。
ゴーグルの曇り止めを、きちんとしていなかったせいで、
じっと待っていると、前が見えなくなる。
そして、ようやくスタート。
昨日走ってきた道道66号を引き返し、国道5号へ。
さらに、道道32号を走り、25km地点で、SSの入り口のはずだけど・・・
マップの距離と目印が一致しない。
少し迷った末に、ここと決めてダートに浸入。
程なくSSのスタートが見えてきた。
スタート地点に着いたと思ったら、息つく暇もなく秒読みが開始される。
(今日は、フェリーで本州に渡るので、少しでも時間を短縮しようということらしい。)
SSのスタート!
このSSは、林道を使った12kmのステージ。
大き目の砂利が、全面に浮いた路面。
登りでは、バイクは前を向いてくれず、下りではブレーキが利かず怖い。
わずかに出来た轍をねらって、ラインを取る。
SSの途中、カメラマンらしき人影あり。
変に緊張する瞬間だけど、少しだけアクセルを開けて通過する。
しばらく、おっかなびっくり走っていると、バックミラーにヘッドライトの光が映る。
抜かれてしまう・・・
そこから先は、攻めの走りに徹し、後方のエントラントを引き離しSS終了。
SS内で、初めて人に抜かれなかった。
なんだか嬉しい! ささやかな幸せである。
§
今日のダートは、SS内の12kmだけ。
あとは、全線舗装路のリエゾンである。
道道、国道を走り継ぎ、150kmほど行くと、五稜郭に到着。
コマ図によれば、Uターンするもよし、見学するもよしとのこと。
少し迷うが、フェリーの時間もあるので、Uターンする。
10時少し前、188.58km地点、CPでもあるフェリーターミナルに到着。
早着を恐れ、CP直前で時間調整し、10時になった所でCPへ。
函館発青森行きフェリーのチケットが手渡される。
ついに本州入りである。
ラリーが北海道で終ってしまうという最悪の事態は免れた。
§
フェリーターミナルの待合室は、ツールドニッポン御一行様で占拠される。
一般のお客さんには、迷惑だったろうなと思う。
船の出港時間は、12時10分なので、ずいぶん時間がある。
これなら、五稜郭も見られたのにと後悔。
朝食で出されたおにぎりを、ほおばりながら、まったりとした時間を過ごす。
そして、出航の時間が来た。
ラリーの途中で、海を渡るなんて、ちょっとしたパリダカ気分だ。
甲板にバイクを停める。
人、バイク共に、しばしの休息の時。
2等船室に落ち着くと、長旅の疲れのせいか、みんな爆睡・・・
§
約4時間の船旅はあっという間に終わり、いよいよ本州に上陸する。
相変わらず、雨は降り続いている。
フェリーが、青森港に近づくと、緩んだ空気は再び緊張感を取り戻す。
そんな空気の中、下船の準備を始める。
甲板に下り、バイクと再会。
ここまで、よく走ってきたと思うと同時に、これから先、
まだまだ続くであろう、長い長い旅のことを思う。
フェリーの車両甲板のハッチが開き、エントラント達は勢いよく外に飛び出していく。
フェリーターミナルを出た所で、ICOのスイッチを入れる。
距離は0.00km。十和田のビバーク地までは、77kmの距離である。
コマ図に従って、街中を抜け、18km程走った所で、
八甲田山の山並みが見えるはずのポイントで小休止。
雨のせいか、雲海となっていたが、なかなかに美しい眺めだった。
§
道の両脇には、残雪。
雪の回廊の中、ルートは南へと進む。
途中、路肩でパンク修理しているエントラントを2人ほど見かける。
酸ヶ湯温泉に着いた。
ここは、混浴の千人風呂で有名な所。
既に数台のバイクが停まっているが、ライダーは見当たらない。
温泉に浸かっているのだろうか。
すぐ後から、#45鵜澤さんが到着する。
様子がおかしいので見に行くと、ICOの不調らしい。
これが、最後まで鵜澤さんを苦しめ続けるICOトラブルの始まりであった。
意気消沈した様子の鵜澤さんの気分をほぐそうと、温泉饅頭を2個買う。
疲れた体には、あんこの甘さが身に染みる。
大丈夫だと言う鵜澤さんとは、別々に出発し、ビバーク地を目指す。
しばらく行くと、奥入瀬渓流に入る分岐。
見覚えのあるガソリンスタンドが見えた。
・・・・・数年前、大畑港から、初めての北海道に渡る途中のこと。
道に迷い、林道に入り込んでしまった。
どこかに抜けるだろうと思って、進んでいくが、
道はどんどん廃れて行き、藪こぎ状態となってしまう。
日も暮れ、とうとうガソリンがリザーブに入り、怖くなって引き返す。
やっとのことで、舗装路に戻って来ると、うっすらと濡れ、
月明りに照らされた道が、目の前に、真っ直ぐに伸びていた。
忘れ得ぬ幻想的な光景の一つ。
1997年8月10日 ここはどこだったのだろうか・・・
その後、ガソリンスタンドを求め、やっとの事でたどり着いたのが、
奥入瀬渓流入り口にあるシェルSSなのだ・・・・・
きっと、ここに来る度に、その時の幻想的な光景、
心細い気持ちを思い出すことだろう。
§
奥入瀬は、何度来ても気持ちのいい場所である。
渓流と道の高さが、ほぼ同じなので、流れと共に走っている感じが心地よい。
北海道の乾いた感じの空気とは違い、東北の空気には、濃密な森の香りが混じっている。
雨の効果もあり、心がとても落ち着く空気、光景だった。
奥入瀬を過ぎると、十和田湖の湖畔道路に入る。
数キロ走ったところで、今日のビバーク地である国民宿舎十和田湖温泉に到着。
ゴールチェックを受け、バイクを停めると、
明日のマップを巻くために、マップケースを取り外す。
宿のロビーには、大量のダッフルバック。
その中から、自分のダッフルを発掘し(この言葉がぴったり!)、
ようやく部屋に落ち着くことが出来た。
#23山口さん、#28田中さん、#29八尋さんが、
廊下でなにやら相談している。
今日の晩飯に、オプションで、きりたんぽ鍋を付けることが出来るそうだ。
僕も、ご一緒させて頂くことにする。
急いで準備し、食堂へ。
生ビールを飲みつつ、きりたんぽ鍋をつつきながらの和やかな夕食。
モンゴル経験者の山口さん、田中さんの話は本当に面白いけれど、
聞けば聞くほど、今の自分には到底無理だという感が強くなる。
夕食後、温泉に浸かり、長旅の疲れを癒す。
夜は例の轟音に悩ませられながらの早めの就寝・・・