ツールドニッポン2002実戦編
4月29日 浜頓別〜ニセコ(690.67km)
エマージェンシー地図より
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ラリーの朝は早い。
5時に起床し、出発の準備を始める。
窓の外からは、同じく早起き(?)の白鳥達の鳴き声が聞こえていた。
今日は、SS2本と、700km近い長距離を走る。
ラリーもようやく本番といった感じ。
スタートの順序は、昨日のSSのタイム順なので、65番目のスタートである。
やはり、これが実力か・・・
朝食後、ダッフルバックをトラックに預け、ブリーフィング。
ダートを避けるようなコース変更が告げられた。
理由が何だったか忘れたが、残雪、掛け崩れ、通過時間の問題?
その後、バイクのところへ。バカミーの面々と軽く挨拶を交わす。
#28田中さんは、すでにスタート待ちの列の中にいる。
僕のスタートは、30分後なので、のんびりと出発の時を待つ事にする。
§
7時30分、僕のスタート順が来た。
浜頓別を後にし、ニセコに向けて走り出す。
道道を10kmほど走り、林道へ入ると、そこには行列が出来ていた。
今日のSS1本目のスタート待ちの列だ。
途中でトイレに行っていた#45鵜沢さんは、ほとんど最後尾となってしまったようだ。
ここは林道を使った14.48kmのステージ。
実を言うと、林道でのスキルは未熟そのものだ。
走りがなってないのである。
そんな未熟な走りで、序盤からバイクを壊してしまっては、
大きな目標である完走を果たすことも、ままならないので、
昨日のSS同様、自制心を持って走ることにしよう。
そんな事を考えつつ、SSのスタートを待った。
そして、僕の番が来た。
昨日同様、オフィシャルの秒読みの後、SSのスタート!
乾いたフラットダートは、直線では走りやすいが、
砂利の粒が細かく、コーナーでは、とても滑りやすい。
下手をすれば、コーナーリング中の転倒も十分にあり得る。
恐々と走っているうちに、4台のバイク(GS2台含む!)に抜かれる。
でも、無理はしない。自分のペースで、無事SSを終えた。
これでまた、順位を落とすんだろうな・・・
守りに入り過ぎているかも知れない。
時計が回っているということを、もう少し意識して走ろうと思う。
#45鵜沢さんは、最後尾スタートの影響で、
思うようにペースを上げる事が出来ず、悔しそうだった。
ツーリングペースの後方集団を抜く事が出来なかったそうである。
§
SSを抜けると、朝のブリーフィングの指示通り、コマ図から外れ、舗装路へ。
国道238号に合流し、コマ図に復帰。
道の駅にて、ICOの数値を修正する。
やがて、また10kmのダート。
SSよりも気合が入るのは、何故?
でも、GSのノーマルサスは相変わらずで、油断していると
フルストロークした反動で、飛んでいきそうになる。
舗装路に戻ると、程なく、1つ目のCPとなっている宗谷岬に到着した。
今回、北海道にくるのは3年ぶりである。
・・・・・3年前に来た時は、タイヤの磨耗に気づかず、夢中で走り回っていた。
宗谷岬で、ふとタイヤを見ると、そのころ履いていたT66は目を疑う状態。
ラジアルの黄色い繊維が見える程の減りっぷりだったのだ。
これはまずいと思い、旭川辺りでタイヤを探そうと、南下するものの、
留萌付近で、ついにタイヤは寿命を迎え、バースト。
バイクはケツを振るようにして、ストップした。
磨り減ったぺらぺらのタイヤは、とてもパンク修理可能な状態ではなく、
民家で電話を借り、レスキューを呼び、札幌のバイク屋まで、トラックで搬送。
ワンサイズ小さな130/70というタイヤを探してもらい、なんとか帰路についたのだ。・・・・・
そんなことを思い出していた。
きっと、宗谷岬に来るたびに、その時のことを思い出すのだろうと思った。
バカミーメンバー#45鵜沢さん撮影
宗谷岬で、写真を撮るためだけの停止の後、すぐに走り出す。
今日は、距離が長いので、ゆっくりしている訳にはいかない。
しばらくは比較的交通量の多い、宗谷丘陵近辺の道を行く。
ノシャップ岬を過ぎると、コンパスは南を指し示す。
ここから、南へ南へと向かう旅が始まるのかと、ぼんやり考えていた。
何気なく左コーナーを抜けた瞬間、前触れもなく、
息を呑むほど美しい利尻岳の姿が、海上に浮かび上がって見えた。
海の上にぽっかりと浮かんだ様なその姿は、本当に美しい。
でも、停止するタイミングを逸したまま、走り続けてしまう。
写真を撮らなかったことが悔やまれるが、その姿は心にしっかりと刻まれた、と思う。
因みに、利尻とは、アイヌ語でリイ・シリ=高い山の意味だとか。
バカミーメンバー#40内田さんの勇姿(小さくてすみません)
§
ルートは、幹線道路を外れる。
これぞ北海道!と言う感じの、気持ちのいいフラットダートが続く。
民家の前を通り過ぎると、小さな子供が笑顔で手を振っていた。
その子に手を振って応える。
・・・・・ロシアンラリーの事を思い出していた。
ロシアでは、町を通り過ぎる度に、町中の人たちの声援を受けて
走り抜けるのだが、これがとても楽しく、心安らぐ時間なのだ。
ロシアンラリーは、町の人たちにとっても、年に1度のお祭り
みたいなもので、僕達が来るのを楽しみにしているようだった。・・・・・
今回のツールドニッポンで、こういった光景に出会えるなんて
考えもしなかったことで、なんだか嬉しくなってしまう。
5kmほど走ると、ルートは再び幹線道路へ戻る。
あまりにも短いダート。もう少し走らせて欲しかった。
その後は、アスファルトの上をひたすら走り、300km地点の
2つめのCPを過ぎ、今回初の高速道路に入る。
和寒ICから、道央道へ。
札幌南ICまで150kmの距離を一気に移動する。
一般道をしばらく走ると、道は、ダートとなり、今日2本目のSS。
新千歳空港に程近い、千歳オフロードパークでの特設ステージである。
コース全体が、ふかふかの砂地で、
僕のようなへたっぴーにはとても厳しいコース設定のようである。
距離も、クローズにしては長い10km。
すでに走り終わった人の話では、「すごいよ!」とのこと。
何がすごいのかよく分からないが、その息を切らした様子からして、
相当にすごいんだろう。
§
ここで、思いもよらない出会いがあった。
見たことのある人が近づいて来たと思ったら、
GSクラブ、R100GSの伊東さんだった。
「どうしてここに!?」
「連休なんで、帰ってきたんですよ。ここのすぐ近くが家なんです」
そうだった、伊東さんの地元は札幌で、東京に単身赴任中だったのだ。
伊東さんとは、ビックオフロードクラブの10周年キャンプで
初めて会ってから、その後もガストンライエミーティングや、
GSバカミーなどで、たびたび顔を合わせているが、
今回の出会いには、本当に、びっくりした。
SSが始まるので、伊東さんとはここで別れた。
お会いできて、嬉しかったです。
そして、SSのスタート。
スタートして間もなく、砂地に苦しみながら進んで行くと、落差2mほどの急坂下り。
下にはエンストしたTT600がキックスタートを試みている。
その場に居たオフィシャル大西氏は、「大丈夫だから行って!」と言う。
躊躇しているうちに、一台のバイクが僕を抜いて行った。
「お先に!」
そのバイクは、TT600をこする様に抜いて行く。
その抜き方からして、僕が行ったら、TT600は、フラットツインの
シリンダーの餌食となることは明白だった。
大西氏の指示で、TT600は、脇に押しやられ、ようやく進路がクリアとなる。
急坂も下ってみれば大した事はなく、タイムロスを挽回すべく、先を急ぐ。
急ぐとは言っても、ふかふかの路面でスピードが上がるわけもない。
アップダウンが激しい。
さらには、ウォッシュボードの連続。
疲労で腕が上がってきた。辛いぞこれは・・・
進んで行くと目の前に、#4アフリカツイン尾島さんを発見。
尾島さんは、軽量車を相手に、常に上位の成績を残しつづける猛者。
何かのトラブルか、立ち止まっている。
僕との距離があと50m程となったところで、尾島さんは復活し、
あっという間に見えなくなってしまった。速い!速すぎる・・・
最初に抜いてきたTT600にも抜かれ、SSは終了。
10kmの距離を15分もの時間を掛けて走破した。
SSは、確かにすごかった・・・。もう、疲労困憊・・・
今日まで、リエゾン、SSを含め無転倒ということが、唯一の自慢。
でも、今のSSのタイムも最悪だろう。
また順位を落とすか・・・
§
SSを抜けた後は、ICOを修正し、再び100kmのリエゾン。
国道36、453、276とアスファルトの上を走りつなぐ。
もうすぐビバーク地という所で、薄明かりに浮かび上がる後方羊蹄(シリベシ)山。
怖いほどの存在感のある山だと思った。
今日のビバーク地は、「羊蹄自然の家」という研修施設で、
昨日の豪華なホテルとは打って変わって、すし詰状態の雑魚寝である。
とりあえずは、寝袋を広げて場所を確保し、シャワーを浴びた後夕食へ。
メニューは、大部屋料理の定番、カレーライスだ。
ご飯に余裕はあるが、カレーのルーが心もとないということで、
御代わり不可だったのが残念。美味でした。
明日も朝も早いので、早々に就寝・・・