年忘れエンデューロ

2003/12/31 〜WEST POINT オフロードビレッジ〜

 

2002年の夏、バカミー有志が参戦した12時間耐久エンデューロを観戦した。その時の僕は、骨折から2ヶ月が過ぎたばかりであり、参戦は見送った。でも、重たいGSで、楽しげに(苦しそうに?)走る皆さんの姿に、すっかり心打たれてしまったのだ。今年こそは、と思っていたら、カヤックの大島横断と日程がバッティングしてしまい、またもや不参戦。来年まで待ちきれない!と思っていたら、松本さんから年忘れエンデューロ参戦計画が発表された。渡りに船とばかりに参戦を表明するも、どうやら、ビックオフ系は、僕ひとりだけらしい。多少の不安はあるけれど、今のメンタリティーと、体力を以ってすれば何とかなるだろうと、意外に楽観的である。

僕のゼッケンは、212番。チーム名は、「ひとりGSバカミーズ」となりました。

今回ご一緒するメンバーは、バカミーからF650GSの小林さん、1150GSADVの斉藤さんが、2人でKX85を走らせる。チーム名は、「バカミーズMX部」。あとは、松本さんとは旧知の仲、トレールランナーズの皆さんである。

 

そして、2003年の大晦日当日。

集合時間が、朝7時と異様に早いので、4時起き、5時出発である。空気は、肌を刺すように冷たい。第三京浜、環八、関越で一路川越へ。現地に到着し、仲間を探していると、先着の小林さんが導いてくれた。周りは、トランポで乗り付けたモトクロッサーや軽量車ばかりで、GSは、かなり浮いた存在。

「そんなんで走って楽しいのか?」

という視線をビシバシと感じるが、そういう視線にはもう慣れっこである。ちなみに、今日のテーマは、人車を共にいたわり、他のエントラントの速いペースに惑わされず、自分のペースで、淡々と周回を重ねること、楽しく走ること。

 

ここで、近くに止まっていたトランポに、見覚えのある顔が…。

ジーっと見てたら、目が合って確信した。ロシアで一緒だった赤木さんである。2年ぶりに会う氏は、自走組からトランポ組に昇格していた。ただし、バイクは相変わらずのXR250Bajaで、ちょっと嬉しい。

 

荷物を降ろし、車検を受けに行く。オフィシャルに聞くと、やはり、今日はビックオフ系は僕だけのようだ。車検は無事合格したので、そのままコースインして、試走する。路面はドライだが、コーナーはかなりタイトで、気を抜くとパッタリと転びそうだ。一箇所だけ、非常にやばそうな箇所があった。目の前に壁のようにそびえる急坂に、勢いだけで、トライすると、思いっきり姿勢を崩して、なんとか登り切った。だが、不安なポイントが一箇所できただけで、一気にモチベーションが下がる。その他は、タイム計測区間前後に、水が撒かれており(余計なことを!)、ヌタ場が演出されていた。一周約3kmのコースは、うんざりするほど長い。とてもじゃないけど、3時間を走りきれる気がしない。エントリーしたことを、少しだけ後悔した…。

 

試走から戻ると、松本さん、斉藤さんもやって来て、顔合わせ。

「調子はどうですか?」と言う松本さん。

「このコース状況だと、とてもじゃないけど3時間走りきれないですね…」と僕。

レースとは言っても、お祭りみたいなものだし、無理せず楽しんで走ろうみたいなことを、松本さんは言っていた。そうしようと思った。

 

スタートの時刻、9時が近づいて来る。

今年の年忘れエンデューロの参加者は、250組程度。僕のように、ひとりで走る人もいれば、2人3人でチームを組んで、交代で走る人もいるが、コース内には常時250台ものバイクが走っていることになる。

そして、スタートの時間が来た。横一列に5台程度が並び、ゼッケン順にスタートしていく。前方のエントラントが徐々にはけていくのを緊張しながら待つ。僕のゼッケンは、212番なので、後方からのスタートなのだ。

ついに、目の前に誰もいなくなった。秒読みが開始される。5、4、3、2、1…。エギゾーストノートが一気に高まるなか、集団の中ほどにつけて、スタートした!

GSの飛び出しは、思いのほか速い。思いっきり行けば、ホールショットも取れたかも知れないが、3時間という長丁場なのだ。そんなにあせっても仕方はない。

 

ここで、僕の記憶力を総動員して、1周約3kmのコース概要を紹介しておこう。

スタートして50mほど走ると、すぐに180度左ターンのタイトなコーナーが迫ってくる。さらに50mほどのストレート。でも、盛り土があるので気は抜けない。そのまま、突っ込むと、飛んでしまうのだ。飛べないわけではないが、飛ぶとGSが壊れてしまう。若干ゆるいRだが、再度180度ターンのコーナー。一箇所盛り土のある(左端が削れていてフラット)ストレートで、アクセル開度50%。さらに180度右ターン、30mの直線、180度左ターン。50mのストレートエンドは、見えにくいが、小さなウォッシュボードになっており、フロントサスが3回フルボトムに近い状態になる。油断すると、姿勢を崩す。90度の左コーナー後、10m行くと、180度ターンの右コーナー。この辺りは、かなりタイトでペースが落ちるので、後続車にも気を使う。インべたで、コーナーを回って、アウトにはらむことで、後続車にパスするタイミングを与えるように心掛けた。その後も、10mごとに、180度ターンが右に左にとやってきて、疲労が進む。タイトなセクションを抜けると、待望のストレート。ほぼフラットなので、アクセルは全開。モトクロッサーと言えども、GSの加速には付いて来ることは出来ない。100m程のストレート行くと、左90度コーナー。すぐ先には、ギャラリーが横断出来るようにコーステープが切れたポイントがあるので、要注意。特に、子供は危ない。ひやっとすることが何度かあったが、なんとかならないものか?その後、下り気味の右90度コーナー、盛り土を舐めるように行き、ゆるい左コーナー。ギャラリーが多いので緊張する。ゆるいコーナーが終わると、左180度ターン。砂利の路面になっており、ここで、2回ほどパッタリと転んだ。10mの直線、180度の右コーナー。さらに、10mほど行くと、クランク気味のコーナーで、右、左。その後は、100mほどの長い直線だが、例によって盛り土があるので、アクセル全開不可。路面を舐めるように進む。ストレートエンドで、落差1.5mほどのなだらかな下り、すぐに右180度コーナー。さらに下って、一気にテーブルトップ状になった登りへ。ここも、アクセル開度を押さえないと飛んでしまうので、登り切る寸前にアクセルオフ、必要に応じてリアブレーキを掛ける。すぐに、左90度コーナー、左180度コーナー、右90度コーナー。なだらかに、下りを30mほど行くと、右方向への登り。すぐに、超ショートストロークのS字コーナーで、左、右。曲がれない…。盛り土ありのストレートを30m行くと、左180度ターン+落差1mの下り。100mの直線後、左90度コーナー、10mの直線、右90度コーナー。緩やかな下りの直線を30mほど行く。落差1mの登り後、すぐに右コーナーで、下って、すぐに登るヒルクライムポイント。試走段階でやばいと思った箇所で、今回のコースでの一番の難所だと思われる。(ここに、僕を応援してくれるギャラリーが数名いたが、それに応える余裕はなかった。ごめんなさい…。)登り切ると、すぐに180度の切り返しで下る。下りきったところが、若干、ヌタ場になっている。10mの直線を行き、90度の左コーナーの途中で落差1mの登り(1150GSADVの斉藤さん提供の下記写真を参照、、左のライダーが僕です)。

アップダウンのある100mほどのストレートを行くと、右180度コーナー。同じくアップダウンありで、飛べない100mのストレートの後、ギャラリーコーナー。ここは、一番ギャラリーが多いところで、変に緊張する。180度の左コーナー後、凹凸が大き目の20mの直線、そして、轍の深い180度左コーナー。気をつけないと、フロントがはまる。10mの直線後、右90度コーナーで、轍+落差1mの登り。20mほどの直線後、右180度コーナー、すぐに、ちゅるちゅる系の左180度コーナー。10mの直線を抜けると、ドロドロの水溜りを渡る。ここから、人工ヌタ場が始まる。20mほどのストレート、右180度コーナーを抜けると、タイムチェックポイント。ここは、計時のために、バイクが一台通る幅しかないので大渋滞するが、逆に休憩できるので、非常にありがたい。チェックポイントを抜けると、切り返しの厳しいS字で、左、右。ヌタ場を抜けると、スタート地点に出る。1周するのに要する時間は、約8分。これを、3時間続けるのだ。

 

最初の30分は、「もうだめだ、休憩しよう…」と思うことが多々あり、左手の握力も一時はゼロになる。そんな折、いきなりGSがストップする。ミスファイアである。セルを回すと、マフラーからは「パーン!!!」という乾いた破裂音がするだけで、エンジンはかからない。「ちくしょう、また、リタイヤかよ…」という思いが一瞬頭をよぎるが、祈るような気持ちでスタータースイッチを押すと、エンジンは始動し、何故かGSは復活してしまった。気持ちが通じたのだろうか?そこからは、嬉しくて一気に気力回復。その後の2時間は、ほとんど無心でGSを走らせていたと思う。とにかく楽しくて楽しくて、休むのがもったいないくらいだった。辛くなってきたのは、最後の30分。ここまで、無休で走ってきたのだから、最後まで走り切りたいという意地だけで、走っていた。周回を重ねるたびに、ゴールの12時が近づいてくる。

 

そして、ついに…

待ち望んだゴールの瞬間がやって来た!

チェッカーフラッグを受けながら、完走できたことが嬉しくて仕方なくて、頬が緩みっぱなしだった。2002年11月のガストンライエクラシックのリタイア以来引きずっていたわだかまりが吹っ切れた気がした。何とも言えない爽快な気持ちで、まさに、走り納めにふさわしい、いいレースだったと思う。ゴール後に、トレールランナーズの佐藤さんにご馳走になったパスタも美味でした、ありがとうございました。なんだかんだで、今年を振り返ってみると耐久づいていたかも知れない。大島横断(8.5耐)、筑波4耐、そして今回の3耐…

 

一応、結果報告ですが、周回数22周で、完走210組中で179位。

バカミーズMX部の小林/斉藤組は、偶然にも僕と同じ周回数ながら、ゴール時間の差で182位。途中でクラッチレバーが折れたりで、大変だったようですが、レース後は、お2人ともいい顔してました。(詳細リザルトは、こちらにて。)

 

が、しかし…

ここからは、ノーコメント。察して下さい。

無事に家に帰るまでが、遠足とはよく言ったものですね…

 

と言う訳で、GSは破壊と再生を繰り返すのでした。

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