6月12日 「緑の屍」
調査地を見て、一瞬目を疑った。
「草がない!」 堤防の草は、きれいに刈られていた。丈の高いオギ・ヨシは勿論、きれいな花をつけて目を楽しませてくれたノアザミや、やっと白い穂が生えだしたチガヤはどこにも見つからない。昨年の堤防の草刈りは12月だった。当分草刈は無いと思っていたのに。
「カヤの巣は?」調査地のあまりの変わり様に呆然としながら、とにかく巣を探す。なぎ倒され、すでに枯れ果てた草の中に、巣がぽつんと残っていた。 あの風雨の中、子どもを守った肝っ玉母さんの巣だった。
恐る恐る、巣を開けてみる。・・・中は空っぽだった。あの親子は、どこへ行ったのだろう。子カヤは、まだ巣立つには幼すぎるのに。
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堤防の隅々まで探したが、見つかった巣はこれだけだった。オギは、ごっそりどこかに持ち去られていた。6月に入って、カヤがオギでせっせと作っていた巣は、どこにも見あたらなかった。おそらく、まとめて焼かれてしまったのだろう。
ついこの間まで、オギの中に巣を掛けて、かしましく鳴き交わしていたヒバリも、もういない。
| 草刈りされた調査地(6月12日撮影)。 「カヤのいる風景」で紹介した写真と見比べて下さい。 |