ミラーコーティング

 ミラー粒子応用技術の中でも最も基本的なもので、ミラー粒子を特定の物体表面に瞬間蒸着させること。またはその状態を指す。ミラー粒子が蒸着した物体はその名のとおり、表面が鏡面状態となりあらゆる電磁波やエネルギィから、ミラー粒子が剥離するまでの一定時間完全に防御される。本来的には電磁的反発を利用して物資を射出する三段飛行甲板空母内の超伝導リニアカタパルト(現・ミラーカタパルト)において射出する物資、カタパルト周辺の精密機器を電磁波から保護するためのものであった。しかし、同時に強力な「バリア」としても作用し得ることが早期から注目され、戦闘領域での運用の可能性について研究・実践が進められていた。強力な電磁波を発生させ、GGG機動部隊の接近を阻み、あるいは行動不能に陥れんとしたゾンダーロボは数多いが、実戦部隊であるGGG機動部隊のAIロボット自身にミラーコーティングを施すことで、局面が打開された例は少なくない。
 しかし、ミラーコーティングはミラー粒子の性質上、最大でも数分間しか蒸着を持続させることができない。そのためたとえミラーコーティングを施し強力な電磁波や超高熱地帯という特殊環境において機動部隊の作戦行動が可能になったといってもミラー粒子が完全に剥離し終えるまでの数分間という極めて短い時間での作戦の遂行が常に要求されることになる。では、ミラーコーティングを三段飛行甲板空母のみに頼るのではなく、前線において任意に、かつ迅速にコーティングを可能に出来れば戦闘領域において究めて有効な装備となりうるのではないだろうか。この考え方に基づき研究開発部が開発したのが炎竜ミラーシールド、そしてボルフォッグ内蔵ミラーコーティングである。
   ミラーシールドはシールド表面にミラー粒子を蒸着・安定させ、携行用武装としたもので、光学兵器による攻撃を吸収・増幅して反射させる事ができる。いわば簡易版ミラーコーティングであるが、このミラーシールドはあくまでも「楯」であるためミラーコーティングのように全身をくまなく防御することは出来ず、また強力な電磁場においてもある程度これを防ぐことは出来るが、長時間の作戦行動には対応できないという欠点があった。しかし携行用武装としては防御から攻撃へ素早く転用が出来るため、竜型ビークルロボットのレフトサイド(シンメトリカルドッキングを行った際に左半身を構成する側)機に標準装備されるようになっている。
 これを更に一歩進め、ミラーコーティングをAIロボットに内蔵し、AIの任意において自在に機体表面をミラー粒子でコーティングすることを可能にしたのが内蔵ミラーコーティングである。ボルフォッグにはじめて搭載されたこれは、ボルフォッグの高い隠密性と各特殊装備との併用により、機動部隊に匹敵する戦闘力を獲得させることに成功したほか、強力な電磁場などの局地戦においても大きな成果をあげている。
 後にマイクサウンダースシリーズに標準配備されたサポートモジュール・バリバリ―ンにも内蔵ミラーコーティングが搭載されたがこれは機体底面にのみコーティングが可能なもので、大気圏突入時に生じる摩擦熱の遮断や「楯」としての運用がなされる。一説にはミラーコーティングが可能なバリバリーンはマイクサウンダースシリーズの隊長機であるマイクサウンダース13世専用のバリバリーンのみであるとも言われているが確認はされていない。だが、後に開発されたCRプロトタイプ33R、同34R、また量産型CRにおいてはミラーコーティング機能は排除されている。これはミラーコーティングシステムが高価で量産を前提にしたCRシリーズには適さないと判断されたためである。