天海護(あまみまもる/レプリジン)

 三重連太陽系へ帰還し、ソール11遊星種との戦いに身を投じたマモル少年が物質復元装置の中枢であるパスキューマシンを奪取した際に、マモル少年の生体データをもとに、ギャレオンと共に複製されたレプリジン。容姿や能力はもとより、記憶すらもマモル少年そのものといえる。オリジナルのマモル少年と相対したレプリジンは自身が複製体であることを自認し、自ら遊星主の眼を欺く囮となるがギャレオンのレプリジンたる「白いギャレオン」と共に遊星主に捕縛され、パルパレーパにより生体改造とケミカルボルトの注入を受け、パスキューマシンを太陽系へと持ち去ったマモル少年の追撃と撹乱を行う戦力として地球へ送り込まれた。
 事実突如帰還した「マモル少年」と「白いギャレオン」によるQパーツ、および旧ガオーマシン連続強奪事件は、Qパーツの管理、研究を実施していた国連、およびGGGを大混乱に陥れた。マモル少年は機界文明との戦いにおいて、常にその中枢にあり、その功績は計り知れないものがあった。そのため彼の度重なる「暴挙」に対して、GGGの反応は緩慢と言って良いほど、鈍いものだったと言われている。だが、マモル少年のレプリジンが全てのQパーツを奪い、パスキューマシンを完成させた際、パスキューマシンの暴走によってGGG研究部専属オペレータであり、センシングマインドの所有者であったパピヨン・ノワールが死亡した事で、GGGも「マモル少年」に対する態度を強硬なものにせざるを得なくなってしまった。
 ソール11遊星種はレプリジンに対し、人格的な改造も行っていた。レプリジンのマモル少年は目的の為に手段を選ばず、その性格は優しく、良くも悪くも裏表のなかったオリジナルのマモル少年とは裏腹に、非常に狡猾で戦闘的であった。だが、獅子王凱ら、「かつての戦友」たちに対する好意的な感情は残されていたし、「自らの宇宙を救う」という目的を理解して欲しいとも願っていたようだ。だが、彼の内部では目的が絶対化しており、そのためにいかに卑劣、かつ暴力的な行為も辞さなかった。
 すべてのQパーツを手に入れ、パスキューマシンを完成させた彼は、「白いギャレオン」とフュージョンし、旧ガオーマシンをも駆使する事でGGG機動部隊の追撃をも振り切ったが、フランス対特殊犯罪組織「シャッセール」の捜査官、ルネ・カーディフ・獅子王の妨害工作により地球大気圏に落下、京都において、再びGGG機動部隊と交戦状態に入る。
 パスキューマシンを媒介とする事で不足していた生体データを補い、「白いギャレオン」とのフュージョンに成功した彼は、さらに奪取した旧ガオーマシンとのファイナルフュージョンを敢行、スターガオガイガーとなり、徹底抗戦の構えを取る。これに対し、GGG機動部隊隊長、エヴォリュダー・ガイガオファイガーへとファイナルフュージョンして応えた。嵐の古都において新旧の地球圏の守護神が凄惨な戦いを繰り広げることとなったのである。
 その最中、彼は「力」への渇望をあらわにする。「今日こそボクは、ガイ兄ちゃんを越えるんだ!」
 繰り返すが、彼はオリジナルのマモル少年と記憶を共有している。マモル少年にとって獅子王凱は頼れる兄であると同時に、かけがえない友人であり、互いに互いを支えあう戦友であり、そして憧憬の対象であった。だがそれは、マモル少年にとって、獅子王凱はその成長にしたがって追いつき、乗り越えなければならない、言うなれば障害ともいえる存在であることも意味する。ソール11遊星種によって己のエゴを肥大させられた彼は、その障害、自身に対する阻害性を強すぎるほど意識したに違いない。護られ、庇護されるだけの存在であった自身、そしてそれに対する鏡像関係であった獅子王凱を抹殺し、自分こそが「ガオガイガー」に成り代わる為に、彼はなにより「力」を渇望した。その結果、彼はかつての友人、ゴルディーマーグを完全に破壊し、超竜神を大破させてしまう。それは先駆者、獅子王凱の怒りを買った。「そんなものは『力』じゃない」と。
 心身ともに暴走したガオファイガーによって彼のスターガオガイガーは敗れた。それによって彼は重傷を負う。悔やみ、涙するガイを彼は尚も騙し討とうとする。その意図は真実を知る戒道少年によって断たれた。元来不完全な体と意識しか持ちえていなかった彼は、その場で暗黒物質へと還元してしまう。同じ「造られたモノ」として、その最期に戒道少年は何を想ったであろうか。
 彼は「本物」の天海護少年ではなかった。だが、彼によって傷つき、倒れ、二度と立つ事のない人がいる。かつての友に傷つけられ、傷つけた事実。そして複製された彼が、今ひとたび現れた時、それを「偽者」とするだけの根拠を我々は持ち得るのか。彼がGGGに獅子王凱に対して与えた傷痕は決して浅いものではない。