北方領土問題とは?
     2013年6月


『中間線』と書いてある青線は、『北海道海面漁業調整規則別表第2の2』で定められた参考ライン。日本漁船が、この線のロシア側で漁業することは、日本の法でも、原則禁止されており、事実上、日ロ国境となっている。


  ■ 北方領土問題とは?

(1) もともと、北方四島に、どのような人が住んでいたのか定かではありませんが、江戸時代にはアイヌの人たちが住んでいました。
 日本は正保年間には、択捉島・国後島を含む千島の存在を漫然と知っていましたが、択捉島を詳しく知ったのは、ここを日本人として、最初に探検した、最上徳内の成果でした。最上徳内が択捉島に渡ったとき、すでにロシア人が居留していたため、ロシア人から択捉島やそれより北の地域について知識を得ました。
 択捉島には日本よりもロシアのほうが先に勢力を及ぼしましたが、これは長続きしませず、19世紀になると日本の支配が拡大してゆきます。1855年、日本とロシアとの間で下田条約(日露通好条約)が締結されました。この条約交渉でロシア全権プチャーチンは、歴史的経緯に従って、択捉島のロシア帰属を主張しましたが、交渉の結果、当時の現実の支配関係に従って日露間の国境は択捉島とウルップ島の間に引かれました

(2) 第二次大戦末期の1945年8月9日、ソ連はアメリカなど連合国の要請で対日参戦しました。当時、日ソ中立条約が形式的に有効でしたが、アメリカ大統領は公文書で、ソ連の参戦は国際法上合法であるとの連合国見解を示したため、ソ連は対日参戦しています。
 1945年9月2日、日本が降伏すると、同じ日に出された一般命令第一号に従って、北方四島はソ連の占領地になりました。1946年12月、GHQとソ連との間で日本人全員の引き上げが合意されると、北方四島に居住していた人たちは、残留を希望するわずかの人を除いて、ほぼ全員の日本人が、帰国しました。(詳しくは「北方領土問題の歴史・経緯」のページを参照下さい。)
 なお、ソ連の参戦は、国際法廷である極東国際軍事裁判所の判決でも、正当なものと認定されています。

(3) 1951年、サンフランシスコ平和条約を締結して、日本本土の占領統治は終了し、この時、日本は千島列島を放棄しました。国後島・択捉島については、国会審議の中で、西村政府委員および草葉政府委員が、国後島・択捉島はサンフランシスコ条約で放棄した千島列島に含まれると明確な説明をしています。
 ソ連は、平和条約に加入しなかったため、日ソ間で条約交渉が行われましたが、このとき、アメリカのダレスは、歯舞・色丹の2島返還で合意したら沖縄を返さないと、重光外務大臣を恫喝しました。このような経緯があって、日ソ間で領土問題を解決することができず、1956年10月、日ソ共同宣言を締結し、両国は平和条約の締結に関する交渉を継続することになりました。また、ソ連は、平和条約締結後に、歯舞・色丹両島を、日本に引き渡すことに同意しました。しかし、現在にいたるも、両国間に、平和条約は締結されていません。
 なお、1956年11月29日参議院外務委員会において、下田武三条約局長は、歯舞・色丹に関して「事実上ソ連がそこを支配することを日本はまあ認めたわけでございまするから、ソ連の引き続き占拠することが不法なりとは、これまた言えない」と説明しています。

    
  ■ 日本政府の基本的立場と現実

(1) 日本政府は、日本語では「北方領土は日本固有の領土」と説明しています。日本政府の主張では、固有の領土とは一度も外国の領土になったことがない日本の領土という意味であり、英語では、『an integral part of Japan's sovereign territory』と説明しているようです。しかし、この英語では、日本政府の言う意味にはならないので、日本政府の固有の領土主張は、ロシアはもとより、国際社会でほとんど理解されていないのが現状です。
 また、日本以外の国が発行している地図の多くは、北方領土はロシアの領土と記載されています。

(2)日本政府は、北方領土問題の解決に当たって、現在居住しているロシア人住民の人権、利益、希望は、返還後も十分尊重していくと説明しています。ところが、もし、日本に返還された場合、日本人が少数派住民となることは目に見えています。この場合、地方自治の選挙権・被選挙権をどうするのかという、基本的問題に対して、日本政府は態度を明らかにしていません。

(3)日本政府は、日本国民や第三国の民間人が、北方領土に対するロシアの管轄権を前提とした活動を行うことを容認していません。また、日本国民に対して北方領土に入域することを行わないよう要請しています。
 しかし、北方領土にある水産加工会社ギドロストロイの経営が好調であるため、多くの国の企業が、ギドロストロイ社と取引を行っていますし、日本政府の要請を無視して、ロシアの査証を取得した上で北方領土を訪れている日本人の存在も知られています。

(4) 日本政府は、第三国国民や第三国企業がロシアの査証を取得した上で北方四島へ入域したり経済活動を行わないように申し入れを行っています。しかし、ギドロストロイ社の経営が好調であるため、欧・米・韓などの多くの国の国民や企業がロシアの査証を取得した上で、北方四島へ入域し、経済活動を行っています。


   外務省の北方領土問題の概要説明
       http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo.html
このページのトップへ戻る
目次へ戻る




北方領土問題の先頭ページへ   北方領土問題関連資料のページへ