種Buteo lagopusは和名がありません.学名を直訳するとライチョウのようなノスリとなりますが,ここでは便宜的にヨーロッパケアシノスリとします.
種ヨーロッパケアシノスリには4亜種が記録されています.他の2亜種も和名がありませんので表3に亜種名と和名(ここで便宜的につけた名称),
生息地,移動地を示します(1).
種ヨーロッパケアシノスリは亜種アメリカケアシノスリsanctijohannisの黒色タイプ以外,他のノスリ属の種とは尾羽の模様で識別できます.尾羽は白で
尾の上面で,♂は先端に太い黒い帯がありその内側に複数の細い黒い帯,♀は先端の帯1本,幼鳥はぼやけた帯状模様です.下の3枚の写真に♂,♀,幼鳥を示します.
アメリカケアシノスリ黒色タイプの尾羽上面は黒色で下の写真は使えません.
左から ♂,♀,幼鳥(左から2枚は2013年11月9日,右は2008年1月10日撮影)
亜種名 和名 繁殖地/生息地 移動地 lagopus ヨーロッパ
ケアシノスリ北ヨーロッパ,北西シベリア 中央および東ヨーロッパ,南西アジア menzbieri ケアシノスリ 北中央および北東シベリア 南東ヨーロッパ,中央および東アジア kamtschatkensis カムチャッカ
ケアシノスリオホーツク海沿岸からカムチャッカ半島,北千島列島 - sanctijohannis アメリカ
ケアシノスリ西および北アラスカ,北カナダ 南カナダ,アメリカ合衆国(南東を除く)
種ヨーロッパケアシノスリButeo lagopusには4亜種がいます.日本で見られる種Buteo lagopusの亜種は鳥学会の鳥類目録ではケアシノスリB. l. menzblierだけが記載されていますが識別の方法は記載されていません. 鳥見を始めてから干拓地でButeo lagopusは9回観察しています.このうち亜種が識別できる写真が撮れた個体の亜種名を調査しました.
上4枚の写真は小江干拓地で撮影した個体です.尾羽上面先端の黒帯は3本で♂です.頭部は白地に茶色の筋状模様,黒く太い過眼線,白い耳羽,頬から喉にかけて黒色,首は濃い茶色と白のまだら模様.
体上面は濃い茶色と淡い茶色のまだら模様,上尾筒は濃い茶色で先端は白と濃い茶色の模様.
胸上部は濃い茶色で喉から胸にかけて淡い茶色の模様,胸の白は翼までと腹の中央部まで続く,翼腋から脇腹は濃い茶色で白い縞模様.跗蹠は羽毛で覆われていて色は濃い茶色で疎らな白い斑.
翼上面は濃い褐色で初列風切指の部分は濃く手の部分は淡い茶色で次列風切と同じ.下面P5-10は白で先端は暗色.P1-4および次列風切後縁は黒い帯状模様,
雨覆までは白地に擦れた暗色の縞模様.以上が観察個体の特徴です.
4亜種の特徴は繁殖地域の文献で調べることができます.カムチャッカケアシノスリkamtschatkensisとケアシノスリmenzbieriは細い過眼線で,
翼上面初列風切P1-10の手の部分(初列雨覆から先端までの半分)は白,下面の次列風切の白黒の縞模様は明瞭.
跗蹠の羽毛は白地に暗褐色のまだら模様(2,3,11)で本個体と一致しません.
ヨーロッパケアシノスリは頭部は暗色から淡色,腹部の模様は両脇腹と腹部が
繋がっているものと,いないものの変異があり,跗蹠は白地に茶色の斑,過眼線は細くて短い(7,10),跗蹠の模様と過眼線が一致しません.
アメリカケアシノスリは淡色と暗色およびその中間のものがいて,文献8
に描かれている淡色のタイプの上下面の模様は上の下2枚の写真の模様とほぼ同じで, 黒い過眼線,
跗蹠の羽毛は黒地から白地まで変異があります(8,10,11). 上下面の模様,過眼線,跗蹠の羽毛の模様が一致しますので本個体はアメリカケアシノスリsanctijohannisと判断できます.
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