PROLEGOMENA to ISLAMIC ARCHITECTURE 
イスラーム建築入門

神谷武夫

イスラム建築入門

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このページには、雑誌などの求めに応じて書いた、イスラーム建築についての初歩的な解説の文章を集めました。体系的なものではありませんが、気軽に読んでイスラーム建築に親しみを感じてもらえればと思います。今後も、少しずつ記事をふやしていきます。

 イスラーム建築 Q (芸術新潮)
イスラム建築
 モスク分類典型 (イスラーム建築)
イスラム建築
 建築カリグラフ
イスラム建築
 イスラーム庭園 (TRADEPIA)
イスラム庭園
 インドイスラム建築 (季刊文化遺産)
イスラム建築
 砂漠城砦都市・バム (中外日報)
イスラム建築
 ハサンファテ仕事 (イスラーム建築)
 イスラム建築
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 アラビアの古都 マッカ(メッカ)で生まれ育ったムハンマドは、610年頃、初めて神の声を聞いた。 イスラームの誕生である。 以後、預言者(神の言葉を預かって人々に伝える者)としてのムハンマドは、次第に頻繁に 神の啓示を伝えたので、それらは彼の死後 イスラーム教の聖典『クルアーン(コーラン)』としてまとめられた。 神はただ一人であり、神の前には すべての人が平等である という教えのもとに、イスラームは急速にシリアへ、ペルシアへ、エジプトへと広がり、西はスペインから 東は中央アジアにいたる 祭政一致の強大なイスラム帝国をつくりあげた。 インドには比較的遅く、12世紀末に侵入した勢力が デリーのヒンドゥ王朝を征服した時に始まるので、インドのイスラーム文化は 13世紀から発展する。 そしてペルシア(イラン)を経由してきたので、インドのイスラーム建築は ペルシア的な性格が強い。
 信者は日に 5回礼拝するので、神のまえにひれ伏す場としての マスジド(英語では モスク)を 世界中に建てた。 独特なのは、すべてのモスクがマッカに向かうことで、マッカに面する壁を キブラ壁と呼び、それがマッカの方向であることを示す窪みとしての ミフラーブと、その脇の ミンバル(説教壇)を備える。 外部には 礼拝の呼びかけをする塔(ミナレット)が立ち、中庭には 礼拝前に手足を清めるための 泉を備えるのが一般的である。
 イスラームは各地を征服すると、その地の伝統的な建築文化を継承したので、地方ごとに 異なったタイプの建築様式を生んだ。 典型的な4つのタイプは、列柱ホールに 陸屋根のかかる「アラブ型」、中庭を囲んで4基のイーワーンが向かい合う「ペルシア型」、大きなドーム屋根が 内部空間を包みこむ 「トルコ型」、そしてマッカ側の礼拝室を 独立した建物のように際立たせる「インド型」である。 いずれであっても、彫刻的なヒンドゥ寺院に比べれば、中庭や礼拝空間を囲み取る「皮膜的建築」であると言える。 宗派としては 多数派のスンナ派と、イランを中心にするシーア派があるが、建築的な違いは ほとんど無い。

(『インド古寺案内』イスラ-ム建築 より




● 前に インドの ある大学准教授から 面白いメールと写真を もらいました。彼が私のHPの英語サイトで、「イスラーム建築入門」の中の「イスラーム建築 Q&A」を読んだところ、

Q  モスクを構成する 必須要素 には どのようなものがあるのでしょう?
A  原則的には4つです。まず、マッカの方向を示す キブラ壁。この壁と対面すれば マッカを向くことができる。たとえ屋根はなくても 壁だけは どうしても必要なんです。

とありますが、厳密に言えば、モスクには壁さえも必要ない、人が神を礼拝するスペースさえあれば、そこは モスク です、という内容で、次の写真を見て下さいと、2枚の よく撮れた写真を添付してくれました。おそらく、この前の(私の パキスタン旅行中の 2010年11月17日)イードの祭礼の時の 集団礼拝だと思います。

イスラム建築  イスラム建築

彼の言うことは まったくその通りで、たとえば、先日 パキスタンのハイダラーバードで泊ったホテルでは、左下の写真のように、ベッドサイドに キブラ QIBRA の方向を 矢印で示すシールが 貼ってありました。礼拝時刻に、この方向に礼拝をすれば、このホテルの一室も モスクになるわけです。ジャイナ教には スターナカヴァーシーという、いわば無教会派があって、寺院それ自体を否定していますが、イスラームでは、自宅で一人で礼拝をしてもよいが、モスクの施設内で集団礼拝したほうが一層よいと、『クルアーン』には書いてあります。

イスラム建築  イスラム建築

右の写真は インドのチェザルラの近くにある イードガーで、田園のなかに一枚のキブラ壁のみが立っています。壁には ミフラーブのニッチがあり、壁の両端には ささやかなミナレットが立っています。 年に2度のイードの祭礼に 村人全員が集まって集団礼拝をする イードガーです。私はイスラーム「建築」の研究をしているので、建築的観点からは、自宅やホテルの一室よりも、これが ミニマルなモスク なのだと言えるでしょう。ということを返事に書いて、これら2枚の写真を送りました。

(2010 /12/ 10)




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かつて「フェイスブック」の『イスラーム建築』に使った 扉



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