このウォーラス飛行艇は戦艦や巡洋艦のカタパルトから発進させて、偵察や観測に当てる目的で開発された最初の水陸両用艦載飛行艇である。この実用性一点張りのスタイルの飛行艇が、流麗なスタイルのスビソトファイヤー戦闘機と同じ会社の製図板から生まれたというのは、信じられないくらいだ。
活躍は第二次世界大戦の終了までの長い期間に渡ったが、この間の任務は初期は偵察や弾着観測であったが、徐々に陸戦協同や対潜哨戒・攻撃に移り、日常的には、軍港などの海軍基地からの連絡飛行や軽輸送であったが、開戦中は戦闘や事故で着水した航空機の乗員救難などが多忙な任務になった。大戦後半には英空軍にも多数が配属され、空軍基地から洋上の遭難乗員の救難に出動するようになった。
ウォーラスの生産は後にはサンダース・ロー社に転換され、そこでは艇体構造を木製にしたり、エンジンを改良型にするなどの設計変更が行われている。日本海軍が重用したフロート(浮舟)形式の水上機とウォーラスのような小型飛行艇と、どちらが良いか7それはそれぞれの海軍の運用思想によって違ってくるので一概には言えない。
同時期に開発された日本海軍の九四式水上偵察機と比較すると、性能の数字では九四水偵が明らかに優っているが、水陸両用という特性を活かした救難や連絡・軽輸送などの多用途性では小型飛行艇にも多くの利点がある。日本海軍は九四水偵の後継機に、やはり双浮舟(フロート)形式の零式3座水偵を採用したが、英国海軍はウォーラスの後継機には、同じ水陸両用の飛行艇形態のシー・オッターを開発し、使用し続けていた。 |