175. ハインケルHe70 旅客機[ドイツ]
HEINKEL He70 PASSENGER TRANSPORT [GERMANY]

全幅:14.80m、全長:11.70m、翼面積:36.5u、総重量:3,310 kg、発動機:BMW Vl 600馬力、
最大速度:377km/h、巡航速度:320km/h、航続距離:11000km、乗員乗客:2/4名、
初飛行:1932年11月25日
                                       Illustrated by Shigeo Koike , イラスト:小池繁夫氏


 1932年、ヨーロッパの航空界は震憾した。スイス航空が、巡航速度280km/h、乗客4人乗りのロッキード・オライオン単発旅客機をアメリカから輸入して、チューリッヒ〜ミュンヘン〜ウィーンの急行便に投入したからだ。なにしろ当時のヨーロッパ製の旅客機の巡航速度は120〜180km/h程度だったからだ。ルフトハンザ航空は、直ちに対抗機の開発を国内の航空機メーカーに依頼した。そして再興ドイツ航空技術の回答が、このハインケルHe70だった。(2001年カレンダー)

 パイロットの涙滴型風防だけを胴体の左寄りに突出させた流麗なラインの胴体は、沈頭鋲を使用した全金属製モノコック構造、軽い逆ガル型をした楕円翼は木製骨格に合板張りの左右一体構造で、いずれもパテと塗料で表面はピアノのように仕上げられていた。もちろん完全な引込脚、エンジン冷却器も冷却液にエチレングリコールを使用して小型化し、半引込式となっている。

 ハインケルHe70は1932年12月1日に、早くも完成し、年が明けるとペイロードを積んだ状態での区間距離速度の8種類の国際記録に次々と挑戦し、いずれも時速350kmを超えるという快速で更新に成功した。民間型28機、軍用型296機が造られ、民間型の1機がイギリスに輸出された。イギリス側の計測ではハインケルHe70の抵抗係数はスビソトファイヤー戦闘機より小さかったと言われている。

 大日本帝国海軍も、密かに民間型1機を輸入して、九六式艦上爆撃機(D1A2)の後継機九九式艦上爆撃機(D3A1)開発の参考にさせていた。同年代の日本の飛行機と比べると如何にドイツの航空工業力が進んでいたか一目瞭然に分かる。

  下のイラストは機体の前半分を拡大してみました。小池さんの繊細な筆使いが少し分かります。




[HOME/WhatsNew/NAKAJIMA/KOUKEN/MUSEUM/QESTIONNAIRE]