1937年にルフトハンザ航空が、リスボン〜ニューヨーク間 5,800kmの直行郵便輸送用に開発させた4発飛行艇(この時期には、まだ北大西洋横断旅客輸送は始まっていなかった)である。ドルニエは、この名機カレンダー・シリーズにも、既にDoXやDo18が登場しているが、ボーデン湖畔にあったドイツの代表的飛行艇メーカーだった。
Do26の1号機(D−AGNT)は1938年3月21日に初飛行したが、空気抵抗の少ないスリムな艇体、プロペラ位置を高くして飛沫から護るためにガル(鴎)型とした主翼、水上での転零を防ぐ引込式の翼端フロート、ドルニエ伝統の串型に配置された燃費の良い4基のユンカース・ユモ205ディーゼルを搭載しているなど実に意欲的な作品である。 更に離水時には延長回転軸を15度上方に跳ね上げて飛沫を避けるようになっている複方プロペラ、世界の飛行艇関係者は、その洗練された設計にアッと驚いた。
当時のわが国を代表する川西九七式4発飛行艇と比較すると、自重はほぼ同じだが、全備重量は1.3倍。それ対して翼面積は0.7倍、翼面荷重は1.8倍となっている。 この高翼面荷重と洗練された空力設計によって、エンジン出力が小さいのに、巡航速度は九七大艇の1.4倍、最大航続距離は大燃料容量と低燃責エンジンによって1.33倍となっている。当然のことながら離水距離は長くなるが、それはすでに実用実績のある大型カタパルト船を使用することで補う設計だった。
1939年2月からドイツ〜リオデジャネイロ線に就航。旅客用としたDo26Bも計画されたが、戦争により陽の目を見なかった。民間型Do26Aが2機、防御銃塔を追加した軍用型Do26Dが4機がつくられた。
(2004年カレンダー掲載) |