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ソウル訪問記(1998.2.27-3.2)

その2

韓国国鉄

 韓国の国鉄はソウル−釜山間の「京釜線」を始めとして、日本統治時代にそのネットワーク大部分ができあがっている。ということは38度線で分断された路線も数多く存在することを意味する。朝鮮半島最初の鉄道路線であり、ソウルと中国とを結んでいた「京義線」は現在は一ローカル線に成り下がっている。

 韓国国鉄は日本占領時代に日本の技術で作られ、蒸気機関車なども日本製が多い。しかし朝鮮戦争以後はアメリカの技術を用いて復興が進んだと考えられる。韓国ではアメリカ型のディーゼル機関車が一般に用いられており、有蓋車もアメリカのそれを青く塗ったものが多い。韓国の鉄道模型を作るときは、アメリカの機関車と貨車を買ってきて色を塗り替えればよい。、

 韓国では1970年代に山岳線の電化がフランスの技術で進み、フランス型の電気機関車(もちろんゲンコツスタイル)の導入が進み、ほぼ同時期にソウル近郊の電化(韓国では「電鉄線」という)と地下鉄の開業が日本の技術で行われた。国鉄の近郊電車とソウル市営地下鉄の車両が103系に似ているのはこのためであろう。

ソウル近郊の電鐵線

 2月28日、鉄道博物館に行った帰りの釜谷駅からはその103系似の電車(韓国国鉄1000系電車第一次型)を使った。車内に「Hitachi 1974」とあるように、この第一次型は日本で製造されたものである。車内も日本国鉄電車と同じである。窓が少ないこともあって陰気な感じがするが、塗装変更(黄色と緑のCI色)や冷房化などの近代化改装は行われている。

 鉄道博物館のある釜谷からソウルまで戻ってみる。複々線の線路に沿って市街地が谷筋に張り付いている。このあたりはソウルまで30分だというのに山が多く、その山も森林のままの部分が多い。霧雨が降れば山水画のような情緒溢れる風景になりそうである。思うにこの山「グリーンベルト」の役割を果たして、ソウル市街地の際限なき膨張を防ぐ役割を担うのではなかろうか。

モーターの音まで103系に似た電車はソウルを目指す。途中でソウル市営地下鉄の車両(同一設計で色違い)やデザインが違う新車とすれ違う。急行線はセマウル号(ステンレスの高速ディーゼル動車。先頭車の半分がエンジンルームになっている)やムグンファ号(韓国国花ムグンファをあしらった特急。専用塗装の客車をディーゼル機が引っ張る)と頻繁にすれ違う。初めて見るアメリカ型ディーゼル機は音がうるさく、すれ違う車内にまで容赦なく響いてくる。

山がちな風景が一変して市街地が広がるようになると、港町仁川からの路線と接続する。駅もきれいに整備され、通勤電車と頻繁にすれ違うようになってきた。回送の電車特急(形は日本のそれとよく似ている。ソウル−東海間の専用車両)と併走しながら漢江を渡る。ソウル駅まであと少しというところで、複雑に入り組む構内の線路を横目にトンネルに入る。その時車内の電気が消えた。常磐線などにある「デッドセクション(地下鉄は直流電化)」である。

ソウル駅は近郊線と長距離線とで構内が分かれている。長距離線は日本占領時代からある煉瓦造りの駅を通る。かつてはこの中に出札口や改札口があったが、現在では増築された高架コンコースに各ホームごとの改札口がある。

 

〜〜〜ソウル地下鉄〜〜〜

ソウル駅で4号線に乗り換える。1000万都市ソウルでは、8号線までの地下鉄が計画されており、そのうち5本が全通している。地下鉄が都市内全部を網羅し、郊外鉄道の役割も果たしているソウルでは、これらの地下鉄網が完成したら世界トップクラスの地下鉄網になるのではないだろうか。ソウルの地下鉄は厳密には1〜4号線と5〜8号線とで事業主体が異なる。運賃は最短450Wonであるが、国鉄電鐵線も含め共通運賃になっている。

ソウルの地下鉄は日本の技術協力で作られたものであり、日本のそれと非常によく似ている。

しかし、日本と異なる点もいくつかある。まず車両が日本よりも大柄であること。こちらの地下鉄は全て国鉄規格であり、この点では欧米のそれよりも日本と類似しているが、その「国鉄規格」が車体長20m、幅3m超と日本よりも大きい。また路線名が全て1号線〜8号線の数字で示されていること。「路線のイメージ」の点では無味乾燥だが、韓国語が読めない外国人にとっては非常にわかりやすい。また、この「番号主義」は駅にも適用されており、駅のそれぞれに駅番号というべきものが振ってある。 旅行者が注意しなければならない点として、地下鉄は写真撮影厳禁であること、路線は1号線以外は右側通行であること、車端部は高齢者専用席になっていることであろう。

〜各路線のプロフィール〜

1号線:1973年に日本の技術を導入して作られた地下鉄。いわゆる「地下鉄」部分は短く旧市街の中心部のみであるが、南西(仁川・水原)および北(議政府)方面への国鉄線直通でそれを補っている。路線カラーは赤。

2号線:ソウルの旧市街と新市街を環状線で結ぶ他、短距離の枝線が2本ある。路線カラーは緑。

3号線:ソウルの北西と南東を結ぶ。郊外部は国鉄の新線に直通している。路線カラーはオレンジ。

4号線:1号線・国鉄のバイパス的役割を果たす。繁華街明洞へはこの路線で。路線カラーは水色。

5号線:ソウル市内を東西方向に貫く。金浦空港に乗り入れ。路線カラーは紫。

6号線:これまで地下鉄が走っていなかった梨泰院など旧市街南部の地域を通って東西連絡をする。

7号線:ソウル市東部から江南地区を東西に貫く。ソウル市東部地区は営業中。

8号線:現在は江南にあるオリンピック公園から東に抜ける区間で営業中。

〜〜〜ソウル路線バス〜〜〜

ソウルでは近郊鉄道の整備が遅れたこと、道路の整備水準がよいことなどから、市内交通の多くを路線バスに依存している。

ソウルの市内バスは全路線が民営であり、一般バスは全線500Wonで乗ることが出来る。日本のバスとの大きな違いとして、「座席バス」という車内設備が良く停留所が少ないバス(運賃は1000Won)が多くの路線で運行されていることが挙げられる。異なる水準のバスサービスが成り立つこと自体、バス利用者が多く主要な交通機関の地位を保っていることの表れであろう。

さっそく乗ってみる・・・と思ったが、停留所の到着案内はハングルでしか書いていないため、どのバスがどこに行くのか皆目見当がつかない。ハングルの部分部分をメモしてきた紙と照らし合わせても読めない。

ソウルの市内バスは車両毎に運行される系統が決まっており、その車両には何カ所にもわたってペイントで系統番号と経由地が書いてある。日本のバスなら可動式の方向幕がつく前面上部も、やはり系統番号と行先がシールで張り付けられている。ハングルさえ読めれば日本のバスよりも分かりやすいかも知れない。ハングルが読めない外国人は、系統番号だけが便りになる。

入ってきたバスは黄色とグレーの新塗色、冷房付、オートマチックの新しいタイプであった(1992年製)が、車内はビニールの椅子にデコラ張りと安っぽい。運転士も私服である。運賃箱もが釣り銭の出ない小さいものしかない。しかしその脇にはプラスチックの箱がついていて、乗客は運賃を払う代わりにその箱に財布などをかざしてゆく_実は、韓国では非接触式のバスカードがすでに実用化されており、全バスにカードリーダーがついているのである。先を越された。

韓国ではバスの運転が一概に乱暴であると言われるが、「乱暴」というほどでもないのが筆者の感想である。しかし停留所では乗客がバスめがけて走ってきたり、停留所付近で運転士は入口ドアを開けながら走ったり、日本の感覚で考えると少しく危なっかしい。

韓国ではバスの国産化体制が整っていることもあって、車両は全車国産車で占められている。しかしこの韓国メーカーの多くは外国(特に日本)の自動車メーカーと深い関係を持っており、特にバスやトラックなどの商用車でその特徴が顕著に現れている。現在バスを製造しているのは現代(HYUNDAI)、大宇(DAEWOO)の2社が主であり、その他起亜グループの亜細亜自動車、最近大宇との合併が決まった双竜の4車種が見られる。このうちバスを含めて現代の自動車は関係の深い三菱車とよく似た外見をしており(長距離バスなどはそっくり)、また大宇の長距離バスは米GMと瓜ふたつの車両を生産している。

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更新日 2005.09.26/無断転載および無断引用はご遠慮ください/Link Free/・・・
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