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No.7 マンハッタン以外の歩き方

見方・廻り方

ニューヨークは、「マンハッタン」「ブルックリン」「クイーンズ」「ブロンクス」「スタテン島」の5つの地区に大きく分かれている。普通にニューヨークを旅行する人で、「マンハッタン」以外の場所にも足を伸ばす人は、どのくらいいるだろうか。

マンハッタンだけでも見るべきものが一杯ある上に、各々の地区の大きさは東京23区のそれとは比べ物にならないくらい大きいので、限られた時間の中では、マンハッタン以外まではとても廻れないのではなかろうかと思う。

自分も、時間・情報が限られている中、「出来るだけ多くのものを見たい」と思っている一人、どうやって「出来るだけ多くのもの」を見ればいいのか。このヒントになりそうな話が一つある。

「外国人が東京に来た際に、短い時間でいろいろ見せたいのなら、山手線に乗って1周廻って車窓を見せるのが良い。」当然個々の街に降りるわけでないので詳細を知ることまではできないが、たった1時間強で東京を「掴む」ことができるらしい。

結局自分は、個々の街にはあまり出歩かず、上で書いた山手線を一周する外国人の如く「地下鉄(中心を離れると、地下鉄も地上を走る)の窓の外の風景」を見ることで、マンハッタン以外のニューヨークを「観光」することにした。別に自分が鉄道マニアだからという訳ではないが、この「車窓から見るニューヨーク」、これがけっこう効果的だった。

 

ブルックリン〜橋の向こう〜

橋の話

独立した島であるマンハッタンとブルックリンとは「イースト・リバー」と呼ばれる大きな河川で隔てられているが、その間はいくつもの橋とトンネルで結ばれている。その代表となるのが「マンハッタン橋」「ブルックリン橋」と呼ばれる2つの大きな吊橋である。両橋はニューヨークの観光名所にもなっており、電飾された夜景の風景に見覚えがある、という人も多いと思う。

イースト・リバーは船の航行が盛んであるため、橋も高く大きなものしか架けられない。その結果、橋の上からの見晴らしは結構良く、ちょっとした観光地になっている。特に、マンハッタン橋・ブルックリン橋のどちらも歩いて渡れるうえ、「マンハッタン橋」は地下鉄(Q線・W線)も橋の上を走っているため、観光客にとっては、見るだけではなく実際に橋を渡ることができる「観光名所」になっている。

今回の旅行では、作者も両橋を渡ってみようと思い、午後マンハッタン橋を地下鉄で渡ってから夕暮れ時にブルックリン橋を歩いてマンハッタンに戻る計画を考えた。

マンハッタン橋の上から南のブルックリン橋とウオール街を見る。作者が訪れた日は天気が悪く、ガスか雲かスモッグか解らないがもやがかっておりあまり見晴らしは良くなかった。夜訪れてみるとまた違った風情になるかもしれない。ちなみに、マンハッタン橋北側も同じように地下鉄が走ってはいるが、こちらは運休中である。

ブルックリン橋の最寄駅(ブルックリン側)は地下鉄A・C線の「High Street」である。ここで地下鉄を降り、ブルックリン橋への上り口を探す。しかし標識が分かりにくく、また分かりやすい地図を持ってこなかったため、結局ブルックリン橋の入口には辿り着けなかった。しかも時間はまだ午後6時だというのに異様に暗く、夕立に降られてしまった。

(後日、やはりブルックリン橋には未練があり、マンハッタン側の最寄り駅「Blooklyn Bridge」からアプローチを試みたが、結局歩道の入口は分からずしまいだった。橋のすぐ下までは辿り着けたのだが・・・)

【橋の上を走る地下鉄】

ニューヨークの地下鉄で、マンハッタンとクイーンズ・ブルックリンを流れるイースト河を橋で渡るのは以下の3橋4路線。今回の旅行では、列車が走っているところはその全てに乗った。

  • マンハッタン橋南側(Q線・W線)
  • マンハッタン橋北側(改修工事により2003年現在運休中。かつてはB線・D線が走っていた)
  • ウイリアムスバーグ橋(J線・M線・Z線)
  • クイーンズボロゥ橋(N線・R線・W線)
  • (写真)トラス構造のクイーンズボロゥ橋

橋の先の話

マンハッタンのちょうど対岸が、ブルックリンでも一番栄えている場所らしい。このあたりは地下鉄はマンハッタン同様、地下を走るため、沿線がどうなっているか分からずじまいである。「High Street」駅を降りたあたりは、マンハッタンとあまり変わらない、公園とビルが建ち並ぶ一帯だった。ガイドブック等では、マンハッタンに比べるとのどかな、時代に取り残されたような、それでいて寂れていない街並みの写真が載っていたが。

冷汗もののFranklyn Shuttle

地下鉄(Q線)が地上に出る「Prospect Park」で電車を降りる。ここからマンハッタンに向かう地下鉄3路線を横断するように走るシャトルトレインが出ている。これに乗り、終点でブルックリン橋のたもとに出れるC線に乗り継ぐことにした。

Prospect Park駅に到着。ホーム反対側の「Franklin Shuttle 」のの乗り場を見てビックリ。さらにたった2両編成の電車に乗ってドッキリ。乗客のほとんどが黒人の学生なのは分かるとして、腰に拳銃を構えたいかつい警官も同乗していた。警官!?

かつて、犯罪が多発していた頃のニューヨークの地下鉄には全ての列車に警官が乗っており、車内での取り締まりをしていたというが、それを思い出した。嫌な予感がする。

路線自体は街の中を走る単線と複線が混じった路線を、短い電車が行き来する、東京の西武多摩湖線のような漢字だった。しかし問題は沿線の雰囲気。路上に建つ2〜3階建ての建物は落書きだらけで放置されていたり、故障してライトが片方割れたフォルクスワーゲンを数人がかりで押して動かそうとしていたり、非常に冴えないものだった。木々が生い茂る沿線の小学校か公民館で、小さい子供が多数遊んでいたのが、せめてもの車窓の慰めであった。

警官は途中の駅で降りてしまった。どうやらパトロールの途中でこの電車を使ったようだが、見捨てられたようで非常に心細い。

シャトルトレインの終点「Franklyn Avenue」に到着。マンハッタン方面に乗り換ようとするが、一旦駅の外に出なければいけない。駅の敷地外では、道行く人に目を合わせないよう、小走りで乗り換えホームに向かった。マンハッタン方向に向かうホームも薄暗く人気も少なく、気を抜いていると確実に犯罪に逢いそうだった。

帰国後、「マネートレイン」というニューヨークの地下鉄が舞台となったアメリカ映画を見た。ラストシーンで主人公が「マネートレイン」の暴走をこの「Franklin Avenue」駅で停め、地上に出たところ紙吹雪の舞う大フィーバーでハッピーエンド、というシーンがあった。しかし、実物の「Franklin Avenue」駅周辺、とてもとてもそんなフィーバーの起こるような駅ではなかった。

自分にとって、ブルックリンはこの「Franklyn Shuttle」のイメージが全てになってしまった。

クイーンズ〜アメリカの中のアジア〜

クイーンズは、ブルックリンの上に位置する一帯であり、やはりマンハッタンとは数多くの橋とトンネルで結ばれている。この区は、ニューヨークに入植してきた様々な民族の人々が暮らしており、その文化も色濃く残っている。ニューヨークにいながらあたかも他の国を訪れたかのような感覚に浸れる。

なお、その辺の話の詳細は「ニューヨーク裏うら散歩(兵藤ゆき、(発行出版社)2002年)」に詳しく楽しく書かれている。

地上を走る地下鉄

クイーンズの北端を走る地下鉄7線は、グランド・セントラル駅から出る。この路線は、2002年当時、赤茶色の旧型地下鉄車両「Redbird」がたくさん残っており、それを選んで乗った。その一番前に陣取り、運転士と同じ展望を楽しむ。

イースト・リバーをトンネルで渡り地上に出ると、マンハッタンのそれよりも明らかにうらぶれた低層ビルが広がる。クイーンズでは、インド・コロンビア・ギリシャ・韓国・中国そして日本と様々な民族の人々がめいめい集まって住んでいる。早速、窓の外に広がる建物には、極彩色のラテン綴りやらハングル文字やらインドあたりらしい文字が窓に書き連ねられているのが見えた。街並みが煤けて見えるので、その鮮やかな文字が一層際立って見える。

真ん中の線路を走る急行電車に抜かれながらチンタラと終点に向かう。その1つ手前の駅には、元阪神の新庄も活躍したニューヨーク・メッツの本拠地シェイ・スタジアムがある。この路線の電車にも、メッツのステッカーが張られているものがいる。

30分くらいかかって、終点の「Main Street Flushing」に到着。エスカレータもある立派な地下駅である。

極東アジアまで30分

フラッシング駅のエスカレータを上がって少し歩くと、見えてくるのはハングル文字ばかり。店の看板に出ているアルファベットも、申し訳程度に小さく書かれているだけ。道路交通も韓国と同じ右側通行なので、道行くバスの表記が英語である点を除けば、本当に韓国ソウルに来た錯覚に襲われる。

一通り街をふらつき、本屋に適当に入ってみると、ハングル文字の本ばかりが置いてある。気になったのは、本屋に置いてある漫画本の少なさ。日本の本屋では、書棚の1/3は確実に占めているであろう漫画本が、ここでは本屋の片隅にしかない。それ以外の活字本が大量に本棚を占領している。自分自身漫画は好きな方なので大きなコトは言えないが、この品揃えを見ると、「日本人はもっと本を読んで勉強しないと将来まずいのでは?」と思えてくる。

駅からマンハッタン寄りの方向に歩いてゆくと、今度はハングルは消え去り漢字ばかりになる。こちらはチャイナタウンのようだ。ネイルサロンとかの店も多い。韓国・中国ときて、じゃあ我が日本からの移民はどうなのか?というと、ニューヨークには残念ながら日本からの移民はほとんどいない。留学生等が住居を構えるのも、ここではなくもっとマンハッタンに近い、アストリアの方である。

アストリア

その後、アストリアに行ってみる。建物にはアメリカとギリシャの国旗が建っている。しかし、先の7線沿線の風景とくらべるとだいぶお上品であるようだった。日本人街みたいなのが出来ているか?とも思い、一瞬地下鉄を下車して歩いてみたくなったが、疲れていたので結局そのまま折り返してしまった。

 

ブロンクス〜「歩き方」にすら出ない街〜

ブロンクスは、元巨人の松井が活躍するニューヨーク・ヤンキースの本拠地「ヤンキー・スタジアム」があり、また「ブロンクス・ズー」と呼ばれる非常に大きな動物園が有名である。しかし、しかし、全世界を網羅する「地球の歩き方」をしても、ブロンクスに関する記述はブロンクス・ズーの1ページしかない。しかも、そこには「現在では”世界最悪の犯罪地区”と言われる状況だ」とまで書き添えられている。

どうやら、ブロンクスは、おっかない所であるらしい。しかし、ブロンクスがどんなところか、ここまで来たからには見てはみたい。旅行に出る前にいろいろ考えた犯罪対策を自ら侵すようであるが、時間帯が比較的安全と思われるラッシュアワーに、駅の外には一歩も出なければ「危険は少ない」だろう。

折り返した駅は、駅の回りも古びたビルやそれを取り壊して作ったであろう低層住宅、廃線の跡もみられる。ちょうど帰りのラッシュアワーの時間で、乗換駅ということもあり、下りホームは人の出入りが激しい。満員の客を乗せた電車も頻繁に入ってくるので、駅の中だけは活気があった。

高架線を走る列車から見える風景は、ブルックリンやクイーンズのそれより悲惨で、建っているビルの多くに落書きがなされている。、ブルックリンではいろいろ見られた広告もない。路上には人はおらず、ボンネットを開けたクルマが幾台も転がっている。そして、ドアを開けたときに時折聞こえてくるパトカーのサイレン。ちょうど、ブロンクスの中でも治安が悪いと言われるサウス・ブロンクスのあたりの風景だが、地下鉄で世界経済の中心たるマンハッタンからまっすぐ来れる一帯とは、とても思えなかった。

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更新日 2004.05.23
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