Old Fashioned Rock Wave
ロックの名盤APPENDIX
[70年代のクラプトン〜Slowhand Singin']

DISCOGRAPHY OF 70's E.C.'75〜'79


There's One In Every Crowd/Eric Clapton
1975年
安息の地を求めて
 前作『461 オーシャン・ブールヴァード』の延長上にあると言ってしまえばおしまいですが、それじゃ面白くないのですよね。
 プロデューサーは、同様にトム・ダウドで、バンドはさらに女性ヴォーカルにマーシー・レヴィが加わり、強化されました。録音は、一部ジャマイカで行われ、レゲエ色も強くややワイルドな音になってます。また、前作では抑え気味だったクラプトンのギターもブルース曲などでたっぷり聞くことができますが、オリジナルとカバー曲が今作は、はっきりと対比させられており、そのあたりが前作に比べてアルバム全体の統一感に欠けるともいえます。また、「アイ・ショット・ザ・シェリフ」のようなキャッチーな曲がないことも、このアルバムを地味なイメージにしていますが、後半を占めるクラプトンのオリジナル曲はそのギターとともに、やはり聞くべきものはあります。特に名曲「ベター・メイク・イット・スルー・トゥデイ」のしっとりしたレイドバック感はクラプトンならではのものだと思いますが...。



E.C. Was Here/Eric Clapton
1975年
エリック・クラプトン・ライヴ
 ライヴ・アルバムは、一般に何か記念すべき節目のときか、ちょっとファンの様子を伺うときなどに企画されることが多いと思うけど、このアルバムはどちらかというと後者だと受け取りました。なんの脈略もなく唐突にリリースされ、意味深気なタイトルがつけられたこのブルース・アルバムは、新生クラプトン・バンドの曲が収録されなかったことで昔のファンに媚びてるのはみえみえだったのだけど、この手のブルースやらせりゃ右に出るものがいないだけに、妙に好意的に受け止められたのです。
 ブラインド・フェイス時代の2曲とブルース・ナンバー4曲のシンプルなアルバムなのですが、こなれてきたクラプトン・バンドもさることながら......ゴタゴタいってるより、まさに円熟の域に達しているクラプトンのヴォーカルとギターに素直に身をまかせたほうが良さそうですね。ジョージ・テリーのギターもなかなかクラプトンに負けず劣らずがんばってるし、「プレゼンス・オヴ・ザ・ロード」では、イヴォンヌがゴスペル風のいい味出してて、聞き入ってしまいます。
 あざとい企画だと思うけど、演奏に文句つけられないだけに受け入れるしかない1枚でした。プロデューサーは、同じくトム・ダウド、バンドも前作と変わっていません。



No Reason To Cry/Eric Clapton
1976年
ノー・リーズン・トゥ・クライ
 レコード会社の関係で、トム・ダウドにプロデュースしてもらえなかったことが幸いして、これまでにない非常に面白いアルバムになってます。プロデュースは、クレジットでは、ロブ・フラボニとなってますが、ほとんどクラプトンとカール・レイドルが好き勝手にやったんじゃないのって思わせます。録音は、ザ・バンドのメンバーらとともにシャングリラ・スタジオ(LA)で行われ、まさにクラプトン・バンド・ミーツ・ザ・バンドという音になってます。
 リチャード・マニュエルとリック・ダンコの共作のザ・バンド的ナンバー「ビューティフル・シング」をオープニングに持ってきて、ロビー・ロバートソンとのツイン・ギターでは、クラプトンもいつになく艶やかな音色で敬意を表しているかのようです。ボブ・ディランとのデュエットがあったり、マーシー・レヴィのリード・ヴォーカルをフィーチュアしたり、楽し気なお祭り気分を感じさせてくれます。
 セッションには、ディラン、ザ・バンドの他にロン・ウッド、ジェシ・エド・デイヴィス、スティーヴ・ウィンウッドらが参加しているようですが、アルバム未収録テイクがたくさんあるらしいので、将来のリイシューが楽しみ(老後のお楽しみ?)な一枚です。



Slowhand/Eric Clapton
1977年
スローハンド
 『スローハンド』という意味ありげなタイトル、ジャケットのデザイン、そして1曲目のギター・リフからして、クラプトンのかつてのギター弾きまくりを期待してしまいますが、そのスローハンド的雰囲気もJ.J.ケール作の1曲目「コケイン」のイントロ及びギター・リフにとどめるという小憎らしい演出?により、従来のレイド・バックしたプレイを引き立たせる効果を発揮しています。
 このアルバムから、プロデューサーはイーグルスの初期2作で有名なグリン・ジョーンズになりました。そのせいかどうかブルース・ナンバーが取りあげられず、全体に軽いカントリー・タッチに仕上がっています。2曲目の「ワンダフル・トゥナイト」は、レイラこと妻パティのことを歌った甘いバラードですが、クラプトンの名曲のひとつと言えます。前作あたりから、前面に出るようになったマーシーですが、クラプトンの共作となるポップなカントリー・ナンバー「レイ・ダウン・サリー」はシングル・カットされかなりヒットしました。またタイトなナンバー「ザ・コア」もマーシーの瑞々しいヴォーカルによってハイライト・ナンバーとなっています。
 美しいインストルメンタル・ナンバー「ピーチズ・アンド・ディーゼル」で締めくくるわけですが、どちらかというと全体にバンド・サウンドは控えめに、よりヴォーカルを聞かせる1枚になっています。



Backless/Eric Clapton
1978年
バックレス
 '74年から続いて来たクラプトン・バンドの最終作となりました。プロデューサーは、前作に引き続きグリン・ジョーンズが担当していますが、このところ影のうすかったイヴォンヌ・エリマンは、参加していません。
 前作同様に「ウォッチ・アウト・フォー・ルーシー」、「プロミセス」などの軽快なカントリー・タッチのナンバーをまじえながら、今作はいままでのクラプトン・バンドの集大成とでもいえるナチュラルで味わい深い作品に仕上がっています。ボブ・ディランの書き下しの2曲、おなじみのJ.J.ケールのナンバー、トラディショナルなブルースナンバーなど前作に比べて派手さはありませんが、ぐっと落ち着いていて、ヴォーカルとバンドのバランスの良い作品になっています。特にクラプトンのオリジナル・ナンバー「テル・ミー・ザット・ユー・ラヴ・ミー」は、ミディアム・テンポのリズムにのせて、気持ちの良いギター・フレーズとともにメロディアスでアーシーなヴォーカルが、クラプトンの円熟振りを感じさせてくれるナンバーになっています。
 一般的にポップな『スローハンド』の影に隠れていて、印象の薄いこのアルバムですが、クラプトンが本当にやりたい音楽ってこんなものなのかもしれませんね。いいアルバムですよ。

To be continued,some day?

ご精読ありがとうございました。
70年代以外のクラプトンもいつの日か紹介してみたいと思います。

DISCOGRAPHY OF 70's E.C.'70〜'74

PROLOGUE

LIVE REPORT〜ERIC CLAPTON JAPAN TOUR 1999


70年代ロックの名曲・名盤へ
HOMEへ

yukio@hello.email.ne.jp