Old Fashioned Rock Wave
ロックの名盤APPENDIX
[70年代のクラプトン〜Slowhand Singin']

DISCOGRAPHY OF 70's E.C.'70〜'74


Eric Clapton/Eric Clapton
1970年
エリック・クラプトン・ソロ
 このアルバムの評価が低いのは、このアルバムの出来にあるのではなく、ファンがクラプトンに求めるものとクラプトンが本当にやりたい音楽のずれによるものだと思います。クリーム的ブリテイッシュ・ハード・ロックのギタリストとして期待されながらも、クラプトンが選択したのは、ブルースの母国アメリカの土臭い南部系の音楽でした。
 デラニー&ボニーのデラニー・ブラムレットのプロデュースとなるこのアルバムは、当然のごとくバックもデラニー&ボニー・ファミリーで固められ、クラプトンのスワンプ・ロック入門ってな感じで、ちょっと初々しい?クラプトンのヴォーカルを聞くことができます。もちろんギターもギンギンじゃないけどちゃんと弾いていますよ。
 結構佳曲も多く、アップ・テンポにアレンジされたJ.J.ケールの「アフター・ミッドナイト」は、今後のクラプトンの方向性を決定づけるナンバーといえます。またしなやかなポップ・センスのある「イージー・ナウ」、「レット・イット・レイン」などのナンバーもデラニー色の強いこのアルバムの中で、クラプトンらしいものとなっています。習作と決めつけるわけにはいかないなぁ!次作『レイラ』を聞いてしまうと習作に聞こえてしまうけど、『レイラ』は別格ですからね。



Layla And Other Assorted Love Songs/Derek And The Dominos
1970年
いとしのレイラ
 前作『エリック・クラプトン・ソロ』から数カ月の間に、クラプトンは見事にアメリカ南部スタイルのロックを自分のスタイルとして身につけてしまいました。クラプトンの偉いところは、渋めの音楽でありながらも適度にポップで親しみやすいメロディを持っているところです。ギターはともかく、このソング・ライティングのセンスが、現在までトップ・アーティストの地位を保っている秘訣なのでしょうね。
 クリーム時代のエンジニア、トム・ダウドをプロデューサーとして、デラニー&ボニー&フレンズのボビー・ホイットロック、カール・レイドル、ジム・ゴードンからなるバンドに、オールマンズのデュアン・オールマンが加わった布陣は、リハーサルたっぷりやったのかどうか知りませんが、すごく息のあったいい感じの演奏を聞かせてくれます。後にも先にもクラプトンがこれほど伸び伸びと気持ちよくギターを弾き、歌うことはなかったと思います。
 聞き所は、たくさんありすぎてとても書ききれませんんが、私は出だしの2曲が好きです。軽快な8ビートに乗せて、クラプトンのギターが気持ちよく歌う「アイ・ルックト・アウェイ」、一転してスローな泣きのメロディとハーモニクス奏法が光る「ベルボトム・ブルース」、この2曲聞いただけでもう満足です。もちろんタイトル・ナンバーの「レイラ」は、素晴らしいですが、それすらこのアルバムの14分の1曲に過ぎないのですよね。そんな超ハイクオリティな2枚組アルバムです!
 カール・レイドル、ジム・ゴードンの強力なリズム・セクション、ソング・ライターとしてクラプトンを助けたのキーボードのボビー・ホイットロック、クラプトンのギターのポテンシャルを最高に高めてくれたスカイ・ドッグことデュアン・オールマン、この奇跡的ともいえるセッションは二度と聞くことはできませんでした。まさにロック界の一期一会といえます。クラプトンの傑作であり、今世紀ロックを代表するマスターピースお持ちでない方は是非座右の名盤に入れてあげてください!


In Concert/Derek And The Dominos
1973年
イン・コンサート
 デレク&ドミノスは、『レイラ』のあとセカンド・アルバムの準備に入ったわけですが、デュアン・オールマンはオールマン・ブラザースに戻り、セカンド・ギターがいないまま、クラプトンとジム・ゴードンの対立などで、あえなく解散してしまいます。その後、クラプトンはドラッグとアルコールにのめり込みリタイア状態になってしまったのは有名な話です。
 このアルバムは、そんなブランクを埋めるべくリリースされたようで録音は、70年10月のフィルモア・イーストで、『レイラ』録音直後という時期のもので、デュアン・オールマンは参加していません。また、「レイラ」も収録されていません。てなわけで、私は未だに聞いてません。そろそろ聞こうと思ってますけど...。
 ちなみに、「レイラ」は当時のジョージ・ハリスン夫人のパティへの横恋慕の歌だということは、あまりにも有名です。  


Eric Clapton's Rainbow Concert
1973年
レインボー・コンサート
 ヘロイン中毒状態にあったクラプトンを立ち直らせようと、ザ・フーのピート・タウンゼントらが企画したコンサートの記録です。当時某ML誌の酷評を読んで、買う気をなくしてしまい、これもまた未だに聞いてませんが、最近リイシューされまして、6曲しかはいってなかったしけたアルバムが14曲入りになったそうで「レイラ」や「ベルボトム・ブルース」も収録されたようなので聞いてみようかなって思っています。



461 Ocean Boulevard/Eric Clapton
1974年
461 オーシャン・ブールヴァード
 「レイラ」以降麻薬中毒に陥っていたクラプトンの復活作。また、レイラことパティへの横恋慕も実り、ずいぶんこざっぱりしたクラプトンになりました。
 「レイラ」のようなレイドバックしながらも、ギターを弾きまくるクラプトンを期待していたファンには、肩すかしをくらったような感じでしたが、マイアミ録音のせいかリラックスしたギターが曲に溶け込んでいます。当時、クラプトンのソロ・パートが極端に少なかったので、ギター弾けなくなったんじゃないの?って真剣に心配したのですね。今じゃ笑い話しですが...。
 プロデューサーは『レイラ』に引き続きトム・ダウドです。新生クラプトン・バンドは、ベースのカール・レイドル以外は一新され、クラプトン念願のツイン・ギターの相棒として、どこからかジョージ・テリーという若者?が選ばれ、ドラムスにジャミー・オルデイカー、キーボードにディック・シムズ、バック・コーラスにはイヴォンヌ・エリマンという構成で、以後クラプトンを70年代を通してサポートしていくことになります。
 『エリック・クラプトン・ソロ』の「アフター・ミッドナイト」を彷佛させるアップテンポの「マザーレス・チルドレン」で幕を開けるこのアルバムは、随分大人になったクラプトンを感じ取ることができます。取りあえず精神的なマイナス要素を乗り越え、吹っ切れたような感じとでもいうべきなのか、必要以上にソロ・パートは取らず、バンドのまとまりと歌を聞かせることに徹するクラプトンがここにはいます。
 「ギヴ・ミー・ストレングス」、「レット・イット・グロー」、ボブ・マーレーの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」などの名曲を揃えたこのアルバムは、ある意味では、『レイラ』を超えているのではと思わせるものがあります。また、『エリック・クラプトン・ソロ』でのデラニー&ボニー&フレンズとの経験がこのアルバムから本当に生かされているような気もします。

To be continued.

DISCOGRAPHY OF 70's E.C.'75〜'79

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