ようやっと今月号を読むことが出来たのですが……なんなんですか、あのユキ先生によるトゥルーぱんつ祭りの様は! こ、この潮干狩りというシチュエーションを甘く見ていた……ッ! そうか、この状況って、小さい子たちはみんな無防備であることが当然となりうるパラダイス――!
いやもう、元気な夕凪さんや星花、立夏あたりのパンツはもちろん、まさか吹雪綿雪のユキユキパンツ(←複数形)まで見られるとは、予想外のさらに予想外。……氷柱はさすがにガードが固かったようですが。そして一人「パンツまでびしょ濡れ」発言までさせられる小雨には、どうやらここのところ災厄の卦が出ているようですね。いやあ……なんと素晴らしい。潮干狩り! 見直したぜオマエってイベントを!
姉妹の各発言を見ていくと――海晴姉さんの口から「濡れちゃっても――いいの♥」なんて言われると、トゥルー俺が前かがみにならざるを得なかったり。霙姉さん、最後の一文が超唐突ですがそれでこそ。あと、妹のパンツの柄をしっかりチェックするのもどうか。春風さん、超突風春風真っ最中。ストーリーではシリアスだったのに! 今回代表のヒカル――ああ、そのお墨付きをいただけたってことは、事実上の見放題ってことですねOK承知した! ……え、まさかトゥルー俺のパンツってこと……? ホタ、トゥルー俺はまさにハンター!(姉妹のパンツチャンスを狙うという意味で) 氷柱、下僕使役状態。お仕置きというのはトゥルー俺的にむしろご褒美ですが何か。立夏……もしかすると、少し待つと全身ずぶぬれの新ブラ透けイベントが見られますか? 小雨――ああ、小雨パンツ(HANAGARA!)が濡れ濡れに……というかなんというお約束か! 麗、この手のことには意外と乗り気というかマジメと言うか、露骨過ぎておねだりヘタというか……かわいいのう。星花――「ごほうびに――なでてくれますか?」ウオオオオオオオッ!全力で!頭以外も!(潮干狩りで冷えたであろう手足とかもっと他の場所まで) 夕凪さん、ああ、まさに夕凪さん! マラソンのアンカーを任せられないタイプです間違いなく。吹雪、やはり磯は苦手っぽく。……外骨格吹雪……。綿雪、ちょっと体調が心配ながら……元気な上に可愛すぎてむしろこっちが悶絶。真璃、こちらは苺狩りの話でしょうか、なにやら女王様的でカッコイイ発言が。トゥルー俺の苺、って……?(←あらぬ妄想を) 観月、こちらも苺側のようですが、苺は好きなご様子。……はい、あーん!(←幸福極まった表情で) さくら、この子も順当に苺側ですね。イラストを見ての通りのメンバーが苺側ですが、なるほど納得の面々。虹子、おお、この子と青空は潮干狩り側。波にさらわれないか怖いですが――「ぴゅっ、ぴゅって、おしおふくよ!」――わかってる、わかってるんだけど俺は! 青空、すっかりぐしょぐしょですが、おもらしではありません。だっこもOK。……ほ、ホントにお漏らしじゃないですよね? あさひさん、さすがに苺側のようですが……「オマエを食べまくってやるぞ!」――YASEI、全開! 今のあさひさんならピクルにすら勝てます。
――とまあ、今月号は、霧賀ユキ先生のお仕事がまさに神の領域に達しておられました。アリガトウ、アリガトウッッ!(←パンツばかり見ながら) ……っていうか、今見たら、ヒカルのウエストに覗いてる星柄の生地って、これもまさか……!?
sion氏の描くイラストストーリーのほうは、春風さんの、ちょっぴり切なげなお話。この人、禁断の恋ってテーマのおかげで、シリアスストーリーもすごく似合うというか多いですよね。見るたびに心を打たれます。……その反動で、普段はあんな風にきゅんきゅんしてるのかもですが。いや、これは、シリアスな恋心を抱える子が普段はアフォっぽい言動に見えるというのは、咲耶の頃からの伝統かもですね。
というか、sion氏の絵のクオリティが、加速度的に増しておられる気がします。今月号に至っては実に素晴らしいクオリティに。ともあれ、まだ読んでいないトゥルー諸兄は、早いうちに接収して読んでおきましょう。
今日から5月。
はりきって始まる、
5月の1番最初の日。
うむっ、GWを控えて浮ついた気持ちになるのもいいですが、そこは大事な月の初めの第一日ということで、はりきったり気を引き締めたりと、そういう心構えが必要なのですよね……って、
す――すみませんっ。
……
そんな晴れがましい日に――
日記のお当番が、
小雨なんかで――
大いに賛同しようと思ったらこの返しですか小雨! ううむ、なにげにわりと高度な持ち上げ→落しのテクニックを駆使してくれるじゃあないですか。そう、小雨はテクニシャン。……この表現になにやら性的な響きを感じてしまう人がいたら、それはエロい人の証ですが恥じることは無い。
というわけで、今日の日記は、小雨のネガティブがいつになく大全開になったところから始まりました。ううむ、いかに小雨が内気で気弱とはいえ、この無茶理論を振りかざしてまでのネガティブっぷりを出してしまうのは、少々珍しい。
素の状態ではさすがにありえないぐらいの勢いなので、これはきっと、何事かあったのかとは推察されるわけですが……しかしそれにしても、小雨の自分追い詰めっぷりは、なんだか見ていておもしろいぐらいのことになってしまいますね。いや、もちろん本人的には必死なうえに辛いことなので、からかったり面白がったりするつもりは無いんですが、この子の思考回路は、内向きなぶん、他の子よりも面白い練られ方をした発想にたどり着くことが多い気がするので、そういうところを個性として、もっと前向きに会話の中で出せればいいなあ……ってなんとなく思ったりします。って、今はそれどころじゃなさそうですけどね。
とまあ、案の定、小雨には何かトラブルがあったようで……
あと――
あの――
も、もう一つ。
ごめんなさいを
言わなくちゃいけないことが
あって――。
とのこと。まあ、その内容そのものはさておき、何か悪いことや間違いを犯してしまったときって、その人の本質――というか、裸のままの心がよく表れるって言いますよね。たとえばこれが夕凪さんあたりだと、逆にそのポジティブっぷりに怒る以上に呆れたり感心してしまったりすることもあるわけですが、小雨のそれは、実にストレート。悪いことをしたって気持ちと真正面から向かい合いすぎて、自分を押しつぶしてしまうというアレです。しかもこういうパターンって、かえって周りや被害者から見ても逆効果というか、ネガティブスパイラルになってしまう場合も多いんですけど、まあ、素直に非を認められるという部分はそういう理屈抜きで美徳ですよね。
……とはいえ、そういうことを踏まえてもなお、今日の小雨の恐縮振りはちょっと過剰っていうか……
あの、本当に
すみません。
ごめんなさい――
ワザとじゃないんです。
絶対にワザとなんかじゃ――
……なにか、怯えておられる? 小雨の性格を抜きにしても、なんだかこれは、恐ろしいことをしてしまったと思わざるを得ないような、そんな重大なことがあるように思えてなりません。
しかし、どうやらその「恐ろしいこと」のオチというのが……
昨日、1番大きなパックに
びっしり――2パック分。
40個買ってきた、かしわ餅――。
まさか、
まさか――
全部、ミソあんだったなんて――
まさか、
まさか――
霙姉さんのあんこネタだったなんて――!
ちょwww かしわ餅って、昨日マリーが言ってたアレですか! 確かそれはトゥルー俺の係で……って、なるほど、それを間違えてしまったから、小雨はこんなにもトゥルー俺に謝っていると。なるほど納得……って、確かにそれはマズイ!
いや、まさかのあんこオチに思わず吹いてはしまいましたが、そんなネタにされてしまうほど、霙姉さんのあんこへの執着は強いというのは周知の事実。……っていうか、みそアンだろうとあんこには変わりないって思うんですが、やはり霙姉さんの場合、純のあんこ(こしあん派でしたっけ?)でないと満足できないようですね、この口ぶりから判断する限り。
……
どうしましょう、お兄ちゃん――
小雨、こわい――
霙お姉ちゃんがどんなに、
どんなに――
……って、どんだけ恐れられてるんですか霙姉さんは! これは小雨だから、ってこともあるかも知れませんが、しかしながら、あの表向きには十分豪胆といえるヒカルでさえ、初期の一件では「コワイ」って言っているほどでしたからね。トゥルー俺からすると、なにかわけのわからない底知れなさこそ感じますが、そこまで恐ろしい人って印象はないんですが……姉妹の中では、もっと違う見え方っていうのもあるのかもしれませんね。
ともあれ――お気に召さないかしわ餅のオーダーについては、大いに落胆させることは請け合いで、色々と根にもたれたり、それをネタに弄ばれたりすることもあるかもしれませんが――まあ、今までの霙姉さんを見る限り、そこまで本気で恐れるようなことはないんじゃないかなあと。むしろ、M属性を持つトゥルー俺的には、適度に弄ばれるご褒美的な何かが期待できるという向きさえあります。あとは、小雨に累を及さず、罪悪感もなんとかしてあげられればなあ、と。
まあ、落胆することは間違いないので……霙姉さんを慰める何かを考えるほうが先決でしょうね、きっと。し、しかし、どうしたら良いのか……
――なんてことも気がかりですが、
ああ――
小雨はやっぱり誰の役にも立てない
ダメな子です。
もう、消えてしまいたい――
――小雨を消滅の危機から救うのが最優先ですよ!
こ、小雨ー! 消えちゃ駄目だー! いやまあ、それで本当に消えてしまうほど小雨も極まってはいないとは思いますし、ましてこのトゥルー家族の中で起きた出来事なんですから、そんな心配まではしなくていいとは思いますけど……ああ、明日から待望の本格連休だというのに。小雨と霙姉さんの気持ちを慰められる何かが起きないものか。
あの!
お兄ちゃん――
とっても――楽しい
ゴールデンウィークでしたね!
ウオオオオオオ大オオおおおおおああああああああああああああっ、もう! ホントに! トゥルー餓死するかと思うほどエキサイティングかつサバイバルなゴールデンウィークでしたようっっ!!
……はい。トゥルー内としては、G'sマガジン6月号で描かれていた、潮干狩り&苺狩りなどのイベントで、それは本当に楽しいゴールデンウィークだったのでしょうが……ああああっ、この5日もの間、一切の新規トゥルー分が摂取できないという状況は、今までにない飢餓状態をもたらしてくれましたですよ!
思い起こせば、今までの大型連休には大抵、ユキ先生のイラスト更新などがあったりしたので、ここまで決定的にトゥルーとの隔絶が起こったりはしなかったんですよね。お正月しかり、お盆しかり。……今年のGWがたまたま完全連休期間が長くなったというのは、世間的には良かったのかもしれませんが、リアルに居ながらトゥルーに住む我々としては、本当にもう、大変に耐え難いトゥルー分枯渇に耐えなければならない時間でありました。
……とはいえ、今日からこうして再びトゥルーの日々が戻ってきたわけですし、その不足分はこれからいくらでも補えばいいわけで。まして今日の日記は、いつもにも増して元気イッパイな姿を見せてくれている綿雪なわけですから、これはもう、むしろこの子から生きる活力を分けてもらうぐらいの勢いで接するべきかなと。
いやあホント、今日の綿雪は超元気にハイテンションです。まあ今日に限らず、体調の良いときにはわりとハイテンションな様子が見受けられることも多い綿雪ですが、この子が元気だと、この世の何もかもが幸せなままで過ぎ行くって感覚すら味わえて、とてもあったかい気持ちになることができますね。まさに天使。
GW中のお出かけについては、さっきも言ったようにG'sマガジンでうかがい知ることが出来たわけで、そういう意味では、この綿雪が語っている楽しさもあますところなく共有はできているのですが――
すっかり行楽気分で――
5日間も!
連続のお休みなんて
少しだけ早く来た
夏休みみたい――
とってもとっても
楽しかったな♥
って――
ユキは思います。
………………いやあ、ねえ。ホント。5日間ものお休みでしたから。
――などと腐りたい気持ちがないでもありませんが、それでもユキの「とってもとっても楽しかったな♥」の言葉が聞けただけで、もうそれら全部を帳消しにしてもいいってぐらいには幸せ分を取り戻すことが出来ましたので全て良し。
それはさておき。今年のGWにはお泊りがなくて、春風さんなかはちょっぴり残念そうにしてましたが――ユキとしてはむしろ、
ユキはこんな日帰りの
遠足の方が、
なんだか――少しだけ。
気が軽くて。
えへへ――♥
……とのこと。この後の説明を聞くまでもなく、その理由は理解できるわけですが……ああ、こういう細やかなところで、綿雪って子は、その背負ってきた辛さや苦しさの重みを垣間見させてくれるわけですよ。
「途中で――
具合が悪くなったら
どうしよう――
みんなに迷惑を
かけちゃったりしたら、
って――
ちょっぴり、
心配になってしまうから――」……だなんて言葉を聞くだけで、トゥルー俺は北斗の長兄が如き涙を流しそうになってしまいます。
……とまあ、そういうところで感極まるのもいいですけれど、せっかくユキがこうして超元気ではしゃいでくれているのだから、むしろそっちをまず悦ぶべきでしたね。ユキが元気でトゥルー俺もしあわせ、しあわせ♥(←トゥルー俺が使ってもキモいだけのフレーズですがどうかご勘弁を)
そうそう、結果だけを見れば、(リアル俺の飢餓状態はさておき)大変いいことだらけのGWだったわけなのですよ。ユキがこれだけ満足してくれている姿を見られるのは、なかなかないことかも知れませんしね。
それどころか……
うふふふっ♥
ね、おでこもほら――
ぜんぜん、熱くない♥
ユキ――本当にだんだん
元気な子になってきたのかもしれない……
おおおおおおおぅっ!? 恐らくは直接ユキのおでこの感触を味わえたであろうこともさることながら、この綿雪自身の健康への自覚は……! これは嬉しい、本当に嬉しいことです。
お兄ちゃん――ユキ、
嬉しい――です♥
お兄ちゃん、だーい好き♥♥♥
――そして、これでもかというほど強烈な駄目押しが!
ン゛キ ャ ー ッ !! ユキに大好き言われた! それも、これほどまでにハイテンションな浮かれっぷりで! 感慨的な喜びと兄もしくは男としての直接的喜びとで、GW復帰後早くもトゥルー幸福分の多量摂取で中毒状態です! ええ、たった一日で全て補えました。これこそがトゥルー!
毎日、
雨――
だな。
まったく――
嫌になる。
リアルHOKKAIDOは快晴なれど、リアル関東及びトゥルー世界においてはシンクロ雨模様! いやいや、これもいいかげんいつものことではありますが、地方民であるリアル俺の事情はさておき、リアルとトゥルーとのお天気リンクは毎度非常に厳密ですね。
そんな雨の日であり、週の最後の日記を書くのは、こういうじめっとした気候がいかにも苦手そうなアクティブ体育会系・ヒカルでありました。
そうそう。彼女の場合、好きとか嫌いとか以前に、天気模様が実生活に密接に影響を及ぼすわけですよね。それは主に部活関係についてなのですが……
風呂場はカビるし、
洗濯物はたまるし、
なんだか匂いが――
……
強くなるし。
……、匂い。(←この単語に敏感に反応)
いやまあ、体育系の部活動をやっていれば、洗濯物が普通の生活を過ごしている子よりも倍になるわけですから、そのあたりはなんてことはない、ごくごく普通の悩みであるはずなのです、が――
い、いやっ、
べつにそんな――
私の体臭が強いとか、
そ、そそんな、
そういうことじゃ、
ないとは――
思うんだけど。
――体臭!?(ヒカルの!?)
……いやあ。いや、いやあ。なんとなんと……俺の第六感が最初に反応した方向性に、ものの見事にビンゴでありますかヒカルさん!
これまたなんとも、俺及び(俺と似た性癖をお持ちの)俺たちを狙い打つかのようなかぐわかしいお悩みを――!
いやまあ、ヒカルのこの無防備さというか、乙女らしからぬノーガードな心持ちっぷりについては、この二年でけっこう味わってきたわけですから、いきなりこんな、思春期の男子の心を大いに煩悶させるであろうことを言われるのも、それなりに慣れたつもりではあるのですが、それでもなお破壊力抜群と言わざるを得ません。
まあ、ヒカルにとって切実な問題であるということは、重々察せられますが、しかしそれにしても――いかに家族とはいえ、この年頃の女の子が、同年代の男子に、自分の体臭について話を切り出すっていうのは、あまりにもデンジャラスなノーガードですよ。この年頃の男女なんて、異性の強い体臭をかいだだけで、色々性的な意味でどうにかなってしまいそうな気がします。いかにトゥルー俺が鉄壁の理性を持っていようと、危険なことに変わりはなく。
ともあれ、実際には、そんな気にするほどのものではないだろうと推測されるわけですが――それでも確かに、一年の中で一番、体臭関係が気になる時期だというのもまた事実。
「あんまり薄着っていう訳にもいかないし――」ってことは、一日の間で、ジャージを着たり脱いだりを頻繁に繰り返していると言うことでもあり、それはそれで大変かぐわかしげなしチュエーションだと思います。……ヒカルの脱ぎたてジャージなんて手にしたら、健康な高校生男子なら、間違いなく色々しますよ。ええ、色々と。
やっぱ、あれかな?
こういうのを――
「5月病」って、
言うのかな。
あ――あはははは♥
……なんて、いかにもヒカル的なジョークが、かえってこの悶々とした気持ちを沈めるのには効果的だったりもしますが、そのぐらいでこの「匂い」に対して芽生えてしまった執着が消えるわけもなく――
そだ。
オマエさ、ちょっと――
確かめてみてくれないか?
私――そんなにニオウかな?
――さあ、今年一番の危険球が放たれました。
ヒカル――――ッッ!! この子は本当にッッ! 高校生男子の情操というものをどこまで残酷に刺激してくれるのかッそれも素でッ!!
まあとにかく。こんなシチュエーション、トゥルー家族のほかでは、せいぜい『アマガミ』の中でぐらいしか味わえないであろう倒錯っぷりでありますが、さすがにヒカルも、こんなことを言い出してしまうには、それなりの事情があるようで。
今日、言われたんだ。
学校で。
後輩の女子に。
「ヒカル先輩のニオイがします」
って――。
……ああ、ああ。成る程。やっぱ、“居る”んですね、ヒカルの周りには、そういう子が。今までもそれとなく言われていた気はしますが、ここまで直接的にヒカルが自分への百合百合アプローチを語ったケースはなかったような気がします。しかしともあれ想像通りってことで。
しかしまあ、その手の子というのは、だいたいにおいてYASEI動物もびっくりなぐらい、憧れの対象については五感を研ぎ澄ますものですから、こと「ニオイ」に鋭敏に反応するというのも、それはそれで自然といえるのではないでしょうか。
つまり、ヒカル的にはそこまで気にする必要もないんじゃないかって思うわけですが――
体操着貸しただけなんだけど――。
どうも、困る、よな……
……もしかしたら、事態は想像以上にアレなことになっているのかも知れません。
その、ヒカルの貸した体操着。一体どのようなことに用いられているか――相手がいかに女の子とはいえ……いや、むしろ女の子だからこそ……と、激しめの妄想が止まりません。
へい、
らっちゃい!
らっちゃい
らっちゃい!
ここは――
そらの
おさかなやさん。
おさかな、
いかかれすか?
舌っ足らずな青空ボイスで始まる月曜日! おお、悪くない、とても悪くない月曜日の迎え方!
ということで、今週最初は青空のかわいらしいごっこ遊びから始まりましたが――なんというかですね。もう「らっちゃいらっちゃい」とか、「いかかれすか?」なんて言われただけで、大抵の成人男子は内心悶え転げますよ。いや、もちろん女子もですが。
普段青空はわりとしっかりした言葉で話すことが多いので(なにせトゥルー超一歳児)、こうやってたどたどしい発音の言葉を聞くと、これはこれでいいなって改めて思いますね。
やっているのは、聞いての通りお魚屋さんごっこなのでしょうが――まあ、この手のお店の呼び込みでまず目に付くものといったら魚屋でしょうからね。テレビかなにかで見たのでしょうか。
こういうお店屋さんごっこは、それこそ幼稚園児ぐらいまでは必須のお遊びといってもいいぐらい定番でしょうから、青空もこういう呼び込みを覚えてさっそくやってみたくなったってところでしょうか。GWが明けてしまって、少し日中のトゥルー家中も寂しくなっているのだろうな、ということも手伝っているのかも。
――さて、この手のごっこ遊びを行ううえでは、やはり何か、実物の代用品が用いられるのが一般的なわけですが、青空のお魚屋さんについても例外ではなく、“何か”を並べて売っているようなのですが――
ねこちゃんさかな、
あと、
たこやきと
たいやき!
あとねあとね――
らっこちゃん!
……………………そ、青空さん。つかぬことを伺いますが、まさかその「ねこちゃんさかな」とやらは、新鮮とれたての、生魚ってわけでは(産地:トゥルー中庭)……い、いやいやまさかまさか。
まあ、青空が野良猫を使って色々するのは前にも例があったことなのですが、今回の場合は、恐らく店先に並べているってシチュエーションを再現していると思うので、さすがに生NEKOを使ってたりは……いや、意識を失っているとか……は、ハハハまさかまさか。
まあともあれ、ねこちゃんさかなやらっこちゃんは恐らくヌイグルミの類ということで(トゥルー裏山とて、さすがにラッコはいないでしょう)。たこやきやたいやきは……今日のオヤツだった可能性が大ですね。あとで怒られたりしないかちょいと心配。
まあ、そのあたりの品は、魅力的ながらも、雑魚といえば雑魚なんですけどね。
なにせ、とっておきの品がありまして――
あとは――
あとは、
あとは、
そらさかな!
――ほうら、トゥルー俺の理性を試すかのような大物が。
えへへへへ♥
すっごくすっごく
おいしんだよ!
そらさかな!
……「すっごくすっごくおいしい」、と来ましたか。そらさかな。
そりゃあ、青空の事を見て、「食べちゃいたくなるぐらい可愛い」って表現は、誰もが行いうる表現だとは思うわけですが、それがひとたび“具体的な”意味を持ってしまった場合、単なる表現では済まされなくなってしまうわけで――
ほら、
おきゃくさん、
そらさかな、
ひとつ、
どうぞ。
らっちゃいらっちゃい――
おさかな、
はやものがち、らよ〜
……ああ、この子は一歳にしてはや、どこぞのドリームクラブの店員にすら負けない特定方面に対する接客術を身につけておられますよ。そして、トゥルー世界においてはもはやピュアな心は必須でもあるので、これらの情報を総合すると……ち、ちょっとぐらいなら、食べちゃっても……?(←あくまで可愛らしさの表現のうえでの「食べちゃいたい」です念のため)
誰が何と言おうと――
臭い物は――
臭い。
そうだな?
出だし早々なんてことを仰るんですか霙姉さん!!
なんというヒカルの乙女心ブロークンッッ!! いやあ、月曜日が青空の心和やかな日記だったので、金曜日からの流れは引っ張らないとすっかり油断していましたら、さすがに霙姉さんは一枚上手と言うほかありません。なんというKY……!
ええ、臭い。臭い話です。言うまでもなく、先週金曜日におけるヒカルの超危険球に関してです。っていうか直接ヒカルに向けて言ってるようなものですしね霙姉さん。
まあこれは、最後まで読めば、ちゃんと霙姉さんなりに、気にすることなんてないとアドバイスをしているっていうことは良く分かるんですが、しかしこれは……。
いや、ヒカルの場合、こういうことを言われれば、表向きには逞しい性格なので、「それもそうだな」ぐらいの態度を見せてくれるとは思うんですが……ただ、内面のほうがね。あれでヒカルってば、気さくで豪胆な性格の内にしっかりと、それこそ春風さんにだって負けないぐらいの繊細な乙女心も持ち合わせているわけでして。で、なければ、あんなことを言って気にしたりはしないでしょうしねそもそも。
もっとも、それはそれとして、そういう言葉を耳にした霙姉さんのスタンスとしては――
私は――
ごまかしはキライだ。
……とのこと。うん、やっぱ霙姉さんの思考というのは、男性的というか父親的というか、ものごとにはっきりと白黒つける男らしさみたいなものがありますよね。ヒカルの場合、男性的な部分も女性的な部分も兼ね備えているのに対し、霙姉さんには、どっちかというと女性要素――特に「女々しさ」的なところが薄めって気がします。甘いものが大好きとか、悪戯好きとか、そういうところは女の子らしいとも言えるんですけどね。
とまあ、そんな霙姉さんに「オマエももちろんそう思うだろう?」などと問われれば、ええそれはもう、ヒカルの汗の匂いってとっても……と、言わなくていいことまで思わず口に出てしまいそうです。ええ、仮に他の誰の目もなければ、ビニール袋にヒカルの汗ばんだ洗濯物を入れておもむろに(以下、とてもアレな内容なので略) ……って、そういうことではなく。
ともあれ、霙姉さんは、宇宙の真理や、吹雪ばりの科学的な説明をもって、ニオイのしくみを説明してくれています……って、霙姉さんがやたら博識だ!?
知っているか?
ニオイというものは――
嗅覚受容体に分子が結合することによって
感知される。
つまり――
何かの匂いをかぐと言うことは、
鼻の粘膜にその対象物の一部の分子が
実際に接触するということだ。
……いや、いやいやいや。霙姉さんが学校の勉強をちゃんとしているのかってことは、俺たち側の思い込みによる多少のバイアスがあるわけで、そういう前提で見るとちょっと度肝を抜かされる台詞なわけですが、それを抜きにしても、こういう説明がとっさに出てくる時点で、かなりそういう分野に博識であると言って良いでしょう。……傍らに吹雪がいて、耳打ちされているとかでなければですが。
とまあ、そんな霙姉さんの意外な……もとい、かっこいい一面を見せ付けられてしまったら、なるほどと納得するほかないですよね。
それに、これだけ明確な原理を説明して、ニオイがごく自然な現象なんだってことを証明しているのは、ひとえにヒカルを納得させてあげたいがためなんですからね。霙姉さんにしては珍しく、かなり直接的な姉心が発揮されているといって良いでしょう。乙女心への配慮はないですけれど。
それどころか、霙姉さんの説明で、トゥルー俺でさえも色々と感心……というか、ちょっと色々と妄想を広げてしまったりも。いや、主に、「鼻の粘膜にその対象物の一部の分子が
実際に接触するということだ」の部分。具体的には――
例えば――
海晴姉の香水の匂いをかいだら
その海晴姉の香水の分子が。
……とまあ、そんな。み、霙姉さんの肉体に密着していた分子が俺の鼻の粘膜を犯して――! ……などと、ちょっと難易度高めな興奮を覚えてしまったりと。
他にも、当人であるヒカルの暴力的名ニオイ分泌物分子が俺の内部で暴れ狂って――などなど、妄想はさらにとめどなく勢いづくわけですが、
また、甘いあんこの匂いをかいだら、
そのかぐわしいあんこの分子が。
……いい具合にクールダウンいたしました。ええ、霙姉さんはもはや、生粋のあんこキャラですね。唐突に、「春が来て――そのうち、梅雨。
ついに和菓子屋の店頭のかしわ餅も
見かけなくなって――」なんて嘆き始めたりと、かなり深刻な状況です。……あまりシリアスで堅苦しすぎる話を続けていると、ついついどこかで崩してしまいたくなる体質なんでしょうね。意図してか、それとも天然なのかは、普段がけっこう大人なだけあって判断が難しいところですが。意図して――と本人的には思いつつ、実際には天然成分も多く含まれてる、ってぐらいがベストでしょうか。
……まあ、なにはともあれ。
ニオイが強くなるのは仕方のないことだと、
オマエからもヒカルに言ってやれ。
実際問題、汗をかけば
ニオイが出るのは当然のことだ。
そんなくだらないことで悩む必要はない。
この言葉で一件落着ですね。ヒカルも、そう言われただけで素直に悩まないですんだら苦労はないわけですけど、理屈はさて置き、霙姉さんの懇親丁寧な説明をしてくれたことそのものを鑑みて、きっと気にしないように務めるようにはなるでしょう。ヒカルもあれでしっかりしてもいますからね。
……と。
これで終われば本当に綺麗な話だったのですが――
かしわ餅の中身が、すべて
みそ餡であったことに比べれば――
――このタイミングでその話をぶり返す霙姉さん!
……あ、あー。いや、ありましたねそういえば。一応、今月に入ってからの話ではありますが……5月1日。GWも挟んでいるので、体感的にはもうかなり昔の話って気がするんですが……霙姉さんはその悲しみを未だにひきずって居られれました。な、なんというあんこ愛……! そして小雨が聞いたらまた大変怯えたり自己嫌悪に陥ってしまったりと大変でしょうが――ま、まあ、それは仕方ないといえば仕方ないことなので。
ともあれ、みそ餡では霙姉さんのあんこ愛を満足させることが出来ず、また、あんこ絡みの恨みや悲しみについて、霙姉さんはちょっとやそっとでは忘れてくれないということが今回の事件で立証されました。……トゥルーに生きる身として、しかと覚えておかなければ……。しかし本当、落しどころが絶妙すぎる霙姉さんでありました。
あーあ、ヒカルおねーちゃんってば、
なんかタイヘンなコトになってきたネ〜♥
蛍おねーちゃんから聞いちゃった!
ヒカルの匂い――じゃなかった噂をかぎつけて、立夏がニオイ話題に緊急参戦!?
いやあ、姉妹の中でも、あさひさんや青空といった乳児組にすら劣らぬ純度の高いYASEI度を保ち続けている立夏ですから、この手の話題に食いついてくるのはさもありなん……かと思いきゃ、驚いたことに、さすがは中学生女子と言うべきか、そのYASEIの更に上の領域へと話題を――
ま、リッカはガールズラブとかも
意外と楽しくてスキだけど――
……この話題の正鵠を、的確に見抜いておられました!?
な、なんということ……! いや、ヒカルがこの話題をふってきた当初から、「ああ、その子ってきっと……」とは思っていましたけれど、ヒカルの受け止め方が受け止め方だったので、その方面に関してはスルーかと思ってたのですよ。ううむ、昨日の霙姉さんはともかくとして、これはうっかり――とはいえとはいえ、ヒカルの身にしてみれば、スルーするだけですむ問題ではなさそうですしね。
それにしてもこの、立夏の意外なまでの女の子センサーの強まりっぷり――! いや、正直侮ってました。あのバレンタインにおける超強力攻撃を受けていてなおこの認識とは……我ながら、少しばかり反省。
ええ、まあ年齢を考えれば、まさにこの手の話題に誰よりも敏感であって然るべきなんですが、ほら、なんせ立夏は普段の言動が言動ですからね。YASEIっていうか、もっと食欲やら遊び欲にばかり気持ちが傾いているのかと思っていましたが――ああでも、色事っていうのは要は性欲に分類される類のものなので、YASEIの力で敏感になるというのもおかしな話ではないのかも。
大丈夫カナ?
ヒカルおねーちゃんはなんか
メンエキなさそうだし――
ちょっとズレてるし♥
だって――まだニオイのコトとか気にしてて。
フフフ――カンジンなのはニオイとか
そんなコトじゃないのにネ♥
……ほら、この発言ですよ。いや、まさにその通りとしか言い様がありませんが――こと、色恋沙汰に関しては、立夏は実年齢以上のセンスを持っていると言わざるを得ないでしょうね。逆に、ヒカルのそれは明らかに実年齢以下。このへんの対称っぷり、ちょっと面白いかも。
ああ、それにしても、今日の立夏はやたらとオトナって感じで、兄の立場としても、かなりドキドキしてしまいます。……バレンタインのときを思い出したりなどしつつ。
――とはいえ。
こんな風に、オトナな見方をして済ますだけでは、やはり立夏のYASEIは収まりません。
……ええ。最初に言ったように、「ニオイ」話題についても、やはり誰よりも敏感に反応するのが立夏という子なのでありますよ。ただし、その反応の仕方は、俺たちの想像を超越するような形でしたが――
だってヒカルおねーちゃんは、ちっともクサクなんかナイっていうか――
かえって、ちょっといい感じで匂ってるっていうか――
ほら♥
トクに、胸の谷間のトコなんかさ♥
. -―- .
/ ヽ
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ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′
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{(,| `'''7、,. 、 ⌒ |/ニY { \
ヾ| ^'^ ′-、 ,ノr')リ ,ゝ、ー`――-'- ∠,_ ノ
| 「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
, ヘー‐- 、 l | /^''⌒| | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
-‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ !‐}__,..ノ || /-‐ヽ| -イ,__,.>‐ ハ }
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「「おねーちゃーん!おかえり〜!」って
ハグしにいって、ムムムムって抱きつくと、
なんかすっごい――
ステキな香りするって――」って……立夏さん、そんな素晴らしい行為を日常的にやっておられたわけですか!!?? な、な、なんと……! このトゥルー家は、リアル俺が想像していたよりも遥かに日常的な百合濃度が高かったようです。いやまあ、これだけ仲の良い姉妹が山ほど居る家なのだから、このぐらいのスキンシップは何てこともないのかもしれませんが、まして立夏ですしね。
……しかしながら、あたかも同じ体験を前提としたかのように「そう思うよね?」なんて問われても、いかに無防備すぎるヒカルが相手とはいえ、男子の身で実体験など困難どころの話ではないので、困ってしまいます。……い、いやその、「なんか――
花みたいな蜂蜜みたいな
甘〜い、ニオイ♥」だなんて、い、言われても……(脳内で匂い付きシチュエーションを再現しようと必死に頑張ってます今)
ええ、まあ、なんというか……それが科学的に効果があるかは立証されてないと思うのですが、実際の男性には間違いなく精神的に効果覿面なことは間違いないので、フェロモンって言ってしまってもよいものでしょう。感覚的には。ヒカルフェロモン……なんおお、おおおお……ちょっと考えただけで、ニオイで脳が沸騰しそうに。
とまあ、そんな風にヒカルフェロモンにおおはしゃぎする立夏。……いやあ、そういう男の子を反応させるニオイって意味では、立夏も十分すぎるほどのものを放っておられるように思えてならないわけですが――
と、フェロモン話はさておいて。
どうやら立夏は、その件の後輩女子についてすでに知っていたようですね。……っていうか、そもそもヒカルに対して元々ストロベリーパニック的感情を持っていることまで情報を得ていたようですが――
……
うわああああっ!
春風おねーちゃん!!!!
――ヒイイィィーーッ!?
……い、いや。べ、べべべ別に今、トゥルー俺的にはなにもやましいところなど無かったにもかかわらず、思わず恐怖で声を出してしまいましたよ。なんという圧力(プレッシャー)……! この立夏の反応だと、春風さんもなかなかに姉としての威厳というかなんというか、色々な意味で恐れられるだけの存在ではあるようですね。
まあこの場合、そういう人の恋の話をむやみにしていることに対して、いい顔をしないだろうっていう常識的な面でのおしかりが来るかと思って慌てたのかもしれませんけどね。春風さん、そういうところはシャイで堅物そうですし。
……ともあれ、そんな状況をごまかして、事なきを得ようとした立夏ですが……
うん、じゃ、オニーチャン今の、ヤクソクね?
今度、一緒に習いに行って、リカを
メロメロにしちゃってね♥♥♥
――最後に強烈なフェロモンを放って行かれました。ああもう! この雌度高めの女の子、けっこう深刻に兄の下半身を悩ませてくれますですよ!?
どうしましょう、
お兄ちゃん――
まさか、あんなことに
なるなんて――
すわ! まさか、昨日の立夏とのフェロモンごっこが何か不適切な行為として問題に――ってわけではなさそうですが、書き出しからしてホタの様子が心配モードに突入しておられます! ううむ、なんだかホタは、お風呂覗かれ事件のときといい、こういう困ってしまうシチュが多い気がしますが……とそれはさておき。
まあ、昨日の話の流れからして、予想はだいたい付きますけれどね。ヒカルのニオイかぎかぎっ子というのは、ホタのお友達だって言ってましたし。しかしながら、どうやら事態はホタの想定以上の状況に突入しつつあるらしく、「蛍ってバカですね」なんて言ってしまっています。ううむ……ホタはあれでけっこう、トラブルに陥ると、どんどん自分を追い詰めてしまいそうなところがありますよね。普段はお母さんでも、なんだかんだでまだ中学生の女の子なんですから、そういう脆い部分があっても当然ではあるんですが――と、それはいいとして。
そのヒカルの制服をクンクンした子ですが――なんと、固有名詞発覚。
葵ちゃんが――
あ、蛍のクラスメイト
なんですけど、
葵ちゃん! これまた、ちょっとヒロインとしても立派に通用しそうな感じの良いお名前の子ですが……なるほど。ホタ達とヒカルとは同じ学校(それも中高一貫の)いっこ違いですし、友達のお姉ちゃん、妹の友達って関係ならば、十分すぎるほどに接点はありますよね。
とはいえ、そんな近しい間柄で、ましてやヒカルのあの男前っぷり。そりゃあ、そんなに本格的な百合っ気がなかろうとも、ちょっとドキドキしてしまうのは、不自然でもなんでもないとは思いますね。
ただ……、
よく、好物は何かとか、
好きな色とか、パンツの柄とか――
いろんなこと聞かれましたし。
……これは、ちょっと。
ええ、わりと本格的に“突き進んで”しまわれている子なのかもしれません。……っていうか、多分、間違いなくそのような気が。ぱ、パンツの柄て――! これはさすがに、少々アンナチュラルの領域に達していると思います。常識に照らし合わせても。ああ、これは確かに、汗の匂いをクンクンしてしまうというのも頷ける……! ああ、この葵ちゃん、ストパニ世界であれば、さぞかし縦横無尽にその愛欲を発揮できたことでしょうに。「「ヒカルお姉さま〜♥♥♥」とか
よく陽気に叫んでいて――」……とのことですが、なるほど納得ですよ。
とはいえ――俺が最初楽観していたように、あのヒカルにならば、程度の差はあれ、こういう憧れを抱いている女の子ぐらいいくらでもいるってことは、それこそヒカルを初めて知った瞬間から思っていたことでもありまして。実際、そういう子は多いらしく、必ずしも葵ちゃんが目立った存在ではなかったみたいですね。こういうこともよくあったようで。
……「ヒカルちゃんかっこいいですもんね♥」って言い方に、逆にこっちがドキドキしてしまいそうですが……お話は、そのジャージ事件の詳細について。
なるほど、ジャージを忘れた葵ちゃんに、ホタがヒカルのを勧めたんですね。ヒカルのジャージがちょうど良いぐらいってことは、わりとスラリとしたスタイルの子なのでしょうが……
男前に貸してくれた
ヒカルちゃんの体操着を着て
さらに盛り上がっちゃったらしくて――
……うん。まあ、気持ちは分からなくもないですよね。日記でもまれに発揮することがありますが、ヒカルの男前っぷりはガチですから。
まあ、それだけならば、単にヒカルがニオイのことを気にしてしまっただけで済んだ話なのですが――どうやら、盛り上がった葵ちゃんは、ヒカルとデートにまで持ち込むことに成功したとのこと! なんと行動的な――ええ、この行動力。そして、ニオイクンクンや、パンツの柄を知りたがるなど、内に秘められしマグマの滾りっぷりも十分すぎるほど。これは警戒に値する女の子でしょう。ヒカルの情操が色々な意味で危ない! ……かも?
それで――
それで――
……
あの、
「もしかしたら、お姉さまに
告白しちゃうかも♥」
って――
……うーむむむ。いや、好きな相手に思いを伝えること事態は、責めようとも止めようとも思いはしないわけですが――問題はこの葵ちゃんのポテンシャルが相当高そうなこと。ほら、某小説いらん子中隊のハルカみたいな、無害で無垢な百合っ子かと思ったら、一皮剥いたらとんだ淫獣だった、ってことがないとも限りませんから。
ほら、ヒカルはヒカルで、あのとおり無防備もいいところですからね。それでも相手が男だったら、登場以来まったく出番のない金獅子丸で吹き飛ばすとかも可能なんでしょうけど、ヒカルの性格上、女の子相手に乱暴なことは絶対できないでしょうから。
お兄ちゃん、どうしましょう――
ヒカルちゃん、きっと行くと思います。
義理堅い性格だから――
お兄ちゃん――
ホタのせいでヒカルちゃんが――
何か変なコトになっちゃったら――
……ええ、俺もホタと同じぐらい心配です。ホタが葵ちゃんの潜在能力についてどのぐらい察しているかは不透明ですが――そういうのを抜きにしても、ホタにとって大事な姉の一大事になりかねないことですからね。
とまあ、そんなこんなで、明日以降にはきっと、この葵ちゃんに対して何か対策を練ることになるんじゃないかって展開が予想されるわけですが……きっと、こういう問題発生時には顔を出さずにはいられない氷柱あたりが、何か言い出してきそうな予感がすごく。一番シンプルに考えられるのは、ヒカルには実は彼氏がいるとか、そんな嘘をつくことだったりするわけですが……むむむ?
わっっちゃ!
ぶぶぶぶぶぶぶ――
もっちゃもー……
ぶぶーっぱ!
――ぱ?
あっぱぁー♥
続きの展開が気になる日にはあさひさんが日記を更新するの法則がまたしても! おおお……なんという天然レイニー止め効果が備わった素敵時空……! いやまあ、このリアルとトゥルーとの情報のやり取りが限られているっていうのが、トゥルー日記の醍醐味だということは、今更言うまでも無いですけどね。
し、しかしながら、やはり気になるものは気になるわけで……。果たしてあさひさんの認識で、どれほどの状況が語られるかは分かりませんが、いつものようにトランス先生にお尋ねすることにいたしましょう――
いいものみーっけ!
くんくんくんくん――
いいにおいのするピンクのかみ……
きっと、ヒカルの!
あれ、でもしらない人のにおいもしてる?
やぎさんゆうびん、食べてやれ♥
……ああ、あさひさんはもうすっかり、YASEI全開の超食欲生物としての態度が確立しきってしまっていますね。赤ちゃんとはかくあるべきなのかも知れませんが、とりあえず喉を詰まらせたら大変なので、大急ぎで隔離させなければ。
っていうか、このステキスメルな「ピンクのかみ」っていうのは、件の葵ちゃんから貰ったラブレターの類でしょうか。……む、む、む? これは一体どういう状況でしょうか。
もしや、もはや葵ちゃんがヒカルにラブレター経由で告白してしまったのでは――とも思いましたが、しかし蛍が言うには、ヒカルとのデートは来週ってことなので、それに先んじて告白までしてしまうってことはさすがに……いや、予断は許しませんが。
そんなわけで、恐らくは葵ちゃんが差出人であることは分かるのですが、その内容がちょっと想像つきかねますね。単純に、来週に行うつもりだったデートのお誘いのための手紙だったんでしょうかね?
しかしまあ、いずれにせよ、この手紙を食べてしまったと言うのは――差出人にとってもヒカルにとっても、もしかしたら困ったことになってしまうかもしれませんね。
よく、世界最小の生物である、
などと言われますが。
ウィルスが――
生物であるのか、
それとも非生物であるのかは、
まだ意見が分かれるところ
だそうです。
時事ネタを欠かさないのがこのトゥルー家族日記の大きな特徴ではありますが、やはりこの新型インフルエンザ話題は飛び出てまいりました!
ええもう、わざわざ説明するまでもありませんね。関西方面から着実にパンデミックが現在進行形で進行中という非常に恐ろしい状況がリアル世界では広がってきているわけですが――ううむ、それがトゥルーにも及ぶということを考えると、なおいっそうの深刻な状況として再認識してしまいますね。だって、この小さな子の多い大家族では、それこそ一大事ですから。水ぼうそうのときなら、まだ対応できる状況でしたけど、新型インフルエンザとなると、家庭内感染にまで及んだら、それこそ手のつけようがありませんから。
……もっとも、さすがにまだこのトゥルー家族と、その生活圏内においては、まだそこまで深刻な状態には至っていないようで、とりあえずは胸をなでおろしたり。……そんなこと言ってる間に一気に広がってしまうのが本当の意味での怖さなんですけどね。
とまあ、前置きが長くなってしまいましたが――今日の日記は吹雪です。さすがというべきか、このインフルエンザの話題を持ち出すにしても、その原因たるウィルスについて、科学的な説明と考察を行うところから始めておいでです。ううむ、吹雪のうんちくはなにげに俺の教養を着実に日々増やしてくれているなあ。
とはいえ、さすがにウィルスという存在のあり方については、自分も通り一遍の知識ぐらいはあったわけですが……
ただ――
ゲノムをコピーするため
だけに存在する
生命も意志ももたない
――非生物。
ただただ、存在するためだけに――
存在する、
非生物。
……こうやって、その存在の意義みたいなものに、改めて思考を向けられると、なかなかに考えさせられるというか――吹雪は、単に知識を溜め込むだけではなく、こういう思考に浸ることも大好きなんですよね。哲学的なところがあるというか。まあ、あらゆる科学分野は、徹底的に突き詰めると、大抵はこういうような感じのところに行き着いてしまうものなのかもしれませんが。
ただ、吹雪の場合はそういう事情だけではなく――
私は時々、その構造に
親近感を覚えることがあります。
変――でしょうか?
こんな風にも考えてしまうようで。
自身の口から説明している、ウィルスという存在の「あり方」について、何か思うところがあるんでしょうか……ちょっと高度すぎて、リアル俺にもなかなか分からないところではあるのですが……いや、その方向で色々考えても、とりとめのないMMR的な方向にばかり進んでしまうので。
ともあれ、そういう思考に耽溺するのは仕方ないとして、とりあえずは……
でも、ウィルスを排除することは
意外に簡単です。
基本はタンパク質を破壊するために
界面活性剤を使用するだけ――
つまり、石鹸での手洗いです。
そうそう。これですよね。インフルエンザなんかにかかったりせず、ちゃんと健やかに毎日を過ごしてくれてさえ居れば、と。これに尽きます。
この家で見ると、どうやら麗なんかは相当神経質になってるみたいですね。確かに、そういうのをかなり気にしそうな子ではありますし、鉄道という不特定多数との接触が多い趣味を持つ身としては、神経を尖らせざるを得ないのでしょう。
とまあ、トゥルー家族のことばかりでなく、「キミも――気をつけてください」という吹雪の言葉には、しっかり耳を傾けさせていただこうかと。いかにリアルHOKKAIDOとはいえ、いざ発生してしまえば同じことですからね。
というわけで、家内にウィルスを持ち込まないようにするため、心がけるべきこととして――
家内にウィルスを持ち込まないためにも。
ヒカル姉が学校でしたというような、
衣服の貸し借りや肉体的接触は厳禁です――
…………はい、そうですね(←色々と妄想が飛躍しております)
っていうか、まさかここでその話まで持ち出されるとは。まあ、ヒカルの行動は色々と無防備すぎですからねウィルスいかんに関わらず。
ようちえんでぴっかぴか。
ぴっかぴかにみがくもの――
それは!
はとて、です!
えへへ――♥
――日記の最初からさくらが俺たちを可愛らしさで悶絶させようとしておいでですよ!?
いやあまったく、この姉妹達の「えへへ♥」とか、もう何百回目の当たりにしたか分からないぐらいなんですが、それでもなお飽きたりはしませんね。この愛らしさを感じるがために日々の生活があるといっても過言ではなく。
日記の方は、昨日に引き続きこのインフル騒動を受けた、衛生のお話のようですが……さくらが幼稚園でのお話をしていると、なんだか非常に幸せと言うか、満足度がありますよね。臆病なさくらも、立派にお外でやっているんだ――って。
それはそうと、今のリアルのほうは、予防にばかり話題が集中するため、マスクや手洗いばかりが話されてますが――ええ、やはりさくらぐらいの子たちには、もっと全般的な衛生始動が必要ですものね。というわけで、今日のお話は主に「はみがき」についてのようです。
今日、さくら
「ピンポン♪ だいせいかい!」して――
先生にほめられたの。
そしてなにやら、すごくいい活躍ができたようで。ああ……なんというか、さっき言った類の幸せが、今日はやたら濃厚です。
具体的には、はみがきのしかたを質問されて、見事に答えられたようなのですが……
さくら――
みんなのまえできかれて
とってもとってもはずかしかったけど、
でも――
お兄ちゃんのおかお、
思いだして――
がんばってこたえたの!
おおおおお! ……うーむ、やはりこの子には、やたら男の父性本能を刺激させられるところがあると言うか……あああ、なんて健気でひたむきに愛してくれていることか。
とはいえ、やはり当てられたときには、恥かしくって、泣き出してしまいそうだったようなのですが、
きっといまお兄ちゃんが
「さくら、がんばれ!」って
言ってくれてるって思って――
さくら、ユウキの子になれたの♥
ユウキの子! この表現がまた可愛すぎる! いやあ本当、さくらって子は父性を(以下同じことなので略)
だから――
お礼にお兄ちゃんのは、
今日はさくらがみがいてあげる!
ちゃんとならったから、やり方しってるの♥
はをみがきましょ、ぎゅっぎゅっぎゅ――♪
はい、お兄ちゃん、
おくちあーんって、
大きくしてください――
そしてなにやらご奉仕によるご褒美までも!? あー、いや、なんといいましょうか……「大きくしてください」とかの単語はさて置くとしても、こんな小さなさくらに、口の中の粘膜を好きにいぢくられるというのは、なんというか……えらい倒錯感が。そのうえ単純に可愛すぎて死にそうです。
あさひが――くれた
このぐちゃぐちゃなピンクの紙。
どうやら――手紙らしいんだ。
そう、この前私をクサイって言った
体操着を貸した子の――
先々週より続いていたヒカルの匂い話の流れの中、ついに当事者本人が再登場! っていうか、このあさひさんが紙をよだれでくちゃくちゃにしてしまって読めないってパターン、前にもどこかで見たような気がしますよね。トゥルー家の中では、あさひによる紙被害というのはわりと日常的にあるのかもしれませんね。
しかしまあ、とりあえず解読することはできるようで、それによると――ええ、来週にはデートに誘いたいって言っておられたようですしね。それはまさに今週の金曜日――って、もうあさってじゃあないですか。
ホタが言っていた葵ちゃんの話では、会ってデートするどころか、告白までしちゃおうって話になっているようで、なかなかにピンチな状況と思われるのですが……
やっぱり――
これって、呼び出し状、だよな?
い、いやいやいやいや。……ってまあ、呼び出しが目的という意味では間違ってはいないとは思いますが、なんというか……さすが、立夏に「ちょっとズレてる」とまで言われるだけのことはありますねヒカルさん。まあ、傍から見てわかることも、当事者になるとなかなか見えてこないっていうのはあるかもしれませんが……それにしてもやはり、ヒカルは少々そういう色事系のことについては無自覚っていうか天然っていうか。
……そういえば、ヒカルも言ってるんですが、なんでこの手紙、あさひの手に渡っていたんでしょうね? 家のポストに投函されていて、それをあさひさんがYASEIの力でいち早く発見したとか?
クサイのに会いたいって――
そのくせ、乙女な部分ではしっかりと傷ついていたりするあたり、やっぱヒカルも女の子なんだなあとは思うわけですが。しかし……この認識で、告白する気マンマンな女の子と出会うことになると言うのは、なかなかに危険って気もするわけですよ。混乱しきってしまっている間に、押しの一手で落とされてしまうとか!
ともあれ、蛍に尋ねてみるかっていうのは、賢明な判断ではないかと思います、が――
――あ。
それともこれって、もしかしてオマエ宛の――
……
そうだったら……どうしよう!
いやいやいやいや。ひ、ヒカルさん……いやまあ、そこで慌ててくれるっていうのは、嬉しい反応ではあるんですけど!
ヒカルの「呼び出し」を明日に控えたこの鉄火場に、ついに長女・海晴姉さんが降臨なされました!
た、確かにこの人、頼りになるということに関しては間違いないのではありますが……しかしそれ以上に問題なのは、この手のトラブルを極めてナチュラルに「楽しんで」しまわれるところが見受けられる点。
ええ、まして今回は、相手が女の子とはいえ、年頃の妹に関わる色恋問題なわけですからね。この局面における海晴姉さんの反応というのは、頼れるような厄介なような、そしてある意味恐ろしいような……。
そうね――
もっちろん。
私はヒカルちゃんって――
大好きよ♥♥♥
……いやね、もう。この書き出しの前フリからして、なんと言うかなんと言うか……いつもの事といえばいつもの事なんですが、有無を言わせぬ迫力みたいなものを感じずにはいられないわけですよ。そう、海晴姉さんの長女らしいところって、この「有無を言わせない」ってところにあると思うんですよね。もちろんそれ以外にも、実質的に頼りになることも間違いないんでしょうけど、もっとこう、精神的な序列をごく自然に受け入れさせてしまうところがあるわけですよ。まあ、そのくせ、ところどころでヌケてるところもあるわけですし、そこがまた面白いところではあるんですが……とまあ、海晴姉さんのキャラ分析はこのへんにしとくとして。
「美人だし、かっこいいし……」と、海晴姉さんが連呼する、ヒカルの美点。最初の美人以外はどれも、むしろ男の子的な魅力って感じがするわけですが……そのへんが、海晴姉さんにはまさにツボなんでしょうね。特に、「単純♥」のあたり。
そういえば、ヒカルの初期からのプロフィールには、「そのうち海晴姉さんに襲われるぞ?」という問題発言があるわけですが……それはつまり、海晴姉さんが「誰か」を「襲った」、もしくは「襲いそうになった」ことがあったのを実質的に示しているようなものなわけで。……今日の海晴姉さんの発言とあわせて考えると、やはりその毒牙にかかりそうになった相手って、ヒカル……としか、思えないわけなのですが。いや、海晴姉さんは妹全員をそれこそ食べちゃいたいぐらいに愛している人なんでしょうけど、その中でも特にボーイッシュなヒカルは、「襲っちゃう」形での愛情を向けるのに適した存在ですからね。
だからまあ、
とってもとっても――
かわいいの♥
私のカワイイ自慢の妹よ?
……という、過剰なぐらいの表現も、分からなくはないのです。ないのです、が……
だからもちろん――
ウフフフッ
ヒカルちゃんがモテるのは
当たり前よ。
小さなコバエの1匹や2匹――
よってきたって当然だわ。
…………。
……………………………。
……………………………………………………(がくがくぶるぶる)
い、今の発言……もしよろしければ、聞かなかったことにしておいてもいいでしょうか。だ、駄目!? そんな無体な! ……って、どうあれ逃れられようもなさそうなので諦めますが……そ、それにしても、「コバエ」と来ましたか。
そりゃあ、この公野ワールドにおいては、性的な意味で妹を狙う輩のことを「悪い虫」と表現する伝統が存在しているのも事実ですが……それにしても、この海晴姉さんの前フリをたっぷり聞いてから、この表現を用いられると、途方も無いぐらいの愛情の深さが恐ろしくすら思えてしまいます。
あ、ああ……そうか、海晴姉さんのあの「有無を言わせない」ってところは、この猛烈なまでの愛情の強さに発しているのかもなあ……って改めて思ったりも。
し、しかしそれにしても。普段からそれなりにオーラとして感じる海晴姉さんの凄みみたいなもの本質を、心の底から思い知りました。いや、多分海晴姉さん本人は、「単にもののたとえよ♥」ぐらいに思ってるんでしょうけど、その無意識なところがまた恐ろしさに拍車をかけているっていうか!
……と、とりあえず気を取り直して。
表現はどうあれ、海晴姉さんはかなり真剣にそのコバ……もとい、葵ちゃん対策に心を砕いているようですね。もっともその様子が微妙に楽しげなのがまた……ゾクゾクする……。
このラブレターという手法に関してなど、俺たちが危惧するあたりのことは、海晴姉さんも同様に感じておられる模様。昨日の発言を見る限り、ちょっとどころではないほどニブいと言えるかも知れませんし。
「まあ、姉としてはこの際、相手が女の子でも――」なんて問題発言も繰り出しつつ、ヒカルにもう少し色気づいて欲しいっていう思いも語る海晴姉さん。そのあたりは確かに理解できます、が――
でも――プププッ♥
その顔色じゃあ、
キミはどうやら――
そんな気分でもないみたいね?
ああ、やっぱりこっちに振ってこられたですよ! ……いやまあ、その展開自体は、おおむね予想の範囲内でしたが……「うふふふっ♥
“お兄ちゃん”って――素敵。
クスクス♥」 おおおおあああああああああああっ、このくすぐられ方が実にむずかゆくて気持ちいいッ! なんてタチの悪いおねーさんですか!
大丈夫。
蛍ちゃんに頼んでおいたわよ、モチロン。
――尾行。
――しかも手配が迅速すぎです。なんという手際! まあ、ホタも大分切実に心配していた感じでしたし、海晴姉さんの指示があれば即応じたんでしょうけど……それにしても、海晴姉さんの恐ろしさがまた一つ。
……今ふと思ったのですが、もしかしたら今まで、トゥルー家族の姉妹に「悪い虫」がついてこなかったのって――影で海晴姉さんがこうして「処理」していた……なんてことは、ないですよねハハ、ハ……。いや、それはもう、バガボンドの吉岡清十郎の如く。
もっとも、その手配の是非はさて置き、海晴姉さんの認識では、万一の場合には「押し倒されることもありうる」という具合になっているようなので(この想像は俺も行いましたけど)、その前提ならば、まあ、必要といえば必要な処置……と言えないこともないような……言いくるめられているような……?
わぁ――
私も時間あいてたら
一緒に見に行っちゃおうかな――
楽しみね♥
――やっぱりバリバリ楽しんでるよこの人!
いや、そりゃ俺たちだって楽しみですけど! 海晴姉さんのリアクションまで含めて!(ぶるぶる)
あ、ああああああ――
……
あのさっ。

な、なにごと――!?
……ええ、今日はもちろん、ヒカルが例のスメルガール・葵ちゃんに呼び出されてしまった日であります。その危うい状況については、この日までに、当の本人の無自覚さや、海晴姉さんの口などから十分すぎるほどに語られていたわけで。それについては十分承知しておりますが。
しかしそれにしても、この手のイベント当日に、その事件の当事者本人が直接日記を書くと言うのは、かなり珍しいケースっていうか……予感がします。非常事態の。
ええ、海晴姉さんは仰っていましたね。「万が一ヒカルちゃんが押し倒されたりしたら」――などと。いくらなんでも、考えられるとしてもそれは極端すぎるケースだと、俺たちはどこかで油断してはいなかったでしょうか。
しかし。ヒカルのこの反応――
……
今日見たことは――
忘れろよ、な。
もちろん――
私の意志なんかじゃないし!
そりゃあ、
初めて、だったけど――
……
……………………。
…………ええ。なんだか、俺の脳が素直な理解を拒否しているように思えてなりませんが……どうもよく分かりかねます。何か……何かが。「起こって」しまった、とでも言うのでしょうか――
……いや、ここは強く理性をもって、現実をしっかり見つめることにします。ちょっと先の、結論のところまで飛んでしまいますが……ええ、なんといいましょうか。
まさか――
葵ちゃんに――?
――もういい。
私ももう忘れるコトにする。
あんな――
あんな、キスのことなんか――
>キスのことなんか――
>キスのことなんか――
>キスのことなんか――

――って、間に合わなかった!
やられた! ヒカルの初唇――ッッ!
なんということ――ッ! 海晴姉さん直々に言いつけを受けておきながらー! 想像していたよりもさらに上の脅威と見なすべきだったでしょうか、この葵ちゃんという子の本気度・機動力・そして百合濃度――
……いや、それ以上に深刻なのは、やはりヒカルのあまりの無防備っぷりにあるのだとは思いますけれど! ううむ、せめて当事者であるヒカルにもう少し警戒心があれば、トゥルー俺が彼氏のフリをするぐらいのことはできたであろうに……黄金展開すぎるとはいえ!
その現場を他に見に行っていたのは、同じ学校の春風さんと、葵ちゃん絡みでの蛍のみとのことですが……ううむ、こういう子やヒカル相手に強行できるような面子ではないですしね。せめて氷柱あたりがいてくれたら――と思わずにはいられませんが。
当のヒカルの反応を見てみると、さすがにかなり動揺してはいるものの、とりあえず表向きは、「忘れろ!」の連呼はしつつも、最低限の落ち着きだけは保っていられているようですが……内心ではそうもいかないでしょうね。
さて、こうなってしまったことは仕方ないとして……この後どう対処していくか。ヒカル本人に対してのケアと、その葵ちゃんという子に対しての対応と、その両方を行わないといけなさそうですね。……さすがに女の子である手前、葵ちゃん本人を具体的にどうこうするとかの発想にまでは至りませんが、自分のしたことの重さを理解してもらうぐらいのことはしなければならないかな、とも。
で、ヒカル当人についてですが……って、この展開で金曜日とは! 久方ぶりの金曜止め地獄がうおおおあああああああ!!
チューチュー、
チュー♪
チュチュチュの、
チュー♪
うわあああああああああああああああああ……と、今のヒカルが聞いたらその場で叫んでしまいそうなノリの曲が、虹子の可愛らしい口から発せられておいでですよ!? それも日記の冒頭からッ!
かわいいチュー♪
ステキなチュー♪
チューチューするのは――
……
ねーずみさんっ♪♪
……と。ここまで聞けば、単なる「たまたま」というか、言うまでもなく虹子に悪意や他意などあろうはずがないってことを実感できるわけですが……しかしそれにしても、なんというタイミングでのステキソングを。……いやまあ、そりゃあ可愛いですが! 「えへへへへ♥
かわいい?」……なんて言われただけで悶え転げそうなのに、その上「にじねずみちゃん!」だなんて言われてしまった日にはそれはもう!
しかし、いかに可愛かろうと、この曲がきっと今のヒカルの心には沁みてしまうであろうことは想像に難くなく。ヒカルのことだから、表向きは……少なくとも、虹子本人には傷ついたそぶりなんてこれっぽっちも見せないのでしょうけれど、そうするしかないというのが尚更、後々心には響いてしまうわけで。
それにしても、そんなお歌を、よりにもよってどうしてこんなタイミングで……って思ったら、立夏と夕凪さんから教わったものでしたか! ……ってアレ、この二人なら、ヒカルの事情は思い切り掴んでいそうなのですが……むむむ?
いや、確かにこの3人で、こんな歌で踊られた日には、誇張抜きで昇天モノなわけですけれど……これはもともとヒカルとは関係なく、こういうお歌でダンスするっていうのを決めていたのかもしれませんね。ホタも衣装を用意していたって話ですから、何かそういう予定があったのでしょう。だとしたらまあ、いかにヒカルが今あんな事態に陥っているとはいえ、それで題目を変えたりするのもかえってアレでしょうし。
とはいえ、やはりそのあたり、心遣いはしているようで――
でもね――
春風お姉ちゃんとヒカルお姉ちゃんのまえで
うたっちゃメーよって。
……ヒカルはもちろんですが、その場に居た春風さんにも、相当のインパクトがあったってことでしょうかこれは。……それはまあ、内心臆病な春風さんにとっては、たとえ女の子同士とはいえ姉妹のキスシーンを目の当たりにしたら、相当のショックがあったのかもですね。まして相手は、歳も近しいくって弟みたいなヒカルだったわけですし。この二人の関係を考えると、特にショックの大きい組合せだったのかもしれません。
そのあたりはきっと、後日もっと詳しく語られるのでしょうけれど……それはそれとして、まずいことに。
ね、おにいちゃん、
――なぜ?
――どうして?
どうして――春風お姉ちゃんとヒカルお姉ちゃんに
うたったらイケナイの?
……これは危険(マズ)い。小さい子の「なぜなにどうして?」モードが発動したら、それを止めるのは至難の極み!
さらに悪いことには、
春風お姉ちゃんとってもとってもやさしいから、
きっとにじがおうた歌ったらゲンキになるの♥
いっつもそういってるもの!
――うん♥
にじ、やっぱり歌ってくる!
きっと春風お姉ちゃんいっぱいいっぱいほめてくれるの♥
おにいちゃんもいっしょにみてね、チュー♥♥♥
虹子の優しさまでもがその後押しを! 普段ならばこの時点で抱きしめてかいぐりかいぐりってしてあげたくなるお言葉なのですが……春風さん、どのぐらいショックを受けてるんでしょうか。その程度にもよりますが、ちょっとこれはまずいのでは……。虹子に対して、怒ったりするどころか、ショックを受けてる姿さえ見せたりできないでしょうしね、お姉ちゃんの立場としては。
ここはトゥルー俺が知力を振り絞って無難なカバーをするべきところなのでしょうが……この虹子の可愛らしさを見てると、それも難しく。むむむー。
もう――
いやん♥
……
いやんいやんいやんっ♥♥♥
うわああああああああああああッ渦中の人物がのっけから猛烈な勢いできゅんきゅんしておられますッ!??
ち、ちょ、まっ、こ、これは一体どういうことですか! なんなんですかこのテンションは! 春風ってレベルじゃありませんよこれ! 明らかに春風タイフーンの領域に突入しておられるわけですが、一体全体、春風さんに何があったと言うのでしょう。
ええ、春風さんといえば、ホタとトゥルー俺と一緒に、ヒカルの葵ちゃんによる呼び出し現場に居合わせて後、「ちゅー」が禁句になるぐらい不安定な状態だった……という風に認識していたわけですが、この様は……い、いや。言われてみるとこれはこれで、どうやら「ちゅー」によってこんな反応を起こしてしまっているようなので、そのあたりの認識が言葉の上では間違いではないんだってことは分かりますが……。しかし、しかしですよ。この頭に春風っぷりたるや――年中吹きさらしの人とはいえ、明らかに異常興奮の領域です。
……もしかしたら……当日の認識について何か、とてつもない誤解というか……恐ろしいミスディレクションが仕掛けられていたのでしょうか。こ、この頭がグラグラするような感覚……かつてもこのトゥルー日記においては味わったことのある感覚ではありますが。とにかくあの日、春風さんに一体何が起きたって言うんでしょうか。
とにかく気分がハイってヤツになっておられる春風さんが、ご本人直々にそのあたりのことは語ってくれているようなので、心して拝聴させていただきましょう――。
昨日の虹子による、「ちゅーの歌」で、異常興奮中の春風さん。ベクトルは違えど、確かに春風さんに強い刺激を与えてはいるようですが……「春風――照れちゃう♥
にじちゃんまであんな風に――
春風を祝福してくれるなんてっ
」……と。この反応……少なくとも、春風さん自身が、何らかの当事者的な意識があるようなのですが……?
などといぶかしんでたら、とんでもない事実が発覚ですよ。
春風、身体を張って!
ヒカルちゃんを守ったかいがありました♥
な、なんだってー!?
ヒカルは、葵ちゃんの魔の手からは守られていたんですか!? そんな! 俺の心配や嘆きは……と、心に衝撃をもうこの時点で強く受けたわけなのですが、しかしそれはそれとして……さすがはお姉ちゃん! ……って言っておくべきでしょう。いや、どんな方法で守ったかはさておき、春風さんはただきゅんきゅんしているだけの人じゃなあないんですってことを改めて胸に刻み込むべきです。トゥルーの絆、そこで培われたお姉ちゃんパワー、ともにさすがの一言!
なにせ、蛍までもがただただ驚嘆するばかりのご活躍だったとかで。いや、トゥルー俺も現場にいたことはいたのですがね。今回に関しては、完全に戦力外だったようです。……それはまあ、こういうトゥルーとリアルの狭間トラップを味わっているのだから、仕方ないといえば仕方ないですが。
「仕方なかったんです」と自身で語っているように、確かに今回の葵ちゃんのやろうとしていたことに関しては、ちょっと黙ってみているわけには行かない不埒な行動と言えるモノなので、春風さんがこうして「守らなくっちゃ!」って思うのも、ほぼ同意できる感情ではあります。
……ええ、案の定、ヒカルの唇は相当危ない状況だったようで。やはりあの手の状況に関して、抵抗力はほぼゼロだったんですね。完全に予想通りではありますが……そのあたりのことは、心配していた蛍も、春風さんも、しっかりお見通しだったと言うことなのでしょう。
……しかし。
春風さんの、この反応は――
あああああっ――
もう――今思い出しても、
身体が震えてきます!!
ヒカルちゃんの――
ヒカルちゃんの――
優しいキッスは、雷におびえてたずっと昔から――
同じ部屋に寝てる春風だけのモノって、
決まってるんですから――!!!!
……な、なにか、とてもすごい発言を耳にしている気が凄くするんですが……!?
ともかく、私憤に燃えた春風さんが、葵ちゃんををどーんって押しのけて、変わりにヒカルの前に立って――
だって――春風となら
キスなんて――何度も
したことありますもの――フフ♥
……
' , \、 、| ヽ l / / ヽ, / / /
``ヽ ヽヽ! , lj ヽ i/ , ' u !/ / /
、 ヽ\ ` l_/ /`ヽ、 ヽ/ / ,. ' ´ヽ l ,'/'´ /__
、 ヽ、 ,へ、/ ,ヘ``ヽ、ヽ. ` / /,. -‐,´ _!,-、 / /'´/
ヽ\`` l l^ヽ,', ', oヽ`、} レ/o ,' 〉"^l//'´/
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,.ゝ-\ー、 ','""""" ノ_ ゛゛゛゛` /'_j / /
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,'、 `ヽ、,:' -‐- , '``>、
ノ`::ー-、_\__,/_,. ::'´:::::冫二ニ77ー-
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……はい。とんでもないオチが待っておりました。い、いや……なんというか、その、義憤に燃えたこの土日の俺って一体……と考え込んだりしてしまいそうではありますが、それよりもなによりも……って、春風さんとヒカルとで!? そんなことを!? 何回も!?
あ、でも安心してくださいね、
私の――たった1人の王子様
初めてのキスは――ヒカルちゃんとでしたけど。
でもそれは――この前の金曜日よりももっとずっと前、
実は子供の頃にすんじゃっていて――
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``ヽ ヽヽ! , ヽ i/ , ' !/ / /
、 ヽ\ ` l_/ /`ヽ、 ヽ/ / ,. ' ´ヽ l ,'/'´ /__
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――い良しッ! 俺たちの大勝利だッ!!
……あー、いや、何をもって勝利とかそういうのはもう自分の脳内でも不明ですが、どうもこの素晴らしく甘酸っぱい発言を聞いた時点で、俺の全細胞が勝利を宣言すべしと命じてきているので、こういうことで良いかなーと。
いやあ、いやいやいや。これはアレですか。アレですよね。ほら、春風さんが子供の頃、怖がってヒカルと夜を過ごしていたとかのエピソードの頃のお話でしょうね。うぽおおおおおおおおおっ、ただ甘いというだけでなく、姉妹の絆の深さすらも感じさせるエピソード……ッ!
もっとも、そんな小さい頃と、今現在とでは、いかに同性の家族同士とはいえ、さすがにキスの意味合いは少しばかり違ってくるような気がしてならないわけですが、ともあれ春風さん的には、武勇伝的に多少興奮する程度であり、あとは何も問題ないですよ的に済ましてしまってOKなようですね。ま、まあ……本人がそう仰るのであれば……。
一方のヒカルが問題ではありますが……こういう事情を知ったうえで金曜日の反応を見てみると……いや、あんまり大丈夫ではないような? というか、色々と誤解するきっかけだった「初めて」っていうのは、一体何について言っている言葉だったんでしょうか? ああいう現場を見られたこと? ちょっとはっきりとはしませんが、少なくとも、春風さんとのキスが初めてという意味ではないんでしょうね。
とまあそんなわけで、改めてヒカルの反応を聞いてみたいところではありますが……それはさておき。
自分の行った、確かに誇張抜きでヒロイックな行為に、春風さんは興奮冷めやらぬ様子。……ただ、やはりどちらかといえば、春風さんは王子様役ではなく、王子様を求める側――というのは、トゥルー俺が他の誰よりも一番良くしっていることですね。
そんなわけで――
フフ♥
春風は――いつでも。
待ってます♥
本物のキス。
もし春風の身にも危険が迫ったら、
王子様はあんな風に駆けつけて
きてくれるのかしら――
……聞いてるだけで思わず「きゅん」としてしまいそうな濡れた期待のこもった言葉と仕草を残し、(とりあえず春風さん側としては)今回の件を綺麗に締めくくってくれたのでした。うーむ……やはりこの人は凄いなあ。色々な意味で。
6月の第1週――
授業参観です。
唐突に新規イベント発生! いやあ、昨日までの出来事が出来事だったもので、そちらの方にばかり気が行ってしまっていましたが、とりあえずそちらはいったん一区切りということで、それとはまた別に、トゥルー内日常は着実に進行中のようです。ここはトゥルー俺もすばやく頭を切り替えて、日々のトゥルーに対応すべきでしょうね。
それに……この授業参観というイベント、他の皆にとっても一大事ではあるのでしょうが、こと、この子・綿雪にとっては……
ユキも、もちろん!
いっぱいいっぱい――
見てもらいたいです。
……そう。小学校に上がって後、最初の授業参観なわけですよ。新一年生の参観日――そりゃあ、張り切らないわけがありませんよね。いかにユキが大人びているからといって、こういうことに関しては、他の子以上に子供らしく見て欲しいって思っていることでしょう。
それにユキの場合は……
ユキがちゃんと元気で――
学校にも行けるっていうところ。
それからユキが――みんなの前で
ちゃんと発表もできるところ。
こういう事情だって、あるわけですしね。……今だからこそ、過去形でこういうことを言えるわけで。一昔前のことを思うと、もうこんな風な意気込みができるというだけで、どれほど幸せなことなのかって気もするわけですが、まあ過去の話は過去の話ですよ。今はとりあえず、たくさんあって語りきれないぐらいのユキの意気込みを、できる限りかなえてあげた言って思うだけであります。
もっとも、その一番強く意気込んでいることと言うのが……
それから――
……
お姉ちゃんたちばっかり
じゃなくって――
ユキには大好きな優しい――
お兄ちゃんがいるっていうところ!
えへへへ♥
……こんなこととあっては、ねえ? 顔面の筋肉を完全に弛緩させるのも、あまりに容易というものですよ。ううむ、ユキの元気な姿での「えへへへ♥」は、なんだか新鮮な可愛さがあって、これまた俺の脳内に突き刺さる……!
……というか、どうやら授業参観には、トゥルー俺が参加するっていうのが確定している流れですね。いやまあ、トゥルー俺とて、断られない限りは自発的に参加する気マンマンではありますが! まあ土曜日ってことなので、特に問題はありませんよね。そりゃあ、父兄の中に高校生がいるのはなかなかに目立つでしょうが、ユキが望んでいるとあっては、それは些細な問題に過ぎず。
それにもう、友達にまで自慢してしまっているみたいですしね。ああ……ユキがごく普通に、小学生ライフを満喫しているんだなあ……と、胸にこみ上げてくるものが。そんなユキに、
でも――。
でもでも、でも――。
ユキ、どうしても――
お兄ちゃんに授業参観に来て欲しいって
思ってたから――。
……こんな風に嘆願されてしまった日には、臓器だって即断で売り捨てられる自信があります。……しかしなにげに、綿雪はかなりのおねだり上手ですよね。このいじらしさが将来、悪女の方向へ進化してしまうとしたら……いや、それはそれで!
お兄ちゃんの前で、「ハイ!」って――
いい子で発表がしたいな♥
――って、不意に強烈なブローが入りました!こ、これは効くゥ……ッ! ゆ、ユキの元気な「ハイ!」って手を挙げる姿……! 幸せ可愛すぎて、むしろこちらの余命が削られそうです。ああもう、元気な綿雪っていうのは、トゥルー俺の生命力にダイレクトな影響を与えるレベルの威力がありますよね。
とはいえ、やはり健気な綿雪の姿というのも、「ユキも――みんなみたいに、
お兄ちゃんの自慢の妹になりたい」って意欲を見せるあたりに色濃く残っているわけで、そちらの面はそちらの面で、トゥルー俺の精神力を思い切り左右するレベルの影響を及ぼしてくれるわけですよ。
そして――
病気なんかに――
負けない――
……俺をこっそり落涙させるのに、十分すぎるほどの健気さをさりげなく。
ユウウツ――
もう、困っちゃう。
だって――明日は遠足なのに!
どうも、天気予報は雨っぽくて――。
夕凪さんお久しぶりいいいいいいいいいいいいいいっ! ……って思ったら、なんだかいきなり夕凪さんらしからぬユウウツなオーラをお放ちです。
理由はそのすぐ後に述べられている通り、明日の遠足――おお、もうそんな季節ですか……って思ってたら、どうも天気模様が怪しいようで。
うーむ、等身大の小学生の身にとっては、これは切実な問題ですよね。まして夕凪さんなんかはこの手のイベントを人一倍楽しみにしてそうな子でもありますし。そんな様子がある意味微笑ましくもありますが……
夕凪はアメだーいっキライだよぉ、もう!
せっかく昨日から準備して――
(中略)
お菓子屋さんで死ぬほど悩んだけど、
ギリギリ300円に押さえるのにも
バッチリ成功して、
もぉ、こーんなに――
盛り上がってるのにぃ!
ああ、この感覚――! もうそろそろ遠い過去となりつつあるリアル俺の実体験すらも、生々しく思い浮かぶかのようです。小学校ライフにおける屈指の素敵イベントですよね、おやつの資金限度内での購入というのは。
思わず中略してしまいましたが、そのあたりを見ただけでも、軽く生唾が出てきそうな駄菓子乱舞――! 夕凪さんにとっても本来であれば間違いなくヘヴン状態だったのでしょうが……それが台無しになってしまいそうとあっては、「アメだーいっキライだよぉ、もう!」なんて言ってしまうのも無理はないですよね。……大嫌い言われるのも、これはこれで、なかなか……(←夕凪さんの純粋さとは裏腹に、マニアックで不純な思いにふけっておられます)
そんなわけで、困ってしまった夕凪さんは、自分の本領ではないけれど、マホウでなんとかしようとも思っているようですが――まあ、ねえ。夕凪さんのマホウっていうのは、かなり恣意的なものなので、本人が得意といってる恋とかならば、本人の認識次第で大分効果的にもなるんでしょうけれど……こういう裏か表かハッキリしてしまう系のものは、ほぼ効果なしって本人的にも思わざるを得ないんでしょうね。
一方、そんな恣意的な認識が通じ難いマホウ的効果を、生まれ持って身に着けている子もいるようで……
あーあ――
立夏ちゃんが小学校卒業したと思ったら、
とたんにこうなんだもん!
去年は遠足も運動会も授業参観も
とにかくみーんな晴れ!だったのになぁ……。
――なんという晴れ女! いや、イメージとしてはもう、明らかに晴れを呼び込みそうな立夏ではあるんですが、これ、実際にそうなんですね。い、いやはや……さすがの一言。YASEIのみならず、お天気パワーすらも身に着けておいでだったとは。天佑というかなんというか、いろいろなものに愛されて生まれてきた子って感じですよね。
しかしまあ、そんな神通力も、すでに小学校を去ってしまった後なわけで。そこで夕凪さんが考え付いたのが……って、夕凪さんが「あ、そうだ! いいこと考えちゃった♥」って言ってると、ほぼ間違いなく何かよからぬ展開が訪れそうな気がしてならないわけですが……経験則的に。
あのさ、天気予報してるのは海晴お姉ちゃんだよね?
もしかして――海晴お姉ちゃんに、
「明日は晴れよ〜ん」って
予報してもらったら――
いいんじゃないかな?
そして予感は的中する! 夕凪さん、これまた相変わらずというべきか、恐れを知らない女の子! いやあ、このとことんまでの無邪気さ、苗字のみならず中身も本当の意味での天使って気さえしてくるわけですが、とにかくこのピュアっぷりは、ここまで徹底されると、むしろ怒ったりたしなめたりしにくくなってしまうかもしれませんね。
いやまあ、いかに夕凪さん的に「すごい、ナイスアイデア!」だろうと、そもそもそれは海晴姉さんの裁量でどうにかできるものでもないわけですが……
ねねね、お兄ちゃん♥
お兄ちゃんも一緒にお願いに行って〜!
……ぅゎぁ、これは断れない。断れるはずがありませんが……しかして、頼み込みにいくのも、それはそれで地雷というか。「夕凪1人でお願いするのコワイし、
」って言ってるあたり、さすがに海晴姉さんに対しては、それなりに恐れを抱いている部分もあるようですが……やっぱ威厳あるんだなあ海晴姉さん。
もっとも、今回のことに関しては、いかに海晴姉さんといっても、真っ向から怒ったりはできない感じのことなんですよね。あくまでお願いしてるだけですし、何よりも動機の根源が、ピュア極まりない。お天気予報士を志した海晴姉さん的にも、これは共感できてしまうお願いでもあるでしょうしね。この純粋な目で、「海晴お姉ちゃんの予報は絶対だもん!」なんて言われたら、いかに姉妹とはいえ、グッと来てしまうでしょうしね。
うん。
夕凪、晴れにしてくれたらレモンチョコあげる
って言うよ
……この買収の部分で、そのグッと来る部分は相殺されそうな気もしますけれど。
ともあれ、このささやかだけど大胆な問題に、海晴姉さんはどう反応してくるか。けっこう楽しみですねこれ。
雨ね。
せっかく作った
テルテル坊主も、
みーんな。
無駄だったわね。
オオウ、なんということ……。ええ、昨日の夕凪さんの願いも虚しく、今日のトゥルー地方は、本来の天気予報の通り雨だったようです。
さて、そんなタイミングの日に出てきたのが、氷柱というのはちと驚き。いや、とりたてて脈絡があったわけではないですしね。……まあ、ここの家はみんな姉妹だという時点で、もう常に密接に繋がりあっているという前提はあるわけですけれどね。さらに氷柱って子は、そっけないように見えて、その実他の姉妹に決して劣らぬ熱くて厚い情を持っている子ですし。
現に今日も、「天気ってそんなモノだわ」なんて身も蓋もないことは口に出しつつも、そもそもこうして日記に顔を出しているという時点で、気にかけてくれていたってことは証明されてますからね。「ちゃーんとてるてる坊主つくってね」、とのことですが、この微妙に得意になっている言い方が、なんか微笑ましくて可愛いです。氷柱って、こういうところにわりと如実に子供っぽさが現れますよね。
とはいえ、このちょっとクールでテンション低めな態度も、それはひとえに、結局雨に降られてしまったからなのでしょう。氷柱でなくとも、そういうことには気分は影響されますし。
もしかして、下僕まで――
私が雨オンナだから逆効果だとか、
いうんじゃないでしょうね?
――霙姉様みたいに。
んなわけないでしょ?
……こんなことを霙姉さんに言われていたようですが、それもまた、このテンションの低さに影響を及ぼしているのでしょう。まあ確かに、どっちかというと雨系のイメージではあるんですが……それを言うならこの家族には、霙姉さん本人とか――
私みたいに――
かわいくて華のある子が
雨オンナなわけないでしょ?
小雨ちゃんじゃあるまいし――
って、べ、べつに
小雨ちゃんが地味だって
いってるわけじゃないけど――
……って、名前をあげようとしたら、氷柱の口から微妙に問題発言が飛び出てまいりました。い、いやあ、これは、その……小雨本人が聞いたら、なにげない風をつくろおうとしつつ、内心で相当気にしそうな気がするので、ここは全力で聞かなかったことにする方向で。氷柱さん、発言にうかつな内容が含まれること多し。それもまた氷柱の抜けっぷりであり、可愛らしさの一要素でもあるんですが……まあ、今回はちょっとね。もっとも、単に名前のイメージだけの話なわけで、小雨本人以外にはとがめるほどのことではないとは思いますけれど。
まあとにかく、こうなった以上は、もう天気そのものはどうしようもないので、せめて自分が妹のこともちゃんと気遣う姉なんだってことをアピールしたいようですね。なんというか、氷柱らしいっていうか――
それが、あの無法者の夕凪でもね!
……相当、思うところがおありの様子。まあね、あの制服の件なんかもありますけれど、夕凪さんの場合、たとえ怒られても全く懲りない、っていうところがありますからね。そして、誰々は怖いからって自重するってこともしないですし。この真っ直ぐさは、ある意味美徳ですらあると思うのですが……まあ、無法者って表現も、正しいっちゃあ正しいですよね。しかし、変にこずるいよりずっといいですよ、きっと。
しかしながら――この家族の中には、夕凪さん以上のフリーダムな存在が居たのです――!
そりゃあ、まぁ――海晴姉様には負けるけど。
夕凪に頼まれたからって、天気予報の本番で
明日は晴れ〜!って腰をくねくねさせながら
マホウ踊りしちゃって――
……
ホント。
美人のくせに――ヘンな人なんだから。
電話殺到だったらしいわよ?
――海晴姉さん、あんたすごいよ!
い、いやあまさか、昨日のあの夕凪さんのお願い、邪険にはしないって思ってましたけれど……まさか実現するとは! いや、こ、これはさすがに予想の上ですよ。海晴姉さんの愛情の深さと、社会人という領域を超えたフリーダムさに、改めてひたすら感心です。
……さ、さすがに度肝を抜かれましたが……でもこれ、すごいことだと思いますよ。少なくとも、まず何より咲に家族のことを考えるべき、トゥルー家族の立場としては、尊敬を通り越して、好感度MAXに到達してしまうぐらいの勢いです。いやほんと、さすが……さすがの一言。
……その一方で、理性の社会的な面においては、「ちょwwww」って思わざるをえないわけですが……電話殺到、でありますか。「抗議殺到」、ではなく。
いやまあ。そりゃあ多分に抗議も含まれている電話ではあるんでしょうが……もし仮にトゥルー世界にコメントつきの動画共有サイトなんかがあったりしたら、今日には恐らく、海晴姉さんは神扱いされているに違いありません。それこそ、スプーを描いたおねえさん並みに。
とにかく、もしこの海晴姉さんの事情も何らかの形でTVに伝わるようなことがあれば(名場面珍場面特集とかで)、海晴姉さんの人気はうなぎのぼりになること間違いありません。ちょうど今、リアル俺が軽く感動しているノリで。
とまあ、そんな海晴姉さんの偉大なフリーダムっぷりの傍らで、当の夕凪さんがどうしていたかというと――
――ん?
夕凪?
落ち込んでる――
わけないでしょ、あの底抜けのマホウ少女が。
……やはり! いやもう、俺の言いたい言葉を全部代弁してくれているかのような氷柱発言ですが、まさにまさに、夕凪さんとはかくあるべき。
夕凪さんのがっかりを慮った春風さんの配慮で、どうやら今日は遠足用のおやつを一挙解放で食べられるおやつパラダイスを味わえたようで。ああ、夕凪さんのこの底抜けっぷりには、傍から見ているこちらまで元気をもらえるかのようです。
ところで、氷柱が「早く行かないとなくなっちゃうわよ?」って言ってるのは、トゥルー俺も夕凪さんばりにお菓子に目がない高校一年生児と認識しておられるってことでしょうか。しかも、馬鹿にしているのではなく、極めてナチュラルに。いや、さすがにそれはどうか……って思わないでもないですが、まあ、これも氷柱の素朴な配慮ってことで。
あ――
雨だとなんか私も調子でないな。
今週末は地味にすごそ。
……うーむ。別に、心配するってほどのことではないでしょうけれど。いつもテンションというか気が漲っている感じの氷柱が、なんだかアンニュイな状態っていうのは、こっちもなんだか気分が沈んでしまいそう。……夕凪さんが上手に絡んで、この氷柱のノリをほどよく昂ぶらせてくれるといいのですが。
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