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9: 物理学が教えていることは客観的な真実ですか

数学は平行線は交わらないとする共同視線や1+1は無限に繰り返すことができるとする確信を確かめている学問だとしたら、物理学は何でしょう。仮説と実験によって組み立てられてきた自然の法則の体系こそ客観的な真実ではないでしょうか。

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物理の授業で何を計算していたのか

高校時代、物理の時間にいろいろな計算問題をさせられました。公式や記号もたくさん覚えました。しかし、今思うと「ちょっと待てよ。あれは何を計算していたのだろう」といろいろ疑問が湧いてきます。例えば電気の計算でアンペアーやボルトなどの量を数字で表し計算していましたが、この数字はどこから導かれたものなのでしょう。どうやって測定したのでしょう。その単位はどこからもってきたのでしょう。


物理の量は相対的なもの

たとえば電流は何を基準に定義されているのでしょうか。1ボルトや2アンペアーなどひとつひとつの物理量の定義は教科書に説明されています。それによると電気を帯びたふたつの物体の間にはたらく力(互いに反発したり、引き合ったりする力)を根拠にして電気の量であるクーロンという単位は定義されます。

しかし、このクーロンという単位自身は計ることはできません。電気を帯びた物体の間の力の強さによって定義されているだけです。さらにクーロンから導かれたボルトやアンペアーなどはすべて電気に関する自然現象を説明するために便宜的に作られた単位にすぎません。

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すべての物理現象は重さと長さと時間で説明できる

高校の物理の教科書をよく見ると、物理現象の大きさを表す単位は力(F)によって測定され、それから公式が導かれれて新しい単位が定義されています。力(F)は質量と加速度(長さを時間で割りさらにもう一度時間で割ったもの)で表されます。

ここに登場した単位は長さ・時間・質量(重さとして実感できる)の三つです。

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基本の単位はなぜ三つしかないのか

私たちが実感できる量の単位は実は長さと時間と質量(重さとして実感)しかありません。光の強さや音の大きさも実感できますが、その大きさを数字で表してもそれから長さのような具体的なイメージを持てる人は少ないでしょう。

私たち人間はなぜ長さと時間と質量(重さとして実感)で物理現象を表すようになったのでしょうか。

その理由は、長さと時間と重さは私たちの日常生活に欠かせない基準だからです。物を作ろうとしても商売をしてもすぐにこれらの物差しが必要になります。

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長さも質量(重さ)も時間も相対量

私たちが知っている1メートルの長さをなぜ1メートルというかその根拠はありません。30センチの長さを1メートルにしてもよかったのです。これは人間が決めただけの約束事でしかありません。

重さについてもそれは同じです。時間は地球が太陽の周りを1周する時間から計算されています。地球が太陽の周りを回ることから季節がめぐり、地球の自転が夜と昼をつくっているので、そこから計算しています。身近な現象とつながりがあるからです。つまり、物理現象を説明する基本単位は地上で生活する人間を基準にして決められた人為的な数値にすぎないのです。

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物理の法則は相対的な比較量

物理学で扱われている量はすべて人間の都合に合わせてつくられた基準がもとになっています。物理学者が研究しているのは自然現象の背後にある法則つまり関係です。

電気も光も温度も音もすべて何かの運動で生じているのですからそれはエネルギーです。すべてがエネルギーならその量を相互に換算できるわけです。

自然科学を基礎づける基礎科学のイメージをもつ物理学でも、このように人間の生活や直感といったものがその中核に存在するのです。

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言葉は論理性にこだわる

数学でも物理学でも最初に決めた定義から逸脱しないように、必要に応じて新しい数や単位を工夫して学問の体系の一貫性が保たれてきました。ここに言葉がもつ共通の性質がよく表れています。新しい出来事が現れれば、これまでの表現と矛盾しないように配慮しながら新しい表現が考えられています。言葉はその一貫性や自己完結性が損なわれることを極端に嫌うのです。これを論理性と言います。

数学や物理学でそうされてきたように新しいことがらは既存の体系に配慮しながら柔軟に表現されることが必要ですが、私たちはしばしば言葉の論理性だけに注意を奪われ、現実をしかっかり見据えることを怠りがちです。そのとき言葉がひとり歩きをはじめます。これが言葉の魔力です。

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