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3:言葉のない世界はどんな世界ですか

人は勝手にそれぞれの物語を語っているだけなのでしょうか。他の人にとって自分の物語はどんな意味を持つのでしょうか。人が物語をもつことにどんな意味があるのでしょうか。このことを言葉から考えて見ます。

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映画「奇跡の人」

奇跡の人」という映画を見たことがありますか。見えない・聞こえない・話せないという三重の障害をもったヘレン・ケラーとその家庭教師アニー・サリバンの実話にもとづいた映画です。

この三つの障害によってヘレン・ケラーは嗅覚と触覚だけで外界とつながっているだけでした。そのためヘレンは世界に言葉というものがあることを知らないで育ったのでした。

言葉のない世界とはどんな世界でしょう。


サリバン先生はなぜ言葉にこだわったのか

粗暴なヘレンに手をやいていたヘレンの家族は新しい家庭教師のサリバンにヘレンのしつけを期待しますが、サリバンはしつけだけでは満足しません。

この世界には意味というものがあり、それは言葉で表されることをヘレンに教えようとします。サリバンのさまざまな取り組みにもかかわらず、ヘレンは言葉という存在を理解できないまま映画は終盤になってしまいます。

最後の最後でヘレンは「ウオーター」という単語と意味を「思い出し」ます。それは1歳の時に病気にかかる前にヘレンが唯一知っていた単語でした。ヘレンは言葉と意味を一度は体験していたのでした。

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言葉を思い出した瞬間に何がおきたか

その瞬間、粗暴だったヘレンが変貌します。ヘレンは興奮し、さまざまな物の名前を知りたがります。また、それまで好き嫌いの感情だけだった家族やサリバンとの人間関係が人格をとおしたそれに変わります。

サリバンがヘレンに求めていたのはこれだったのです。それを「精神」と言ってもよいでしょう。ヘレンはなぜ言葉の存在を知っただけでこれほど変化したのでしょうか。言葉とは何なんでしょう。

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人は言葉をとおして他者と世界を共有する

ヘレンは1歳の時までに言葉の存在を知っていました。忘れていただけなのです。ヘレン以外にも貧困、障害、差別などの環境により言葉の存在を知らないで育ってしまった人がいます。そうした人びとに言葉を教えるプロジェクトがあります。

そこでも言葉を獲得した人びとはその体験をとおして指導者と人格的な深い結びつきをつくりあげています。美しい夕陽を見て、思わず顔を見合わした二人のように感動的な瞬間です。


他の人も自分と同じだと人は信じている

人は物語として世界を再構成し、それを他の人と共有します。人は物語によってこの世界に踏みとどまっているのです。

しかし、言葉によって世界を他者と共有するという心の動きはなぜ生じたのでしょう。ある生物学者は人とは他人も自分と同じだと信じ込む存在だ、と定義しました。そのような心のはたらきはどのようにできたのでしょうか。

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