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13: 人は本当に生まれながらに平等なのですか

権力の関係では人と人には「支配する-支配される」関係が生じます。この支配の関係が生じる以前の人と人の関係は平等なのでしょうか。ここでは平等と言うことについて考えてみます。

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人は平等にもっとも敏感

人は平等ということにもっとも敏感な動物です。

小さなころよりお菓子の大きさについて「平等」を武器にして争います。「お兄ちゃんの方が大きい」といった具合です。人は本当に平等なんでしょうか。

もし平等に生まれることが物語にすぎないのなら、なぜそのような物語がつくられたのでしょう。


歴然たる事実「人は同じではない」

人は平等ではありません、と書きたいところですが、それには前置き必要ですから、ここでは人は同じではないと言っておきます。

人は体格、体力、容貌、知能などさまざまな点において同じではありません。生まれた場所、両親の社会的地位や経済力など違いをあげればきりがありません。

それなのに、なぜ平等などと言うのでしょう。

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対等な関係とGive and Take

平等に似た言葉に対等という言葉があります。対等という場合、さまざまな点において異なる二人が対等であるのはその力関係においてです。この場合の力関係は腕力や財力の問題ではありません。心理的には拮抗していてどちらも優越的でない状態です。

この状態は二人のうちの一方から他方へ一方的にプレゼントがなされたときに崩れます。プレゼントを受けた方は相手に対して借りができ、対等な関係が崩れます。この状態から元に戻るにはプレゼントを受けた側から返礼するしかありません。Give and Takeの関係です。

この対等な関係こそ心の世界での人間関係の基本です。

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愛は一方的な贈与である

私たちは太陽から一方的な恵みを受けて地球上に生存しています。人はそれを神の愛にたとえて太陽に祈りました。

また、未熟なまま生まれる人間は乳幼児期に自分を育ててくれた親の慈愛に生涯にわたって敬意を感じ続けます。親が子どもに与える慈愛は返礼することができないほど大きな贈与です。

太陽にしても親にしてもその贈与は一方的なかたちをとります。

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返礼できない贈与が権力を生む

これらの一方的な贈与のかたちをとる「愛」に似たものに、共同体による庇護があります。時代によってそれは共同体と言われたり国家と言われたりしましたが、私たちの安全を保障する集団であることに違いはありません。

集団の力はときには生きるのに必要な財をもたらし、時には敵の攻撃から身を守る力を提供しました。

このような大きな力から私たちは一方的な贈与を受けることになります。これが共同体が権力をもつ瞬間です。安全の贈与こそ支配の根拠です。

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共同体がつくった平等の物語

人は平等には生まれません。共同体によって平等にされるのです。この共同体に守られていることにおいて、そのメンバーは平等です。

共同体はそのメンバーを平等に守ることを自らの使命にしています。人は共同体の庇護を受けることによって平等とされ、共同体の権力の下に生きるようになります。平等とは共同体がつくった物語です。

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平等の物語が壊れるとき

共同体がそのメンバーを平等に扱えなくなったとき、その共同体は大きな危機にさらされます。共同体のメンバーを平等に守ることが共同体の使命ですからそれは当然です。

共同体はこの平等という正義の第一原則を維持するためにさらに第二、第三の正義を必要とするようになります。正義が正義を生むわけです。このことについて考えていきましょう。

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