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12: 三人という人間関係が難しいのはなぜですか

正義という大問題に入っていく前に、人間関係について考えておきます。

「二人旅はいいけど、三人は難しい」という言葉を聞いたことがありませんか。気心が知れた遠慮のいらない仲ならともかく、互いに気を遣いあうような三人での旅は後味の悪い思い出を残すことがありそうです。

どうしてなんでしょう。人の心の深層をのぞくような興味ある話です。考えてみます。

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微調整が効く二人、効かない三人

二人という関係は互いの気持ちが分かりあえ、微調整が効きます。相手の気持ちのちょっとした変化を感じ取り、こちらからも働きかけられます。互いに自分の身体や感情を相手にさらすことにより共感的な関係をつくりやすいからです。

一方、三人ですとそれが難しくなります。一度決まったことをちょっとした心変わりで変えようとすれば「身勝手」ということになります。三人のうちの二人が気心が知れた親しい仲だった場合、残りの一人は孤立しがちです。なにかぎくしゃくした関係になってしまいそうです。


二人は家族の人間関係

二人の関係の典型的な例は男女の仲です。互いに理解し合い、互いに許し合う関係です。それがまた二人の喜びでもある男女の関係では身体が触れあっても緊張することはありません。

ですから、一度決めたことでも簡単に変更できます。「君がそう思うなら、僕はいいよ」といった具合に現実と言葉の間には緊張関係がありません。二人の間に子どもが生まれれば、この親密な関係は子どもを含めた家族に拡大されます。

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三人は社会の人間関係

ここで言う三人とは他人どうしの関係が基本となります。この三人には共感的な関係が育ちにくいので、気持ちを理解しあうというよりは取り決めをしてそれを忠実に実行するというような固い人間関係がイメージされます。

どちらかと言えば約束・契約・計画というような言葉が生身の人間の気持ちより優先される世界です。ここでは言葉はメンバーに対し拘束力を持ちます。それでなければ四人・五人と規模が増えた集団では収拾がつかなくなります。

人は言葉に従わなければなりません。これが権力のはじまりです。

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強制される物語

「人は自分以外の人間を自分と同じだと思いこむ動物だ。」こう考える学者の言葉を先に引用しました。

さらに、人には自分がこうあって欲しいという願望を織り込んだ物語をもつ習性があり、これを他の人と共有したがるやっかいな動物だとも書きました。

なぜやっかいかと言えば、この願望は他の人にとっては「おせっかい」でしかないことも十分あるからです。ましてやこの物語を強要されるにいたってはそれは権力に等しいことになります。

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権力にはふたつある

権力が生まれるにはふたつのプロセスがあります。ひとつは三人以上の集団に不可欠な「共通意志」という権力です。もう一つは、物語を強要されたことから生まれる権力です。そして強要された物語が「真実」ということになれば、その物語はその瞬間に「正義」に変わります。

なぜ人は他の人の物語を強制されなければならないのでしょう。人はどんな物語を正義として受けいれてきたのでしょう。正義のいくつかのパターンを分析してみます。

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