目的をはっきりさせて議論をはじめなければ、筋道をたてて考えることができなくなります。争点もあいまいになってしまいます。いろいろな意見があると思いますが、誰もが認めることのできる問題の設定の仕方ではないでしょうか。
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「誰でもが安心して暮らされる社会をつくるにはどうしたらいいか。」この問題設定はどうでしょうか。そして、次のように議論を展開します。
高齢者・障害者・傷病者・失業者・女性・子どもなど社会的に弱い立場に立っている人を含めてすべての人に保障される、「人としての最低限の生活(ナショナル・ミニマム)」とはどのような内容になるのか。その内容を明らかにしてそれを実現することが、政治の最優先課題であるべきです。>
ナショナル・ミニマムを保障するには国民はどれだけの負担をしなければならないか。 これが次のテーマなります。とりあえず現在の歳入・歳出の数値で計算しましょう。そうでないと、話が複雑になってしまいます。(ここで増税や行政改革の議論をすると話しがややこしくなります。)
現状では、低すぎるナショナル・ミニマムと高すぎる国民負担ということになると思います。だから、議論になっているのですが、まず、減らす方から考えることにしましょう。
公的部門をどれだけ削減できるか、これが問題です。削減した公務員をどうするのかとか、成長戦略をどうするかとか、ここが一番議論が錯綜するところですが、すべて「もし、仮にそうすれば」と仮定の話として議論を進めます。この段階では、シミレーションでしかありません。
公的部門の削減だけでは、おそらく満足できる数字(ナショナル・ミニマムの水準と国民負担率)は出てこないでしょうから、次は産業構造の再編成による経済成長に期待するしかありません。
そのために生じる労働力の移動は失業給付など公的な支出を増加させますから、実際にはナショナル・ミニマムの水準、国民負担率、公的部門の削減について見直しながらの議論になります。
公的部門を削減し、新しい産業を起こすとなれば、転職を余儀なくさえる人がたくさん出ます。そのような立場にある人たちが安心して新しい職場へ移動できるようなサポートが必要です。
公的部門の合理化と経済成長によっても、満足できる結果が得られない場合には、ワークシェアリングを導入することにより、誰でも安心して暮らされる社会を実現するしかありません。
労働時間を短縮し、削減された労賃で仕事のない人たちに仕事してもらうことになります。どうやって、この同意を人々から取り付けるのか、方法も重要なテーマとなります。
国内の政治・経済のあり方がはっきりしたら、それを実現する外交を検討する必要があります。防衛(軍事)・食糧・エネルギー・資源・環境・貿易と国内産業・民間交流・歴史など多角的な議論により総合安全保障を裏付ける外交戦略が練られなければなりません。
どの政党も、背負った課題は共通のはずです。異なるのは、政策実現の方法やその優先順位です。大した違いはないのに、「真っ正面から大反対、妥協の余地なし。」というような政局がらみの議論が続いています。特に、国会ではその傾向が強くなります。
そこで、政治家と官僚と研究者と市民の代表が、テレビなどで徹底的な議論をし問題点を絞り込んだらどうでしょう。何が問題か、何が争点なのか、すべてが整理され、それについての考え方の違いをはっきりさせないで、選挙すれば、混迷は深まり、短期政権が続くだけです。
争点が絞られても、候補者や選挙民が地元の利益や業界の利害を優先すれば、なにもなりません。そこで、地方の問題は地方行政にまかせ、国政は国家レヴェルの問題にしぼって議論できるように しなければなりません。